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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:企業小説】 メリーゴーランド

【評価】★★★☆☆

merry_goland.jpg
著者:萩原浩
出版:新潮文庫


市役所の職員が、市が出資するテーマパークの建て直しを図るという話。

現実は、この話のようにトントン拍子にはいかないだろうし、コスト面など考えが甘い面なども多々目立ちますが、やる気のない市職員やテーマパーク運営会社の役員面々に苦労させながら、色々な人を巻き込んで進んで行く展開は、面白いものがあります。

主人公は、市が出資するテーマパーク「アテネ村」を再建するための部署、「アテネ村再建室」に配属になります。
部署の名称についても、「再建」だと後ろ向きすぎるから、「促進」が良いだの、「促進」よりも前に進んでいる感じが出る「推進」が良いだの、形式的なところで紛糾して、室の名称も二転三転。

さすがに、現実の名称問題で、ここまでのバカ騒ぎにはなることはありませんが、名称については、敏感に反応する人も多いようで、福島第一原発の事故の際も、原発の名称に「福島」を外してくれといった議論があったりと、気にかける人は気にかけるわけです。

名前、大事ですが、どこまで気にするかは考えるべき点があるのでしょう。
作品の中の出来事は、大げさに描かれていますが、現実にも傍から見るとばかばかしい議論をしているなぁと思えることはよくあることなので、心しないといけないと思った部分でした。

本作は、4月の人事異動で配属となった主人公が、ゴールデンウィークイベントで、アテネ村の集客を増やす企画を考え、実行することが求められます。
しかし、アテネ村の運営会社の役員(市で影響力を持つ人々ばかり)たちは、「理事長が会長を務める市の伝統踊りのパレードは外せない」とか、「副理事長の奥さんが参加する混合合唱団のコンサートは必須」など、おおよそ、集客効果のないイベントばかりを主張。

結局、主人公は、伝統踊りパレードやコンサートもやりつつ、新規イベントをやることの許可を得ますが、予算が足りず一苦労。
そこで、自身のツテで、ボランティアをかき集めたり、他の地域の閉鎖したテーマパークから無償で資材を貰ってきたりしてイベントを組み立て、大成功を収めます。

実際、こんなに協力してくれるボランティアがいたら、ほんと良いよなぁとか、閉鎖したテーマパークから生きた動物を引き取ってくるのですが、引き取ったはいいが、その後の飼育費用がバカにならないのでは・・・とか、まじめに詰めると突っ込みどころ満載にはなるのですが、まぁ、そこはエンターテイメントということで、目をつぶるべきところなのでしょう。

なお、本作のオチはちょっとほろ苦く、アテネ村の再建に目処をつけた主人公でしたが、市長選挙で、何かと噂の多い現職市長は落選、新進気鋭の革新派の女性市長が新たに就任。

女性市長は、市の改革の一つとして、早速アテネ村廃止をすることを決定。
主人公は、あと2年もあれば、単独黒字が達成できると訴えますが、まったく聞き入れてもらえず、折角、やりがいのある仕事ができると思った矢先、また、ぬるま湯の生活に戻ってしまうというもの。

なお、この女性市長も理想が高いものの、元々は大学教授ということで、地元にいるのは土日だけという生活で、あまり地元のことを知らず、打ち出す政策も現場サイドから見ると、疑問符が付くものも多い感じです。

腐敗した現職市長を打ち破り、正義を標榜して新しく就任した女性市長ですが、正義や正しいことって、意外と難しいのかもしれません。
映画やドラマの中では、正義と悪ははっきり色分けされますが、現実では、一つの行動が一方から見れば正しいし、別の面から見れば間違っているということもあり、全方向から見て正しいものって、そうそう無いのでしょう。

原発問題も、経済面や温暖化問題からの側面から見れば正義であっても、放射線汚染や安全性という面からは悪になるわけです。

本作も、アテネ村を再建することが正義か、廃止することが正義か、実は一概に言えない面もあり主人公の主張も女性市長の主張もうなずける点があります。
そして、ここにそれぞれの動機を考えると、ますます複雑になってきます。

主人公は、「やりがいのある仕事だから」というある種の個人的な動機が多分に含まれているのは否めないところですし、女性市長は、前市長の政策を否定する象徴としてアテネ村廃止を謳っている面があり、理由を見ると、また微妙な点がでてきます。

おそらく、動機、理由を勘案すべきではなく、存続・廃止どちらが市にとって意味があるかを客観的に分析することが必要なのでしょうが、その客観的が難しいところではあります。

本作は、エンターテイメント性が強く、登場人物などもカリカチュアされた感じが強いですが、カリカチュアされた面を除くと、意外と、現実の問題とも突き合わせてしまう面がありました。


【『メリーゴーランド』より】
 
自分の人生を、そこそこいい人生だと思う。最近流行りの言葉で言えば、スローライフ。大きな満足がないかわりに、大きな不満もない。
 




【その他のレビューブログ】
面白いという評価の多い作品。
完全に痛快爽快という展開ではなく、苦味の残る結末も印象に残るようです。

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