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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【漫画:スポーツ】 ZERO(全2巻)

【評価】★★★★☆

zero.jpg
著者:松本大洋
出版:小学館


以前は、ボクシングを見るのが好きで、ボクシング漫画なんかも、結構、読み漁っていた時期がありました。そういった時に出会ったのが、この「ZERO」でしたが、短いながら、圧倒的な展開でかなり感動した覚えがあります。
漫画自体は、その後、人に貸すか何かして手放したままだったのですが、ブックオフでたまたま目にしたので、再度購入、読んでみました。

内容は、圧倒的な強さを誇るミドル級王者、五島雅の狂気と孤高を描いた作品です。
圧倒的な強さを誇るが故に、挑戦者を全く寄せ付けず、10年間、ミドル級王者の座を守り続けている五島。
そんな中、メキシコで圧倒的な強さを持つメキシコ王者トラビスの噂を耳にした五島は、トラビスを挑戦者として対戦をすることとします。
トラビスから、自身と同じ異能者の匂いをかぎ取った五島は、トラビスに自身の全てを継承させるべく、全力で闘いに臨みます。
トラビスは、パワー、スピード、スタミナともに五島を上回り、五島を圧倒しますが、五島の闘うことへの執念、狂気は、トラビスを飲み込んでしまい、トラビスは五島の狂気に付いていくことが出来ず、膝を屈することになります。
五島の後継者と目されたトラビスさえも、五島の下にたどり着くことはできず、五島は、誰も付いてこれない孤独な世界で一人叫び続けるのだった・・・。

こんな感じで、圧倒的な才能を持つ異能者故に、誰からも本当に理解されることなく孤独な世界を生き続けなければならない天才の話-そんなストーリーとなっています。
それ故、五島の他者を寄せ付けない圧倒的な強さは、作中の登場人物が、それぞれの立場から様々に評価するわけですが、その中でも、五島の所属するボクシングジムのトレーナーの評価は痛烈です。

「あの強さ無意味です。冷徹で残酷。」

この言葉を読むたびに、いつも新撰組を思い起こしてしまいます。
新撰組自体は、尊皇攘夷とか佐幕とか目的はあったのかもしれませんが、後になって振り返ってみると、「冷徹で残酷、無意味な強さ」、こんな評価も一面では当てはまるように思います。
しかし、後世からみると、新撰組の冷徹で、強さだけを追求するようなストイックさにある種の美学を感じることも確かです。
本書の主人公、五島雅も「強い」というたった一つの価値基準だけで生きている姿に、似たような印象を受けます。

ただ一方で、10年間、王座を守り抜いてきた五島も、30歳を迎え若い頃の勢いが失われてきていると自覚し始めています。
そのため、五島は、自分の強さを継ぐべき人物を探さなければならないと内心焦りが出始めるわけですが、その中で眼鏡に適ったのがメキシコ王者トラビス。

この辺りは、組織である新撰組と個人である五島の違いがはっきりと出てきています。
組織であれば、(年齢による)力の衰えや継承という問題は原則考える必要はありませんが、個人の場合は、必ず衰退期を迎えることとなり、そこにさしかかった場合はどうするかを考えなければならないわけです。

絶対的な力を誇っていた最盛期であれば、そんな問題は一顧だにする必要はないわけですが、衰退期に入れば、身の振り方は切実な課題。
本書の主人公五島は、身の振り方として、自身の地位その他諸々を、自分と同じ力を持つ者に継がせようと考えたわけです。

その点、新撰組は、誰かに後を継がせようとか、そういったこととは無縁だったわけで(幕府が滅びの一途を辿ったので、後を継ぐとかそういったことではなかったという事情もありますが)、傍目から見ると、純粋に強さや闘うことだけを追求して、その美学に殉じたとも評価できます。
個人の場合、なかなかこうはいかない点は悲劇なのかもしれないし、逆に救いなのかもしれません。

さて、本作では、後継者と目されたトラビスは、土壇場で五島の(狂気の)域に到達することは出来ず、五島は、一人、孤独な世界に取り残される-そんなエンディングが待っています。

五島は、強すぎるが故に、誰かにバトンタッチすることができず、ひたすら孤独な世界をこれからも生き続けていかなければならないという結末は、とてももの悲しさを感じます。
他方、ここまでの域に達しない自らを省みて、孤独ではないことへの一安心と、この域に到達し得ない凡才をちょっと寂しくも感じました・・・。

なお、本書のタイトル「ZERO」は、世間が付けた主人公五島への称号です。
作品の中では、なぜ「ZERO」と呼ばれるのかは説明されていませんが、普通に考えれば、無敗なので「ZERO」となったか、絶対的な王者であることを意味して「ZERO」となったか(ボクシングでは、ランキング1位の上に王者がいるので、1位の上と言うことで0)あたりかと思います。
ただ、「強いだけで、他には何もない」、「無意味な強さ」を揶揄した意味があるとしたら、このタイトル、少々悲しいものを感じます。

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kappa1973

Author:kappa1973
 
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