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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史】 荒蝦夷

【評価】★★★★☆

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著者:熊谷達也
出版:集英社文庫


780年、奈良時代に、東北地方(蝦夷)において発生した宝亀の乱(伊治呰麻呂の乱)を題材にした作品。

伊治呰麻呂(これはるのあざまろ)を主人公としていますが、この辺りの話は、学校で習うことはまずなく、奈良時代における蝦夷の話は、坂上田村麻呂が征夷大将軍に任命され蝦夷征伐を行うくらい(この蝦夷征伐は奈良時代ではなく平安時代初期の話ですが)なので、本書で取り上げられた部分は、非常に新鮮に感じられました。

780年の伊治呰麻呂の乱が起こるまでのことが書かれており、呰麻呂が主人公ではありますが、後に蝦夷征伐を行う坂上田村麻呂や、その蝦夷征伐で坂上田村麻呂に敵対した阿弖流為(アテルイ)なども登場してくるので、興味を惹きつけながら読み進めることができました。

主人公・呰麻呂のキャラクター設定は、蝦夷の民の人望を集め、直観力に優れた戦術家・策略家である一方、粗暴で粗野、血と暴力で味方も敵も支配するという人物像となっています。
この人物像は、ローマの英雄カエサル(ジュリアス・シーザー)が、フランスのガリア地方の征服を行った際、カエサルに抵抗した英雄、ガリア王ウェルキンゲトリクスを彷彿とさせました。

ウェルキンゲトリクスを題材にした小説では、以前、私も拝読した佐藤賢一氏の「カエサルを撃て」がありますが、奇しくも、本書の解説は佐藤賢一氏が記していました。

呰麻呂とウェルキンゲトリクス、支配を強める中央政府に対し、地方・民族の独立のために叛旗を翻したというところや、中央から蛮族として蔑まれて差別的な扱いを受けていたなど、共通点も多く、それが故に、キャラクター設定も非常に似たものになったのかもしれません。

呰麻呂やウェルキンゲトリクスが行った血と暴力による支配は、読んでいて肌寒いものを感じますが、その支配やカリスマ性を熱狂的に支持する人々が多いというのは、そこまでの暴力性がなければ、現状の酷い抑圧を打ち壊すことができないという期待感や鬱屈した不満の裏返しという感じがします。

本書で呰麻呂が支持された背景には、中央政府による蝦夷への苛烈な弾圧があったと言えるのかもしれません。
そして、呰麻呂を軸に、他の蝦夷の部族たちの駆け引き・陰謀、勢力争いが描かれ、中央政府に対し、必ずしも一丸になることができない蝦夷を、呰麻呂が血と暴力、そして策略で次々と屈服させ、ついには、中央政府へ叛旗を翻す・・・こんな展開です。

この辺りの策略・謀略の駆け引きも、本書の読みどころでした。

なお、伊治呰麻呂の乱から、20年後、蝦夷のリーダーとして中央政府を苦しめた阿弖流為(アテルイ)は、本書では呰麻呂の息子という設定になっており、呰麻呂の血と暴力による支配ではなく、蝦夷の人々を温情と信頼によりまとめ上げていくべきだと考える正反対の思想を持っています。

そして、呰麻呂が叛旗を翻した直後、呰麻呂を暗殺し、阿弖流為(アテルイ)が反乱軍の実権を握るというところで、本書は終了。
これは、ぜひ、その後の阿弖流為(アテルイ)の活躍を読みたいと思ったところですが、実は、この著者、阿弖流為(アテルイ)を主人公とした作品「まほろばの疾風」という本も書いているそうです。

呰麻呂と阿弖流為(アテルイ)の関係は、本書とは異なっていて、本書と「まほろばの疾風」が必ずしも正編と続編の関係にはないようですが、それでも、阿弖流為(アテルイ)がどのような活躍をしたのかは、非常に気になるところ。
「まほろばの疾風」を見かけたら、ぜひ、読んでみたいものです。


【『荒蝦夷』より】
 
が、配下の斥候や間者たちに常々言い聞かせているように、耳によい話ばかり集めても、糞の役にも立たない。悪い報せこそが、本当に価値のある情報であることを、長年の経験から虎麻呂は知っていた。
 
(書き出し)
その年、陸奥国の北辺には不穏な火種がくすぶっていた。
 
(結び)
そう心を決めた虎麻呂の耳には、さんざ聞き慣れた呰麻呂の哄笑が、激しく打ち鳴らされる鐘のごとく轟いていた。
 




【その他のレビューブログ】
「主人公が分かりづらい個人的好き嫌いと、読み方がわかんねーというイラつきから、イマイチな印象を受けてしまった。」という感想があったが、確かに、読み方はルビが毎回ないと、分からないなぁという点は同感。主人公の呰麻呂ですら、毎度、うーん、なんだっけ、えーと・・・あざまろか!、となりながら読みました。

傲岸不遜男天野才蔵の読書感想文「私は本を買って読む」+世界一周旅行などの旅日記
http://www.amanosaizo.com/amen/2013/02/post-736d-1.html

まつの“俺ならこう書く”改め“たまにはこう書く”更に改め“もう書いていません”
http://blog.goo.ne.jp/hon-ya/e/79e4a389b6eb2c68f10f85d2b4a6673a

たまには跳ばずに観るFOOTBALL
http://ameblo.jp/makenaiyo/entry-10513115565.html

畝源 The ブログ
http://unegen.exblog.jp/2318815/

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http://nsu.txt-nifty.com/wrightsville/2008/08/post-313b.html

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[ 2016/09/29 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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