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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史】 胡椒 暴虐の世界史

【評価】★★☆☆☆

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著者:マージョリー・シェファー
訳者:栗原泉
出版:白泉社


15世紀から始まった、ヨーロッパ(後にアメリカも参加)諸国によるアジアの胡椒を巡り繰り広げられた、争奪戦の歴史を描いた本。
当時の資料-日記、航海日誌、出版物などありとあらゆる情報から、胡椒を巡る歴史がどのようであったかを紐解いていきます。

そのため、本書は、どうしても学術寄りの記述になりがちで、人に焦点を当ててはおらず、あくまでも「胡椒」に焦点を当てて描かれるので、胡椒や当時の植民地獲得競争の歴史に思い入れや興味がないと、読んでいても流れてしまい、平坦な印象を受けるかも。

書評を読んで、面白そうと思って手に取ったものの、結局、私も、読んでいて頭に入ってこず、流し読みをしてしまった感があります。
「胡椒」という視点で、植民地獲得競争の歴史を切っていくという独自性のある本で、専門家や関心のある人にとっては、非常に貴重で有用な書だと思います。

胡椒はいまでこそ、一般家庭で普通に手に入れることができるおなじみの調味料であるわけですが、胡椒自体は、熱帯にしか育たないという特性があったため、交通網や流通が発達していない昔は、貴重なスパイスとされ、高値で取引がされていました。

15世紀辺りからヨーロッパでは大航海時代が始まり、冒険家たちが、遠方のアジアの島々や国を巡って、胡椒などのスパイスの取引を行うようになります。
取引される価格の高値には驚きいるばかりです。

5隻の船で出航し、途中、暴風などに遭い4隻が沈没し、1隻しか胡椒を積んで戻ってこなかったにも関わらず、その利益率は2000%。
船が4隻沈没しても、元を取るどころか、莫大な利益を上げられるのですから恐れ言ったところです。

胡椒などのスパイスは、当時は、富裕層しか利用することができない、非常に高価な品だったそうですが、その使い方も現代とはだいぶ感覚が違うなぁという感じ。

今でも、ラーメンに胡椒を山盛り振りかけるなんていう人はいるにはいますが、普通は、料理にパッパッパッと軽く振りかけるというのが胡椒の用途だと思います。
しかし、当時の胡椒の使い方は、現代とはだいぶかけ離れた感覚での使われ方がされていたようです。

胡椒やスパイスでソースを作ったそうですが、使う量は、現在のテーブル胡椒のビン、数百本分の量をドバドバと入れて作ったそう。
中国の四川料理の数十倍の刺激のある料理といった感じだったのでしょうか。
味覚も、時代によってだいぶ違うのかもしれません。

さらに、食事が終わった後は、更に盛った胡椒をみんなに回して、食後のデザートよろしく、胡椒を摘まんで食べたりしていたそうです。
塩を舐めながら日本酒を飲むなんていう話は聞きますが、食後のデザートに胡椒とは・・・。
いやはや、昔の人はよっぽど、胡椒が好きだったんですかね・・・。

こんな感じで、富裕層が大量に胡椒を消費するため、ヨーロッパに胡椒を運んでこられれば、一財産築くことができたわけです。
そこで、オランダ、イギリス、スペイン、フランスなどの各国は、争ってアジアに船を出し、胡椒を手に入れようとしました。

この競争がその後の、ヨーロッパ諸国の植民地主義へ発展していきます。

お互いの国が、胡椒を独占しようと、他国が介入できないように、胡椒の産地に基地を築いて軍隊を駐留させるようになります。
胡椒をヨーロッパ-アジア間を運ぶだけであれば、船や船員を失うなどのリスクはあっても、法外な経費はかからないわけです。
しかし、胡椒を独占するために、基地を築いて軍隊を駐留させるとなると、その経費は膨大となり、その経費を賄うために、胡椒の産地で、現地の人々を軍隊で支配し、胡椒農園を築かせ搾取するという構図が生まれることとなります。

このような流れで、大航海時代から始まった貿易の拡大が植民地主義へと変貌していったわけです。
「全て独占して自分だけのものにしよう」という発想が、植民地主義へとつながったわけで、それぞれの国が貿易の利益を分け合うということが出来ていれば、植民地競争などといった負の歴史が生まれなかったのかもしれません。
人の欲望がなせる負の遺産というわけで、欲望をきちんとコントロールすることが、人類の永遠の課題と感じます。

そして、胡椒を巡る歴史で欠かせないのが、かの有名な「東インド会社」。
「東インド会社」は、最初にオランダで作られ、アジア貿易-胡椒を含めるスパイスの取引の独占権を握りました。
その後、イギリスも同様の仕組みを導入し、イギリス東インド会社も設立され、オランダ東インド会社と、イギリス東インド会社が熾烈な競争を演じることになります。

この2社の争いの過熱化が、アジアにも不幸をもたらすことになりますが、最終的に、交易の独占権を握った両社も莫大な負債を抱えて倒産する結果となります。

倒産の理由はいくつもあり、先に述べた産地に軍隊を駐留させるなど、過度なコストがかかる構図となってしまったことなどもありますが、理由の一つに社員による不正行為の横行があったとのこと。

胡椒の取引は、ヨーロッパ本国から遠く離れた場所で行われるため、入手した胡椒を船員が横流ししたり、私物化したりして会社の利益をかすめ取ることが横行し、それが会社に大きな負担を与えたということが、本書では書かれています。

今風でいうと、会社のガバナンスがなっていなかったということになるのでしょう。
会社も利益を優先するあまり、航海の途中で死ぬ確率も非常に高く、リスクの多い仕事であるにも関わらず、船員を安い賃金で集め、それこそ、囚人を使ったなんていうこともあったようです。

暴利を得ようとして無茶苦茶なことをして、結局、それが回りに回って、自分に跳ね返ってきたという感じがなきにしもあらずです。
結局、東インド会社も自らの欲望で身を亡ぼしたと言えるのかもしれません。

胡椒の歴史を見ると、人の欲望の際限のなさと、過剰な欲望が世界を破壊する様子がよく分かります。
現代社会においても、人の欲望は形を変え、時には上手く糊塗されて分かりづらくなってはいるわけですが、欲望を見極め、きちんとコントロールすべきという教訓を、しっかりと踏まえなければならないでしょう。


【『胡椒 暴虐の歴史』より】
 
中世の人びとは腐りかけた肉のにおいを隠すため、あるいは肉の防腐剤として胡椒を求めたとよく言われるが、そうではない。さまざまな香辛料を使ったのは主に富裕層だが、金持ちはいつでも新鮮な肉を手に入れることができた。
 




【その他のレビューブログ】
「世界史をコショウで斬ったら血みどろだった。」という感想がありましたが、胡椒を巡る欲望に際限のなさを感じました。

琥珀色の戯言
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わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
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[ 2016/02/09 21:31 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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