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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:ルポ】 戦場カメラマン

【評価】★★★★★

war_cameraman.jpg
著者:石川文洋
出版:朝日新聞社


お気に入りの本の一冊。数少ない手元に残している本の一冊です。

カメラマンの著者が、20代のフリーカメラマン時代に、世界一周旅行をしようと思って、故郷の沖縄から、香港に渡り、現地でカメラマンとして旅行資金を稼ぐ中で、ベトナムに渡り戦争写真を撮るようになっていったという話から始まります。
そして、戦場カメラマンとしてベトナムにどっぷりと浸かるようになり、ベトナム戦争終結、その後のベトナムの復興や周辺国との紛争など、20年近い歳月をカメラマンの目線で見た経験を書き綴っています。

特に、フリーカメラマン時代の、ベトナム戦争における米軍への従軍体験記は圧巻。
ベトナム戦争の写真を撮り、撮ったネガを新聞社や報道機関に、言葉とおり切り売りしながらお金を稼ぎ、そのお金を使って、ベトナムに戻って写真を撮る-すさまじい体験です。

米軍や南ベトナム軍への従軍体験は、非常に生々しいです。
米軍のヘリに搭乗し、戦地に兵士と一緒にヘリから飛び降り、戦場での写真を撮影する。
ベトナム戦争では、米軍の敵対勢力、解放戦線の力が強く、米軍の作戦情報は筒抜けになっていて、ヘリから兵士が飛び降りると、解放戦線軍がその地点に待ち伏せしていて、十字砲火を浴び、米軍兵士に死傷者が出るなんてことも日常茶飯事。

実際、著者が従軍中に知り合った、沖縄出身のドウイケ二等兵は、ヘリによる降下作戦を実行中に、解放戦線軍の待ち伏せ攻撃に遭い、戦死してしまいます。
著者は、戦死の情報を、沖縄にいるドウイケ二等兵の祖母に伝えにいくくだりは、胸が詰まる場面でした。

また、解放戦線軍による奇襲攻撃を防ぐため、南ベトナム軍兵士が、夜、基地の外の藪に隠れて、忍び寄ってくる解放戦線軍の兵士を倒す(音がしないよう、ナイフや針金などで殺す!)という、「アンブッシュ」という作戦にも、著者は同行しています。
作戦の性質上、写真は撮れないのですが(写真なんか撮っていたら、敵兵士に見つかり、殺されてしまいますから)、戦争を実感するためというだけの理由で、危険な作戦にも同行する-戦場カメラマンというのは、無茶承知の危険を顧みない人でないと務まらないなぁと思わされます。

その他、従軍中に見た、様々な戦争での残酷な場面-南ベトナム軍兵士による農民を虐待する場面や、戦闘により村を破壊する場面など、赤裸々に体験したことが書かれていて、戦争の悲惨さを感じさせます。

ishikawa1.jpg
<衝撃的な写真もかなり掲載されています。>

また、ベトナム戦争における米軍の行動や考え方にも興味深いものがありました。
米軍は、敵として相手を攻撃するときには、全く容赦なく、火炎放射器で村を焼き払い、銃で一斉掃射を行い、徹底的な攻撃を行うのですが、戦闘が終わると、負傷した兵士や巻き添えになった住民に対して、非常に手厚い保護の手を差し延べることが多いとのこと。

著者の沖縄にいる沖縄戦の経験者のおばあさんが、「米軍は、沖縄に上陸してきたときには、容赦なく火炎放射器で焼き払い、住民だろうと兵士だろうと構わず、一斉掃射をしてくるので、なんてひどい人間だろうと思ったが、その後、収容所では、非常に良くしてくれて、本当に、あのひどい人たちと同じ人間なんだろうかと思ったものだ」と語っているエピソードも出てきます。

石田衣良「波の上の魔術師」で、欧米人について、「彼らは目のまえに弱者がいれば、当然のように手を差しのべる。優しい心を見せるのが好きで、慈善活動も寄付もするだろう。だが、目に見えない相手には、いくらでも残酷になることができる。一枚の書類にサインをするだけで、地球の裏側にある工場を一度に二十も閉鎖させる。洪水のように途上国に投資を続け、ある日突然、一斉に資金を引きあげる。富に関してはどこまでも貪欲になれるし、その貪欲さが重要な徳目のひとつに数えられている。」と述べているくだりがあります。

欧米人というのは、底なしの残酷さと弱者に対する無条件の善意というものが、コインの裏表のようにくっついているのだろうか・・・こういった性質は、この「戦場カメラマン」だけでなく、他(石田衣良の小説など)でも指摘があるので、そういった認識は広く持たれているのかもしれません。

それから、米軍について、非常に感心した点は、ジャーナリストへのオープンさ。
ジャーナリストが、「虐殺が起きたという××の場所へ行きたい」と希望を出せば、必ずそこに連れて行ってくれて、取材を拒否するようなこともないし、米軍のほとんどの作戦に従軍させてくれるなど、当時の米軍は、マスコミに関して相当オープンであったようです。

フリーカメラマンの立場で従軍していた著者が、米軍のオープンな態度に感心しているくらいですから、本当にそうだったのでしょう。
内政干渉としか言いようのないベトナム戦争を強行する一方で、戦争に関する情報をオープンにするという民主的な姿勢-相反する面が同居するという不思議さが、ここでも見られた気がします。

本書は、かなりのボリュームで、ベトナム戦争従軍記は、本書の4分の1程度を占めています。その後も、サイゴン陥落や、ベトナム周辺で起きた紛争-カンボジアでのポルポト派による住民虐殺など、興味深い内容が記述されていますが、それらの取材は、朝日新聞社の所属カメラマンという立場で取材をしていたようです。

そのためかは分かりませんが、フリーカメラマン時代のような無茶な感じは薄れている感じで、やはり、最初のフリーカメラマン時代の活動が一番、エキサイティングな内容に感じられました。

そして、本書の最後に、戦場カメラマンとして活躍しつつも、戦場で命を落とした何名かのカメラマン(著者と交流のあった人々)のエピソードが書かれています。
ピューリッツァー賞を受賞し、その後カンボジアで命を落とした沢田教一さん、映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」で話題になった一ノ瀬泰造さんなどのエピソードがあり、こちらも読み応えのある内容です。

sawada_photo.jpg
<沢田教一さんは、この「安全への逃避」でピューリッツァー賞を受賞>

しかし、この本を読んで思ったことは、本当に、著者が命を落とさず、戦場から戻ってこれたのは、幸運なんだなということです。
戦争は、私にとっては、歴史の一こまでしかありませんが、戦争と平和について、考えるきっかけとなる、貴重な一冊です。
読み終わって、本の裏表紙を見たら、「1994/12」と書いてありました。
初読は、1994年だったかぁ・・。何度読んでも、心に響く本でした。


【他のレビューブログ】
古い本なので、あまりレビューブログは見つからず。
「(石川文洋さんは)戦場カメラマンのイメージにぴったり」というコメントをしているレビューもありますが、禿同!

自転車で物語散歩
http://dagashiboy.blogspot.jp/2011/10/3_29.html

CHOKOBALLCAFE-本や映画の感想♪
http://takuteku.blog.so-net.ne.jp/2006-06-21-2

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[ 2012/08/02 23:35 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)
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