FC2ブログ

読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
2020 031234567891011121314151617181920212223242526272829302020 05

【洋画:歴史】 シビル・ガン 楽園をください

【評価】★★★☆☆

civil_gun.jpg
1999年/アメリカ
監督:アン・リー
出演:トビー・マグワイア


南北戦争(civil war)を題材にした作品。
原題は、「RIDE WITH THE DEVIL」のようですが、邦題は、「シビル・ガン ~楽園をください」というもの。
邦題の副題が「楽園をください」という、なんだかメロドラマのタイトルみたいになっちゃっていますが・・・果たして硬派な作品なのか、それとも副題のとおり、軟派な作品なのか!?

【ストーリー】
================================

南北戦争下のアメリカ。
主人公ジェイクは、ドイツ系移民であり、ドイツ系移民の多くが北軍についていたものの、南部での生活をしていたジェイクは、志願して南軍の民兵部隊に身を投じる。
しかし、北軍優勢であるため、ジェイクの部隊は、森に身を潜め、ゲリラ戦を展開していた。
そして、同郷同士でも北軍と南軍に分かれ戦うという厳しい現実の中、自身の父親も北軍いついた同郷の兵士に殺されるなど、戦争の過酷な運命に見舞われる。
そのような中、ジェイクの所属する民兵部隊は、北軍派と目される町への攻撃を行うが、町には北軍兵士はおらず、単なる住民虐殺と略奪を行っただけであった。
その後、北軍の襲撃を受けた民兵部隊は壊滅状態となり、ジェイクも負傷し、民家に匿われることとなるが、民家の娘と恋に落ちたことから、民兵部隊から脱し、娘を連れ、新天地に旅立つのだった(完)。

================================

南北戦争をテーマにした作品ですが、敗北した南軍側、しかも正規軍ではなく民兵(ゲリラ部隊)を題材にしためずらしい作品です。

主人公ジェイクは、ドイツ系移民という設定で、普通であれば北軍に属しているところを(ドイツ系移民の多くは、北軍を支持したそうです)、敢えて南軍に身を投じたことから、味方の南軍からも胡散臭い目で見られ、南軍の中で少し浮いた存在となっています。

また、主人公ジェイクと関わりを持つ重要な人物として、黒人ホルクが登場します。
ホルクは、白人ジョージという人物の従者として共に南軍に参加しますが、ジョージは、ホルクを人間として扱い、奴隷の身分から解放したことから、ジョージとホルクの間には友情が成立しているという設定になっています。

そして、黒人ホルクは、ジョージを友人として尊敬すると同時に、自由を与えてくれた人物として感謝の念を抱いています。
しかし、南軍の中では、黒人ということで、あからさまに「ニガー」という蔑称で呼ばれたり、何かに付け差別にさらされます。

いわば、主人公ジェイクがドイツ系移民であるが故に、味方である南軍から異質な存在と扱われているのと同様、ホルクも黒人であるが故に差別的扱いを受けるという、同種の悩み・苦悩を共有しているという存在になります。

さて、映画の方は、主人公ジェイクが、南軍の民兵組織に身を投じ、北軍と戦うという展開になりますが、映画では、北軍と南軍が直接戦う場面は多くありません。
たいていの場合は、北軍も南軍も、それぞれ、敵陣営を支持していると思われる住民や民家を襲撃し、そこにいる男を殺すということを繰り返します。
そして、殺される住民のほとんどは、南軍・北軍の両方の板挟みになっているだけで、積極的にどちらかの陣営に与している訳でも、味方になっているわけでもありません。

いわば、どっちつかずの立場にいるため、南軍・北軍双方から、敵(味方ではない)と見なされ、殺戮の対象とされてしまいます。

映画の冒頭に、「・・・一番危険なのは、南軍・北軍どちらかの陣営に与することなく、両者の板挟みになって、どっちつかずの立場になってしまっている者である。」といった趣旨のナレーションが流れるのですが、戦争の惨禍をもっとも被るのは、本来、戦争に参加していないこういった住民なのかもしれません。

映画では、無関係な住民が「味方ではない」と一方的に見なされることにより、両軍から殺戮対象にされるという悲劇が描かれるとともに、同郷者が、南北に分かれて殺し合う悲惨さも描かれています。

主人公ジェイクは、南軍のキャンプを訪れた時に、北軍兵士捕虜に出会います。
この北軍兵士捕虜は、主人公ジョージとは同郷の人間で、よく顔も知っている人物でした。

主人公ジェイクは、南軍の指揮官に一策を献じ、この捕虜を解放することに成功します。
しかし、後日、この捕虜兵士が解放後、北軍に戻り、「ジェイクが南軍に属している」という理由から、ジェイクの父親を殺したという話を聞くはめになります。

ジェイクは、「恩を仇で返したのか!」と憤りますが、北軍から見れば、ジェイクは、「ドイツ系移民なのに南軍に与する裏切り者」という存在でしかなく、同郷者であろうと、命を助けてくれようとも、敵は敵でしかないという-内戦の非情さを感じさせます。
また同時に、南軍からは浮いた存在とされ、北軍からは徹底的に敵視される主人公ジェイクは、「南軍と北軍の板挟みにある存在」と言えるかもしれません。

その後、北軍と南軍の戦いは激しさを増し、主人公ジェイクの所属する民兵部隊でも多くの戦死者がでます。
そして、黒人ホルクの主人ジョージも戦死してしまいます。
ジョージの死に際し、黒人ホルクの感想が非常に印象的でした。

ホルク:「ジョージは大切な友人だったが、ジョージが死んで感じたのは、『自由』だった。」
主人公:「なぜ?ジョージから、既に自由を与えられていたじゃないか。」
ホルク:「『自由』は人から与えられるものではないんだよ。」

他人から与えられるのではなく、自らが勝ち取ったものにこそ価値がある、そんなアメリカ的思想を感じるやりとりでした。
アメリカの黒人が、南北戦争以降、公民権運動などで自由と人権を勝ち取ってきた歴史は、まさに「『自由』は人から与えられるものではなく、勝ち取るもの」ということを体現したものと言えるかも知れません。

確かに、「勝ち取ることの大切さ」はその通りなのかもしれませんが、一方で、どちらにも与せず中立的-もう少しぶっちゃけた言い方をすると、半ば無関心な人々というのも大勢いるのも現実であり、この映画でも描かれているように、闘争が起こったときに、もっとも惨禍を被るのは、こういった人々でもあるわけです。

どちらかと言えば、その他大勢、半ば無関心な側に属しがちな私の立場から言うと、「勝ち取ることに至上の価値がある」という社会は、なんだか息苦しいだろうなと思います。

さて、その後、北軍の優勢が強まり、南軍はますます劣勢となります。
南軍は、乾坤一擲の作戦として、北軍支持と思われる大都市に攻撃をかけることにします。
南軍の作戦命令は、「皆殺しにせよ」でしたが、もともと微妙な立場に置かれていた主人公ジェイクと、主人ジョージが死に、南軍参加の意義を失った黒人ホルクは、住民虐殺には荷担せず、攻撃を仕掛けた都市の住民の命を救います。

これにより味方から白眼視され、その後の北軍との戦闘中に味方から撃たれ負傷することとなるジェイクとホルク。
ジェイクとホルクは、怪我の療養のため民家に匿われ、怪我から回復後、二人とも南軍からは離脱し、各々の道を歩む(ジェイクは、恋に落ちた娘とともに新天地を探して旅に出る、ホルクは奴隷として売られた自分の母親を探しに旅立つ)というところで、映画は終わります。

ジェイクもホルクも、南軍には参加していたものの、目的意識があったわけではなく、どちらかというと、成り行きと事情で従軍していたわけです。
両者とも人種的偏見から、仲間からは受け入れられずに南軍に居場所はなくなり、戦争では、理念の欠片もない行為がまかり通る現状を目にし、ようやく、自分の道を選びとることを決断したわけです。

その決断は、南軍にも北軍にも属さないという立場を選ぶというものですが、中立という選択肢は、何度か書いたとおり、「両陣営の板挟みになる危険性」が非常に高い選択肢でもあります。

安全を得るために、どこかの陣営に与するのか、それとも自由のために、敢えて危険な道を選ぶのか、まさに、私たちにも多かれ少なかれ、必要な決断なのかもしれません。


【その他のレビューブログ】
『楽園をください』というタイトルに対し「邦題があほすぎる」との指摘がありましたが、確かに、この邦題を付けてしまうのは、もったいないなと思いました。
まぁ、悲惨な戦争から逃れて平和な生活(=楽園)を求めるという主人公の行動から付けたのだろうというのは分かるのですが、ちょっとセンスがなかったかなぁ・・。

TURNING☆POINT~世界史(西洋史)を舞台にした歴史映画・DVD紹介のサイト~
http://www.turning-point.info/RideWiththeDevil.html

戦争映画? WAR?
http://adolf45d.client.jp/eigacivil.html

ある日どこかで
http://plaza.rakuten.co.jp/nohohon45/diary/200608270000/

デジタル・クワルナフ
http://xwablog.exblog.jp/9570417/

本が大好き 映画が大好き。
http://blogs.yahoo.co.jp/chayanne62/40786893.html

アマゾン カスタマーレビュー
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/B00005LJV7/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1

スポンサーサイト



[ 2013/05/13 22:13 ] 西洋史 | TrackBack(1) | Comment(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL


シビル・ガン 楽園をください トビー・マグワイア / ミズーリの戦う男達
1999年 アメリカ 舞台は1861年のアメリカ・ミズーリ州。南部11州が連合政府を結成。南北戦争が勃発する。その中で実在した組織、南側のゲリラ部隊に入隊した男達の物語。彼らは南部兵として前線に出ると、故郷を守れないとあえて正規軍にはいらず、限定した地域(ミズーリ州とカンザス州の境界あたり)で侵略してくる北軍や北軍寄りの略奪者を相手に戦った。しかし、彼らは、洋画タイトルRide with ...
ページ最上部へ

プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
★★★☆☆:損はない
★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

アクセス数
アクセスランキング
[ジャンル]: 映画
212位
[サブジャンル]: レビュー
106位
カレンダー