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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:伝記?】 人生の大切なことは泥酔に学んだ

【評価】★★★★☆

deisui_learning.jpg
著者:栗下直也
出版:左右社



【「走れメロス」の衝撃】

本書のタイトルのように、泥酔から人生で大切なことは到底学べないとは思うわけでありますが、古今の著名人たちの泥酔っぷりを知ることは、自分の泥酔による醜態に対する慰めにはなるなぁと思うわけであります。

本書の中で、いちばん驚いたのは、太宰治のエピソード。
太宰の作品「走れメロス」は、教科書にも載るほど、友情と約束の大切さを学べる、非常に教育的な内容ですが、「走れメロス」の作品が生まれたエピソードには、そんな教育的な面とは正反対だったのはなかなかの衝撃。

友人と温泉宿に宿泊し、豪遊して宿のツケが払えなくなった太宰が、「2,3日、待っていてくれ給え。金策をして戻ってくるから」といって友人を人質に宿に残し、東京に戻るのですが、待てど暮らせど帰ってこない。
しびれを切らした宿の主人と友人が、太宰の行方を捜すと、友人宅でのんびり将棋を指していた・・・。
怒り心頭の友人が太宰に詰め寄ると、太宰は、「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」と釈明。

・・・待つ身の方が絶対つらいと思いますが(笑)。

「走れメロス」の元となった太宰の体験では、メロスは約束をすっぽかした上に、言い訳にもならない言い訳をしたというしょうもない結末。「走れメロス」、実は、全く教育的ではなかったということでしょうか。



【宴会禁止】

その他、酒席の接待で、大出世した藤原冬嗣の話も、なかなか興味深く、藤原冬嗣が、あまりに宴会ばっかりやらかすものだから、ついには、「群飲するを禁ずる事」とお触れがでてしまったのだとか。

なんか、昨今も、公務員関係で、飲酒運転だとか接待汚職とかが目に余るので、酒席禁止令を出した自治体があったなんていうニュースが少し前に聞いた気がしますが、酒席に関することは、今も昔も変わらないようです。



【末代までついて回る酒乱の害】

日本の古今の著名人で私が知っている酒乱の人物と言えば、明治維新の元勲・黒田清隆ですが、本書でもやっぱり取り上げられていました。
酔っ払って、軍艦で砲撃したら、島の住民に砲撃が当たって死んでしまったとか、酔っ払って妻を日本刀で斬り殺したとか、酒乱エピソードに事欠かない人物ですが、明治になってから、総理大臣にまでなっているのですから、なかなか衝撃的です。

妻を惨殺した話は、明治政府が必死に隠蔽したなんていう話もあり、今も昔も政府は都合の悪いことはなんとか隠そうとするもののようで(笑)。

なお、黒田清隆の妻を惨殺という話は、政府の隠蔽工作の甲斐なく世間一般に流布されていたようで、黒田清隆の孫が、酒の席で、「黒田さんのそばでお酒を飲むと斬り殺されちゃう~。こわーい。」とからかわれたりしたそうです。

孫の代までそんなエピソードがついて回るとは・・・。
よく、お祓いとかで、「先祖のたたりで不幸に見舞われています」なんていう話がありますが、まさに、これこそ先祖のたたりですな。




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【『人生で大切なことは泥酔に学んだ』より】
悪名は無名に勝るのはどの世界も同じか

(書き出し)
気持ちが悪くて、起きられない。本書を手に取った人は少なからず、その経験者ではないだろうか。

(結び)
また、名前を全て挙げられないが、これまで酒席をともにした皆様や、夜が更けるにつれ明らかにヤバそうになっていく私を温かい目で見守り続けてくれた奇特な方々にも感謝を申し上げたい。
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[ 2019/11/19 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:自叙伝】 戦場へ行こう!!

【評価】★★★☆☆

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著者:雨宮処凛
出版:講談社



【北朝鮮を訪ねる理由】

悪の枢軸の2カ国-北朝鮮、イラクの訪問記を書いた著者の作品ということで、どこか海外の紛争地訪問記かと思い、手に取りましたが、内容は予想とは異なり、「なぜ、北朝鮮に行くのか」という著者の心の葛藤が描かれています。

自殺未遂、今の日本での居場所がないという居心地の悪さ、明確な敵と戦いたいというもやもやや屈折感をどうするのか・・・、そういったもろもろのことを何とかするため、生きていると実感ができるのではないかと、危険地帯や紛争地に自ら足を踏み入れている、そんな重いが綴られています。


【社会からの承認欲求】

著者は右翼団体に関わり、「愛国バンド」を率いて、反米や愛国主義を主張する歌を歌っているという経歴から、右翼的な思想から活動していたのだと思っていただけに、行動の背景にあるものが、社会との折り合いの悪さ、社会からの承認欲求的なものだたというのは、意外な衝撃でした。

確かに、紛争状態のイラクを訪ねて、そこでテロリストに捕まって処刑された若者が、ニュースを賑わせたなんてこともありますが、今思えば、この人も、雨宮さんと似たような思いでイラクに行ったのかもしれないと思います。

こういった気持ちが私に分かるかというと、「分かる、分かる」とは言えないかもしれませんが、若い頃、面白いことや危険なことの中に生きがいを求めて自衛隊に入ろうとした経験があるので(試験は受かってあと一歩というところで、親族に大反対され断念したのですが)、こういう気持ちはちょっとばかりは分かります。
こういった思い出は、時折、妻から、「昔、自衛隊に入ろうとしたんだよね-。」とニヤニヤしながら言われることがあり、苦笑いで返すことしかできない今の自分がいるわけです。



【小人閑居して不善をなす】

著者にとって北朝鮮やイラクに行くことは、反戦とか世界平和、社会的意義ということではなく、自分が燃えるかどうかという価値基準に基づいているだけと書いています。
香港のデモに参加している人も、みんながみんな民主化という理念で参加しているわけではなく、社会的な閉塞感やうっぷんを発散したいとかそういう人も多いのかもしれません。

紛争地や貧困・飢餓に見舞われている国に生きる人々はどうやって生き延びるかに精一杯で、社会的承認欲求とかを考えたり悩んだりする余裕はないわけです。

「小人閑居して不善をなす」なんていう言葉がありますが、どうも余裕ができると、不善ではないですが、思い悩んでしまうのが人間なのでしょう。
だからと言って、余裕がない社会が良いかというとそういうわけではなく、閑居した時も、「社会から疎外されている」と感じることのない仕組みが必要な気がします。

その点から考えると、昨今のSNSというシステムは、その解決に大いに近づけるものであり、SNSは、単なるIT技術ではなく、社会思想に近いシステムなのかも。




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【『戦場へ行こう!!』より】
そして一番恐ろしかったのは、敵と味方しかこの世に存在しない、北朝鮮を批判する者は今までどんな経緯があろうとも敵、という北朝鮮の考え方である。

(書き出し)
世界と思いきりセックスしたい。

(結び)
それが「今、ここ」という「戦場」だったら、こんなに嬉しいことはない。
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[ 2019/11/18 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:自叙伝】 アジア新聞屋台村

【評価】★★★★☆

ajia_newspaper.jpg
著者:高野秀行
出版:集英社


【カオスなアジア新聞会社】

台湾紙を中心に、アジア各国の新聞を日本で発行する混沌とした会社に関わることとなった高野氏の自叙伝。
この会社の経営者は台湾人女性で、人に使われるのは嫌だという理由で立ち上げられた会社。関わる人たちは、ほとんどが、日本に留学その他でやってきている在日アジア人。
社長の人並み外れたパワーと、アジア的カオスが融合して、日本の会社とは全く異なる発想、組織で動いていく当たりが、ある種、ベンチャー企業的なエネルギーとパワーを感じさせて、非常に面白いものを感じます。



【高野氏も日本人だった】

この会社、新聞社なのに、編集長はいない、新聞の記事は、現地の新聞記事を拾ってきて、それを翻訳したり解説をつけたりして、学級新聞の域を出ないような代物だったりと、なかなかのいい加減さがあります。

高野氏も、ある種のいい加減さやおおらかさがある人ではないかと、他の著者を読むとそう感じるのですが、この新聞社に関わるようになって、社長やメンバーに対し、「編集長を作るべきだ」とか、「毎週、定例の編集会議を開くべきだ」等々、繰り返し、まじめな提言をしたりしています。
・・・うーん、高野氏も日本人なんだなぁと感じる一面です。日本人は、なんだかんだ言っても結構きまじめではあります。



【アジア人の強さ】

この会社のようなカオスな組織形態(?)は、日本のようなまじめな組織形態とは違って、融通さや予想だにしない面白さがあるようで、「よくも悪くもいい加減」というのが持ち味になるようで、私なんかからすると、やっぱり面白くて好きだなぁと感じます(実際、そこで働いたら、どう思うか分からないですけど)。

ただし、やっぱり、その当たりは絶妙なバランスが必要なようで、この状況のまま業務を拡大していったところ、新聞記事の手抜きが横行し、「よくも悪くもいい加減」が、単に「悪い意味でいい加減」に傾いてしまったそうだから、こういう組織は意外と運用が難しいのかも。

こういった「悪い意味でのいい加減」が加速してしまった結果、給与が半年近く払えなくなるという事態が発生するのですが、そこで面白かったのが、会社内に数名いた日本人社員はみな退職してしまうのですが、その他のアジア人は会社に残ってくれます。

給与は半年も支払われなくて大丈夫かって・・・?
アジア人社員は、みんな副業もしていて、「副業で稼げるから、新聞社の給与が半年支払われなくてもなんとかなるね」だって(笑)。

高野氏は、「会社がゆらいでも本人はゆるがない」、アジア人の力強さに感動をしていましたが、私も同感。

この本を読んでいた時期、仕事でトラブルが発生していて、「うーん、どうしよう。おそらく、懲戒処分でも受けないと持たないかも・・」と結構悩んでいたのですが、この本を読んだら、「なんとかなるかな。そんなにきまじめに考えなくてもいいかー」と吹っ切れた気分になり、かなり元気づけられました。

どうも、日本人は生真面目すぎるなぁと、我ながら思いながら、本を読了したのでした。



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【『アジア新聞屋台村』より】
日本人に最も欠けているもの、それは選択肢なのだ。会社でも家庭でも学校でもボランティア活動でも、日本の集団というのは価値観が著しく画一化されている。その価値観から外れると、はじき出される。

(書き出し)
何事も始まりというものがある。

(結び)
私はひとりクスクス笑いながら、陽だまりのなかをあてもなく歩いていった。
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[ 2019/11/17 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:社会派小説】 約束の海(未完)

【評価】★★★★☆

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著者:山崎豊子
出版:新潮社



【最後の作品】

自衛隊の潜水艦と民間漁船の衝突事故を題材とした作品。
山崎豊子氏の最後の作品となっており、第3部まで予定されていたところ、第1部までしか書き上げることができず、逝去されてしまいました。

ただし、1部では、潜水艦と民間漁船の衝突事件は余すことなく描かれており、潜水艦側の主張と民間漁船側の主張がそれぞれの立場から描かれています。

自動車事故と同じで、双方の運転操作のまずさが相乗効果で、最悪な事故に結びついてしまた印象があり、どちらか一方が、少し注意して操船したり、危険回避を余裕をもって行えば、事故を回避できたのではないかとも感じました。

最悪な事故は、そうそう起こるものではないと考えると、逆に、事故当事者の何気ない一つ一つの行動の不運な積み重ねが揃って起こるのだろうと思います。
その行動の一つでも回避できていれば事故にならなかったことを思うと、油断、慢心などに心しないといけないと感じました。



【綿密な取材活動】

本作、1部までで著者が逝去されたので、未完の作品ではありますが、2部、3部の取材ノートが編集部によって付けられており、これが非常に興味深い内容でした。

一言で言うと、作品を作るのにすさまじい取材を行っているんだなぁというところです。
山崎豊子氏の作品は、現実の事件に即しつつ創作作品となっているわけですが、事件を相当取材していることは、作品を読めば実感できます。
それでも、本作に付いている取材ノートを見ると、想像以上に取材を重ねていて、おそらく、その情報でノンフィクション作品が作れるのではないかとも感じます。

それだけの取材を重ねつつ、創作作品という手法を選んでいるのは、小説家として一番ベストな表現手法が創作作品だと感じていたからなのかもしれません。



【被災者遺族の心情】

山崎豊子氏の逝去により新たな作品が読めなくなるのは残念ですが、まだ、読んでいない作品も数多くあるので、まだまだ読んで行きたいと思います。
過去にもいくつか作品を読んだことがありますが、山崎豊子氏の作品で秀逸だと思うのは、災害時の被害描写。
被災者遺族の心情の描写が胸に迫るものがあり、今回の作品でも、その描写分量は多くはありませんでしたが、他の作品同様、読んでいて胸にこみ上げてくるものがありました。

この心情描写の秀逸さが、作品をぐっと、現実味のあるものにしていますね。



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【『約束の海』より】
遺書を書いて任務に当たる職業は、今時の日本にはそうないだろう、その分、誇りと覚悟をもって当たっていたはずだ

(書き出し)
東京湾の浦賀水道は、東西を房総半島、三浦半島に抱かれた船舶の航路である。

(結び)
畏れを抱きながらも、揺るがぬ決断がそこから生まれる気がした。
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【書籍:歴史】 武王の門

【評価】★★★★★

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著者:北方謙三
出版:新潮社



【北方流歴史物】

最近、北方謙三氏の歴史物が面白いなぁと思って手に取ることが多いですが、本書もその流れで読了。
何が面白いかって、ストーリー展開もさることながら、あまり取り上げられることが少ない分野-日本史で言えば南北朝時代とか-が舞台となっていて、結末を知らない話、しかも実話を読むことができる新鮮さがあります。
子供の頃に、歴史物をわくわくしながら読んだ体験をもう一度味わえる感覚です。



【統一ものの面白さ】

本作は、南北朝時代に後醍醐天皇の息子として、九州に下り、南北朝側の指導者の一人として九州統一を目指した懐良親王(かねよししんのう)を主人公とした作品。
皇族ですから、貴族のようなものですが、本書では貴族ではなく一人の武将として描かれ、そこに九州の豪族・菊池家が懐良親王を強力に支えることで、非常に弱小な勢力だった懐良親王たちが、苦難の末、九州を統一するまでに至ります。

国家統一・天下統一ものの面白さは、日本だと戦国時代くらいしかないかなと思っていましたが、南北朝を題材にしても、こういう面白い作品が描けるのだなぁと驚きを禁じ得ませんでした。



【九州を越えるスケール】

三国志にはまったことのある人間としては、戦略・戦術の妙も非常に興味あるところですが、九州統一の強力なライバルであった少弐氏との激戦も、優勢を誇る少弐氏をどうやって策を持って打ち破るかという醍醐味が描かれ、非常に楽しむことができました。

スケールは、九州統一という、少しこじんまりしたものかもしれませんが、そこに、貿易、倭寇絡みで高麗や元も係わってきたり、九州を越えるスケールで描かれており、三国志とか戦国歴史物が好きな人には、本作も十分面白く感じられるのではないかと思います。



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【『武王の門』より】
夢のかたちは見えぬ。ただ、海をも越える夢を抱きたい、と思った

(書き出し)
海は、いつもなにかを孕んでいた。

(結び)
光。風。夢。海。
遠くなった。
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[ 2019/11/05 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:ビジネス小説】 商社審査部25時(知られざる戦士たち)

【評価】★★☆☆☆

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著者:高任和夫
出版:講談社



【商社の仕事】

私がよく知らない世界の仕事ってどうなっているんだろうということに興味があり、最近は、こういった様々な業界の仕事にまつわる小説も手にすることが多くなっています。

今回は、商社のお仕事。

山崎豊子氏の書いた「不毛地帯」は商社にまつわる話が書かれていて、商社の仕事の一端を知ることができますが、今回、たまたま商社の仕事に関する小説が眼に入ったので、読んでみようと思った次第。
「不毛地帯」とは、違った視点で商社の仕事が描かれています。



【事業再生と船舶ビジネス】

商社は物を右から左へ流す-売るのが仕事でありますが、本作では、商品の売り先の企業が経営難に陥ったことで売掛債権が回収困難になり、経営困難企業の最大の債権者となったことから、この企業の事業再生に係わっていくという展開。
そして、もう一つは巨大船舶の売買契約を締結させるビジネスにまつわるエピソード。
この2本建てで描かれています。

ストーリー的には、企業の事業再生の方が面白かったように思われます。



【裁判所と企業の落としどころ】

事業再生は、会社更生法に基づいて、裁判所の関与・調停のもと、会社更生手続が進められていきますが、裁判所の思惑、主人公側の企業の思惑、経営困難となった企業の思惑が交錯し、スムーズに話が進んでいきません。

裁判所側が、法律の精神に基づき、理念的であるものの、現実から乖離し、机上の空論的な方針に傾きがちになる一方、主人公側の企業は、これを奇貨として、自社の利を得ることをもくろんでいるのではないかと疑われ、関係者の信頼が得られないといった、行政、企業サイドそれぞれの思惑や事情が現れていて興味深いところでした。

最終的には、裁判所と主人公の企業サイドの意向が収斂し、うまく落としどころが見つかるわけですが、裁判所と企業、まったく違う理念で動く組織間で落としどころを探るのは非常に大変で、苦労も多いなぁと思う話でした。



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【『商社審査部25時』より】
敵にたち向かうと同時に、あるいはその前に、内部の敵を捜し、内部の人間の失敗を糾弾する。そして、そのことによって、その組織は内から崩壊する。

(書き出し)
3月29日。木曜日。

(結び)
このとき、「第二・十文字丸」は入江の彼方に姿を消した。
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【書籍:企業ルポ】 ホンダ神話Ⅱ 合従連衡の狭間で

【評価】★★★★☆

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著者:佐藤正明
出版:文藝春秋


【信玄亡き後の勝頼】

「ホンダ神話 教祖のなき後で」を大幅に加筆・修正したのが本作とのこと。
「教祖のなき後で」は以前読んだことはあるのですが、かなり昔に読んだこともあり、すっかり内容を忘れていたので、本作を読んでも、「以前、読んだことあるなぁ」なんてことはなく、新鮮に読むことができました(単に私の記憶が悪いだけの気が(笑))。

ホンダの創業者・本田宗一郎と藤沢武夫引退後の彼らの2世代、3世代後の後継者たちの苦悩が描かれます。

天才的な技術者と経営者であった二人の創業者の手法を「語り継げても受け継げず」という状況の中、後継者たちが混迷と迷走の中、ホンダをどこにもっていこうとするのか・・・天才の後を継いだ凡人(ではないですが・・)の苦悩を感じます。

言わば、巨匠・武田信玄の後を継いだ勝頼の心境といったところでしょうか。



【日産とルノーの統合】

本書で面白いのは、ホンダだけではなく、副題にある「合従連衡」のとおり、自動車業界の世界規模でのM&Aや統合、アライアンス(連携)といった動きも描かれている点。

中でも興味深かったのが、昨今、話題を振りまいている日産とルノーの統合の裏事情。
今は、日産とルノーが経営権を巡って内部闘争にも似た綱引きが行われていますが、2010年代前半に日産がルノーの子会社になるまでに、日産が苦悩の末、ルノーの軍門に降る決断は、企業の生き残りをかけた決断の熾烈さを感じることができます。

しかし、現在の日産とルノーのごたごたを見ると、組織というものは、形式的には合併・吸収できても、実態まで一体化するのは難しいということを痛感させます。
一旦事が起これば、分離する遠心力が働いてしまうわけで、人々を一つにまとめておくことは非常に難しいと言えます。



【ホンダの創業者一族】

本書では、本田宗一郎氏のご子息の話も触れられています。
ホンダには入らず、ホンダと直接のつながりを持つことがなかった宗一郎氏のご子息ですが、自身が経営する会社の経営破綻やそれに伴う詐欺事件などが、ホンダと関係ないといいつつ、ホンダや宗一郎氏の息子という立場に影響が及んでしまうことになります。
偉大な創業者を父に持ったが故に、血筋の呪縛とでもいうべきものがついてまわる悲劇のようなものもあり、色々簡単ではないなと思います。

一方のトヨタは、創業者の一族が、トヨタの社長になったり、うまくトヨタと関わっていくことで、創業者一族の繁栄につながっているようであり、トヨタとホンダの創業者一族の在り方の違いも興味深いところでした。

ホンダの歴史は、本田宗一郎氏の一族ではなく、宗一郎氏の薫陶を受けた弟子たちの歴史として紡がれているようです。




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【『ホンダ神話Ⅱ』より】
宗一郎と藤沢が作り上げた経営手法の問題点は、「語り継げても受け継げない」ことである。これは成功したどの創業者に共通して言えることだ。

(書き出し)
昭和元禄と呼ばれた時代が爛熟期にさしかかっていた昭和48年。

(結び)
本田「六本木の言う通りだ。あたしたちは草葉の陰で健闘を祈るしかない身だからな」
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プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
★★★☆☆:損はない
★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

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