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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史】 楽毅(全4巻)

【評価】★★★★★

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著者:宮城谷昌光
出版:新潮文庫


中学生・高校生くらいの頃は、「三国志」にはまっていて、色々な人の書いた三国志を読んだりしましたが、管仲、楽毅は、諸葛孔明が、その2人を天才軍師、不世出の軍略家・宰相であると評価して、孔明自身も、自分のことを管仲、楽毅になぞらえるというくだりが、結構出てきていたため、名前だけはよく知っていました。
しかし、どんなことをした人なのかはさっぱり知らなかったのですが、今回、本書を読んで、予想以上に面白い経歴の人物でした。

楽毅は、軍事・内政・外交、全てにおいて優れた人物なのでしょうが、本書では、軍事の才能面が中心に書かれており、個人的には、傑出した戦術家の話が一番面白く感じます。

日本で言えば、楠木正成の戦術の妙だったり、三国志でも、様々な軍師達が戦場で火花を散らす知力戦が一番好きですが、本書も、そういった要素が満載で、非常に楽しめました。

楽毅は、中国の春秋戦国時代中期の人ですが、大国、斉と趙の間に挟まれた小国、中山国の家臣として生まれます。中山国は、国王が外交センスがまったくない人物で、小国にも関わらず、どの国とも親交を結ぼうとしなかったことから、大国趙の進攻を受けるも、他の国の支援を受けず、独力でなんとかしようと趙の進攻に立ち向かいます。

楽毅は、国王の愚昧な外交戦略で手足を縛られた状態にありながら、趙の進攻軍と、圧倒的少数の軍勢で立ち向かうというのが、本書の1巻から3巻あたりまでの話となっています。

第1巻では、満を持して大軍で進攻してきた趙軍に対して、20分の1程度の軍勢で楽毅が戦いを挑む話になります。

この戦いでは、楽毅が、趙軍に対して、二重三重の罠をしかけて、趙軍に壊滅的打撃を与えて撃退するという展開になります。
この展開は、諸葛孔明も真っ青の智謀鬼謀で、痛快です。こういう戦術の妙というのは読んでいて止まらなくなりますね。

しかし、この戦いでの勝利により、中山国の国王は、自身の力を過信し、独立独歩でやっていけると、ますます勘違いするようになり、それが中山国の滅亡へと繋がっていくことになります。

勝利は、滅亡への第一歩・・・。戦前の日本が、日清・日露戦争での勝利に過信して、外交的失敗により太平洋戦争に突入して滅亡の危機に瀕した・・・そんなことを思い起こさせます。
いつの時代も、同じような過ちはあるようです。

第1巻の後半では、2回目の趙軍の進攻が開始されます。
外交面での過ちを中山国王に厳しく指摘した楽毅は、王に疎まれ、前線の危険な城の守備を言い渡され、楽毅は、そこで、趙軍の大軍と攻防戦を繰り広げるという展開。

春秋時代の守城戦の様子を描いた名作に、酒見賢一氏の「墨攻」がありますが、第1巻の後半は、まさに、「墨攻」を彷彿とさせる展開。
楽毅の防備は、墨家さながらの防衛策で、攻める側の趙軍の将も、なかなかの名将。
お互いの思惑の裏を描こうとする激しい心理戦が見所です。

楽毅は、城を守りきるものの、中山国自体は、各地の城を落とされ、不利な条件で和睦を結ぶ結果となります。
しかし、その和睦も、大阪冬の陣の後の徳川家康さながらの趙の策謀により破られ、3度目の開戦。
この戦いでも、楽毅は国王に忌避され、趙に占領された中山国の城の奪還を命じられます。
ほぼ、奪還は不可能、楽毅も戦死するだろうという大方の予想を覆し、見事な陽動作戦により、寡兵で城を奪還。

まさに「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーのイゼルローン要塞奪回作戦!

こんな感じで、楽毅の戦術は、古今東西(?)の優れた作戦、戦術を見るかのようで、確かに諸葛孔明も一目置くのも分かると言うものです。
そして、その作戦は鮮やかさで、一々が敵の心理的盲点を突いているのも見事。

しかし、第2巻で楽毅は活躍するものの、中山国王は死亡、国はほぼ滅んでしまいます。
そこで楽毅は、国王の孫を奉じて、中山国復興の戦いに身を投じます。
そして、第3巻が、その戦いの様子を描いているわけですが、楽毅のとった作戦は、城に篭るのではなく、野山に軍を潜ませ、山を城に谷を堀にするという、敵に焦点を絞らせずに疲弊をさせるという作戦。

確か、「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーも、自国が滅んだ後、難攻不落のイゼルローン要塞を捨て、宇宙を彷徨いながら、変幻自在に出没し、帝国軍を撃破するという作戦を採りましたが、まさに、楽毅の作戦もそれにそっくり。
この当たりの展開は、著者が色々想像しながら書いただろうと思うのですが、もしかしたら、「楽毅」を書く際、「銀河英雄伝説」を参考にしていたりするのでしょうか。

さて、楽毅は、山野を城にして、20分の1に満たない寡兵で趙軍を迎撃。
大軍に守られているはずの趙軍の将2名を、奇襲などの見事な作戦を用い、戦場で打ち倒すというまさに鬼神のような戦いぶりを見せます。

高校生の頃、「銀河英雄伝説」にはまって、寝る間を惜しんで読んだ記憶がありますが、楽毅の活躍は、まさに銀河英雄伝説の主人公ヤン・ウェンリーを髣髴とさせ、高校生の頃、「銀河英雄伝説」を手に取った時のワクワク感が蘇ってきさえしました。

それでも、中山国の復興はなりませんが、趙王は、中山国もとい楽毅のしぶとさに敬意を表し、楽毅の報ずる王孫に一邑を与え中山国王の血脈を保ち保護するという条件を与え、それを受け入れた楽毅たちは、軍を解散し、ここにようやく、中山国を巡る攻防戦は終結をするのでした。

実に、「楽毅」4巻中、3巻が中山国を巡る攻防戦に費やされていましたが、楽毅の才略が遺憾なく発揮され、もっとも盛り上がる部分でした。

最後の4巻は、燕の昭王に登用された楽毅が、燕王の悲願を達成すべき、大国斉を打ち破るエピソードが中心に描かれます。
1巻から3巻までが、趙と中山国という2軸だけの、結構単純な構図だったのに対し、4巻は、斉と燕以外に、秦、魏、趙、楚など、各国が入り乱れる中の外交戦も織り込まれていくため、それまでとは違ってかなり複雑な様相を呈するようになります。

そのため、趙と中山国の戦いのように、戦場に限定された駆け引きだけではなくなるため、3巻までと比べると、迫力が薄らいだ感じもありますが、それでも、戦場だけに限らない楽毅の異才ぶりが表現されていて、楽毅の天才軍師ぶりが際立ちます。

楽毅の活躍ぶりをみると、黒田官兵衛なんかは、かなり霞んでしまうなぁ・・・。

それにつけても、思うことは人を見極めることの難しさ。
中山国の王は、楽毅の才能を見抜けず、楽毅を使うことをしなかったために国を滅ぼしますし、燕の昭王の後に立った恵王は、斉を征服した楽毅の才能に嫉妬し、楽毅を燕より追いやった結果、征服した斉の領土をことごとく失う羽目になっています。

楽毅を重用し、楽毅の才能を存分に活かした王は、それに見合う結果を得られますが、その反対のことを行った王は、ことごとく失意の結果に終わってしまっています。
現在から見ると、楽毅を生かし切れなかった王達の愚かさを笑うことはできますが、実際、その場にいて、当事者となった場合、楽毅を生かし切れるかは、なかなか難しそうです。

その意味では、楽毅を活かし切った燕の昭王は名君なのでしょう。やはり、名君なくして、天才なし。

ちなみに、燕の昭王は、「隗より始めよ」のことわざで知られる王で、昭王が郭隗に、賢人を集めるにはどうすれば良いかと問うた際に、郭隗が、「凡庸な自分(隗)を重用すれば、それを見た人々は、郭隗ですら重用されるのだから、郭隗より優れた自分はもっと重用されるに違いないと考え、多くの賢人が集まってくるでしょう。ですから、隗より(重用することを)始めよ」と言ったという逸話が生み出した言葉となっています。

そして、「隗より始めよ」を実行した昭王の元に、千里を駆ける馬とも例えられる楽毅が、昭王の元に来ることになったのですから、おそるべし「隗より始めよ」。

こんな中国の故事なんかも散りばめられつつも、「銀英伝」を彷彿とさせる展開で、「銀英伝」のような話が好きな人には読み応え満載の作品でした。


【『楽毅』より】

 
商人とちがって、為政者の思考には国境がある
 




【その他のレビューブログ】
「劉邦、諸葛亮孔明といった人物があこがれたと言われる楽毅。」ということに言及する人も多いようですが、三国志を通じて、楽毅の名前を知ったと言う人も多いようです。

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[ 2014/12/02 06:34 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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