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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:社会小説】 破戒

【評価】★★★★☆

hakai_shimazaki.jpg
著者:島崎藤村
出版:岩波文庫


「ルポ 現代の被差別部落」に島崎藤村の「破戒」が何度か言及されていたので、好奇心からの読書です。

島崎藤村・・・学校の授業で名前くらいは習った印象がありますが、どうにも印象が薄くて・・・えーっと、俳人だっけ??とか、誤解と錯誤による記憶しか残っておらず、島崎藤村の代表作に「破戒」という作品があると言われても、「うーん、確か、そうだったかな・・?」というくらいの印象です。

学校の授業で習った知識というのは、なかなか実体験と結びついて得たものではないので、どうしても他人事な上っ面の知識になりがちなのかもしれません。
やはり、ここは、きちんとその作品を読むことで、自分の本物の知識とすることが大事だよななどと、一しきり反省しながら、本書を手にとりました。

本書は、被差別民である穢多(えた)出身の丑松を主人公に描いた明治時代の作品。
穢多出身であることを隠し、そのことを悩みながら、小学校教員を勤める丑松ですが、穢多出身であることを公にして活動する思想家、猪子蓮太郎との交流を深めることで、ついには、自身の出自を告白し、それにより、地域社会から排除され、アメリカ・テキサスに新天地を求め旅立っていくという話です。

本書は、被差別部落民の苦悩を描いた作品ではありますが、「ルポ 現代被差別部落」では、一定の評価はしつつも、被差別部落からは批判が多い作品であるとの指摘がありました。
被差別者としての苦悩を描いた先駆的な作品であるにも関わらず、なんで批判を受けているのかと不思議に思いましたが、読んで見て理解しました。

この本が書かれた当時(明治時代)は、今とは比べ物にならないほど、差別がひどく、穢多出身であると分かれば、教員の身分を追い出されるのは当たり前に行われ、住む場所や仕事なども、社会的圧力により相当制限されていました。
そのため、本書の主人公丑松は、穢多出身の身分を隠しつづけていたわけです。

しかし、最後は、周囲の事情や丑松の心境の変化など色々要因はありますが、周囲に穢多出身であることを告白するという展開となります。
この告白の際、丑松は、穢多出身であることを隠していたことを土下座して謝罪しています。

現在から見ると、自分の出自を人に明かそうが明かすまいが、それは本人の自由で、隠していたとか、そういう話ではないよなぁと思うわけです。
そのため、「穢多出身であることを隠していた」ということを、謝罪する必要性はまったくなく、謝罪する場面があるが故に、穢多出身であることが悪いことのように見えてしまいます。
作品が書かれた時代背景があるのでしょうが、やはり、強烈な違和感を感じる場面で、被差別部落の人々が批判する理由も理解できます。

現在の日本では、「出身地を隠していたので謝罪」なんていうことは起こりえないと思いますが、もし、現在の日本で似たような構図が起こり得るとすれば、重大な犯罪を犯した身内(親、兄弟)を持つ人に対する対応が近いように感じます。

最近の例では、オウム真理教の教祖・麻原彰晃の子供たちが学校の入学拒否にあったという話がありましたが、これなんかは、出自による強烈な差別と言えますが、差別をする側は必要な措置であったという認識だったりするわけです。

今では、部落差別は愚かしいという認識の人が大多数なのだと思いますが、ちょっと様相が変わると、同じ構図でも、差別する側に回ってしまうというのは、人間の難しいところです。

本書を読んで、あまりに強烈な差別意識に、明治時代が前近代的な社会であるような印象さえ持ちますが、「昔の人は愚昧だった」なんて他人事のように思っていると、案外、自分も同じことを行っていたなんてことになりかねないなと、笑ってはいられない話だと感じたのでした。


【『破戒』より】
 
自分はそれを隠蔽そう隠蔽そうとして、持って生まれた自然の性質を銷磨していたのだ。そのために一時も自分を忘れることが出来なかったのだ。
 





【その他のレビューブログ】
「藤村が用意した結末は、丑松の苦悩に付き合ってきてほっとすると同時に、根本的な差別の問題に解答を出していないようなもどかしさが残ります」というコメントがありましたが、結末の部分に差別問題に対する意識へのもやっと感を感じる人が多いようです。

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文学どうでしょう
http://ameblo.jp/classical-literature/entry-11031431126.html

こだわりのつっこみ
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ほぼまっすぐ読み 感想文綴り
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福森亮太のブログ
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アマゾン カスタマーレビュー
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