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読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:ルポ】 警察庁長官を撃った男

【評価】★★★★☆

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著者:鹿島圭介
出版:新潮文庫


オウムでのサリンテロが起きるのと同時に、国松警察庁長官が銃撃されるという事件があり、オウムによる一連のテロということで、大騒ぎになってことを覚えています。
サリンテロをきっかけに、国家を挙げてのオウム真理教への捜査のメスが入ったため、警察庁長官の銃撃事件も、すぐに犯人が捕まるかと思いきや、事件解明ができずに時効を迎えたのも、驚きを持って記憶しています。

その後、警察が、事件解明はできなかったものの、オウム真理教により引き起こされた可能性が大であるとの報告書を発表し物議を醸したことも記憶にあり、当時、「なんだか、警察は法律とか関係なく無茶なことするな」と思ったものです。

そんな経緯を辿った事件ですから、本書も、事件の犯人と目されたオウム真理教徒に焦点を当て、捜査の過程や、起訴にまでたどり着けなかった理由などが書かれた本かなと思い、それなら、あまり面白味もなさそうかもと思いつつも、何とはなしに手にした本でした。

しかし、読んで見たらびっくり、予想をはるかに上回る展開と警察の暗部に切り込んだ内容で、かなりの衝撃でした。

本書の内容は、警察庁長官銃撃事件が、オウム真理教によって引き起こされたものではなく、オウム真理教に責任を擦り付け、警察の捜査がオウム真理教に向かうよう行われた陰謀工作だったというものでした。

オウム真理教は勢力拡大を図るに当たって自作自演で事件を引き起こし、それを「オウム真理教を陥れる陰謀工作だ」などと喧伝していましたが、警察庁長官銃撃事件だけは、まさにその喧伝が正しかったという、なんとも皮肉な話であったわけです。

そして、その陰謀工作を引き起こした人物というのが、なんとも不気味というか、こんな人が日本にまだいるのかと思うような、時代錯誤というか旧日本軍の亡霊じゃないかと思えるような思想と行動の持ち主。

戦後、東京大学に入学するも、共産党の過激活動にのめり込み、武装蜂起のための資金を集めるため窃盗や強盗を行ったことから、東京大学を自主退学。
その後も、中南米のゲリラ活動に参加しようとしたり、国内で武装蜂起の集団を作り上げるため、偽造パスポートや何種類もの偽名を使って、アメリカなどで武器調達に励んだり、挙句の果てには、資金調達のために銀行強盗を繰り返し、更には警察官殺しをして無期懲役に服したという人物。

出所後も、行方知れずとなりますが、地下に潜伏して武装蜂起を夢見て、地下活動をずっと続け、国内の倉庫や貸金庫には、大量の武器・弾薬を保持していたという、いやはや、なんとも不気味というか、理解を超えるというか・・・。

そして、長官銃撃事件を思い立ったのも、オウム真理教の活動に危険を感じ、警察のメスが入るよう誘導するための工作として、警察のトップが暗殺されれば、警察が本気になってオウム真理教を潰すだろうと考えたためとのこと。

その工作活動の背景の思想などは、独善的すぎて、旧日本軍の関東軍を想起させるもので、逆にオウム真理教との親和性の方が高そうな思想です。
そう考えると、この犯人と目される(あくまで本書の見解によればですが)人物が、オウム真理教を潰す方に回るというのも、不思議な感じはします。

なお、警察は公安部と捜査一課がそれぞれ別で、長官銃撃事件の捜査を進め、主力である公安部はオウム真理教の線で調査を、傍流であった捜査一課は、本書にかかれている人物に行き当たり、こちらこそが本ボシ(真犯人)ではないかと確信して、捜査を進めたようです。

本書によれば、オウム真理教犯人説で邁進した警察の威信を保つため、捜査一課の線は潰され、結局、事件は迷宮入りになったとなっています。

本書は、オウム真理教犯行説ではない、一匹狼の過激派犯人説を確信しているため、そちらの説の正しさを主張する内容なので、そのまま、そうなのかと信じてよいかはよく分かりませんが、しかし、本書で主張される内容は、相当の説得力があり、警察庁長官銃撃事件の真相に近づいた本と言われても、違和感のない内容です。
オウム真理教説をなんとなく鵜呑みにしている人(私もその一人でしたが)が、本書を読むと、衝撃を受けること必至です。

しかし、警察庁長官銃撃事件は、このまま迷宮入りで真相は闇の中になるのでしょうか。
ケネディ大統領暗殺事件も、その真相を巡っては、50年以上たった今でも、様々な説が唱えられ、人々の関心を捕えてやみませんが、本事件も同じような扱いになるのでしょうか。
ぜひ、真相が明らかになって欲しいと思う反面、真相が闇の中になるが故に、様々な解釈が生み出され、未来の人々を楽しませる(?)ことの方が面白いのかもしれないなと、不謹慎なことを思ったりもしてしまうのでした。


【『警察庁長官を撃った男』より】
 
私はそもそも長官狙撃事件は発生から数年経た時点で、オウムの犯行ではないのではないかと疑うようになっていました。どうもオウムの匂いがしない。教団の事件にしては、これだけが異質なのです。
たとえば、凶器です。オウムの場合、凶器は基本的にお手製のものです。サリンなどの化学兵器しかり、カラシニコフや銃弾まで自分たちで作ろうとしていた。都庁に送りつけた小包爆弾も自家製でした。このように彼らは『手作り志向』が非常に強い。
どうして長官狙撃事件だけが完成された飛び道具、『コルト・パイソン』なのか。国松長官を殺害したかったのであれば、それこそ小包爆弾でも良かったはずです
 




【その他のレビューブログ】
「いやはや、これはとんでもない作品を読んだ。」という感想がありましたが、まさにその一言に尽きるかも。
最近の警察の不祥事の連続を思うと、警察の隠ぺいやミスもさもありなんと思ってしまうところです。

読書日記
http://nightlander.hatenablog.com/entry/20120727/1343357732

黒夜行
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千々石(ちぢわ)deその日暮らし~長崎県雲仙市千々石町
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たかが一人、されど一人
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[ 2016/02/29 23:38 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)
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