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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:ルポ】 黒い看護婦 -福岡四人組保険金連続殺人-

【評価】★★★★☆

black_nurse.jpg
著者:森 功
出版:新潮文庫


福岡県久留米市で起きた、吉田純子を主犯とする元看護婦4人による、2人の夫を殺害した保険金連続殺人事件のルポとなります。
本書では、主犯の吉田純子が、他の3人を支配下に隷属させながら、贅沢な暮らしを維持するため、他の看護婦の同僚からお金をだまし取ったり、最後には、支配下に置いた元看護婦の夫2人を殺害し保険金をせしめるというところまで事件は突き進んでいきます。

事件の異常性もさることながら、吉田純子が、犯罪に荷担させるため、3人の看護婦を支配下に置く過程や、同僚看護婦からお金をだまし取る描写は、モンスターとしか言いようのない人物です。

また、主犯・吉田純子の家庭環境や生い立ちなども非常に興味深いものがあり、吉田純子の犯罪性向と生い立ちとの関係性も考えさせる部分があります。

本書では、吉田純子の中学・高校生活あたりから書き下ろされますが、高校時代に、「妊娠したので中絶費用が必要」と言って、同級生達からカンパ金を集め、だまし取ったという事件を引き起こしたエピソードが書かれています。

高校2年生の時に、その方法でお金をだまし取ることに成功した吉田純子が、高校3年生の時にも、同じ方法でお金をだまし取ろうとした結果、学校にそのことが発覚、他の高校に転校を余儀なくされるというエピソードがでてきます。

この事件について、著者は、吉田純子の母親に取材を試みているのですが、母親からの、

「高校は退学になんかなってなかですよ。停学処分なんかも受けていません。よう覚えとらんですけど、ああしてお金を取ったんは、純子だけじゃなかったと聞いています。三人でやったち純子は言っていました。いずれにしても、高校はちゃんと卒業しています」

と、悪びれた感じのないコメントが紹介されています。
本書では、その後も、吉田純子の母親の、違和感を覚えるような言動が出てきますが、なんとなく、このような環境が、吉田純子の犯罪へと足を踏み入れる垣根の低さにつながっている、そんな印象を受けました。

その後、看護婦となった吉田純子が、同僚の看護婦3人を支配下に置いて、犯罪を引き起こしていくことになりますが、その過程も、ちょっと普通には信じがたいものです。

一人目の堤美由紀に対しては、男性関係に悩んでいる美由紀につけ込み、自分の知り合いの社会的影響力の強い先生にお願いして、男性関係のトラブルを解消すると言って、トラブル解消のための費用をだまし取る一方、美由紀の人間関係を断ち切るように動き、美由紀が徐々に吉田純子に依存するような関係を築き上げます。

二人目の池上和子に対しては、かつて池上和子が後輩の看護婦をいじめた結果、その看護婦が婚約破談になってしまったという話を聞いた吉田純子が、その看護婦が池上和子に損害賠償を請求しようとしているといって騙します。
このトラブルを解決すると言って、池上和子からお金をだまし取り、かつ、トラブル解消をしたことで恩を売り、徐々に支配下に置いてしまいます。

三人目の石井ヒト美は、旦那が浮気しているので、浮気相手の女性と分かれるよう交渉してやると騙して、その経費をだまし取るとともに、やはり、その偽トラブル処理をきっかけに、支配下に置いてしまいます。

しかし、騙す方法も、「自分の知り合いの偉い先生にお願いしてトラブルを解決してあげる」だとか、「偉い先生に調べてもらったら、さらに、こんな問題も起きてるよ」といった、普通に考えると見え透いた話なのですが、3人は、あっさり吉田純子の罠に引っかかっていきます。

3人の共通点は、「トラブルを自分で解決するのは無理。誰かに解決してもらいたい」という依存心の強さが共通しているように思います。

更に、堤美由紀に関しては、吉田純子の同性愛の対象に強制され、吉田純子から「美由紀の子供を身ごもったみたい」と言われ、半信半疑ながらその話を信じてしまうというエピソードも出てきます。

女性同士で妊娠って・・・専門家である看護婦なのにそんな話を信じてしまうのかというのも不思議な気がしますが、堤美由紀は、こう述べています。

「いくら吉田さんが迫真の演技をしても、たしかに最初は嘘だと思いました。でも、私たち看護婦は、医療現場で生命の不思議さに出会うことがあるんです。それだけに、だんだんありえないことではない、て思いはじめていったのです」

この理由を聞いても、「なんで、信じるの?」と思いますが、もはや客観的に考えるということができなくなり、信じたいものを信じる-吉田純子の言うことは信じたい-そういった気持ちに支配されていたとしか思えません。

こういった吉田純子への依存、歪んだ盲信が異常な殺人事件へと発展することになります。

最初の殺害は、池上和子の旦那になりますが、旦那が池上和子を殺そうとしているという嘘を吹き込み、「殺される前に殺すしかない」という理屈で殺人を決行。
2人目の被害者の石井ヒト美の旦那は、「浮気相手の女に貢ぐため、各方面で相当あこぎなことをしている。もはや殺すしかない」との理屈で殺害。

主犯の吉田純子の心理よりは、理屈にもなっていない理屈に従って、殺害に荷担する3人の心理こそ、非常に不思議な感じがします。
ただ、そこは、3人の心理的な弱点と吉田純子の特異な性格・才能が相まって、3人を殺人事件に引き摺っていかれたということなのでしょう。

本書では、「彼女たちが、純子の単純な嘘や突飛な空想を本当に信じていたかどうか甚だ疑わしい。むしろ、嘘を明らかにすることが怖かっただけではないか。純子に対する疑念を封じ込めないと、純子から自分自身の弱みを徹底的につかれる。その恐怖が先に立つ。そうして、吉田純子という悪女と一体化していった。」と述べています。

自分の弱さを直視したくない-これは、人間の本能なのかもしれません。
この本能を克服できないが故に、3人は殺人事件にまで荷担する結果になったのかもしれません。

ただし、一方で、吉田純子も非常な特異な才能を持っているようです。
本書では、詐欺で金を巻き上げた元看護婦が、騙されたと感づいて、弁護士を雇って吉田純子にねじ込んできた時に、逆に、嘘八百の話をまくし立て、弁護士を撃退してしまったとか、逮捕後、留置場で食事を運ぶ配膳係を籠絡して、他の3人と密かに手紙で連絡を取るのに成功したといったエピソードもあり、人を騙し、支配下に置く能力に非常に長けているようです。

吉田純子のモンスター性と、転落することになった3人の元看護婦の人間的もろさが際立つ事件で、真相の見えない人間の闇を映し出したような不可解さが残る事件でした。


【『黒い看護婦 -福岡四人組保険金連続殺人-』より】
 
騙される側に共通しているのは、ある種の人間の弱さである。彼女たちの心のなかでは、純子に騙される際、その場で疑いを差し挟むことの恐怖心が常にはたらいた。純子は逆にそれを利用する。
 


【その他のレビューブログ】
かなりショッキングな内容だけに、後味の悪さなどの強烈な印象を覚える人が多いようです。

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[ 2013/02/25 23:09 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)
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