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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:軍事】 兵士を見よ

【評価】★★★★☆

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著者:杉山隆男
出版:新潮社


【救難ヘリのパイロット】

「兵士に聞け」の続編。
「兵士に聞け」では、陸海空の自衛隊を網羅的に取材されていましたが、本作は、航空自衛隊に焦点を当て取材がされています。
航空自衛隊と言うと、戦闘機パイロットがイメージされますが、戦闘機乗りだけでなく、救難ヘリのパイロットなども取り上げられており、航空自衛隊の活動の幅広さがうかがえます。

航空自衛隊の中における位置づけは、戦闘機のパイロットが最上位に位置し、救難ヘリのパイロットはかなり格下に考えられているそうで、戦闘機パイロットから救難ヘリのパイロットへの転向は、「F転」と呼ばれ、格落ち、都落ち的に捉えられているようです。
そのため、予算その他、色々な扱いが救難ヘリに対しては、手薄になっており、気の毒というか、寂しいというか。

ただし、救難ヘリの良い点(?)としては、戦闘機パイロットと異なり、実際の事故の救助であり、仕事の達成感は格段に大きい点。
戦争がない日本において、戦闘機パイロットの仕事に実戦がなく、訓練中心となっている点からすると、救難業務の良いところなのでしょう。



【戦闘機パイロットの訓練】

戦闘機パイロットにまつわる話として興味深かったのが、パイロットの技量を高めるため、パイロットの訓練を担当する部署がある点。
訓練の担当というのは、格闘戦の敵側パイロット役(具体的にはソ連空軍役)となり、訓練の相手をするという役割で、普段から、ソ連空軍に徹するため、オフィスにはソ連の国旗が掲げられ、貼り紙などもロシア語で書かれているという徹底ぶり。

そして、訓練を担当する教官は、凄腕揃いで、各航空隊にいるエースパイロットを一ひねりできるくらい、実力差があるそうで、相手に訓練を付けるには、やはり相当の実力差がないとできないということなのでしょう。

こういった訓練の方法は、米軍の訓練方法から導入されたそうで、米軍の訓練もベトナム戦争での戦訓から生まれたものだそう。
ベトナム戦争後半、アメリカ空軍が撃墜される割合が高くなり、敵機の撃墜数より自軍の撃墜数が上回る状況となったことから、その原因などが分析されました。
分析の結果は、十分な訓練を積んだベテランパイロットも訓練時間が少ない新米パイロットも、実戦を10回くぐり抜けると、撃墜割合が少なくなり、撃墜される率はベテランも新米も変わらないというもの。

当初は、訓練時間の足りない新米パイロットを投入したがために、撃墜される率が高まったと思われていたのですが、実は訓練時間はあまり関係なく、実戦に慣れているかどうかが、撃墜との関係が強いという結論で、訓練がほとんど効果を上げていないことがわかったわけです。

分析して、「今までの訓練は効果がなかった」と言い切ってしまう辺り、アメリカのすごさという感じがします。
そして、分析に基づいて生まれたのが、実戦形式の訓練で、これが自衛隊の訓練にまで活かされているというあたり、アメリカの強さの象徴のように感じます。



【戦闘機への体験搭乗】

著者は、パイロットへの取材だけでなく、実際に戦闘機にも体験搭乗をしており、その様子も非常に面白い内容です。
F15戦闘機の戦闘訓練に同乗したわけですが、同乗するには、耐圧訓練を受けることが必要。
訓練室で、気圧を徐々に減らされると、お腹が急激に張り出してきて、おならをして、お腹の空気を抜かないといけないなど、実際に体験した人でないと分からない面白い話もでています。
他にも何名も一緒に訓練を受けていたのですが、みんなで一斉に大きな音のおならをするなんていうのは、なかなかない体験です(笑)。

その他、酸素欠乏により身体(頭脳)機能の低下実験もあり、高度8000mレベルの気圧下で、数字を順番に書いていくだけなのに、きちんと書くことができなくなる、なんていう結果も、予想以上に身体への影響があるんだなぁと驚いた点でした。
まぁ、日常でも酒を飲むと前後不覚になる経験はたくさんしているので、同じようなものでしょうか(同じにするなって!)

こういう訓練の風景を読むだけでも、航空自衛隊の仕事というのは、普通の仕事からはだいぶ違うなぁというのが実感でき、自分が体験したことのない非日常的な業務を日常としている自衛隊が面白そうに感じられました。
私の場合は、非日常を味わうには、お酒を飲んで酩酊するくらいですが、これは時と場所によっては批難の対象なので、あまりしょっちゅう出来ないことが悩みですね(悩むな!)



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【『兵士を見よ』より】
どんな組織でも、その組織にとってより重要とされる部分に金はつぎこまれていく。とすれば、槍の「穂先」と「柄」とでは金のかけ方が違ってきて当然なのだろう。

(書き出し)
その朝も、航空自衛隊のF15戦闘機パイロット、竹路昌修三佐は、出がけに十歳年下の妻の手で清めの塩をかけてもらった。

(結び)
唯一の気がかりは、四十代も折り返し点を過ぎた僕の体力が、彼らの強靭な歩みについてゆけるかということである。
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[ 2020/04/07 00:00 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 兵士に聞け

【評価】★★★★★

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著者:杉山隆男
出版:新潮文庫



【等身大の自衛隊】

昔、自衛隊に入隊しようと本気で思っていた頃があり、その頃にこの本も読んで結構影響受けたなぁと、ちょっと懐かしく思いながら読み返しました。懐かしくっていうか、若かりし頃の、少々厨二病的だった自分を思い出す感じで、どっちかというと気恥ずかしいかなと言う気分。

本書は、自衛隊で働く人々(いわゆる兵士ですかね)の等身大の姿を描きつつ、自衛隊という組織の実像を描き出した名著。
自衛隊に入隊した若者も多数取材しており、その中で、自衛隊に入隊した動機として、「自分を向上させるため、より厳しい環境に身を置いたら良いかと思って」と語る若者が出てきますが、わかるー、と思う自分がいます。
私が自衛隊に入ろうと思った動機にかなり近い考えなので。

妻に、昔、私が自衛隊に入ろうとした話がばれていて、時折、「昔、自衛隊に入ろうとしたんだよね(ニヤニヤ)。なんで?」と、話のネタにされることもあるのですが、「自分を向上させたかったから」という動機は恥ずかしくて言えないので、「いやぁ、当時、世界征服を考えていたんだよね(←もっとやばい人になっている)」と言ってごまかしてます。
しかし、この答えも弊害があり、シミュレーションゲームとかをちょっとやっていると、「あー、また、バーチャルな世界で世界征服とか企んでるよ!」などとからかわれてしまっています(苦笑)。



【待ったなしの本番では】

自衛隊は、事実上、軍隊であるわけですが、日本国憲法による制約のため軍隊という本質は隠され、そのためのゆがみというものが生じているようです。
組織自体が官僚化して、現場より組織内部のことが優先されがちになり、出世するのは、現場をよく知る人間ではなく、中央で紙のキャリアを重ねた人間だったりします。

又、本書では、著者が護衛艦の同乗取材の最中、偶然、遭難したヨットに遭遇し、護衛艦が救助を行う場面に立ち会うというまたとない機会に出会います。
しかし、救助では、救助に向かった救助艇が逆に遭難したヨットに絡まり、救助する側から、救助される側になるという、不手際となる結果に。
結局、近隣の他の護衛艦を呼び出して救助してもらう結果になります。

自衛官が、苦笑交じりに、「マニュアル通りの訓練ならきっちりできるけど、待ったなしの本番になるとたちまち右往左往して腰砕けになってしまう。」とつぶやいた言葉に象徴されるように、軍隊という本質を隠すため、実践を経験できない自衛隊という組織のもろさが露呈した結果のようでした。



【用意周到 一歩後退】

自衛隊には、陸上自衛隊・航空自衛隊・海上自衛隊がありますが、それぞれ組織の特徴を表す言葉があるそうです。陸上自衛隊は、「用意周到 一歩後退」、航空自衛隊は、「勇猛果敢 支離滅裂」、海上自衛隊は、「伝統墨守 唯我独尊」という言葉。

「自衛隊は紙で動く」と皮肉られるくらい、何事も書類を通さないと物事が動かない組織だそうですが、その中でも陸上自衛隊は、その傾向が非常に強く、慎重に慎重を重ねた上、結局物事が進まない組織ということで、「用意周到 一歩後退」という言葉が捧げられています。

戦前の日本軍は紙で動くどころか、勝手に暴走して制御がきかない組織だったので、その反省が陸上自衛隊に取り入れられているのでしょうが、軍隊が、「書類でがんじがらめ」というのも、いかがなものかなぁという感じもします。
どうも、日本人は生真面目なのか、両極端に走る傾向があります。

ただし、この本は、20年ほど前に書かれたものなので、自衛隊を巡る環境も、自衛隊自身も変化している野田と思います。それでも、今、読んでも、「確かに、組織ってこういうところあるよなぁ」と感じるのは、組織の有り様が進歩していないのか、そもそも、組織っていうのは変わらないということなのか・・・。



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【『兵士に聞け』より】
自衛隊とは本にならない原稿を書きつづけるところ、という元将軍の比喩はミットのど真ん中めがけて投げ込まれた直球のストライクのようにすっぽり僕の中に収まった。

(書き出し)
自衛隊の建物には一つの特徴がある。

(結び)
彼の「カンボジア」は終わっても、あの半年の間、離れ離れの二人を結びつけていた、だから、あの半年の記憶がしみこんだ十二通の手紙は、いまも、そしてこれからも、ずっと二人のそばにある。
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[ 2020/03/24 00:00 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 専守防衛

【評価】★★★☆☆

著者:外山三郎
出版:芙蓉書房


【専守防衛の戦史紹介】

「専守防衛」という言葉は、冷戦時代に日本の防衛方針のあり方としてよく聞いた言葉だったと思いますが、最近は、この言葉はほとんど聞かなくなったように思います。
「専守防衛」の定義があまりはっきりせず、本書を読んでもその当たりはいまいちはっきりしませんが、広義に取れば侵略戦争を目的とした戦争、狭義に取れば、相手に攻撃を受けて反撃し、かつ、敵国領土には攻撃をしかけない、といったあたりでしょうか。

本書では、専守防衛の戦史紹介、戦史を踏まえた日本の専守防衛のあり方が提言されています。
戦史は、攻め込まれて受け手に回って勝利した側にスポットを当てた内容で、これをもって専守防衛の事例というと、専守防衛の範囲はかなり幅広いことになるなぁという印象。

イギリスの事例は3件と最も多く、スペイン無敵艦隊との戦い、ナポレオン戦争、第二次大戦が取り上げられており、日本と同じ島国でありますが、ヨーロッパ大陸の国々と関わりがあるだけに、置かれている情勢もかなり異なる感じで、外交と戦争の両方をにらみながら、かなり繊細な駆け引きがイギリスには求められていたようです。



【通商破壊作戦】

戦史紹介で興味深かったのが、第一次世界大戦、第二次世界大戦におけるドイツの無制限潜水艦攻撃-いわゆる海上通商破壊作戦に関するもの。

第一次大戦においては、ドイツがもっといち早く、無制限潜水艦攻撃に踏み切っていれば、イギリスを屈服させることができたのではないか、というのが著者の主張ですが、無制限潜水艦作戦が中立国-特にアメリカの対ドイツ参戦を誘発してしまったことを考えると、戦術面では効果はあっても戦略面では失策のきらいがあり、そう簡単ではないでしょう。
戦争が自国と相手国だけの問題ではなく、中立国など利害関係を持つ国も多数ある中で、どれだけ、中立国を味方に付けられるかが、戦争の帰趨を決するということを示唆する事例と思われます。

第二次大戦のドイツのユーボートによる海上通商破壊作戦は、連合国側の対潜水艦技術-ソナー技術開発や空爆による潜水艦攻撃などの技術進歩が、ドイツの作戦を頓挫させており、日米の航空機戦でもそうでしたが、技術開発競争が戦争の行方も左右するという、まさに国家の総力戦こそが第二次大戦であったことを示しているように思われます。



【海上輸送の防衛】

ドイツの通商破壊作戦を戦史の教訓として、本書では専守防衛の要として、海上輸送防衛に主眼を置く軍事力整備を提言しています。
日本が、補給軽視で戦争に敗れたことを踏まえると、海上輸送をきちんと確保する戦略・戦術は非常に重要に思われます。

本書が書かれた当時は、仮想敵国(ソ連)との直接戦争を想定しての海上輸送防衛なので、現在の戦争のあり方からすると、現実とだいぶかけ離れた提言ではあります。
戦争が、国家間の直接戦闘から、テロや破壊活動など正規の軍事力を使わない方法で攪乱を主流とするような状況は、当時からすると考えられないことでしょうから、これは致し方がなく、むしろ、戦争のあり方が大きく変わったことの驚きの方が大きいように思います。

とは言え、通商安全の確保は、現在の日本にとっても、命綱ではあるので、防衛の仕方は変わっても、様々な方法を用いて、通商確保に努めることは重要です。



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【『専守防衛』より】
しかしこれらの事実は、圧倒的な大軍の侵入に対しては、それが地続きの国境を越えてくるときは、究極的には阻止できないことを示したことになる。

(書き出し)
世界史を顧みるとき、大敵の直接侵攻を見事に撃退した大戦争の歴史が燦として輝いている。

(結び)
後者については、日本周辺海域を含め米海軍のシー・パワーに依存しなければならないことを認め、米海軍との協力に万全を期さなければならない。
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[ 2020/01/12 14:18 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 われら張鼓峰を死守す

【評価】★★★☆☆

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著者:冨永亀太郎
出版:芙蓉書房



【ノモハン事変の前哨戦となった国境紛争】

張鼓峰事件というのは、戦前、満州国境を巡って日ソ間で起こった国境紛争の局地戦。
ソ連の機工化された部隊に日本側が苦戦するという結果となり、後年発生した、更に大規模な国境紛争-ノモハン事変では、日本が張鼓峰事件の教訓を生かし切れなかった結果、ソ連に大敗北するという結果となります。

その観点から、非常に興味深い事件なのですが、大規模な紛争ではなかったこともあり、あまり知られていません。
本書は、張鼓峰事件で、70名ほどの隊を率いて防戦につとめた中隊長が実体験を綴ったもので、貴重な作品と言えます。

本書は、戦後になってから記されていますが、当時の戦後日本の防衛戦略が「専守防衛」という言葉で語られていたこともあり、張鼓峰事件を専守防衛という考え方に結びつけているのは、時代を感じますが、その当たりを差し置くと、当時の日本の国力の限界なども見える内容で、戦前の日本の軍事情勢を知るには面白い本だと思います。



【戦術レベルの課題では結論出せず】

満州国を占領していた日本に対して、国境線が未決着で争いとなっていた地に、ソ連軍が進駐してきたことがきっかけで、張鼓峰事件が起こることになります。
ソ連と日本において、当初から戦力差が大きかった上に、日中戦争を戦っていた日本としては、ソ連との紛争を拡大したくないという思惑もあり、戦力投入をためらった結果、ソ連軍にかなり押される結果になりました。

日本側の課題として、戦力不拡大の方針がために、戦力の逐次投入の愚に陥ったとか、ソ連を甘く見ていて、国境の防衛強化が弱かった等、色々あったようですが、どちらかというと戦術レベルの課題は、元々国力差の違いなどが前提にあったことを考えると、では、どうすれば良かったか、という答えはなさそうだなぁという印象でした。

むしろ、外交方針やら国家方針レベルの戦略が誤っていたひずみが、張鼓峰事件の勃発や苦戦に繋がっているように思われるので、張鼓峰事件だけ切り取って論じても、結論は出ないように思われます。



【川中島の合戦のよう】

張鼓峰事件をめぐる日ソの関係を見て感じたのは、戦国時代の上杉・武田による川中島の合戦を思い起こすなぁというもの。

張鼓峰事件は、停戦するまで、張鼓峰の山頂を日本軍が辛くも死守しましたが、停戦後、余力のない日本軍は張鼓峰から撤退、いつの間にやらソ連が張鼓峰に陣地を構築、実効支配してしまうという結果になりました。

川中島の合戦でも上杉・武田の激闘が繰り広げられ、戦闘自体はどちらが勝ったとも甲乙付けがたい状況になったものの、戦後は武田側が川中島一帯を支配してしまったわけで、政治力などで武田側に分があったともいえます。

ソ連も、川中島の合戦の武田方のようなしたたかさも感じられ、戦争を、戦場だけでなく、戦後も含めたトータルの計算をすることができたソ連が一枚も二枚も上手だった、そんな印象です。

現在、ソ連(今はロシアですが)とは、北方領土が国境紛争の種ではありますが、このしたたかさがロシア側に有る限り、なかなか日本の思うとおりにはいかないか・・・そんなことも考える内容でした。



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【『われら張鼓峰を死守す』より】
従って独断専行は、上司の意図にそったもので上官の意図外に出ることは許されない。

(書き出し)
張鼓峰は、朝鮮の北部国境を流れる豆満江に近い、湖沼と河にはさまれた丘陵地帯にそびえる標高149メートルの山で、その名の通り鼓を張ったような、稜線のきわだった、きれいな山である。

(結び)
列車は降りしきる雨の中を、英霊に黙祷を捧げるかのように、白い煙りを残して、ひたすら南へ、南へと走り続けた。
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[ 2020/01/01 00:00 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 ノモハンの夏

【評価】★★★☆☆

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著者:半藤一利
出版:文藝春秋


【ノモハン事変について】

太平洋戦争の始まる直前に、満州国とソ連国境で、関東軍とソ連軍が衝突し、関東軍が大敗北を喫した「ノモハン事変」について(宣戦布告が行われずに起こった軍事衝突は事変と言うようです)、日本陸軍の判断ミスや組織的欠点を軸に描いた作品。



【二正面作戦を避けるために】

ノモハン事変、もしくはノモハン事件という言葉は、歴史の教科書なんかで聞いたことはあっても、具体的なことはよく分からず、戦前にあった、ソ連との国境紛争に端を発した軍事衝突くらいのイメージでしかありませんでした。
しかし、本書を読むと、日本の外交やナチスドイツが引き起こそうとしている欧州戦争とも深くかかわる事件で、日本の稚拙な対応が目に余るなぁという印象でした。

中国との泥沼の戦争状態にある日本が、二正面作戦の下手を打たないため、ソ連との衝突はなんとしても避けたいと思っている一方、ソ連も、ドイツと日本の二正面を敵に回す愚を犯したくないという思惑がある中での国境紛争でした。

実は、日本もソ連も本音のところでは、お互いを敵に回さないようにするという考えは一致していますが、その本音を隠しながら、事を有利に運ぶにはどうすれば良いかという点で、日本の戦略は、かなり稚拙な結果に終わったようです。



【ノモハン事変の教訓】

日本は、現場の関東軍と、本国の参謀本部の連携が全く取れていない上に、関東軍は、声が大きく勇猛なことを言う人間の意見に引きずられ、戦力がソ連と比べて不利にもかかわらず、無茶な作戦を実施、4万の死傷者を出し、部隊によっては全滅状態になるなど、散々な結果に終わってしまいます。

ノモハン事変は、軍の装備、火力、運用、戦術面など、色々な課題を浮き彫りにし、実に非常に多くの教訓を得る機会でもありましたが、結局、日本軍は、その教訓を汲み取ることなく、太平洋戦争でも同じような失態を繰り返すことになります。

そのようなことになった原因は、多々あるのでしょうが、教訓を活かせる人や組織に作り替えなかったことが大きな要因という気もします。
結局、ノモハン事変の関東軍の作戦を指導し、我田引水的な発想で失敗をした関東軍の参謀たちは、ほとんどお咎めなしで、太平洋戦争では、中枢の参謀として起用されるなんていうことだったようです。

組織や人が変わることは、そう簡単ではない、「教訓を活かす」ことの難しさを、ノモハン事変を描いた本書からは伝わってくるようです。


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【『ノモハンの夏』より】
大いなる楽観というか、夜郎自大の判断というか。ここでもまたソ連軍軽視がのぞいている。いつでも日本軍は独善的な、主観的な戦いを戦っている。

(書き出し)
古くは加藤清正の上屋敷がそこに建てられていた。

(結び)
そして人は何も過去から学ばないことを思い知らされる。
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[ 2019/04/13 07:07 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)
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kappa1973

Author:kappa1973
 
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