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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【邦画:SF】 テラフォーマーズ

【評価】★★★☆☆

terafomers_mov.jpg
2016 年/日本
監督:三池崇史
主演:伊藤英明

「テラフォーマーズ」が一時、話題になったときに、原作の漫画をその時、出ている最新刊まで一気読みした覚えがあります。単純なゴキブリ駆除の話ではなく、火星の権利を巡る各国間の駆け引きなど、原作は、なかなか複雑な展開を示していました。これ全部を2時間弱で映画化するのは難しそうですが、果たしてどんなふうにまとめたのでしょうか。

【ストーリー】
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火星移住を計画する人類は、火星にコケなどの下等植物と大量のゴキブリを投入することで、火星の環境を地球と同じような環境にしようというプロジェクトを開始した。
それから、500年。火星は地球環境にほぼ近づいたことから、大量繁殖したゴキブリを駆除し、火星への人類移住を進めることを決断する。
しかし、500年の間、ゴキブリは人類の予想を上回る進化を遂げ、二足歩行型の凶暴で俊敏な生物へと生まれ変わっていた。
駆除チームのメンバーは、進化型ゴキブリに対抗するため、昆虫のDNAを組み込まれ、驚異的な能力を付与され、火星に送り込まれる。
しかし、圧倒的な数と、予想を上回る強靱な能力を持つ進化型ゴキブリに駆除チームは苦戦、次々と命を落としていく。
そして、駆除チームは捨て駒として火星に派遣されたことを知った生き残りメンバーは、苦難の末、ゴキブリの大群を打ち破り、脱出ポットを使って、地球に戻るのだった(完)。
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【実は仮面ライダー?】

映画では、原作と比べ、だいぶ単純化され、火星において、ゴキブリショッカー軍団と、昆虫型変身ヒーローが戦うという、ヒーロー戦隊もの的作品だなぁと思いました。
主人公側が、昆虫の遺伝子を組み込まれているという当たり、これは、仮面ライダー(ご存じ、バッタの遺伝子が組み込まれた正義のヒーロー)みたいな話だと、はっと気づいたのでした。

そうやってこの映画を観てみると、なんだか、昔ながらに懐かしい作品でした。
仮面ライダーと違って、ショッカー軍団(ゴキブリ)は、凶暴なほど強いのですが。



【昆虫、マニアックすぎか】

本作の見所は、なんと言っても主人公側の能力の多様さでしょうか。
色々な種類の昆虫の能力が組み込まれているのですが、登場する昆虫のほとんどが、超マニアック。
敢えて、その選択肢ですかと、おそらく昆虫マニアにとっては垂涎ものなのでしょうが、素人からすると、「全然、分かんないぞ」と突っ込みが入ること必然(笑)。

なかには、オケラとかゲンゴロウの能力を組み込まれた人がおり、この人たちはあっさり、ゴキブリ軍団に殺されてしまうのですが、「なぜ彼らの能力に、オケラやゲンゴロウと言った、地中探索や水中探索能力しかもたない昆虫が選ばれたのかは謎である」という、ちびマル子ちゃんのナレーションのような突っ込みが入ったりして、「そんな突っ込みをいれられても」と苦笑してしまうお茶目なシーンもあったりします。



【ゴキブリ君にもう一踏ん張り!】

少々、物足りないかなぁと思ったのは、ゴキブリ集団、仮面ライダーのショッカー集団の数十倍強いものの、思ったほど、圧倒的強さがあるわけではなく、ずば抜けて強いボス的キャラもいないことから、ちょっと、敵としては中途半端だったかなという感じがしました。

最後も、カイコの能力により、鱗粉がばらまかれ、そこに火が付いて鱗粉爆発(?)が生じて、ゴキブリ集団一掃という、あっけない最後でしたしね。

うーん、ゴキブリ君たちに、もう少し見せ場があると良かったかなぁなんて思いました。



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【書籍:ミステリー】 戦場のコックたち

【評価】★★★★☆

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著者:深緑野分
出版:東京創元社



【実体験記かと思いきや・・・】

戦場の兵士たちの食事事情を取材したルポかと思って、図書館で借りたのですが、読んでみるとさにあらず、どうも、第二次大戦に兵士として従軍し、軍隊のコックとしても働いたアメリカ人の戦争体験記のようです。

読み進めると、ミステリーまがいの事件が頻発、軍の食料盗難事件から、被災市民にまつわる謎、夜中に響き渡る怪音の謎など、数々の謎を本書の著者は仲間の兵士と協力して解決していきます。

軍隊も色々な事件や謎が起こるんだなぁ、さながら小説みたいだ・・・・ん、小説みたい??
もう一度、本の表紙を見てみました。
著者は、アメリカ人ではなく、日本人だ・・・。
裏表紙を見ると著者の紹介が・・・数々のミステリー作品で受賞。
しかも、出版社は、東京創元社。

小説でした(笑)。
中盤当たりまで実話と思っていて読んでいた自分がちょっと恥ずかしい(照)。



【真実味のあるミステリー】

途中から、実話ではなくミステリー小説だと気づいたわけですが、それが分かっても、話は面白い。おそらく、色々な資料から戦争の状況なども調べて書いているのでしょう。
実体験的な雰囲気と、ミステリーの面白さが融合していて、かつ、数々出てくるミステリー(謎)が突拍子がないものではなく、以外とありそうな事件なので、真実味が出て、引き込まれるように読んだのでした。
実話と間違えてしまったのは、優れた筆力のゆえんですね・・・と、まだ言い訳がましく言ったりして(笑)。



【ちょっと、スタンド・バイ・ミー?】

連合軍によるノルマンディー上陸あたりから始まり、終戦、そして、冷戦終結を告げるベルリンの壁崩壊の時代まで、後日談的に描かれ、単純なミステリーではなく、戦争を体験した主人公やその仲間の顛末にまで触れられており、一種の青春小説的な色合いもあります。

どことなく、スティーブン・キングの「スタンド・バイ・ミー」的な雰囲気も感じます。

もちろん、中心は第二次大戦での戦争体験ではありますが、生きるか死ぬかの過酷でありつつ、濃密な時代を生き抜いたと思いきや、あっという間に時間は過ぎ去ることを実感させ、人生は、春の夜の夢の如くだなぁということも、しみじみ感じるのでした。

戦争体験とミステリー、面白い組合せでしたが、違和感なく、非常に興味深く読むことができた本でした。



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【『戦場のコックたち』より】
追い詰められた人に対して、傍観者はよく「なぜ逃げなかったのか」と問う。けれど現実には、逃げようにも逃げられない人たちがたくさんいる。

(書き出し)
人生の楽しみは何かと問われたら、僕は迷わず「食べることだ」と答えるだろう。

(結び)
それから、家族に訊き回り、部屋中をいくら捜しても、壊れたメガネは見つかっていない。
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【書籍:ルポ】 実録 ヤクザという生き方

【評価】★★☆☆☆

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著者:朝倉喬司、溝口敦、山之内幸夫他
出版:宝島社文庫



【鉄砲玉となったヤクザたち】

暴力団関係を取り扱う弁護士、暴力団関係の取材を長年しているライターなど、暴力団の事情に詳しい人たちにより書かれた話を集めた本。
まず、印象に残ったのが弁護士の方によって書かれた鉄砲玉(=ヒットマン)となった暴力団組員の事情を記した話。
いくつかの事例が示されていますが、親分に命令されて対抗組織の幹部を殺すという単純な構図ではなく、自分の価値観を組織の中で示したいがために、ヒットマンに志願するとか、敬愛する兄貴分のために行うとか、その事情は色々。

要すれば、自己顕示、名誉欲、忠誠心、仕事意欲など、一般の人が仕事をする際のインセンティブと類似したものが、ヒットマンとなったヤクザの中にもあり、その仕事内容が人殺しという特異なだけで、後の動機付けは似通っているのだなぁと感じました。

ヤクザも一般人の同じ人間なので、仕事に対する動機付けは共通するものがあるわけで、ついついヤクザという特殊な世界だけに、フィルターをかけて観てしまいがちですが、そのフィルターを外すと、もう少し理解できる部分がありそうです。



【山口組-一和会抗争】

その他、面白かったのは、かなり古い話ですが、山口組と一和会の抗争にまつわる話。
山口組・一和会の抗争は私が子供の頃起きた話で、かなり衝撃的な事件で印象に残っていますが、ヤクザの世界の話なので、起承転結について、あまり理解できていなかった覚えがあります。

本書では、抗争の発端から終結まで整理して書かれていて、山口組の中の問題だけでなく、山口組の分裂を画策していた警察の介入も一因となり、抗争まで発展した経緯が記されています。
・・・国家権力恐るべし。

ただし、山口組の壊滅を警察はもくろみましたが、山口組も踏ん張り、解散、壊滅まではいかずということで、国家権力といえども、ヤクザを全滅させることができず、民間(?)パワーをあなどるなかれ、と言ったところでしょうか。



【波谷守之とは・・・】

それから、暴力団というよりは、任侠と言った方が良さそうですが、波谷守之というヤクザの大物に関するエピソードも興味深いものがありました。
世間の一般常識からすると、立派と称するには、はばかりがありますが、獄中で、弁護士を雇う金がない受刑者に大金を渡し助け、その人が波谷氏に対し、不実な行いをしたにも関わらず、お金を渡したことすらすっかり忘れてしまい、とがめ立てすらしないといった話がいくつか記されています。

人から受けた恩は決して忘れず、人に施した恩は忘れ去るようにする-古代の任侠の徒にありそうな行動美に感嘆を覚えましたが、こうありたいと思っても、そのような生き様はできないだろうなぁと思うと、賞賛したくなる気持ちも分かります。

本書では、2人の筆者が、全く別の話の中で、波谷守之氏を取り上げており、本来の意味での任侠道を実践した人なのでしょう。



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【『実録 ヤクザという生き方』より】
それに人を一人殺しておけば、ヤクザ者として生きるうえで大きな自信になって、いつも自分を勇気づけてくれる

(書き出し)
鉄砲玉(ヒットマンとも称される狙撃隊員)の心情というのは、通常の生活をしている人には推測のつきにくいことである。

(結び)
朝倉 そうですね。あの口上だけは、つづけてほしいですね。
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[ 2020/01/29 00:16 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【邦画:コメディ】 お前はまだグンマを知らない

【評価】★★☆☆☆

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2017年/日本
監督:水野格
主演:間宮祥太郎


「群馬の野望」といったゲームも出ていて、群馬ばやりなのか?と思い、ついついレンタル。

【ストーリー】
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千葉県から群馬県に転校してきた高校生の主人公。
群馬の独特な風習や、群馬県人の群馬愛の強烈さに戸惑いを覚えつつも、少しずつ、群馬になじんでいく。
そのような中、群馬県人を誹謗する中傷ビラがまかれる事件が発生。
その事件を解決しようとする中で、群馬県と茨城県、栃木県の争いに巻き込まれたり、思わぬ群馬のタブーに触れてしまうなど、トラブルに見舞われるが、事件を無事解決する。
そして、事件解決を通じて、主人公も群馬愛を少々、理解できるようになるのだった(完)。
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【起立・注目・礼・着席】

テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」でやるような都道府県あるあるネタを映画にしたような作品。というか、たぶん、そういうコンセプトの作品なのでしょう。

群馬県の学校では、「起立・礼・着席」ではなく、「起立・注目・礼・着席」であるというネタは、「ケンミンSHOW」でも紹介されてたネタだなぁなどと思いつつ、トリビア的(?)面白ネタではありますが、それ以外のネタは、「赤城おろしの突風で鍛えられているので、女子の太ももは太い」とか、単なる作ったネタだよなぁというものも多く、他県の人に、「ほほぉ!?」と言わせるネタというのはなかなか多くはなさそうです。



【郷土意識の強さにびっくり】

映画に出てくる群馬県人は、自らを「グンマー」と称して、群馬県愛に溢れていて、郷土愛というべきか、郷土意識がこんなに強いのかとびっくりするやら、感心するやらでした。
だいぶ以前に、福島県の会津地方に住んだことがあり、会津地方も、そこそこ郷土意識の強い地域の印象でしたが、ここまで露骨ではなかったなぁ。

幕末の戊辰戦争の影響で、会津地方と長州藩こと山口県は犬猿の仲といった話もあり、会津地方に住んでいるというと、そういった話題も出ましたが、実際は、都市伝説に近く、むしろ、そういう話をネタに地域の盛り上げ材料にしている感が強かった印象がありました。

映画に出てくる群馬愛に溢れる人々も、どっちかというとかなりネタっぽさ満載ではあります。



【最後はパンチラネタですか】

最後は、赤城山の怒りを、主人公(男子)が下半身を出して沈めるというアホっぽいネタで締めくくられます。
赤城山の神は女神なので、男性が下半身を出すと喜ぶという民話的エピソードを基にした内容ですが、山の神は女神なので・・・という類似エピソードは、全国の山の話として、よく聞く話ですね。

あとは、その対比として、女子のパンチラが、世の争いごとをおさめるというネタも織り交ぜ、メデタシメデタシという、小学生的ネタで締めくくられ、アホっぽさ満載なのであります。
パンチラネタでちょっと笑ったのが、北朝鮮の金正恩とアメリカのトランプ大統領がアメリカ美人のパンチラで和解するというくそネタ(笑)。
アメリカ美人のパンチラと言えば、やはり、マリリン・モンローなのか!?(かなり古すぎ)

しかし、トランプ大統領、パンチラぐらいじゃ収まらない暴れっぷりだから、マリリン・モンローといえども、難しいのかなぁ・・・などと、群馬からだいぶ離れた思索に漂ってしまったのでした。

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[ 2020/01/19 00:00 ] コメディ | TrackBack(0) | Comment(0)

【中国映画:ギャンブル】 カイジ ー動物世界

【評価】★★★★☆

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2018年/中国
監督:ハン・イエン
主演:リー・イーフォン

「カイジを久々に見たい」という妻の要請で、レンタルしょうとしたら、1作目、2作目とも貸し出し中。最新作のカイジが出るので、みんな借りちゃうんですな。
しかし、穴場あり!中国版の「カイジ」があるじゃないですか。「これじゃない!」という妻の批判の声が聞こえてきそうですが、耳を塞ぎ、レンタル。


【ストーリー】
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母の入院費などで金不足に苦しむカイジは、友人の誘いにのり、母の名義の家を担保に大金稼ぎをしようとするが失敗し、逆に多大な借金を背負ってしまう。
八方塞がりに陥ったカイジの前に、大金を稼げるギャンブルの話が舞い込み、そのゲームに参加することにするのだった。
ゲーム開始早々、他の参加者にだまされ窮地に陥るカイジ。しかし、持ち前の計算力を発揮し、仲間を募り、ゲームの札の買い占めなど、ありとあらゆる手段を用いて巻き返しを図る。
しかし、カイジの動きを察知した他の参加者によって、またも窮地に陥るが、逆転の一手で、ピンチを切り抜け、仲間を助けることに成功するが、自身はゲームに負け、たこ部屋送りになる。
ゲームに勝った仲間がカイジを救出してくれるはずだったが、仲間も土壇場で裏切り、自身の力でたこ部屋を脱出。裏切った仲間に制裁を加えた後、無事、元の世界に戻ることができたのだった(完)。
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【ダメ人間じゃないですね・・】

本作、漫画や日本版のカイジとは違い、主人公たるカイジのダメ人間っぷりがかなり薄いですが・・・というよりは、親孝行で恋人もいるという、原作カイジとは真逆な人間っぷりで、日本と中国の違い(?)を感じる作品となっています。
ただし、メインのギャンブルゲームは、原作踏襲で、楽しめる内容でした。

ギャンブルゲームは、基本的にはじゃんけんなのですが、じゃんけんだけど、ここまで駆け引きが成立するのかと、本作を観てもあらためて感じました。



【ザワザワは一体・・・】

カイジ作品(原作)の特徴は、カイジの心理描写を表すのに、カイジの背後で「ザワザワ」という効果音で表現する手法。
日本版カイジは、見事に(?)この手法が表現されていましたが(少々、突っ込みどころがあると言えばあるのですが(笑))、中国版では、この描写は別の方法で表現されていました。

その方法とは、ザワザワの代わりに、主人公がピエロに関する妄想に陥るというもの。
これはこれで、ありかもしれませんが、やっぱり、カイジには「ザワザワ」でしょ、と思うと、「ザワザワ」がないカイジは、やはり物寂しさがあります。

やはり、「ザワザワ」というオノマトペ(?)は、日本でしか通用しないガラパゴス的な表現だったか(笑)。



【カイジ以外ダメ人間】

終盤は、カイジが犠牲になって仲間を助ける展開。
そして、助かった仲間がカイジを助ける計画だったはずが、金に目がくらんで、カイジを見捨てるという流れに。
どちらかというと、カイジ以外の人間のダメっぷりが目に付きます。カイジ、実は真人間なのか(笑)。

ラストは真人間カイジ(?)らしく、娑婆に戻り、恋人とも再会してハッピーエンド。
いやぁ、カイジに恋人がいるってのが、想像できませんが、更には、親孝行のカイジという設定も、これまた想定外。
孔子を輩出した国だけあって、親孝行設定というのは、これぞ、中国仕様と言えるのかもしれません。

他の国でカイジを映画化すると、どんなカイジになるのでしょうか。それぞれの国のお国柄が出そうで興味深いところです。

なお、本作で一番びっくりしたのが、入院費用が不足したか何かの理由で、植物状態で入院している母親のベッドが廊下に出されてしまうというシーン。
中国の病院って、普通にこういうことをするのでしょうか。これが一番驚いたかも。


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[ 2020/01/18 15:44 ] ギャンブル | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 専守防衛

【評価】★★★☆☆

著者:外山三郎
出版:芙蓉書房


【専守防衛の戦史紹介】

「専守防衛」という言葉は、冷戦時代に日本の防衛方針のあり方としてよく聞いた言葉だったと思いますが、最近は、この言葉はほとんど聞かなくなったように思います。
「専守防衛」の定義があまりはっきりせず、本書を読んでもその当たりはいまいちはっきりしませんが、広義に取れば侵略戦争を目的とした戦争、狭義に取れば、相手に攻撃を受けて反撃し、かつ、敵国領土には攻撃をしかけない、といったあたりでしょうか。

本書では、専守防衛の戦史紹介、戦史を踏まえた日本の専守防衛のあり方が提言されています。
戦史は、攻め込まれて受け手に回って勝利した側にスポットを当てた内容で、これをもって専守防衛の事例というと、専守防衛の範囲はかなり幅広いことになるなぁという印象。

イギリスの事例は3件と最も多く、スペイン無敵艦隊との戦い、ナポレオン戦争、第二次大戦が取り上げられており、日本と同じ島国でありますが、ヨーロッパ大陸の国々と関わりがあるだけに、置かれている情勢もかなり異なる感じで、外交と戦争の両方をにらみながら、かなり繊細な駆け引きがイギリスには求められていたようです。



【通商破壊作戦】

戦史紹介で興味深かったのが、第一次世界大戦、第二次世界大戦におけるドイツの無制限潜水艦攻撃-いわゆる海上通商破壊作戦に関するもの。

第一次大戦においては、ドイツがもっといち早く、無制限潜水艦攻撃に踏み切っていれば、イギリスを屈服させることができたのではないか、というのが著者の主張ですが、無制限潜水艦作戦が中立国-特にアメリカの対ドイツ参戦を誘発してしまったことを考えると、戦術面では効果はあっても戦略面では失策のきらいがあり、そう簡単ではないでしょう。
戦争が自国と相手国だけの問題ではなく、中立国など利害関係を持つ国も多数ある中で、どれだけ、中立国を味方に付けられるかが、戦争の帰趨を決するということを示唆する事例と思われます。

第二次大戦のドイツのユーボートによる海上通商破壊作戦は、連合国側の対潜水艦技術-ソナー技術開発や空爆による潜水艦攻撃などの技術進歩が、ドイツの作戦を頓挫させており、日米の航空機戦でもそうでしたが、技術開発競争が戦争の行方も左右するという、まさに国家の総力戦こそが第二次大戦であったことを示しているように思われます。



【海上輸送の防衛】

ドイツの通商破壊作戦を戦史の教訓として、本書では専守防衛の要として、海上輸送防衛に主眼を置く軍事力整備を提言しています。
日本が、補給軽視で戦争に敗れたことを踏まえると、海上輸送をきちんと確保する戦略・戦術は非常に重要に思われます。

本書が書かれた当時は、仮想敵国(ソ連)との直接戦争を想定しての海上輸送防衛なので、現在の戦争のあり方からすると、現実とだいぶかけ離れた提言ではあります。
戦争が、国家間の直接戦闘から、テロや破壊活動など正規の軍事力を使わない方法で攪乱を主流とするような状況は、当時からすると考えられないことでしょうから、これは致し方がなく、むしろ、戦争のあり方が大きく変わったことの驚きの方が大きいように思います。

とは言え、通商安全の確保は、現在の日本にとっても、命綱ではあるので、防衛の仕方は変わっても、様々な方法を用いて、通商確保に努めることは重要です。



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【『専守防衛』より】
しかしこれらの事実は、圧倒的な大軍の侵入に対しては、それが地続きの国境を越えてくるときは、究極的には阻止できないことを示したことになる。

(書き出し)
世界史を顧みるとき、大敵の直接侵攻を見事に撃退した大戦争の歴史が燦として輝いている。

(結び)
後者については、日本周辺海域を含め米海軍のシー・パワーに依存しなければならないことを認め、米海軍との協力に万全を期さなければならない。
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[ 2020/01/12 14:18 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 われら張鼓峰を死守す

【評価】★★★☆☆

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著者:冨永亀太郎
出版:芙蓉書房



【ノモハン事変の前哨戦となった国境紛争】

張鼓峰事件というのは、戦前、満州国境を巡って日ソ間で起こった国境紛争の局地戦。
ソ連の機工化された部隊に日本側が苦戦するという結果となり、後年発生した、更に大規模な国境紛争-ノモハン事変では、日本が張鼓峰事件の教訓を生かし切れなかった結果、ソ連に大敗北するという結果となります。

その観点から、非常に興味深い事件なのですが、大規模な紛争ではなかったこともあり、あまり知られていません。
本書は、張鼓峰事件で、70名ほどの隊を率いて防戦につとめた中隊長が実体験を綴ったもので、貴重な作品と言えます。

本書は、戦後になってから記されていますが、当時の戦後日本の防衛戦略が「専守防衛」という言葉で語られていたこともあり、張鼓峰事件を専守防衛という考え方に結びつけているのは、時代を感じますが、その当たりを差し置くと、当時の日本の国力の限界なども見える内容で、戦前の日本の軍事情勢を知るには面白い本だと思います。



【戦術レベルの課題では結論出せず】

満州国を占領していた日本に対して、国境線が未決着で争いとなっていた地に、ソ連軍が進駐してきたことがきっかけで、張鼓峰事件が起こることになります。
ソ連と日本において、当初から戦力差が大きかった上に、日中戦争を戦っていた日本としては、ソ連との紛争を拡大したくないという思惑もあり、戦力投入をためらった結果、ソ連軍にかなり押される結果になりました。

日本側の課題として、戦力不拡大の方針がために、戦力の逐次投入の愚に陥ったとか、ソ連を甘く見ていて、国境の防衛強化が弱かった等、色々あったようですが、どちらかというと戦術レベルの課題は、元々国力差の違いなどが前提にあったことを考えると、では、どうすれば良かったか、という答えはなさそうだなぁという印象でした。

むしろ、外交方針やら国家方針レベルの戦略が誤っていたひずみが、張鼓峰事件の勃発や苦戦に繋がっているように思われるので、張鼓峰事件だけ切り取って論じても、結論は出ないように思われます。



【川中島の合戦のよう】

張鼓峰事件をめぐる日ソの関係を見て感じたのは、戦国時代の上杉・武田による川中島の合戦を思い起こすなぁというもの。

張鼓峰事件は、停戦するまで、張鼓峰の山頂を日本軍が辛くも死守しましたが、停戦後、余力のない日本軍は張鼓峰から撤退、いつの間にやらソ連が張鼓峰に陣地を構築、実効支配してしまうという結果になりました。

川中島の合戦でも上杉・武田の激闘が繰り広げられ、戦闘自体はどちらが勝ったとも甲乙付けがたい状況になったものの、戦後は武田側が川中島一帯を支配してしまったわけで、政治力などで武田側に分があったともいえます。

ソ連も、川中島の合戦の武田方のようなしたたかさも感じられ、戦争を、戦場だけでなく、戦後も含めたトータルの計算をすることができたソ連が一枚も二枚も上手だった、そんな印象です。

現在、ソ連(今はロシアですが)とは、北方領土が国境紛争の種ではありますが、このしたたかさがロシア側に有る限り、なかなか日本の思うとおりにはいかないか・・・そんなことも考える内容でした。



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【『われら張鼓峰を死守す』より】
従って独断専行は、上司の意図にそったもので上官の意図外に出ることは許されない。

(書き出し)
張鼓峰は、朝鮮の北部国境を流れる豆満江に近い、湖沼と河にはさまれた丘陵地帯にそびえる標高149メートルの山で、その名の通り鼓を張ったような、稜線のきわだった、きれいな山である。

(結び)
列車は降りしきる雨の中を、英霊に黙祷を捧げるかのように、白い煙りを残して、ひたすら南へ、南へと走り続けた。
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[ 2020/01/01 00:00 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)
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kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
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★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

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