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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:軍事】 専守防衛

【評価】★★★☆☆

著者:外山三郎
出版:芙蓉書房


【専守防衛の戦史紹介】

「専守防衛」という言葉は、冷戦時代に日本の防衛方針のあり方としてよく聞いた言葉だったと思いますが、最近は、この言葉はほとんど聞かなくなったように思います。
「専守防衛」の定義があまりはっきりせず、本書を読んでもその当たりはいまいちはっきりしませんが、広義に取れば侵略戦争を目的とした戦争、狭義に取れば、相手に攻撃を受けて反撃し、かつ、敵国領土には攻撃をしかけない、といったあたりでしょうか。

本書では、専守防衛の戦史紹介、戦史を踏まえた日本の専守防衛のあり方が提言されています。
戦史は、攻め込まれて受け手に回って勝利した側にスポットを当てた内容で、これをもって専守防衛の事例というと、専守防衛の範囲はかなり幅広いことになるなぁという印象。

イギリスの事例は3件と最も多く、スペイン無敵艦隊との戦い、ナポレオン戦争、第二次大戦が取り上げられており、日本と同じ島国でありますが、ヨーロッパ大陸の国々と関わりがあるだけに、置かれている情勢もかなり異なる感じで、外交と戦争の両方をにらみながら、かなり繊細な駆け引きがイギリスには求められていたようです。



【通商破壊作戦】

戦史紹介で興味深かったのが、第一次世界大戦、第二次世界大戦におけるドイツの無制限潜水艦攻撃-いわゆる海上通商破壊作戦に関するもの。

第一次大戦においては、ドイツがもっといち早く、無制限潜水艦攻撃に踏み切っていれば、イギリスを屈服させることができたのではないか、というのが著者の主張ですが、無制限潜水艦作戦が中立国-特にアメリカの対ドイツ参戦を誘発してしまったことを考えると、戦術面では効果はあっても戦略面では失策のきらいがあり、そう簡単ではないでしょう。
戦争が自国と相手国だけの問題ではなく、中立国など利害関係を持つ国も多数ある中で、どれだけ、中立国を味方に付けられるかが、戦争の帰趨を決するということを示唆する事例と思われます。

第二次大戦のドイツのユーボートによる海上通商破壊作戦は、連合国側の対潜水艦技術-ソナー技術開発や空爆による潜水艦攻撃などの技術進歩が、ドイツの作戦を頓挫させており、日米の航空機戦でもそうでしたが、技術開発競争が戦争の行方も左右するという、まさに国家の総力戦こそが第二次大戦であったことを示しているように思われます。



【海上輸送の防衛】

ドイツの通商破壊作戦を戦史の教訓として、本書では専守防衛の要として、海上輸送防衛に主眼を置く軍事力整備を提言しています。
日本が、補給軽視で戦争に敗れたことを踏まえると、海上輸送をきちんと確保する戦略・戦術は非常に重要に思われます。

本書が書かれた当時は、仮想敵国(ソ連)との直接戦争を想定しての海上輸送防衛なので、現在の戦争のあり方からすると、現実とだいぶかけ離れた提言ではあります。
戦争が、国家間の直接戦闘から、テロや破壊活動など正規の軍事力を使わない方法で攪乱を主流とするような状況は、当時からすると考えられないことでしょうから、これは致し方がなく、むしろ、戦争のあり方が大きく変わったことの驚きの方が大きいように思います。

とは言え、通商安全の確保は、現在の日本にとっても、命綱ではあるので、防衛の仕方は変わっても、様々な方法を用いて、通商確保に努めることは重要です。



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【『専守防衛』より】
しかしこれらの事実は、圧倒的な大軍の侵入に対しては、それが地続きの国境を越えてくるときは、究極的には阻止できないことを示したことになる。

(書き出し)
世界史を顧みるとき、大敵の直接侵攻を見事に撃退した大戦争の歴史が燦として輝いている。

(結び)
後者については、日本周辺海域を含め米海軍のシー・パワーに依存しなければならないことを認め、米海軍との協力に万全を期さなければならない。
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[ 2020/01/12 14:18 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 われら張鼓峰を死守す

【評価】★★★☆☆

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著者:冨永亀太郎
出版:芙蓉書房



【ノモハン事変の前哨戦となった国境紛争】

張鼓峰事件というのは、戦前、満州国境を巡って日ソ間で起こった国境紛争の局地戦。
ソ連の機工化された部隊に日本側が苦戦するという結果となり、後年発生した、更に大規模な国境紛争-ノモハン事変では、日本が張鼓峰事件の教訓を生かし切れなかった結果、ソ連に大敗北するという結果となります。

その観点から、非常に興味深い事件なのですが、大規模な紛争ではなかったこともあり、あまり知られていません。
本書は、張鼓峰事件で、70名ほどの隊を率いて防戦につとめた中隊長が実体験を綴ったもので、貴重な作品と言えます。

本書は、戦後になってから記されていますが、当時の戦後日本の防衛戦略が「専守防衛」という言葉で語られていたこともあり、張鼓峰事件を専守防衛という考え方に結びつけているのは、時代を感じますが、その当たりを差し置くと、当時の日本の国力の限界なども見える内容で、戦前の日本の軍事情勢を知るには面白い本だと思います。



【戦術レベルの課題では結論出せず】

満州国を占領していた日本に対して、国境線が未決着で争いとなっていた地に、ソ連軍が進駐してきたことがきっかけで、張鼓峰事件が起こることになります。
ソ連と日本において、当初から戦力差が大きかった上に、日中戦争を戦っていた日本としては、ソ連との紛争を拡大したくないという思惑もあり、戦力投入をためらった結果、ソ連軍にかなり押される結果になりました。

日本側の課題として、戦力不拡大の方針がために、戦力の逐次投入の愚に陥ったとか、ソ連を甘く見ていて、国境の防衛強化が弱かった等、色々あったようですが、どちらかというと戦術レベルの課題は、元々国力差の違いなどが前提にあったことを考えると、では、どうすれば良かったか、という答えはなさそうだなぁという印象でした。

むしろ、外交方針やら国家方針レベルの戦略が誤っていたひずみが、張鼓峰事件の勃発や苦戦に繋がっているように思われるので、張鼓峰事件だけ切り取って論じても、結論は出ないように思われます。



【川中島の合戦のよう】

張鼓峰事件をめぐる日ソの関係を見て感じたのは、戦国時代の上杉・武田による川中島の合戦を思い起こすなぁというもの。

張鼓峰事件は、停戦するまで、張鼓峰の山頂を日本軍が辛くも死守しましたが、停戦後、余力のない日本軍は張鼓峰から撤退、いつの間にやらソ連が張鼓峰に陣地を構築、実効支配してしまうという結果になりました。

川中島の合戦でも上杉・武田の激闘が繰り広げられ、戦闘自体はどちらが勝ったとも甲乙付けがたい状況になったものの、戦後は武田側が川中島一帯を支配してしまったわけで、政治力などで武田側に分があったともいえます。

ソ連も、川中島の合戦の武田方のようなしたたかさも感じられ、戦争を、戦場だけでなく、戦後も含めたトータルの計算をすることができたソ連が一枚も二枚も上手だった、そんな印象です。

現在、ソ連(今はロシアですが)とは、北方領土が国境紛争の種ではありますが、このしたたかさがロシア側に有る限り、なかなか日本の思うとおりにはいかないか・・・そんなことも考える内容でした。



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【『われら張鼓峰を死守す』より】
従って独断専行は、上司の意図にそったもので上官の意図外に出ることは許されない。

(書き出し)
張鼓峰は、朝鮮の北部国境を流れる豆満江に近い、湖沼と河にはさまれた丘陵地帯にそびえる標高149メートルの山で、その名の通り鼓を張ったような、稜線のきわだった、きれいな山である。

(結び)
列車は降りしきる雨の中を、英霊に黙祷を捧げるかのように、白い煙りを残して、ひたすら南へ、南へと走り続けた。
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[ 2020/01/01 00:00 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 ノモハンの夏

【評価】★★★☆☆

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著者:半藤一利
出版:文藝春秋


【ノモハン事変について】

太平洋戦争の始まる直前に、満州国とソ連国境で、関東軍とソ連軍が衝突し、関東軍が大敗北を喫した「ノモハン事変」について(宣戦布告が行われずに起こった軍事衝突は事変と言うようです)、日本陸軍の判断ミスや組織的欠点を軸に描いた作品。



【二正面作戦を避けるために】

ノモハン事変、もしくはノモハン事件という言葉は、歴史の教科書なんかで聞いたことはあっても、具体的なことはよく分からず、戦前にあった、ソ連との国境紛争に端を発した軍事衝突くらいのイメージでしかありませんでした。
しかし、本書を読むと、日本の外交やナチスドイツが引き起こそうとしている欧州戦争とも深くかかわる事件で、日本の稚拙な対応が目に余るなぁという印象でした。

中国との泥沼の戦争状態にある日本が、二正面作戦の下手を打たないため、ソ連との衝突はなんとしても避けたいと思っている一方、ソ連も、ドイツと日本の二正面を敵に回す愚を犯したくないという思惑がある中での国境紛争でした。

実は、日本もソ連も本音のところでは、お互いを敵に回さないようにするという考えは一致していますが、その本音を隠しながら、事を有利に運ぶにはどうすれば良いかという点で、日本の戦略は、かなり稚拙な結果に終わったようです。



【ノモハン事変の教訓】

日本は、現場の関東軍と、本国の参謀本部の連携が全く取れていない上に、関東軍は、声が大きく勇猛なことを言う人間の意見に引きずられ、戦力がソ連と比べて不利にもかかわらず、無茶な作戦を実施、4万の死傷者を出し、部隊によっては全滅状態になるなど、散々な結果に終わってしまいます。

ノモハン事変は、軍の装備、火力、運用、戦術面など、色々な課題を浮き彫りにし、実に非常に多くの教訓を得る機会でもありましたが、結局、日本軍は、その教訓を汲み取ることなく、太平洋戦争でも同じような失態を繰り返すことになります。

そのようなことになった原因は、多々あるのでしょうが、教訓を活かせる人や組織に作り替えなかったことが大きな要因という気もします。
結局、ノモハン事変の関東軍の作戦を指導し、我田引水的な発想で失敗をした関東軍の参謀たちは、ほとんどお咎めなしで、太平洋戦争では、中枢の参謀として起用されるなんていうことだったようです。

組織や人が変わることは、そう簡単ではない、「教訓を活かす」ことの難しさを、ノモハン事変を描いた本書からは伝わってくるようです。


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【『ノモハンの夏』より】
大いなる楽観というか、夜郎自大の判断というか。ここでもまたソ連軍軽視がのぞいている。いつでも日本軍は独善的な、主観的な戦いを戦っている。

(書き出し)
古くは加藤清正の上屋敷がそこに建てられていた。

(結び)
そして人は何も過去から学ばないことを思い知らされる。
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[ 2019/04/13 07:07 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 局地戦闘機「雷電」 異貌の海鷲

【評価】★★★☆☆

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著者:渡辺洋二
出版:文藝春秋



【「屠龍」より読みやすい】

以前に読んだ「屠龍」に比べると、だいぶ読みやすい内容でした。
「屠龍」の場合は、本書の中で、「屠龍」の名前が使われる頻度が少なく、「屠龍」の話なのか、別の航空機の話なのかよく分からなかったところがありましたが、「雷電」の場合は、「雷電」の名前が本書の中で、しっかり使われていたので、流れがだいたい追えたという点があったのかなと思いました。



【専門家向けの飛行機】

雷電は、局地戦闘機という、敵機が襲撃してきた時に、迎撃するための戦闘機という位置づけで、離陸してすぐに、敵機がいる空域に達するよう、高速での上昇力が重要視された戦闘機です。

そのため、格闘戦の能力は劣るため、俊敏性に欠ける爆撃機に対しては、ある程度の攻撃力は発するものの、敏捷な戦闘機との格闘は不利で一撃離脱戦法を取らないといけないなど、航空機としての運用は、難しさもあったようです。

著者は、ゼロ戦を万能型で、いわばどのようなことにでも使える十得ナイフのようなものだが、それぞれの分野の専門家にはかなわない一方、「雷電」は、専門家のための道具のようなもので、普通の人が使いこなし、その性能を引き出すことは難しいが、精通した人が使えば、高い効果を発揮する、そんな評価をしています。



【多発する事故死】


専門家向けの飛行機という評価ではあるものの、その使いづらさは相当のもののようで、着陸時には、視界が悪すぎるため、座席から腰を浮かし前かがみにならないと、前方が見えないなんていう作りだったそうで、専門家以前に、すさまじく、操縦が難しい飛行機のようです。

実際、本書は、戦闘機としての戦いの話も出てくるものの、おそらく、一番多く占めているのは、練習中などでの事故死の話だった印象です。

戦時中の緊急時とは言え、こんなに事故死するものなのかと、かなり驚きでした。
雷電が配属されると、「週に一回は葬式が行われる」なんて揶揄されたなんていう話も載っており、命がけの飛行機という印象でもありました。



【事故死か特攻死か】

事故死を乗り越えた人でないと扱えない飛行機というのは、確かに専門家向けの飛行機と言えそうですが、それでは、なかなか実戦で活躍するのは難しいのだろうなぁと思うところでもありました。

救いは、それだけ扱いにくい飛行機であったことにより、特攻機として使われることはほとんどなかった点でしょうか。

事故死か特攻死か、二者選択になるような日本軍の戦術は酷すぎますが、当時の日本の技術力が足りなかったことが、こういった選択肢を生み出さざる得なかったのかもしれません。

戦争は、つくづく技術力の競争なのだなと痛感するのでした。




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【『局地戦闘機「雷電」』より】
人間を機械に合わせてしまったアメリカ人と、機械を人間に会わさなければ承知しない日本人の気質の差が、ここに端的に表れている。

(書き出し)
三年八ヵ月にわたった太平洋戦争を、日本海軍戦闘機隊は零戦だけで戦った、と答えてもあながち過言ではあるまい。

(結び)
飛行練習生のとき、初めての場外飛行でまったく逆のコースを飛んだ松本飛曹長にとって、万感、胸に迫ったという。
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[ 2018/09/09 00:00 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:軍事】 双発戦闘機「屠龍」 一撃必殺の重爆キラー

【評価】★★☆☆☆

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著者:渡辺洋二
出版:文藝春秋



【素人には難しすぎるか】

太平洋戦争時に日本軍が開発した、エンジンを二機積んだ双発戦闘機「屠龍」をテーマにした作品。
読んだ感想としては、専門的過ぎるためか、全体像などもあまりよくわからなかったなぁという印象。

そもそも「屠龍」という名前が付いているものの、ほとんど、その名が使われておらず、戦闘機が符号で呼ばれており、更に、色々と改良が加えられると、符号も変わってくるので、どれが「屠龍」なのかすら、よく分からなかったです。

戦闘機マニアの人向けの作品といったところでした。



【対飛行機 特攻】

おそらく、本書は「屠龍」のことを書いているといいつつ、「屠龍」を巡る戦況なども絡めて描かれているため、他の戦闘機の動向なども記されており、それが、内容的に混然とした印象になったのかもしれません。

それにしても、太平洋戦争の話を読んで暗然となるのは、アメリカの技術力に対抗できなくなる太平洋戦争中盤から後半には、「体当たり攻撃しかない」という判断に一気に日本が傾いていってしまうところ。

特攻機による艦船への特攻はよく知られていますが、B-29を撃墜するため、航空機特攻が行われていたというのも、愕然とさせられるものがありました。
敗戦濃色になり追い込まれた日本の発想が、色々なところで歪みを生じさせているのだと改めて実感。



【著者の熱意に感服】

本書、内容は非常に専門家向けで難しいので、内容面では面白いかというと、YESとは言い難いですが、著者の本書にかける熱意や思いは、非常に面白く感じました(後書きが面白い)。

データの扱いや間違いなどへの認識は、素人から見ると、大変些細に思ったりもしますが、著者が熱意をもって追い求めたり、検証したりした様子が、後書きで書かれており、マニア魂(?)を感じさせます。

こういう人がいるからこそ、埋もれてしまう歴史・過去が発掘できるのでしょうね。





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【『双発戦闘機「屠龍」』より】
ものごとにはなんでも、土台が必要である。キ四五の長所と欠点は、続くキ四五改のよき参考になったはずだ。

(書き出し)
「より高く、より速く、より遠く」は、飛行機が登場して以来、基本的な命題であり続けてきた。

(結び)
それは、技術者が、そして空・地両勤務者が血と汗とで築き上げた、日本航空史の重要な一部であった。
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[ 2018/09/08 01:23 ] 軍事 | TrackBack(0) | Comment(0)
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kappa1973

Author:kappa1973
 
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