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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【邦画:歴史】 永遠のゼロ(映画版)

【評価】★★★★☆

eien_zero_movie.jpg
2013年/日本
監督:山崎貴
主演:岡田准一
原作:百田尚樹著「永遠のゼロ」

レンタルショップに、本作が置いてあるのを見て、以前、原作を読んだなぁと思い起こし、手に取ったのでした。
原作の感想を書いた自身の記事を読んでみたのですが、結構感動したといった趣旨のことが書いてあるにもかかわらず、すっかり、内容を忘れていたのでした。映画を見ることで、その感動を思い起こすことができるのか!


【ストーリー】
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自身の祖父が特攻で戦死したことを知り、戦争当時の祖父の様子が知りたくなり、取材を開始する。祖父を知る人々を取材すると、祖父・宮部久蔵は、手練れの飛行機乗りでありながら、命を惜しむ臆病者とそしられるような人物であったことを知るのであった。
しかし、更に、取材を続けると、命を惜しんだのは家族のため生きて返るためであり、戦争中で厳しい思想統制にある中、自身の信念を貫いて生き抜いた勇気を感じるのだった。
命を惜しんでいたにもかかわらず、特攻で戦死した理由を不審に思いながら取材を続けると、宮部久蔵は、最後は、他の人の犠牲となって死に赴いたが、他方で家族を思い、身代わりとなった人に自分の家族のことを託して死んでいったことが分かるのだった。主人公が今を生きていることには、祖父にまつわる命をかけたストーリーがあったことを知り、自分の人生に対する責任を強く感じるのだった(完)。
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【戦争・ヒューマニズム・恋愛】

原作は、以前読んだことがあり(→感想はこちら)、結構感動した気がするのですが、すっぱり、内容を忘れていました。
映画を見終わった後も、「確か、こんな話だったかなぁ」というくらいの思い出し加減で、いやはや、私の記憶は心許ない。

本作は、零戦パイロットで特攻で戦死した宮部久蔵の孫が、戦後70年経った現在、久蔵の足跡を追うべく、関係者に取材して回るという話。
当時を知る関係者から、「宮部久蔵は臆病者だった」などと謗られるなど、色々と複雑な面がありそうな久蔵の素顔に迫りつつ、ラストはびっくり純愛物語に帰結するという、戦争・ヒューマニズム・恋愛の1粒で3度おいしい物語となっています。



【誰かのために身を挺すること】

主人公の宮部久蔵、戦場で命を惜しむため臆病者呼ばわりされますが、パイロットとしての腕は超一流という設定。
臆病者で、腕もボンクラでは、話にならないでしょうから、こういう設定は致し方なしというところでしょう。

命を惜しむ理由が、家族のためという背景があるため、現代人からすると、理解しやすい背景であり、戦場を共にする人々にとっては、命を惜しむという姿勢は反感を持たれるものの、パイロットの腕は超一流のため、尊敬を受けやすい素地があったりもします。

そう考えると、能力って大事だな・・・と思ったりもします。

他方、自分の部下や教え子の名誉を守るため、上官に対して意見をとなえ、上官からしこたま殴られるなんていう硬骨漢な一面もあり、そういった点も部下や教え子から評価される一面につながっています。

戦場で命を惜しむという行為は、仲間を見捨てているという風に見られ軽蔑の対象となりますが、仲間のために上官に刃向かうという行為は、自身が犠牲になって仲間を助ける行為であり、人は、誰かのために身を挺して頑張ってくれるということに感動を覚えるのだと思います。



【仕事と家庭の両立】

この話、突き詰めると、戦場の仲間のために命を掛けるか、自分の家族のために命を掛けるか、どちらを取りますか、というお話でもあります。

宮部久蔵は、家族のために、という選択肢をとったが故に、戦場の同僚からは臆病者扱いをされたわけで、現代に例えれば、会社のためより、家族を優先する人が、社内でなんとなく白眼視されるという状況に似通っているわけです。

こういった問題を解決するために、「働き方改革」なるものが提唱されているわけで、働き方を効率よくすることで、自分の能力を会社や職場同僚のために最大限発揮しつつ、家族のためにも最大限時間を割くことができるようする、まさに一石二鳥を狙っているわけです。

宮部久蔵の生きた時代は、戦況悪化で、どうやっても職場環境の改善や業績向上が望めない中で、仕事と家庭の両立は困難だったため、宮部久蔵のような生き方は難しかったと言えそうです。

しかし、ラストは、特攻で自ら死に赴くも、家族のためにも貢献できるという、両立策を実現してしまいます。
あまりに奇をてらった結末ではありましたが、これくらいじゃないと、仕事と家庭の両立は困難という、非常に苦しい時代であったということでしょう。



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[ 2019/12/30 01:07 ] 第二次大戦 | TrackBack(0) | Comment(0)

【中国映画:歴史】 戦神 -ゴッド・オブ・ウォー

【評価】★★★☆☆

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2017年/中国
監督:ゴードン・チャン
主演:チウ・マンチェク

倭寇討伐で活躍した明の武将・戚継光を題材とした作品。倭寇など、日本を題材にした中国映画とかだと、反日映画的な内容に作品も結構あり、純粋に映画を楽しめなかったりすることもありますが、果たして本作はどんなものなのでしょう。

【ストーリー】
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16世紀の明の時代。倭寇の猛威と、政治の腐敗により疲弊する明王朝。若き武将・戚継光は倭寇討伐の将に抜擢される。
弱卒の明軍を徹底的に鍛え、少数精鋭の部隊を作り上げる威継光。
精鋭を3000名をもって、倭寇討伐に乗り出すが、倭寇も威継光を徹底的に叩き潰すため、2万の大軍を結集して威継光の軍に立ちはだかる。
死闘の末、倭寇の大軍を突破し、倭寇の大将を討ち取り、大勝利をおさめるのだった(完)。
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【史実を元にした作品】

てっきりフィクションかと思いきや、主人公の武将・戚継光は、実在の人物だそうです。
明の時代に倭寇討伐に功績があった武将とのことで、この映画が描かれている時代は1550年から1560年頃ということで、日本は、戦国時代まっただ中、織田信長が尾張国内で苦戦している最中(有名な桶狭間の戦いは1560年のこと)という時期です。

こんな時期にも、日本は隣国の明まで赴き、海賊行為を行っていたとはびっくりですが、日本の戦乱の余波は国内だけでなく、隣国にまで迷惑をかけていたんですね。



【ライバルは松浦党】

倭寇の裏には、日本の松浦藩がいるという設定になっており、松浦藩の切れ者軍師が、倭寇の中心人物で、切れ者軍師と戚継光の戦いが見どころとなっています。
松浦藩(この時期だと松浦藩とは言わず、松浦党と呼ばれていたんだと思います)は、長崎県平戸市を中心に、海賊衆を束ねた集団で、密貿易から海賊行為まで活発に行っていた集団で、映画の設定も、史実に近い設定なのだと思います。

この松浦党、なかなかすごくて、戦国末期には、日本にやってきたポルトガルの船団と一戦交えた(しかしながら大敗北したそう・・・)なんていう経歴も持っていて、戚継光のライバルとして位置づけるには、存在十分かと思われます。



【悪妻を得た戚継光は・・・】

本作は、昨今はやりの寡勢をもって大軍を打ち破るという設定(映画「スリーハンドレッド」とか)を踏襲しており、クライマックスは、3000の兵で2万の大軍を打ち破る展開。
ただ、内容は、どことなく勢いだけで大軍を打ち破ってしまった雰囲気があり、もうちょっと一工夫有るとよかったかなぁという印象。

後は、かなり不思議だったのは、戚継光と奥さんのエピソード。
奥さんがかなり猛々しい女性で、少し帰宅が遅れただけで、お客も一緒なのに、「ご飯が冷めましたから、外で食べてください」と言って家を追い出したり、どこかに出かけようとするときに、「私の馬が用意されていない!」といきなり不機嫌になって、立ち去ろうとしたりなんていう話が出てきます。

しまいには、見かねた戚継光の部下たちが、奥さんに刃を突きつけて、戚継光に従わせるという作戦を決行しようとする(戚継光にいなされて作戦は行わずじまいですが)なんていう展開にまで行き着きます。

このエピソード、一体どういう意味があって盛り込んでるんだ・・・?と思いながら観ていたのですが、おそらく、戚継光は実在の人物なので、実際、戚継光の奥さんのこの手のエピソードがあり、有名な話なのでしょう。

映画を見ていると、謎なエピソードですが、史実を描いているとすれば、少々笑ってしまう話です。

悪妻のエピソードで知られる有名人には、哲学者のソクラテスがいますが、ソクラテスの名言(迷言?)に、「良妻を得れば幸せになれる、悪妻を得れば哲学者になれる」というものがありますが、戚継光も悪妻のおかげで名将になれたのかも??


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[ 2019/12/23 00:00 ] 東洋史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【邦画:アニメ】 カリオストロの城

【評価】★★★★☆

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1972年/日本
監督:宮崎駿

妻が、「なんか、久しぶりにカリオストロの城が見たい」と言い出したので、レンタルショップに早速駆けつけました。そんな古い作品、DVDであるのかしらと思いきや、ちゃんとありました。すごい。


【ストーリー】
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偽札作りに暗躍するカリオストロ公国に潜入し、偽札作りの秘密を暴こうとするルパン三世。そこで、公国の姫が、悪者の伯爵に財宝目当てで無理矢理結婚させられそうになっているのを知って、公国の秘密暴きとともに、姫を助けるために奔走する。
公国に秘められた財宝に秘密を解き明かすとともに、偽札作りの秘密を暴き、公国の姫を助け出すことに成功するのだった(完)。
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【ジブリなんだなぁ】

「カリオストロの城」は、子供の頃、地元の公民館のようなところで上映された時に見た思い出があります。
高所恐怖症気味だったので、城の高いところからの場面が恐いなぁと思った印象は、今でも残っていますが、内容はあまり理解できなかった記憶があります。何せ、子供だったので。

「カリオストロの城」が宮崎駿監督の手によるものだとは、だいぶ大人になってから知りましたが、こうやって、大人になってから見ると、ジブリ感が半端ない作品ですね。
カリオストロ公国の姫が、「天空の城ラピュタ」のシータ、そのまんまだぁと、妙に感動。



【ドリフの影響も大か】

それから、もう一つ印象に残ったのが、とぼけた感じやお笑い(?)のノリが、妙に、ドリフっぽさ満載な点。
「カリオストロの城」って、おそらくドリフ全盛期の頃に作られた作品だったかと思いますが、予想外なところに、ドリフの影響が出ていて、ドリフの影響力の大きさにびっくり。

現代風に例えるなら(?)、ドリフの影響力は、日本のホラー映画に多大な影響を与えた「リング」の貞子と言ったところでしょうか(例え方が、あまり適当でない気が(笑))。

DVDには、本編以外に予告編も収録されていましたが、予告編のキャッチコピーに「おとぼけ感が更にパワーアップ」とか、今だと、売りにならんぞと突っ込みを入れたくなるキャッチコピーが、当時の雰囲気を忍ばせるのでした。
なお、「制作費5億円」とバーンと予告編で出てくるのは、映画の宣伝というよりは、宝くじのCMのようなのも微笑ましい。



【最後の名台詞は】

「カリオストロの城」の名言は、最後に、銭形警部がルパン3世のことを指して、「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。」と言うシーンだと思いますが、子供の頃は、全く印象に残らず、この台詞、全然記憶に残っておりませんでした。

さて、大人になってから見ると、いやはや、くさい台詞ですな。マジな顔でこんなことを言われると、かなり照れくさくなりますが、それ故に、印象に残る台詞なのかもしれません。

「天空の城ラピュタ」の名台詞「バルス」と比べると、長すぎて言いづらいことこの上なしなので、「バルス」と比べると、みんなが口に出していいづらい台詞かなぁなんて思います。

ただ、パロって使えそうな台詞なので、何かのタイミングで使って見たい気も。

「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの財布です。」・・・スリにあった人に向かって、いつかは言いたい。・・・殴られるな(笑)。



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[ 2019/12/22 04:04 ] ジブリ作品 | TrackBack(0) | Comment(0)

【邦画:犯罪映画】 日本で一番悪い奴ら

【評価】★★★★☆

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2016年/日本
監督:白石和彌
主演:綾野剛
原作:稲葉圭昭『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』

北海道県警で起きた実際の不祥事を題材とした映画。前々から見たいなぁと思っていたのですが、地元のGEOでは、なぜか、ずーっと準新作扱いにされていて、高値プレミアムが付いていた状態で、旧作に落ちるまで待っていたのでした。ようやく、旧作になっていたので、早速レンタル。

【ストーリー】
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高校卒業後、北海道県警に就職した主人公。
真面目一筋で、要領もよくない主人公だったが、先輩警官の「やくざの中に協力者を確保して、その情報を使って検挙実績を上げよ」というアドバイスに従い、やくざとのつながりを深め、拳銃の検挙実績で好成績を上げるようになる。
しかし、検挙実績を上げるため、ロシアから拳銃を購入して検挙実績にするなど、違法捜査や検挙実績を上げることだけを目的とした行動を取るようになり、更に、拳銃を購入する費用を稼ぐため、覚醒剤の密売を仲間のやくざに行わせ、その金で、拳銃を購入し検挙実績とするなど、犯罪行為にどっぷりとはまり込んでいるのだった。
更に、県警内で、200丁の拳銃密輸を摘発するおとり捜査として、40億円相当の覚醒剤の密輸を見逃すという違法捜査に荷担するものの、おとり捜査は失敗し、主人公は左遷されてしまう。
左遷による失意から、自身が取り扱っていた覚醒剤に手を出し、ついには逮捕され、また、違法捜査に荷担していた警官仲間も自殺するが、県警の上層部は、主人公にだけ罪を負わせ、一切の責任を取ることはなかったのだった(完)。
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【いやはや、本末転倒】

警察による不祥事は、かなり報道されていて、今やまたか、という感じすらありますが、本作は、警察の不祥事が発生する構造的原因をえぐり出したかのような内容です。

北海道県警の警官である主人公は、拳銃の摘発実績を上げるため、暴力団と通じることで、暴力団から情報を得て拳銃摘発の実績を上げるようになります。
しかし、いつしか、摘発実績を上げるために、拳銃をロシアから購入しだし、更には、その購入資金を手に入れるため、覚醒剤の密売を行うようになり・・・と、何のための拳銃摘発なんだと突っ込みをいれたくなる状況に陥ります。

哲学者ニーチェの著書「善悪の彼岸」の中で、「怪物と戦う者は、自分自身も怪物にならないよう気をつけねばならない。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」という言葉がありますが、まさにその言葉どおりの展開に・・・。

わざわざニーチェを持ち出さなくても、日本の四文字熟語やことわざにも、「本末転倒」や「ミイラ取りがミイラになる」と言った言葉がありますが、古今東西、こんな境遇に陥る人はめずらしくないのかもしれません。



【ノルマ至上主義】

主人公が、こんな不正に手を染めるようになった理由は、北海道警のノルマと成績至上主義が原因なようです。
なんとしても、拳銃摘発の実績を上げようと、実績さえ上げられれば手段は問わずという風潮となってきます。

県警内ですら、拳銃200丁の密輸を摘発するために、まずは密輸組織が行う麻薬100kgの密輸を目をつぶって通してしまうなんてことをするのですから。
麻薬100kgって、末端価格だと、グラム3万円なら30億円。
それに対し、拳銃200丁は、1丁10万円としても、2000万円ですから、拳銃200丁のために、それよりも明らかにインパクトの大きい麻薬100kgを国内に流通させてしまうのですから、もはや狂っているとしかいいようがない・・・。

ノルマ至上主義のすさまじさと言うしかありません。
そういえば、日本郵政でも、ノルマ至上主義が原因で、保険勧誘・加入で組織的に大規模な不正が発生したなんていう事件が、最近、ニュースを賑わせましたが、過剰なノルマは倫理をぶちこわしてしまうのでしょう。



【公共の安全と市民の平和を・・・】

冒頭、主人公が、なぜ警官になったのかを先輩警官に尋ねられ、警察官の宣誓書か何かに書かれている言葉、「公共の安全を守り、市民の平和と・・・」を思い出しながら答えるシーンは、映画「アンタッチャブル」でも似たような場面があり、東西問わず、警官は、まず、その言葉を暗唱させられるんだなと、印象深く感じました。

本作の主人公は、その後、成績を上げるために、この言葉の意義は忘れてしまい、むしろ、小さな不正は巨悪を摘発するために必要という理屈で、自身の行動を正当化させるための言葉にすらなってしまいます。

結局、主人公が追求したことは、巨悪の摘発でもなんでもなく、善悪関係なく成績を上げることとという、非常に矮小化した自己目的の追求だったわけで、目的や本来の意味を見失ってしまうと、こうも堕落してしまうのだなぁと、恐ろしさを感じる作品でした。



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【書籍:社会派小説】 大地の子(全4巻)

【評価】★★★★☆

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著者:山崎豊子
出版:文藝春秋



【日本と中国の関係を描いた大作】

中国残留孤児となった陸一心を主人公に、中国の文化大革命、日中合作による製鉄所建設、残留孤児の肉親捜しと広範なテーマを描いています。
本作も、中国での綿密な取材を元に描かれており、後書きには、中国政府の情報統制による取材の難しさなどにも触れられているので、本作、大作であることの大変さに加え、取材の困難さも加わり、大変な苦心作だったことが、直に伝わってきます。

また、主人公の陸一心は、日本人ではありますが、6歳の時に敗戦となり、満州(中国)に取り残され、中国人として育ったため、中国人的な感覚・文化を持った人物として描かれており、中国人の文化や思想様式を知ることのできる面白さもあります。

そして、製鉄所建設を通じて、日本と中国の考え方の違い、ぶつかり合いなども描かれており、現在とは多少違う面があるとは思いますが、現在も起こっている日中間の相違を考える上でも、参考になる面があるようです。



【文化大革命の嵐】

序盤は、残留孤児となった陸一心が、中国人に拾われ育てられますが、文化大革命が吹き荒れる中国で、日本人の出自であるが故に、それこそ、死線をいくつもかいくぐらなければならない苦難の道を歩むことになります。

特に、中国人の養父・養母によって、苦心して大学まで出してもらったものの、出自が日本人であるということで、強制収容所送りになる展開のすさまじさ。

カンボジアにおいて、ポルポト派が、自国の知識人を全て強制収容所送りや虐殺して、国をボロボロにしたという悪夢がありましたが、本書を読むと文化大革命もその状況にかなり似たような状況だったようです。
毛沢東死後、文化大革命は終結し、その後の指導者によって、「文化大革命によって、中国の発展は30年遅れた」と、文化大革命は痛烈に批判されることになりますが、知識や技術を持つ人を抹殺しようという発想自体が不可解でしかありません。

本書で描かれる強制収容所の様子や、些細な理由から突如としてつるし上げが行われ苛烈な懲罰が加えられるなど、理屈が通らない世界ほど恐ろしいものはありません。
本書では、文化大革命の状況は、一つの大きな山場となっています。



【日中合作の製鉄所建設プロジェクト】

文化大革命が終わり、陸一心は、養父の命がけの働きかけにより、強制収容所から解放され、日中合同による製鉄所建設プロジェクトに携わることになります。

山崎さんが、色々取材しているなぁと感じたことの一つに、日本の製鉄所の様子を描いた1シーン。
「環境規制で、敷地の20パーセントを緑化することが義務づけられている工場であるから、グリーンベルトが多く、しかも煙が殆ど出ていない。」

この記述、今もある日本の工場に規制を掛けている法律、工場立地法に関するものです。
以前、仕事で工場立地法について調べたことがあるので、こんなところまで調べて書いているんだと、びっくりするやら、自分が知っている法律が出てきてうれしい(?)やら。

製鉄所建設プロジェクトは、日中間の考え方の相違、それこそ交渉術から仕事の考え方、情報の扱い方、責任の取り方まで大きく違い、そのぶつかり合いが見所になっています。

特に興味深かったのが、製品品質に関する考え方。
中国側の方が適当なのかと思いきや、中国は製品に錆一つあっても不良品扱いするのに対し、日本は、機能面に問題ないのでそこまで追求する必要はないとの主張。
中国側の主張が無意味に厳しすぎるのではと思う反面、日本の製造業の品質の良さは、細かなところまで気を配っている点にあったのではないかと思うと、日本側の方が少々ルーズで、複雑なところでした。

また、製鉄所建設プロジェクトが、中国側の権力争いの具に利用されたり、純粋な経済活動であるはずの話が、政治に翻弄される当たりも、中国らしいなぁと思うところでした。

本作、文化大革命の嵐から、日中の文化や考え方の違い、中国内の権力闘争まで幅広いテーマが綿密に描かれており、日本と中国の関係を知る上でも非常に面白い作品でした。




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【『大地の子』より】
一体、あの日本人たちの精神構造は、どのように成りたっているのだろうか。曾て武力を以て中国大陸を侵略し、無辜の人民まで殺戮しておきながら、国交回復では、『遺憾』という曖昧な表現で、過去の罪業を詫びたのみであった。

(書き出し)
北京の空は、紺青に澄みわたり、秋の陽が眩く地面を照しつけている。

(結び)
一心は、父の胸中を察しつつも、固く口を閉ざした。船は、滔々たる長江を下って行った。
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kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
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★★★★☆:良い作品!
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