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読書と映画

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【書籍:軍事】 われら張鼓峰を死守す

【評価】★★★☆☆

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著者:冨永亀太郎
出版:芙蓉書房



【ノモハン事変の前哨戦となった国境紛争】

張鼓峰事件というのは、戦前、満州国境を巡って日ソ間で起こった国境紛争の局地戦。
ソ連の機工化された部隊に日本側が苦戦するという結果となり、後年発生した、更に大規模な国境紛争-ノモハン事変では、日本が張鼓峰事件の教訓を生かし切れなかった結果、ソ連に大敗北するという結果となります。

その観点から、非常に興味深い事件なのですが、大規模な紛争ではなかったこともあり、あまり知られていません。
本書は、張鼓峰事件で、70名ほどの隊を率いて防戦につとめた中隊長が実体験を綴ったもので、貴重な作品と言えます。

本書は、戦後になってから記されていますが、当時の戦後日本の防衛戦略が「専守防衛」という言葉で語られていたこともあり、張鼓峰事件を専守防衛という考え方に結びつけているのは、時代を感じますが、その当たりを差し置くと、当時の日本の国力の限界なども見える内容で、戦前の日本の軍事情勢を知るには面白い本だと思います。



【戦術レベルの課題では結論出せず】

満州国を占領していた日本に対して、国境線が未決着で争いとなっていた地に、ソ連軍が進駐してきたことがきっかけで、張鼓峰事件が起こることになります。
ソ連と日本において、当初から戦力差が大きかった上に、日中戦争を戦っていた日本としては、ソ連との紛争を拡大したくないという思惑もあり、戦力投入をためらった結果、ソ連軍にかなり押される結果になりました。

日本側の課題として、戦力不拡大の方針がために、戦力の逐次投入の愚に陥ったとか、ソ連を甘く見ていて、国境の防衛強化が弱かった等、色々あったようですが、どちらかというと戦術レベルの課題は、元々国力差の違いなどが前提にあったことを考えると、では、どうすれば良かったか、という答えはなさそうだなぁという印象でした。

むしろ、外交方針やら国家方針レベルの戦略が誤っていたひずみが、張鼓峰事件の勃発や苦戦に繋がっているように思われるので、張鼓峰事件だけ切り取って論じても、結論は出ないように思われます。



【川中島の合戦のよう】

張鼓峰事件をめぐる日ソの関係を見て感じたのは、戦国時代の上杉・武田による川中島の合戦を思い起こすなぁというもの。

張鼓峰事件は、停戦するまで、張鼓峰の山頂を日本軍が辛くも死守しましたが、停戦後、余力のない日本軍は張鼓峰から撤退、いつの間にやらソ連が張鼓峰に陣地を構築、実効支配してしまうという結果になりました。

川中島の合戦でも上杉・武田の激闘が繰り広げられ、戦闘自体はどちらが勝ったとも甲乙付けがたい状況になったものの、戦後は武田側が川中島一帯を支配してしまったわけで、政治力などで武田側に分があったともいえます。

ソ連も、川中島の合戦の武田方のようなしたたかさも感じられ、戦争を、戦場だけでなく、戦後も含めたトータルの計算をすることができたソ連が一枚も二枚も上手だった、そんな印象です。

現在、ソ連(今はロシアですが)とは、北方領土が国境紛争の種ではありますが、このしたたかさがロシア側に有る限り、なかなか日本の思うとおりにはいかないか・・・そんなことも考える内容でした。



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【『われら張鼓峰を死守す』より】
従って独断専行は、上司の意図にそったもので上官の意図外に出ることは許されない。

(書き出し)
張鼓峰は、朝鮮の北部国境を流れる豆満江に近い、湖沼と河にはさまれた丘陵地帯にそびえる標高149メートルの山で、その名の通り鼓を張ったような、稜線のきわだった、きれいな山である。

(結び)
列車は降りしきる雨の中を、英霊に黙祷を捧げるかのように、白い煙りを残して、ひたすら南へ、南へと走り続けた。
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[ 2020/01/01 00:00 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)
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