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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史】 永遠のゼロ

【評価】★★★★☆

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著者:百田尚樹
出版:講談社文庫


ゼロ戦乗りで、最後は特攻で死んでいった祖父の生涯を知るため、その孫が祖父の戦友や当時を知る人に取材を重ね、祖父の生き様を明らかにするという話です。

本書の主役である祖父-宮部久蔵は、凄腕のパイロットであるものの、当時の軍人には珍しく、妻子のために自分の命を惜しみ、なんとしても生き延びることを信念にゼロ戦乗りとして戦ったという設定です。
そのため、人によっては「卑怯者」と侮蔑する一方、当時の軍国主義下の日本で、皆が心の底で思っている本心を恐れなく主張したということで尊敬を受けるなど、毀誉褒貶相半ばする人物となっています(本書では、序盤こそ卑怯者の批判の話から始まりますが、トータルとしては、立派な人間という評価に傾く流れになっています)。

なお、本書の宮部久蔵自体は架空の人物ですが、久蔵の孫が関係者から取材し、関係者が話をするゼロ戦にまつわるエピソードは、太平洋戦争当時の歴史などを少し齧ったり読んだことがある人はすぐ気付くと思いますが、実話です。

つまりは、架空の人物・宮部久蔵と、実際の実話を上手く融合して作られた作品であり、更に言えば、実話の比重が非常に高い、ノンフィクションに近い作品と言えます。

そのため、本書に限らずなのですが、ゼロ戦や特攻にまつわるエピソードを読んでいると、どうしても、胸にグッと込み上げてくるものがあります。
まさに、実話の力を上手く活用した作品と言えそうです。
読んでいて、どうしても胸が熱くなってしまうエピソードが多々ありました。

他方、フィクション部分や著者の主義主張だろうと思われる話が盛り込まれている部分については、実話の圧倒的に迫ってくる部分と比較すると、どうしても浮き上がってしまうところがあり、多少、苦笑せざる得ない感もありました。

著者は、最近注目される言動から、マスコミに対する強い不信感を抱いているんだろうと思われますが、本書でも、戦中・戦後のマスコミの在り方について、登場人物の言葉を借りて強く批判するシーンが出てきます。
マスコミ批判については、分からなくはないですが、話の流れとあまり関係なく強引にそういう場面を設定(孫が祖父の戦友にインタビューをしようとしたところ、知り合いの新聞記者も同席させて欲しいと言う流れになり、そこで、戦友と新聞記者の間で口論が勃発するという流れ)した感じがあり、かなり話の腰を折る展開だったと思います。

物を書く人は、自分の主義主張を伝えたいという思いがあるのでしょうが、一方で、それが目的の本であるなら構わないのですが、目的が異なる本に、無理やり主張を入れ込むというのは、興ざめになってしまいます。
本を書くのであれば、自分の主義主張を声高に述べたいという欲望を自制できるかどうかが、良い本になるかどうかの違い、そんな気がします。

その点では、本書は、実話の部分が大いに力を発揮しています。
私も、結構、ゼロ戦の話や太平洋戦争の話は結構読んでいる方だと思ったのですが、本書で初めて知る話もかなりあり、その点、非常に良かったと思います。

敗戦間近では、特攻機の戦果確認をするための飛行機が付かないようになったため、戦果報告は、特攻機自らが打電して行っていたなんていう話は、非常に胸の詰まるエピソードでした。

標的となる敵母艦を発見したら、モールス信号で「ツツ」と打電、そして、母艦に特攻をかけると、そのまま打電を「ツー」と押しっぱなしにする。
受電を受けた通信兵は、「ツー」という打電の長さで、特攻が成功したか否かを判断する。
すなわち、「ツー」という打電が短く途絶えてしまえば、途中で対空砲火に撃ち落されたのだろうと判断、逆に、途絶えるまでの「ツー」という打電が長ければ、特攻に成功したのだろうと判断するわけです。

こういう無茶苦茶なエピソードが、太平洋戦争時にはワンサカと出てくるわけですから、もはや当時の日本軍上層部の気狂いぶりには言葉も出なくなります。
本書も、戦時中のこういったエピソードがたくさん盛り込まれていますが、小説であれノンフィクションであれ、どういった形でも構わないので、記憶から失われないようにすることが大切だと感じました。

なお、本書の主人公である宮部久蔵と、その妻のエピソードには驚きの結末が用意されています。
・・・が、あまりにフィクションすぎる展開なので、正直、どうなのという印象。

宮部久蔵は、特攻を命じられた時、自分の割り当てられた飛行機のエンジンに不調があることに気づきます。
このまま飛び立てば、エンジン不調で引き返してくることになり、すなわち、特攻せずに生き残れる可能性が高いわけです。

しかし、久蔵は、かつて自分の窮地を救ってくれた教え子と飛行機を交代し、自らは死に、その教え子は、久蔵のおかげで命が助かります。
そして、後日、そのことを知った教え子は、久蔵の妻子を探し出し保護し、後に結婚することになります。

久蔵の妻と再婚した男性は、久蔵の孫の義理の(?)祖父であるわけですが、本書序盤で重要なキャラクターとして設定されているだけに、ラストは、結構などんでん返しとなっているわけです。

ただ、実話部分の重厚な内容と比べると、奇をてらい過ぎた展開という感じで、なんだか蛇足な設定だなという印象。
この点が、残念なところでした。

そういった気になる点も色々と目に付く作品ではありますが、ゼロ戦の歴史などを知るには分かりやすく、胸を打つ内容なので、入門書として好書ではないかと思います。


【『永遠のゼロ』より】
 
俺は声の限り叫んだ。ただもう訳もわからず叫んでいた。日本など負けろ!帝国海軍は滅べ!軍隊など消えてなくなれ!そして軍人はすべて死ね!
 




【その他のレビューブログ】
浅田次郎著「壬生義士伝」とテーマや構成が似ているという指摘がありましたが、指摘を受けてみると、確かにそうだなぁと思います。
「壬生義士伝」は私も読んだことがありますが、おそらく、両書とも主人公が、「命を惜しむ・家族優先」という主義であっても、「壬生義士伝」の主人公の器量が小物の器であるのに対し、本書の宮部久蔵は大人物的な器という違いが、雰囲気を異にさせる部分があったのかなと気がします。

琥珀色の戯言
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20100721

日本福祉大学
http://www.n-fukushi.ac.jp/50th/essay/2014/the_fourth_field/saiyusyusyo.html

happyi_hukuroo( ̄0 ̄)/
http://blog.goo.ne.jp/chiirurun358/e/a554a35829c1ec71a170bff58c2f37f5

moon piece P-diary
http://moonpiec.jugem.jp/?eid=996

kazukazu721’ interest
http://ameblo.jp/kazukazu721/entry-11746326405.html

アマゾン カスタマーレビュー
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/406276413X/ref=cm_cr_dp_see_all_summary/376-2693467-9188322?ie=UTF8&showViewpoints=1&sortBy=helpful

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[ 2016/03/19 00:05 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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