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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史】 航海者 -三浦按針の生涯

【評価】★★★★☆

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著者:白石一郎
出版:文春文庫


「戦鬼たちの海 -織田水軍の将・九鬼嘉隆」の感想を書いた際、コメントで紹介していただいた本。
私の読みたい本リストには書き込んであったのですが、なかなか入手の機会に恵まれず、最近、図書館も利用するようになって、今回、図書館で借りることができた次第。

三浦按針(ウィリアム・アダムス)は、イギリス出身の航海者で、江戸時代初期に、オランダ船の航海士として登用貿易を目指して出航しますが、3年にも渡る長く厳しい航海の末、日本の平戸に漂着。
その後、家康の厚遇を得て、家康直属の旗本として取り立てられ、浦賀付近に領地を貰い、イギリス本国への帰還を目指すも果たせず、日本で病没するという、相当異色の人生を送った人物です。

白石一郎さんの海洋小説は、やはり読みごたえがあります。
本書、上下2巻という大ボリュームですが、上巻の序盤は、ヨーロッパから東洋を目指して航海をする様子が描かれます。

激しい嵐や立ち寄った島々の原住民との戦い、氷山に閉じ込められ、5隻の船はちりぢりになり、辛うじてウィリアム・アダムスの乗る船1隻だけが日本にたどり着くわけですが、その航海の激しさは、想像を絶するものがあります。

このヨーロッパから東洋までの航海の模様だけで1冊の本が書けるのではという感じがします。

アダムスたちは、ぼろぼろの状態で、わずかの生き残りだけで、日本の平戸に漂着します。
そして、時の権力者徳川家康に面会するため、平戸(九州ですね)から江戸まで、アダムスたちの乗ってきた西洋帆船リーデフ号を廻航させることになりますが、3年に渡る激しい航海でリーデフ号はぼろぼろ、いくら修理を施してもリーデフ号の寿命が尽きているのは明らかな状態。

そのような中、だましだまし航行しながら、江戸までリーデフ号を廻航させますが、途中で、日本の船大工からは、「この船の寿命は尽きている。船の泣いている声が聞こえないか。静かに眠らせてくれと言っている」と言われるシーンは、漫画「ワンピース」のゴーイングメリー号の自沈場面を彷彿とさせ、本作でも非常に印象的でした。

リーデフ号は、徳川家康の知遇を得たアダムスが、家康の命で、新たに西洋帆船を作る際に解体される運命にありますが、リーデフ号が、新しい船に命を受け継がれるという点も、「ワンピース」と重なる部分があるなぁと思いました。

航海者の魂や精神は、古今東西、共通するものがあるのかもしれません。

家康と面会し、家康の知遇を得たアダムスは、家康の旗本に取り立てられ、領地を貰い、武士となります。
そして、家康の命により、新たに西洋帆船を一から作ることになります。

本書で描かれている家康は、西洋貿易に強い関心を持ち、好奇心旺盛で開明的な思想の持ち主として描かれています。

司馬遼太郎氏の「覇王の家」で描かれる徳川家康は、非常に保守的で独創的な精神は持ち合わせず、先人や同時代の先駆者の模倣をし続ける人物として描かれていて、本作の家康とは対照的な点も、面白いところでした。

徳川政権は、長い鎖国政策を続け、徹底的なキリシタン弾圧を行った印象が強いので、家康についても保守的なイメージが強かったのですが、本書の家康の開明的な姿勢は、そういったイメージを覆す点でも印象に残るものでした。

さて、アダムスは、家康の命で西洋帆船の建造を一から取り掛かるわけですが、航海者であって船大工ではないアダムスにとって、この命令はかなり至難の業。
しかし、リーデフ号で漂着した他の乗組員や、日本の大工たちの協力を得て、試行錯誤の末、西洋帆船の製造に成功。

当時の西洋の船乗りの知識の豊富さや、日本の製造技術のレベルの高さ、それらを統率して見事に船を作り上げたアダムスの手腕など、西洋帆船建造のエピソードは、本書の読みどころの一つとなっています。

もし、これが現在だったら、そう簡単には船なんか作ることはできないよなぁと思うと、昔の人の能力のオールマイティーさには驚きと言うか、目を見張るものがあります。

その後、母国であるイギリスの貿易船も日本に到着し、母国へ帰国するチャンスも訪れますが、大した財産も築かずに母国に戻っても仕方ないと考え、自ら、中国のジャンク船を購入し、日本とアジア諸国の貿易に精を出すも、マラリアに罹り、母国に帰ることなく日本で病没するという運命を辿ります。

領地を貰った後も、交易で一財産築こうなんて考え、自ら船を乗り出して交易を行う辺り、三浦按針ことウィリアム・スミスは、根っからの航海者だったと言えそうです。
根っからの航海者でリスクを恐れない勇敢な冒険精神があるからこそ、このような数奇な運命に巡り合ったことを思うと、この偉大な冒険心には、尊敬とあこがれを抱かざるえません。

また、この当時、かなり驚いたことは、ウィリアム・アダムスの日本漂着の情報は、母国イギリスに伝わることなどないだろうと思ったのですが、実際には、他の国(スペイン・ポルトガル)の交易船など、様々なルートを辿りながら、1年くらい後には、イギリス本国にもきっちり情報が伝わっていたという点。

ウィリアム・アダムスのような勇敢な冒険者・航海者が多く活躍していたという当時の情勢が、予想外に素早い情報伝達のネットワークを築き上げていたのだと思いますが、それにしても、驚くべき情報伝達の速さです。

情報伝達の速度・広がりは、人間の活動量に比例するのかもしれません。
そう考えると、当時のヨーロッパ諸国の海洋航海の活動というのは、すさまじい勢いがあったということでしょう。

今では、情報の流通はインターネットを通して、それこそ、椅子に座ったまま多くの情報を得られる環境にありますが、ウィリアム・アダムスの生きた時代では、情報を伝えるのも人間であり、まさに情報を伝えることすら、命がけのことだったわけです。

それを思うと、椅子に座りっきりではなく、少しは外に-海の外に出ていく気概を持たないといけないなぁと反省することしきりなのでした。


【『航海者-三浦按針の生涯』より】
 
航海者は航海することが必要だ。生きることは必要ではない。
 




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「この小説読んで、どうして映画化しないのだろうかと思った。それほど面白く劇的なのだ。」というコメントもあるとおり、波瀾万丈としかいいようのない人生を送る人がいるものです。
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[ 2015/08/15 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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