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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:ルポ】 ソニーが危ない!-SONY 10年の天国と地獄-

【評価】★★★☆☆

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著者:萩 正道
出版:彩図社


出井体制の時のソニー低迷について分析した本です。
先日読んだ「ソニーの壁-この非常識な仕事術-」も、ちょうど同じ時期のソニーを分析したものとなりますが、本書の方が、正攻法的に分析した内容となっています。

本書では、出井伸之氏がソニーにとって初の純粋な文系社長であったことによる功罪が中心に語られます(出井社長の前が大賀社長で、大賀氏も出身が声楽家で一般には文系ですが、学生時代の経歴から理系的素養を深く身につけていたということで、理系に近い人物と、本書では評価されています。)

まず、本書では、ソニーが傾いた原因としては、「2002年度のソニーのエレクトロニクス分野が傾いたのは、一時は大きな躍進を見せた「VAIO」の商品力を過信し、・・・積極的な商品開発をしなかったことに直接的な原因がある」とし、いわば、「ソニーのブランド力への過信が、独自技術へのこだわりで商品力を錬磨するという伝統の精神を弛緩させていたと言うしかない。」と指摘しています。

「ブランド力の過信」については、「ソニーの壁」でも指摘されていましたが、「ブランド力」って考えてみると、結構脆いものなのかもしれません。
シャープの液晶テレビも、亀山工場で作られた「亀山モデル」がブランドとして一世を風靡しましたが、それも今では、シャープは風前の灯火、亀山工場は休止・売却なんていう状態ですし、ブランド力の源泉(メーカーの場合は技術力が大半なのでしょうが)が喪失すると、一気にブランド力は失墜してしまうわけです。
この点を考えずに、ブランド力だけを見て判断してしまうと、足下を掬われてしまうということなのでしょう。

いわば、ソニーのブランド力の失墜は、技術力の低下にあるということになるわけですが、出井社長が文系社長であるが故に、全体最適を考えるあまり、「孤立を恐れず自社技術を突き詰めようとする井深大氏以来のソニーの遺伝子を変質させてしまった」と本書では指摘し、出井社長が「技術者の心を理解しない社長」と評価されている点に言及しています。

「技術者の心を理解する、理解しない」って、何だか難しいなと思います。
「技術者の心を理解している」なんていう表現は、結構耳にする表現で、技術者側から発言されることが多い気がしますが、この表現、突き詰めてみると、非常に曖昧で、言ってみれば、とても文系的な表現という感じがします。
理系である技術者が発する発言が、実はとても文系的な表現、というのは、実はとても今の日本を表している気もします。日本のものづくりが衰退している一因としては、理系が理系的アプローチを弱め文系化してきている点にもあるのではと考えさせられました。

ソニー失墜の要因として、本書では出井体制の課題をもう一つ挙げています。
それは、出井体制発足当初、社内改革を行いめざましい成果を挙げますが、「今日から見れば、このような出井体制初期の好調が、ソニーに抜本的なリストラを遅らせることにもなったのである。しかも、この目覚ましい成果は、出井伸之氏をスター経営者にしてしまい、ソニーの復元力に神話的ともいえる幻想を与えてしまった。・・・今日のソニーの不振は、このときから経営の地下深くで芽を吹き始めたと言ってもいい。」との指摘。

うーん、目覚ましい成功が失墜の遠因になっていたというのは、とても皮肉な指摘です。
正確には、目覚ましい成功に慢心して、その後の改革を怠ってしまったということなのでしょうが、ダイエーの創業者中内いさお氏なんかもそうでしたが、企業経営者については、成功の後に転落ということで、このような評価が付けられてしまう人が多い印象があります。
成功するのは簡単でも(もちろん簡単じゃないんですけどね(笑))、それを持続させることは難しいということなのでしょう。
「創業は易く守成は難し」なんて言葉が昔よりあるくらいですから・・・。

本書では出井体制との比較という意味において、ソニー創業時代の井深大氏・盛田昭夫氏のエピソードが紹介されています。
そのエピソードで興味深かったのが、ウォークマン誕生の話でした。

ウォークマンは、もともとは、井深氏が出張中の飛行機の中で、良い音で音楽を聴きたいという要望により、個人用限定として社内で作らせたものだったそうです。
この製品を目にした盛田氏も「俺にも同じ物を作ってくれ」と技術部門に要求、製品を手にした盛田氏が、「大化け」する商品かもしれないと直感して「ウォークマン」という製品につながっていったそうです。

この製品を商品化する話を聞いた井深氏は、「商品としては、何一つとして新しい技術をもっていないものを、商品として世の中に出して良いものなのか」と呆れて困惑したそうですが、一方の盛田氏は、「市場のニーズがあれば立派な商品である」との考えから製品化を推し進め、後はご存知のとおり、「ウォークマン」はソニーを象徴する製品になったのでした。

井深氏も盛田氏も技術者出身ですが、井深氏は技術者として天才的な能力を有していたことから、ソニーの技術開発をひっぱり、一方の盛田氏はマーケティング能力に突出していたことから、技術面は井深氏に任せ、経営面を引っ張っていくという両輪の役割を担っていました。

「ウォークマン」誕生秘話(?)も、井深氏と盛田氏の技術とマーケティングの役割分担が効果的に発揮された、象徴的な話だと感じました。
ホンダでも、本田宗一郎氏と藤沢健夫氏が技術と経営を分担し両輪で企業を発展させてなんていう例もありますが、技術とマーケティング(経営)を一人の人物が担うというのは、実はとても難しいのではと感じさせる話でした。

その意味で、ソニーのような企業は、技術がわからない社長では立ちゆかないし、かといって技術一辺倒の社長でも立ちゆかないという、構造上の問題を抱えているということなのかもしれません。

盛田昭夫氏は、かつて、「独創性を引き出すための方法」についてこんな指摘をしていたそうです。

「会社や組織がただ多額の金だけ与えて「何か発明したまえ」と言っても、成果は望めないだろう。日本の国立研究機関の問題点もそこにある。最新の設備と予算をたっぷりつけた大型の研究所がありさえすれば、独創性は自ずと生まれるものだと政府は考えている。」

確かに、金と物があれば、何か生み出せるだろうという考えは、日本の技術開発政策の中で、漠然とではあるものの蔓延している気がします。
おそらく、こういう発想は「文系的」なのかもしれないなぁ・・・。

ソニーの変遷を見ると、日本の「ものづくり」の在り方が、文系的発想ではなく、理系的発想もしっかりと取り入れていかないといけないのかな・・・そんな想いを抱きました。


【『ソニーが危ない!-SONY 10年の天国と地獄-』】
 
文学的な指示しかできない経営者は、少なくとも製造業においては不適格と言うしかないのである。


【その他のレビューブログ】
「強みが結果的に弱みになったり、企業が長く続いていくことが如何に難しいか」とコメントしている方がいましたが、ソニーといえども、そのような状況は免れないということなのでしょう・・・。

こばなし
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カール・モクの神戸読書日記
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