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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:学術】 奇跡の生還へ導く人―極限状態の「サードマン現象」

【評価】★★★☆☆

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著者:ジョン・ガイガー
訳者:伊豆原弓
出版:新潮社


冬山での遭難した時などに、いるはずのない第三者、力強い存在を身近に感じ、時には、その存在が行先を導いてくれて、九死に一生を得たという体験が、登山家や冒険家の記録などにはよく出てきます。

こういった現象は、「サードマン現象」と呼ばれ、登山家などにはよく知られた話のようです。

私も、このサードマン現象について知ったのは、登山家・山野井さんのヒマラヤ・ギャチュンカンでの遭難、そして生還を描いた、沢木耕太郎さんの作品「凍」を読んでからのことです。

山野井さんが夫婦でヒマラヤを登山し、下山中に遭難、体力や装備が尽きてしまい、二人とも失明状態に陥った中で、山野井さん(夫)が、救助隊が駆けつけ下山への道案内をしてくれているという幻覚を見るという場面があります。
あまりにリアルな幻覚で、山野井さん(夫)は、幻覚が覚めた後、妻に「救助隊の人たちはどこに行ったんだ?」と問いただし、妻は、夫が疲労と寒さで精神状態がおかしくなってしまったんだと思った、ということが書かれています。

本書では、山野井さんの話は出てきはしないものの、様々な登山家の遭難時でのサードマン現象の体験、また、9.11テロで崩れ去った世界貿易センタービルから脱出することが出来た人が遭遇したサードマン現象など、様々な事案でのサードマン現象が紹介され、その原因などが分析されています。

サードマン現象は、かなりリアルな感覚があり、さらに、遭難下にある人々に対し、精神的支えになったり、時には、もっと積極的にアドバイスや援助の手を差し伸べてくれる(と感じる)ため、人によっては、神や天使が自分を助けてくれたのだと信じるようです。
また、一方では、サードマン現象を体験しても、宗教的な何かと結びつけることはせず、心理的・生理的な現象だと、後に振り返って分析する人も多いようです。

ただ、多くの場合、サードマン現象に遭遇した人は、その体験が他の人には理解してもらえないだろうと言うことで、当初は誰にも話さず口をつぐんでいる場合も多く、また、話をしたとしても、その体験を人に触れてもらいたくないと考えるようです。

その理由は、人に話したり触れられたりすることで、神聖な何かを汚してしまうと考える場合や、異常下でのこのような経験が、単に自身が錯乱したり頭がおかしくなったと思われるだけと感じているということのようです。

それだけ、すさまじくリアルである一方、遭難などの異常事態から脱し、平常時になって振り返ると、その体験がいかにも異常であったと思わざる得ないということなのでしょう。

佐野三治さんの救命ボートでの30日ちかい遭難・漂流経験を記録した「たった一人の生還-「たか号」漂流二十七日間の闘い」においても、食料も水も尽き、死がすぐそこまで迫っている極限の状況の時に、突如、ベートーベンの「第九」が響き渡り、天から光が降り注いで、佐野さんが乗っている救命ボートが高さ100mくらいまで空に引き上げられるという経験(幻覚)をしたことが書かれています。
そして、その直後、航行中のタンカーに発見され、無事救助されます。

この体験(幻覚)について、佐野さんは、非常にリアルで幻覚とはとうてい思えず、神が天から救い上げてくれたと感じたようですが、記者会見ではこの体験について話すことはせず、数か月後に書き始めた手記に、ようやく、この体験(幻覚)が記されることとなります。

サードマン現象というのは、遭難など異常な環境下では生じる可能性が高い現象なのでしょうが、一方で、その現象の異常さが、体験した本人にもどう理解して良いのか消化しきれず、それ故、人に話すことが憚られるという点があるのかもしれません。

そして、サードマン現象については、遭難し生還した人から話を聞くことはできるものの、サードマン現象を体験したものの、遭難して帰らなかった人からは聞くことはほぼ無理であるため(一部、そういった人が書き残したメモなどは存在するようです)、サードマン現象とは、遭難時の救いの手のようにも思われますが、実際は、ちょっと違うのかもしれません。

ただし、サードマン現象によって遭難から無事生還できたという人も多く存在するのは事実であるので、この現象を、神の御業と片付けるのは簡単ですが、原因を人間の内部に求めた場合、極限時で発揮される、人間の持つ測り知れない力の存在を意識させるものではないでしょうか。


【『奇跡の生還へ導く人』より】
 
自分に何が起きたのかはわからないとしながらも、一つ考えられる説明として守護天使をあげている。
信心深い人にとっては、これはサードマン現象に対する最も明白な説明だろう。しかし、ここで印象深いのは、何者かの存在を経験した人の多くは、とりわけ近年の例の場合、それを外部の超自然的な力の介入とは考えておらず、むしろ内部の生理的あるいは心理的機構によって生み出されたものと考えていることだ。彼らにとって、それは宗教的体験でも何でもないのである。
 
(書き出し)
ニューヨークの世界貿易センター南棟八十四階にある金融会社、ユーロ・ブローカーズでロン・ディフランチェスコが自分の席にいたとき、向かいの北棟に飛行機が衝突した。
 
(結び)
サードマンは希望の媒介者である。その希望は、人間の性質の根本にある認識によって―すなわち、私たちは一人ではないという信念と理解によって達成されるのである。
 




【その他のレビューブログ】
本を読んだ人の中には、日常の中でサードマン現象のような体験をしたことのある人もいるようで、本書でも書かれていたように、サードマン現象は、雪山での遭難など、特殊な環境下でなくとも体験することはあるようです。
実際、どんな感覚なのだろう、サードマン現象。体験してみたいような、したくないような。

まずは読め。話はそれからだ。
http://skywriterbook.blog68.fc2.com/blog-entry-1448.html

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