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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:数学】 確率的発想法-数学を日常に活かす

【評価】★★★☆☆

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著者:小島寛之
出版:NHKブックス


以前紹介した「使える!統計的思考」と同じ著者が書いた、統計に関する本。
本書と、「使える!統計的思考」の2つで、著者にとって2部作になるとのことだったので、こちらも手に取って見ることにしました。

「使える!統計的思考」に比べると、本書の方が、学術的な度合いがかなり高まっている印象でした。特に、後半の「Ⅱ 確率を社会に活かす」の章は、数学的論理記述が結構盛り込まれているため、数学があんまり・・・という人にとっては、読むのがつらいかもしれません。
もちろん、数学的論理記述を飛ばして読んでも文意は伝わりますが、そうすると、根拠部分が抜け落ちてしまうことになるため、醍醐味がかなり薄れてしまうことになってしまいます。

それだけに、本書で興味深い内容が多く書かれている部分は、「Ⅱ 確率を社会に活かす」だろうと思います。
いくつか、興味深かった内容について感想を述べてみたいと思います。

「Ⅱ 確率を社会に活かす」では、人間の確率に関する考え方から、社会構造などを数学的論理記述で表していくといったことが様々に説明されていましたが、ある興味深い実験をベースに議論が展開されていきます。

「つぼⅠには、赤い球が50個、黒い球が50個の計100個の球が入っています。つぼⅡには、赤か黒の球が合わせて100個はいっていますが、いずれがいくつ入っているかわかりません。さて、あなたはどちらかのつぼを選んで、球の色を予言し、目隠しして球を一つだけ取り出します。予言が当たれば、賞金をさしあげます。さて、どちらのつぼを選びますか?」

この質問に対して、多くの人は、つぼⅠを選択するのではないでしょうか。
実際、実験でもほとんどの人が「つぼⅠ」を選択するそうです。
直感的には、つぼⅠでもつぼⅡでも、予言が当たる確率は5分5分になりそうだとは思うのですが、私も「つぼⅠ」の方をどうしても選びたくなりました。

実際、予言が当たる確率的には、「つぼⅠ」でも「つぼⅡ」でも変らないわけですが、それにも関わらず、多くの人が「つぼⅠ」の方を好むのか?、こんなところから、議論が進んでいきます。

意地悪な考え方をすれば(もしくは、素直に考えれば)、「つぼⅠ」の方が確率的に有利と多くの人が錯覚するということではなかろうかと思いますが、本書では、「マルチプル・プライヤー(複数の信念)」と「マックスミンの原理」の2つから、この行動を説明する学説が紹介されています。

「マルチプル・プライヤー(複数の信念)」とは、ある事柄について複数の予想を人が持つことで、つぼⅡについて言えば、「赤球と黒球のの割合は4:6かもしれない」、「いや、7:3かもしれない」・・・などと考えてしまうことを指します。

そしてそういう状態にあって、自分が「赤球」と宣言してつぼⅡを選んだ場合、赤球の入っている比率が極端に悪いのではないか、かといって「黒球」と宣言すると、やっぱり黒球の入っている比率が極端に悪いのではないかと思ってしまう・・・という、言ってみれば、自分の取った行動が最悪の結果を引き当ててしまうと思ってしまうことを「マックスミンの原理」と言います。

結果、人はつぼⅡではなく、赤球と黒球の比率が5:5と分かっているつぼⅠを選んでしまうという(つぼⅡを選ぶと、5:5よりも比率が悪い結果で引かなければならないのではというおそれがあるから)説明がされています。

これは、なかなか面白い説明だなぁと思いました。
言ってみれば、人の自信のなさを確率に導入して説明しているわけで、確かにこんな心理的要素があるから、確率的には同じはずでも、非合理な行動を取ってしまうということがあるのかもしれません。
まぁ、逆に自分の運に強い自信を持っている人は、つぼⅡを選ぶのかもしれませんが。

この人が持つ「マルチプル・プライヤー(複数の信念)」と「マックスミンの原理」から、他の経済現象に対しても説明(仮説)することができるのですが、例えば、株取引の薄商いで小動き-市場に売り手も買い手も少なく、商いが細って、株価が動かない状態-が発生する理由なんかも、同様な説明でできることが、本書では紹介されていて、興味深いものがありました。

さて、もう一つ面白い学説としては、「コモン・ノレッジ(共有知)」を使った話がありました。
「コモン・ノレッジ(共有知)」とは、ある事柄について、Aさんも、Bさんも・・・みんなが知識として持っているとともに、他の人がその知識を持っていることをお互いに分かっていることを指します。

例えば、両思いなのだけれど、相手が自分のことを好きであると思っているか分からないという状態は、「コモン・ノレッジ(共有知)」ではありませんが、両思いで、お互いが好きだということを認識しあっている状態は、「コモン・ノレッジ(共有知)」になっているということになります。

この「コモン・ノレッジ(共有知)」を使って、特段、経済的に悪いニュースの報道など何ら前触れがないにも関わらず、突然、株価暴落が起きるメカニズムを「コモン・ノレッジ(共有知)」をモデル化して説明する学説が本書では紹介されています。

株の取引を通じて、「不況」という事実を株取引に参加しているプレイヤーが、徐々に認識し始め、あるタイミングで「不況」が「コモン・ノレッジ(共有知)」になり、プレイヤー全員が株の売りに走ってしまうというモデルが論理式で説明されており(ちょっと、この論理式の展開を追うのは骨の折れるところがありますが)、こんな風に説明できてしまうのだなぁというところは、面白いものがあります。

こうやって本書を読んでみると、様々な現象を数式や論理記号で表すことができるのだなぁと感心してしまいますが、一方で、数式や論理記号の限界みたいなものも感じます。

数式で記述する場合には、定義(絶対変らないものとして無条件に設定される事実)を設定した上で、定義を出発点に論理展開がなされます。
しかし、よく考えてみると、もっとも議論になりそうな部分は、「その定義は、それでいいの?」という点にあるのではということ。
逆に言えば、定義が違ってしまえば、論理展開による結論も違ってきてしまうので、数式で表されるとあたかも完璧のようにみえてしまいますが、実は、そんなことはないなと思います。
例えば、先の株価暴落の「コモン・ノレッジ」による論理展開も、「株取引を通じて、相手がどんな事実を認識しているか知ることが出来る」というのが定義(前提)として置かれていますが、現実問題としては、その前提自体、そんな容易いものではないという批判も出来そうな気がします。

数式の良いところは、論理展開の部分がはっきりと見やすくなるという点であり、論理を説明するにはうってつけですが、だからと言って、数式で表されたことが正しいとは限らない(そもそもの定義設定に問題がある可能性もある)ということを頭に入れておかなければいけないように思えます。

本書は、確率論の中に人間の心理などを入れ込んだ学説が様々に紹介され、非常に興味深いものを感じました。
また一方で、数学的に正しくてもそれが事象を正しく説明しているかどうかは分からないということも、本書を読むとわかるなぁという感じがして、「数学(確率論)とは?」ということに思いを馳せることになる本でした。


【『確率的発想法』より】
 
ベイジアンたちは、大数の法則を根幹に据える規範的な立場にこだわらず、あくまで人間行動の心理的側面を記述することに関心をもっているため、理論の構築にはかなりの自由度が生じます。それが結果的に、理論に華々しい多様性をもたらしているのです。ベイジアンの確率論の多様性は、人間の心の多様性だといっていいでしょう。
 



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