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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【洋画:歴史】 サムソン -神に選ばれし戦士

【評価】★★★☆☆

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2018年/アメリカ、南アフリカ
監督:ブルース・マクドナルド
主演:ジャクソン・ラスボーン

1人vs1000人みたいなキャッチコピーがあったので、ついつい借りてしまいました。
なんか、多勢に無勢でやっつけるみたいな展開、気になるんですよね。

【ストーリー】
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紀元前1000年頃のイスラエル。
ユダヤの民は、他の部族の奴隷とされ、苦難の時代を迎えていた。
ユダヤの民の中から、民を苦難から解放する救世主が現れるという予言が信じられており、怪力を誇るサムソンは、人々から救世主であると信じられていた。
しかし、当のサムソンは、救世主たる自覚はなく人々の期待から外れる行動ばかり取るのだった。
そのような中、サムソンは結婚をしようとするが、国王の策略で婚約者を殺されてしまう。その事件に端を発し、サムソンは一人で国王軍1000名と戦い、国王軍を全滅させてしまう。
サムソンの力を恐れた国王は、その後、サムソンの村に手出しをするのを控えるが、サムソンの力の秘密を知り、その力を封じて捕虜として捕らえることに成功する。
そして、城門の前でサムソンを処刑しようとするが、サムソンが怪力を発揮し、城門を倒し、自身といっしょに、国王もろとも、敵兵を城門の下敷きにし国王軍を壊滅させるのだった。
このことに勇気を得たユダヤの民は自由を得るため、武器を手に取り立ち上がるのだった(完)。
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【旧約聖書が題材の作品】

映画を見始めて気づきましたが、確か、旧約聖書の中にあるエピソードを題材にしていますね。このエピソードを基にした、他の映画も観た記憶があります(映画「サムソンとデリラ」)。
映画「サムソンとデリラ」の細部はすっかり忘れましたが、最後のオチ(サムソンが城門を崩して自分ごと敵国王をぺしゃんこにしてしまう)は印象的だったので、この場面を見て、「あぁ、この話ね」と思い出しました。

本作を見て、神様がサムソンにユダヤ人を導けと言いつつ、導く方法はこれかい!と、神様の無茶っぷりに突っ込みを入れてしまいましたが、映画「サムソンとデリラ」の感想を読み返してみると、やっぱり似たような感想を書いていたので、サムソンのエピソードは、どうにも神様の無茶っぷりが目に付く話のようです。



【優柔不断でもやもや展開】

本作では、サムソンは神に選ばれし者として、周囲から期待されるものの、本人にその自覚がなく、周りをやきもきさせる上に、怪力という優れた才能をまったく活かし切らないという展開が続きます。

才能や能力があるのに、自堕落でやる気がないのを見ると、周りとしては非常にがっかりさせられますが、本作の後半くらいまで、サムソンはそんな感じなので、どうにも歯がゆく、もやもや感がいっぱいな気持ちになります。

中盤、サムソンがやむにやまれず、国王軍1000名と戦い、一人で壊滅させるという展開もでてきますが、ぜひともその勢いを駆って、国王をぶっ倒してくれと思うわけですが、「そもそも、神との約束で、死者に触れてはいけなかったのだ」などと言って、矛を収めてしまいます。
・・・1000名の兵士を殺しているのだから、十分、死者には触れていると思いますよ。

結局のところ、サムソンはどうにも優柔不断で、決断力や判断力に欠けるなぁと言う印象。
これでは、人を率いるのは難しいだろうなぁ・・・。



【学ぶために苦労することは難しい】

結局、女性に怪力の秘密を漏らし(髪を切ると怪力を失ってしまう)、国王にその秘密を知られ、怪力を封じられ捕虜になり、両目を失って、ようやく神の使命に目覚めるサムソン。

苦労しないと、人は成長しないし、学ばないんだなぁと思うわけですが、サムソンが学ぶのに必要な苦労は、ちょっと常人の苦労とはだいぶレベルの違う苦労のようです。
できれば、少しの苦労で多くを学べる人間となりたいものです・・・。

そして、冒頭でも触れましたが、サムソンがやったことというのは、処刑のため城門に引きずり出されるものの、神の恩寵で怪力が復活、城門を引き倒して、自分もろとも、敵国王や兵士を下敷きにして殺してしまうという結末。
・・・怪力の使い道としては、確かに一番まっとうな使い方ではありますが。やっぱり、こういう結末なのか、とびっくりではあります。

本作では、さすがにそれではどうかと思ったのか、サムソンの自己犠牲的精神に感化されたユダヤの民が自由を得るためにたちが上がるという話につなげています。
やっぱり、何らかの形で民衆の心を動かしました的な結末じゃないと、サムソン、かわいそうですよね。

それにしても、神様というのは残酷というか、意地悪というべきか・・・。



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[ 2019/12/31 00:00 ] 西洋史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【邦画:歴史】 永遠のゼロ(映画版)

【評価】★★★★☆

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2013年/日本
監督:山崎貴
主演:岡田准一
原作:百田尚樹著「永遠のゼロ」

レンタルショップに、本作が置いてあるのを見て、以前、原作を読んだなぁと思い起こし、手に取ったのでした。
原作の感想を書いた自身の記事を読んでみたのですが、結構感動したといった趣旨のことが書いてあるにもかかわらず、すっかり、内容を忘れていたのでした。映画を見ることで、その感動を思い起こすことができるのか!


【ストーリー】
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自身の祖父が特攻で戦死したことを知り、戦争当時の祖父の様子が知りたくなり、取材を開始する。祖父を知る人々を取材すると、祖父・宮部久蔵は、手練れの飛行機乗りでありながら、命を惜しむ臆病者とそしられるような人物であったことを知るのであった。
しかし、更に、取材を続けると、命を惜しんだのは家族のため生きて返るためであり、戦争中で厳しい思想統制にある中、自身の信念を貫いて生き抜いた勇気を感じるのだった。
命を惜しんでいたにもかかわらず、特攻で戦死した理由を不審に思いながら取材を続けると、宮部久蔵は、最後は、他の人の犠牲となって死に赴いたが、他方で家族を思い、身代わりとなった人に自分の家族のことを託して死んでいったことが分かるのだった。主人公が今を生きていることには、祖父にまつわる命をかけたストーリーがあったことを知り、自分の人生に対する責任を強く感じるのだった(完)。
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【戦争・ヒューマニズム・恋愛】

原作は、以前読んだことがあり(→感想はこちら)、結構感動した気がするのですが、すっぱり、内容を忘れていました。
映画を見終わった後も、「確か、こんな話だったかなぁ」というくらいの思い出し加減で、いやはや、私の記憶は心許ない。

本作は、零戦パイロットで特攻で戦死した宮部久蔵の孫が、戦後70年経った現在、久蔵の足跡を追うべく、関係者に取材して回るという話。
当時を知る関係者から、「宮部久蔵は臆病者だった」などと謗られるなど、色々と複雑な面がありそうな久蔵の素顔に迫りつつ、ラストはびっくり純愛物語に帰結するという、戦争・ヒューマニズム・恋愛の1粒で3度おいしい物語となっています。



【誰かのために身を挺すること】

主人公の宮部久蔵、戦場で命を惜しむため臆病者呼ばわりされますが、パイロットとしての腕は超一流という設定。
臆病者で、腕もボンクラでは、話にならないでしょうから、こういう設定は致し方なしというところでしょう。

命を惜しむ理由が、家族のためという背景があるため、現代人からすると、理解しやすい背景であり、戦場を共にする人々にとっては、命を惜しむという姿勢は反感を持たれるものの、パイロットの腕は超一流のため、尊敬を受けやすい素地があったりもします。

そう考えると、能力って大事だな・・・と思ったりもします。

他方、自分の部下や教え子の名誉を守るため、上官に対して意見をとなえ、上官からしこたま殴られるなんていう硬骨漢な一面もあり、そういった点も部下や教え子から評価される一面につながっています。

戦場で命を惜しむという行為は、仲間を見捨てているという風に見られ軽蔑の対象となりますが、仲間のために上官に刃向かうという行為は、自身が犠牲になって仲間を助ける行為であり、人は、誰かのために身を挺して頑張ってくれるということに感動を覚えるのだと思います。



【仕事と家庭の両立】

この話、突き詰めると、戦場の仲間のために命を掛けるか、自分の家族のために命を掛けるか、どちらを取りますか、というお話でもあります。

宮部久蔵は、家族のために、という選択肢をとったが故に、戦場の同僚からは臆病者扱いをされたわけで、現代に例えれば、会社のためより、家族を優先する人が、社内でなんとなく白眼視されるという状況に似通っているわけです。

こういった問題を解決するために、「働き方改革」なるものが提唱されているわけで、働き方を効率よくすることで、自分の能力を会社や職場同僚のために最大限発揮しつつ、家族のためにも最大限時間を割くことができるようする、まさに一石二鳥を狙っているわけです。

宮部久蔵の生きた時代は、戦況悪化で、どうやっても職場環境の改善や業績向上が望めない中で、仕事と家庭の両立は困難だったため、宮部久蔵のような生き方は難しかったと言えそうです。

しかし、ラストは、特攻で自ら死に赴くも、家族のためにも貢献できるという、両立策を実現してしまいます。
あまりに奇をてらった結末ではありましたが、これくらいじゃないと、仕事と家庭の両立は困難という、非常に苦しい時代であったということでしょう。



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[ 2019/12/30 01:07 ] 第二次大戦 | TrackBack(0) | Comment(0)

【中国映画:歴史】 戦神 -ゴッド・オブ・ウォー

【評価】★★★☆☆

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2017年/中国
監督:ゴードン・チャン
主演:チウ・マンチェク

倭寇討伐で活躍した明の武将・戚継光を題材とした作品。倭寇など、日本を題材にした中国映画とかだと、反日映画的な内容に作品も結構あり、純粋に映画を楽しめなかったりすることもありますが、果たして本作はどんなものなのでしょう。

【ストーリー】
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16世紀の明の時代。倭寇の猛威と、政治の腐敗により疲弊する明王朝。若き武将・戚継光は倭寇討伐の将に抜擢される。
弱卒の明軍を徹底的に鍛え、少数精鋭の部隊を作り上げる威継光。
精鋭を3000名をもって、倭寇討伐に乗り出すが、倭寇も威継光を徹底的に叩き潰すため、2万の大軍を結集して威継光の軍に立ちはだかる。
死闘の末、倭寇の大軍を突破し、倭寇の大将を討ち取り、大勝利をおさめるのだった(完)。
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【史実を元にした作品】

てっきりフィクションかと思いきや、主人公の武将・戚継光は、実在の人物だそうです。
明の時代に倭寇討伐に功績があった武将とのことで、この映画が描かれている時代は1550年から1560年頃ということで、日本は、戦国時代まっただ中、織田信長が尾張国内で苦戦している最中(有名な桶狭間の戦いは1560年のこと)という時期です。

こんな時期にも、日本は隣国の明まで赴き、海賊行為を行っていたとはびっくりですが、日本の戦乱の余波は国内だけでなく、隣国にまで迷惑をかけていたんですね。



【ライバルは松浦党】

倭寇の裏には、日本の松浦藩がいるという設定になっており、松浦藩の切れ者軍師が、倭寇の中心人物で、切れ者軍師と戚継光の戦いが見どころとなっています。
松浦藩(この時期だと松浦藩とは言わず、松浦党と呼ばれていたんだと思います)は、長崎県平戸市を中心に、海賊衆を束ねた集団で、密貿易から海賊行為まで活発に行っていた集団で、映画の設定も、史実に近い設定なのだと思います。

この松浦党、なかなかすごくて、戦国末期には、日本にやってきたポルトガルの船団と一戦交えた(しかしながら大敗北したそう・・・)なんていう経歴も持っていて、戚継光のライバルとして位置づけるには、存在十分かと思われます。



【悪妻を得た戚継光は・・・】

本作は、昨今はやりの寡勢をもって大軍を打ち破るという設定(映画「スリーハンドレッド」とか)を踏襲しており、クライマックスは、3000の兵で2万の大軍を打ち破る展開。
ただ、内容は、どことなく勢いだけで大軍を打ち破ってしまった雰囲気があり、もうちょっと一工夫有るとよかったかなぁという印象。

後は、かなり不思議だったのは、戚継光と奥さんのエピソード。
奥さんがかなり猛々しい女性で、少し帰宅が遅れただけで、お客も一緒なのに、「ご飯が冷めましたから、外で食べてください」と言って家を追い出したり、どこかに出かけようとするときに、「私の馬が用意されていない!」といきなり不機嫌になって、立ち去ろうとしたりなんていう話が出てきます。

しまいには、見かねた戚継光の部下たちが、奥さんに刃を突きつけて、戚継光に従わせるという作戦を決行しようとする(戚継光にいなされて作戦は行わずじまいですが)なんていう展開にまで行き着きます。

このエピソード、一体どういう意味があって盛り込んでるんだ・・・?と思いながら観ていたのですが、おそらく、戚継光は実在の人物なので、実際、戚継光の奥さんのこの手のエピソードがあり、有名な話なのでしょう。

映画を見ていると、謎なエピソードですが、史実を描いているとすれば、少々笑ってしまう話です。

悪妻のエピソードで知られる有名人には、哲学者のソクラテスがいますが、ソクラテスの名言(迷言?)に、「良妻を得れば幸せになれる、悪妻を得れば哲学者になれる」というものがありますが、戚継光も悪妻のおかげで名将になれたのかも??


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[ 2019/12/23 00:00 ] 東洋史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【邦画:アニメ】 カリオストロの城

【評価】★★★★☆

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1972年/日本
監督:宮崎駿

妻が、「なんか、久しぶりにカリオストロの城が見たい」と言い出したので、レンタルショップに早速駆けつけました。そんな古い作品、DVDであるのかしらと思いきや、ちゃんとありました。すごい。


【ストーリー】
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偽札作りに暗躍するカリオストロ公国に潜入し、偽札作りの秘密を暴こうとするルパン三世。そこで、公国の姫が、悪者の伯爵に財宝目当てで無理矢理結婚させられそうになっているのを知って、公国の秘密暴きとともに、姫を助けるために奔走する。
公国に秘められた財宝に秘密を解き明かすとともに、偽札作りの秘密を暴き、公国の姫を助け出すことに成功するのだった(完)。
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【ジブリなんだなぁ】

「カリオストロの城」は、子供の頃、地元の公民館のようなところで上映された時に見た思い出があります。
高所恐怖症気味だったので、城の高いところからの場面が恐いなぁと思った印象は、今でも残っていますが、内容はあまり理解できなかった記憶があります。何せ、子供だったので。

「カリオストロの城」が宮崎駿監督の手によるものだとは、だいぶ大人になってから知りましたが、こうやって、大人になってから見ると、ジブリ感が半端ない作品ですね。
カリオストロ公国の姫が、「天空の城ラピュタ」のシータ、そのまんまだぁと、妙に感動。



【ドリフの影響も大か】

それから、もう一つ印象に残ったのが、とぼけた感じやお笑い(?)のノリが、妙に、ドリフっぽさ満載な点。
「カリオストロの城」って、おそらくドリフ全盛期の頃に作られた作品だったかと思いますが、予想外なところに、ドリフの影響が出ていて、ドリフの影響力の大きさにびっくり。

現代風に例えるなら(?)、ドリフの影響力は、日本のホラー映画に多大な影響を与えた「リング」の貞子と言ったところでしょうか(例え方が、あまり適当でない気が(笑))。

DVDには、本編以外に予告編も収録されていましたが、予告編のキャッチコピーに「おとぼけ感が更にパワーアップ」とか、今だと、売りにならんぞと突っ込みを入れたくなるキャッチコピーが、当時の雰囲気を忍ばせるのでした。
なお、「制作費5億円」とバーンと予告編で出てくるのは、映画の宣伝というよりは、宝くじのCMのようなのも微笑ましい。



【最後の名台詞は】

「カリオストロの城」の名言は、最後に、銭形警部がルパン3世のことを指して、「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。」と言うシーンだと思いますが、子供の頃は、全く印象に残らず、この台詞、全然記憶に残っておりませんでした。

さて、大人になってから見ると、いやはや、くさい台詞ですな。マジな顔でこんなことを言われると、かなり照れくさくなりますが、それ故に、印象に残る台詞なのかもしれません。

「天空の城ラピュタ」の名台詞「バルス」と比べると、長すぎて言いづらいことこの上なしなので、「バルス」と比べると、みんなが口に出していいづらい台詞かなぁなんて思います。

ただ、パロって使えそうな台詞なので、何かのタイミングで使って見たい気も。

「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの財布です。」・・・スリにあった人に向かって、いつかは言いたい。・・・殴られるな(笑)。



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[ 2019/12/22 04:04 ] ジブリ作品 | TrackBack(0) | Comment(0)

【邦画:犯罪映画】 日本で一番悪い奴ら

【評価】★★★★☆

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2016年/日本
監督:白石和彌
主演:綾野剛
原作:稲葉圭昭『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』

北海道県警で起きた実際の不祥事を題材とした映画。前々から見たいなぁと思っていたのですが、地元のGEOでは、なぜか、ずーっと準新作扱いにされていて、高値プレミアムが付いていた状態で、旧作に落ちるまで待っていたのでした。ようやく、旧作になっていたので、早速レンタル。

【ストーリー】
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高校卒業後、北海道県警に就職した主人公。
真面目一筋で、要領もよくない主人公だったが、先輩警官の「やくざの中に協力者を確保して、その情報を使って検挙実績を上げよ」というアドバイスに従い、やくざとのつながりを深め、拳銃の検挙実績で好成績を上げるようになる。
しかし、検挙実績を上げるため、ロシアから拳銃を購入して検挙実績にするなど、違法捜査や検挙実績を上げることだけを目的とした行動を取るようになり、更に、拳銃を購入する費用を稼ぐため、覚醒剤の密売を仲間のやくざに行わせ、その金で、拳銃を購入し検挙実績とするなど、犯罪行為にどっぷりとはまり込んでいるのだった。
更に、県警内で、200丁の拳銃密輸を摘発するおとり捜査として、40億円相当の覚醒剤の密輸を見逃すという違法捜査に荷担するものの、おとり捜査は失敗し、主人公は左遷されてしまう。
左遷による失意から、自身が取り扱っていた覚醒剤に手を出し、ついには逮捕され、また、違法捜査に荷担していた警官仲間も自殺するが、県警の上層部は、主人公にだけ罪を負わせ、一切の責任を取ることはなかったのだった(完)。
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【いやはや、本末転倒】

警察による不祥事は、かなり報道されていて、今やまたか、という感じすらありますが、本作は、警察の不祥事が発生する構造的原因をえぐり出したかのような内容です。

北海道県警の警官である主人公は、拳銃の摘発実績を上げるため、暴力団と通じることで、暴力団から情報を得て拳銃摘発の実績を上げるようになります。
しかし、いつしか、摘発実績を上げるために、拳銃をロシアから購入しだし、更には、その購入資金を手に入れるため、覚醒剤の密売を行うようになり・・・と、何のための拳銃摘発なんだと突っ込みをいれたくなる状況に陥ります。

哲学者ニーチェの著書「善悪の彼岸」の中で、「怪物と戦う者は、自分自身も怪物にならないよう気をつけねばならない。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」という言葉がありますが、まさにその言葉どおりの展開に・・・。

わざわざニーチェを持ち出さなくても、日本の四文字熟語やことわざにも、「本末転倒」や「ミイラ取りがミイラになる」と言った言葉がありますが、古今東西、こんな境遇に陥る人はめずらしくないのかもしれません。



【ノルマ至上主義】

主人公が、こんな不正に手を染めるようになった理由は、北海道警のノルマと成績至上主義が原因なようです。
なんとしても、拳銃摘発の実績を上げようと、実績さえ上げられれば手段は問わずという風潮となってきます。

県警内ですら、拳銃200丁の密輸を摘発するために、まずは密輸組織が行う麻薬100kgの密輸を目をつぶって通してしまうなんてことをするのですから。
麻薬100kgって、末端価格だと、グラム3万円なら30億円。
それに対し、拳銃200丁は、1丁10万円としても、2000万円ですから、拳銃200丁のために、それよりも明らかにインパクトの大きい麻薬100kgを国内に流通させてしまうのですから、もはや狂っているとしかいいようがない・・・。

ノルマ至上主義のすさまじさと言うしかありません。
そういえば、日本郵政でも、ノルマ至上主義が原因で、保険勧誘・加入で組織的に大規模な不正が発生したなんていう事件が、最近、ニュースを賑わせましたが、過剰なノルマは倫理をぶちこわしてしまうのでしょう。



【公共の安全と市民の平和を・・・】

冒頭、主人公が、なぜ警官になったのかを先輩警官に尋ねられ、警察官の宣誓書か何かに書かれている言葉、「公共の安全を守り、市民の平和と・・・」を思い出しながら答えるシーンは、映画「アンタッチャブル」でも似たような場面があり、東西問わず、警官は、まず、その言葉を暗唱させられるんだなと、印象深く感じました。

本作の主人公は、その後、成績を上げるために、この言葉の意義は忘れてしまい、むしろ、小さな不正は巨悪を摘発するために必要という理屈で、自身の行動を正当化させるための言葉にすらなってしまいます。

結局、主人公が追求したことは、巨悪の摘発でもなんでもなく、善悪関係なく成績を上げることとという、非常に矮小化した自己目的の追求だったわけで、目的や本来の意味を見失ってしまうと、こうも堕落してしまうのだなぁと、恐ろしさを感じる作品でした。



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【書籍:社会派小説】 大地の子(全4巻)

【評価】★★★★☆

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著者:山崎豊子
出版:文藝春秋



【日本と中国の関係を描いた大作】

中国残留孤児となった陸一心を主人公に、中国の文化大革命、日中合作による製鉄所建設、残留孤児の肉親捜しと広範なテーマを描いています。
本作も、中国での綿密な取材を元に描かれており、後書きには、中国政府の情報統制による取材の難しさなどにも触れられているので、本作、大作であることの大変さに加え、取材の困難さも加わり、大変な苦心作だったことが、直に伝わってきます。

また、主人公の陸一心は、日本人ではありますが、6歳の時に敗戦となり、満州(中国)に取り残され、中国人として育ったため、中国人的な感覚・文化を持った人物として描かれており、中国人の文化や思想様式を知ることのできる面白さもあります。

そして、製鉄所建設を通じて、日本と中国の考え方の違い、ぶつかり合いなども描かれており、現在とは多少違う面があるとは思いますが、現在も起こっている日中間の相違を考える上でも、参考になる面があるようです。



【文化大革命の嵐】

序盤は、残留孤児となった陸一心が、中国人に拾われ育てられますが、文化大革命が吹き荒れる中国で、日本人の出自であるが故に、それこそ、死線をいくつもかいくぐらなければならない苦難の道を歩むことになります。

特に、中国人の養父・養母によって、苦心して大学まで出してもらったものの、出自が日本人であるということで、強制収容所送りになる展開のすさまじさ。

カンボジアにおいて、ポルポト派が、自国の知識人を全て強制収容所送りや虐殺して、国をボロボロにしたという悪夢がありましたが、本書を読むと文化大革命もその状況にかなり似たような状況だったようです。
毛沢東死後、文化大革命は終結し、その後の指導者によって、「文化大革命によって、中国の発展は30年遅れた」と、文化大革命は痛烈に批判されることになりますが、知識や技術を持つ人を抹殺しようという発想自体が不可解でしかありません。

本書で描かれる強制収容所の様子や、些細な理由から突如としてつるし上げが行われ苛烈な懲罰が加えられるなど、理屈が通らない世界ほど恐ろしいものはありません。
本書では、文化大革命の状況は、一つの大きな山場となっています。



【日中合作の製鉄所建設プロジェクト】

文化大革命が終わり、陸一心は、養父の命がけの働きかけにより、強制収容所から解放され、日中合同による製鉄所建設プロジェクトに携わることになります。

山崎さんが、色々取材しているなぁと感じたことの一つに、日本の製鉄所の様子を描いた1シーン。
「環境規制で、敷地の20パーセントを緑化することが義務づけられている工場であるから、グリーンベルトが多く、しかも煙が殆ど出ていない。」

この記述、今もある日本の工場に規制を掛けている法律、工場立地法に関するものです。
以前、仕事で工場立地法について調べたことがあるので、こんなところまで調べて書いているんだと、びっくりするやら、自分が知っている法律が出てきてうれしい(?)やら。

製鉄所建設プロジェクトは、日中間の考え方の相違、それこそ交渉術から仕事の考え方、情報の扱い方、責任の取り方まで大きく違い、そのぶつかり合いが見所になっています。

特に興味深かったのが、製品品質に関する考え方。
中国側の方が適当なのかと思いきや、中国は製品に錆一つあっても不良品扱いするのに対し、日本は、機能面に問題ないのでそこまで追求する必要はないとの主張。
中国側の主張が無意味に厳しすぎるのではと思う反面、日本の製造業の品質の良さは、細かなところまで気を配っている点にあったのではないかと思うと、日本側の方が少々ルーズで、複雑なところでした。

また、製鉄所建設プロジェクトが、中国側の権力争いの具に利用されたり、純粋な経済活動であるはずの話が、政治に翻弄される当たりも、中国らしいなぁと思うところでした。

本作、文化大革命の嵐から、日中の文化や考え方の違い、中国内の権力闘争まで幅広いテーマが綿密に描かれており、日本と中国の関係を知る上でも非常に面白い作品でした。




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【『大地の子』より】
一体、あの日本人たちの精神構造は、どのように成りたっているのだろうか。曾て武力を以て中国大陸を侵略し、無辜の人民まで殺戮しておきながら、国交回復では、『遺憾』という曖昧な表現で、過去の罪業を詫びたのみであった。

(書き出し)
北京の空は、紺青に澄みわたり、秋の陽が眩く地面を照しつけている。

(結び)
一心は、父の胸中を察しつつも、固く口を閉ざした。船は、滔々たる長江を下って行った。
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【洋画:SF】 マッド・マックス -怒りのデスロード

【評価】★★★★☆

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2015年/オーストラリア
監督:ジョージ・ミラー
主演:トム・ハーディ

映画公開時、結構話題になった本作。「マッド・マックス」=「北斗の拳」くらいの認識がなかったので、ブームには便乗せず(?)、公開時は見ていなかったのですが、ブームも落ち着いたこのタイミングで視聴です。

【ストーリー】
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核戦争により荒廃し、暴力だけが支配する世界。
マックスは、独裁者が支配する都市の軍団に捕虜として捕まってしまうが、暴力による支配に耐えかねた女性の一団とともに、武装タンクローリーを奪って都市を脱出する。
女性達の脱走に怒り心頭の独裁者は軍団を率いてマックス達を追跡するのだった。
目指すべき地にたどり着いたマックス達だったが、その地もすでに汚染され砂漠の荒野と化していた。
そこで、マックス達は、独裁者の都市を奪うことを決断。逆襲をしかけ、独裁者を倒したマックス達は、都市を奪い、自由な世界を築く一歩を踏み出すのだった(完)。
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【マッドな人ばっかりの作品】

「北斗の拳」が映画「マッド・マックス」の世界観に感化され、「マッド・マックス」をモチーフに漫画が描かれたというのは有名な話ですが、本作も、これまでのシリーズに違わず、見ると、「うひょー、北斗の拳だ!」と叫びたくなる雰囲気満載(マッド・マックスを見て、「北斗の拳」だ!と言うのは本末転倒な感想ではありますが)。

相変わらず、マッドな人ばっかり出てくる作品で、ほんと、変わんないなーという感じです(褒めてます)。



【マッドなカーチェイスが展開】

映画の内容はいたって簡単で、マッドな車同士の気違いカーチェイス作品。
主人公マックスたちの車は、馬鹿でかいタンクローリー車。
対する敵側の車は、火を噴く車やら、棒高跳びで他の車に飛び移ることができる、ハイテクと中国雑技団的な身体能力が融合した謎システムの車やら、東京モーターショーに出展したら、入場客は3倍は増えるだろうと思える、魅力的(??)な車が多数登場。

マックスたちの車は馬鹿でかいので、敵の格好の標的になるわけですが、意外と高性能なので、スピードで振り切ったり、明らかにタンクローリーに挑むには危険すぎるだろうと思える、中型車クラスの敵の車は体当たりで破壊したりと、やっぱり、タンクローリー最強説が浮かんでしまうような展開。



【最後まで無茶な・・・】

そんなマッドなカーチェイスばっかり、延々見させられて、ラスト間際でマックス達がたどり着いた目的の地は、汚染により全てが枯れ果て砂漠と化した荒廃の地。
救いがない!と思いきや、マックス、ひらめきます。
「水と緑が豊かな土地ならあるぞ。元々いた場所だ!」
って、また、元の場所に帰るのかーい、と思いっきり突っ込みが入りますが、逃げから攻勢に転じた強みで、敵の独裁者をぶち殺し、見事、都市を奪取することに成功するのでした。

やっぱり、北斗の拳にも共通する、無茶苦茶な映画です(何度も言いますが褒めてます)。



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[ 2019/12/03 00:00 ] 冒険 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:自伝】 ダライ・ラマ自伝

【評価】★★★☆☆

darairama.jpg
著者:ダライ・ラマ
出版:文藝春秋



【ダライ・ラマとは】

ダライ・ラマというと、チベット仏教の最高指導者で、ダライ・ラマが亡くなると、転生した幼子を探しだし、次のダライ・ラマに任命される、そして現在は、チベットの中国からの独立のため、国外で亡命政権を樹立していて、それらの活動が評価されノーベル平和賞をもらった、というくらいの知識しかありません。
ちなみに、この間、亡くなったんだっけ、なんて思って、ネットで検索したら、健在でした(汗)。

自分に関わりが少ないと、どうしても生きてるか亡くなってるかすら定かではなくなってしまうわけで、たまに、こうやって本を読むと興味がわいて、少しは調べてみようという気にもなるので、本を読むことに一定の意味があるなぁと思います(弁明)。



【驚くべき政治指導者の選出方法】

ダライ・ラマは、亡くなったダライ・ラマが転生した人(と認定された人)がその地位に就くという話は聞いていましたが、本書を読むと、ダライ・ラマだけでなく、その他の高僧の転生者も何人も認定されて、チベット仏教における高い地位に就いているという話も本書には出てきます。
チベット仏教では、転生という仕組み(?)が浸透していて、転生者を探す方法などもしっかり決められていて、なんだか、すごいなぁと思います。

何せ、転生した人が、チベット仏教の高い地位に就き、更には、チベットの政治指導者の立場にも就くわけなので、政治指導者を選ぶ方法が、世襲でも投票でもない、まったく予想だにしない第三の方法(?)があるのだなぁということに、驚きを感じたのでした。



【対中国に対する姿勢】

ダライ・ラマと言えば、チベット独立運動であるわけですが、戦後、中国がチベットを占領した経緯、ダライ・ラマがインドに亡命して亡命政権を樹立した流れなども理解することができます。

ちょっと意外だったのは、ダライ・ラマが、中国に対して妥協的な姿勢に感じられる点。
独立を目指すというよりは、チベットに対する中国の支配をまっとうなものにしたいという意志の方が強く、中国支配は容認しているのかなぁとも思われます。

中国の指導者、毛沢東などに対する評価もかなり好意的で、政治的手腕や人間性などを高く買っている記述もちらほらあり、かなり不思議な印象を持ちました。

本書に書かれている中国によるチベット占領は、完全に独立国を中国が占領してしまったもので、チベットが独立を主張する正統性はもっともに思われますが、ダライ・ラマは、その点は、さほど拘泥せず、戦争や争い回避の中で、チベット民族が安定して生活できれば良いという考え方が強いように思いました。

この点は、仏教徒としての思想が非常に色濃いため、声高に独立を主張して争いを引き起こすことを避けたいという思いがあるのかもしれません。独立という点から考えると、ちょっと妥協的過ぎるのかなぁと感じる点で、チベット国内の独立派とは相容れない部分が多いような感じもします。

中国は、香港の問題で揺れていますが、ダライ・ラマの中国容認の考えがチベット独立派に受け入れられていなければ、その火はチベットにも飛び火するやもしれません。



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【『ダライ・ラマ自伝』より】
寛容を学ぶことのほうが、石を拾い、怒りの対象にぶっつけるよりはるかに有益である。

(書き出し)
1959年3月31日、チベットを脱出して以来今日まで、わたしはインドに亡命している。

(結び)
せかいが苦しみに耐え
生類が苦しみつづけているかぎり
この世の苦痛を取り除くために
願わくはわたしもまたそれまで
共にとどまらんことを
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[ 2019/12/02 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 天翔ける女

【評価】★★★★☆

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著者:白石一郎
出版:文藝春秋



【まさかの実在人物-大浦慶】

幕末に長崎で、外国と茶葉貿易を初めて行った女性を主人公とした作品。
てっきり、創作かなと思ったら、実在の人物。大浦慶という女性。

何せ、没落した油販売の家業から、長崎に出入りする外国商人に日本茶を売ることを思い立ち、当時、茶葉をヨーロッパに輸出する本場である上海の状況を知るため、上海への密航まで行い、長崎で茶葉輸出と言えば大浦慶と言われるまでの大商人になるという、てっきりフィクションとしか思えない人生行路なのですから。

これが男性だったら、「実在の人物かぁ」と感心するくらいだったかもしれませんが、幕末という、女性が活躍するには非常に制限のあった時代で、これだけのことをした女性がいたというから、事実は小説より奇なり。小説以上に小説みたいな話です。



【茶葉を巡る国際貿易】

主人公の大浦慶、茶葉の輸出商人として大成功しますが、他方で、激動の幕末。尊皇攘夷の志士たちとも交流を深め、まだ海のものとも山のものともしれない志士たちを食客として養ったり支援することで、裏から、明治維新を支える役割も担っています。

交流のあった中には、坂本龍馬率いる亀山社中の面々もおり、商売っ気のある坂本龍馬と交流があったというのも面白いところです。

茶葉を通じて、当時の国際貿易の様子を知ることができるのも本書の面白いところであり、大浦慶は、日本茶を中国で生産するのと同じ釜入り製法で、おそらくウーロン茶に近いような茶葉を生産し、中国がアヘン戦争で敗れ、供給能力を失った間隙を突いて、商売を伸ばすことに成功します。
しかし、その後、インドで大量に安い茶葉の生産が行われるようになると、価格競争に勝てなくなり、商売は衰退してしまいます。

なんだか、近年、製造業が、日本から韓国・中国、ベトナムや東南アジアへ中心が移っていった歴史と近似する話で、商売の栄枯盛衰は今も昔も変わらないように思われます。



【成功体験から失敗へ】

晩年、大浦慶は、茶葉の商売が衰退し、さらには、志士たちとの交友で商売で稼いだ金を散財してしまった上に、詐欺にひっかかったりして、茶葉輸出の大商人という面目を失ったまま、亡くなってしまいます。

葬儀には、幕末に世話になり、明治政府では大出世し高官となった政府要人たちが多く駆けつけたそうで、人生、トータルすると、やはり人を支援したり、助けたりすることは、自分にとって大きな財産を残してくれるもののようです。

ただ、晩年の没落を見るにつけ、成功することよりも、それを維持することの難しさが感じられます。
特に、大成功すると、その成功体験にとらわれ、それが原因で失敗に至るというのは、ビジネスの世界では、ダイエーの中内功を思い起こさせますし、歴史的には、旧日本軍の歴史なども想起させます。



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【『天翔ける女』より】
これは賭けなのだ。賭けである以上、勝つとは限らない。

(書き出し)
場所がらに似合わぬ華やいだ挨拶の声をかけて、その女は長崎会所の払方の詰所に入ってきた。

(結び)
いまでは輸出茶から年々しめ出されてゆく九州の黒茶を、お慶はこんどは冥土で売り込むつもりだったのかもしれない。
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[ 2019/12/01 09:57 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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