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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史】 瀬島龍三 -参謀の昭和史

【評価】★★★★☆

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著者:保阪正康
出版:文藝春秋


【小説「不毛地帯」のモデル】

山崎豊子氏の小説「不毛地帯」の読後、いくつか(と言ってもこれが2冊目ですが)、「不毛地帯」の主人公のモデルとなったと言われる瀬島龍三氏について書いた本を読みましたが、本書が一番(2冊しか読んでなくて一番って、どうかと思いますが)面白かったです。

太平洋戦争時、陸軍の参謀を務め、数々の作戦に関与し、その後、11年間のシベリア抑留生活を経て日本に帰国、伊藤忠商事に入り、あっという間に会長にまで上り詰め、その後、中曽根内閣の元で、政府の行財政改革に裏表で大きな役割を果たしたという人物。

本書は、瀬島龍三氏に対して批判的なスタンスで書かれた本ですが、小説「不毛地帯」とも照らし合わせながら読むと、小説の軌跡とも合致する点も多く、小説の裏話的作品(そういう意味合いの本ではないのですが)としても楽しめます。



【戦後の昭和史】

本書は、戦後、公的な立場で大きな役割を果たした瀬島龍三氏が、自身に戦中・戦後の体験を明らかにせず、歴史を振り返り反省するという姿勢を全く見せないという点に対し、強い批判を行っています。

「歴史は勝者が作るのではなく、記録を多く残した者が作る」というのが真相ではないかなぁと私は思っているのですが、その点から言うと、瀬島龍三氏が、自身の体験を明らかにせず、不確かなことを述べてしまう(というのは本書の主張するところなので、本当にそうなのかは知りませんが)という点については、例え、自身に不都合な情報であろうと、歴史を作るとか関与する折角の機会を放棄してしまうことになり、もったいないとも思います。

そういう状況下で、本書は、瀬島龍三氏への取材はもちろん、周辺の関係者への取材も通じながら、瀬島龍三氏の半生を明らかにすることで、瀬島龍三氏を通じた戦後の昭和史が明らかにされています。

戦後、政治も行政も民主主義というシステムが未熟で、それこそ、戦闘機調達においては、裏側で激しくダーティーな工作が応酬されたり(このあたり、小説「不毛地帯」を読むのが一番わかりやすい気がします)、防衛庁の機密情報が簡単に外部に流出したりと、現在の状況と比べると、政治・行政のシステムが非常に脆弱で成長(?)の過渡期だったんだなぁということがよくわかります。



【台湾沖航空戦】

本書で、個人的に面白かったのは、敗戦濃色の時期に起きた「台湾沖航空戦」を巡る話。
「大本営発表」という言葉は、誇大な成果を発表することで、真実とは全く逆のことを宣伝することの例えとしてよく使われますが、「台湾沖航空戦」においても、「大本営発表」がなされます。

てっきり、国民の戦意喪失を避けるため、「台湾沖航空戦」においても、誇大な戦果が発表されたのかと思ったのですが、そうではなく、現場の戦果確認の不正確さにより、大本営事態が、台湾沖航空戦は、真珠湾攻撃以上の大戦果を得たと誤信してしまったとのこと。

この誤った戦果に基づいて、作戦が変更されたため、日本軍は思わぬ深手を負うことになるという、なかなか笑えない話につながっていきます。

「台湾沖航空戦」の戦果について疑念を抱いた人物もおり、現地から、戦果は誇大報告の可能性大といった電報が打たれますが、瀬島龍三氏が電報を握りつぶしてしまったといった話に触れられています。

電報握りつぶし事件について、本書では強く批判がされていますが、大戦果に沸き返っている大本営の中で、「戦果は誤報」なる電報が一本投げ込まれたところで、何ら変わらなかったのではないかという気もします。
むしろ、電報握りつぶしは、一方に傾くと軌道修正が効かない組織の実態こそを表しているようにも思われました。

台湾沖航空戦のエピソードは、これまで色々と太平洋戦争にまつわる本を読んできた中で初めて聞いた話で(もしかしたら、読んだ本の中にはそういったことが書かれていたのかもしれませんが、記憶には残っていなかった)、むしろ、瀬島龍三氏のエピソードを通じて、「信じたいことを信じてしまう」組織の弱さというのが、むしろ印象的で、非常に貴重な話でした。



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【『瀬島龍三』より】
太平洋戦争は佐官クラスによって引き起こされ、彼らによって負けた、といわれるのはこうした専権的態度をあらわしている。

(書き出し)
昭和史を巨視的に眺めた場合、昭和56年の春から58年春にかけての二年間は、あるひとつの政治機関が威をふるったきわめて特異な時代ということができるのではなかろうか。

(結び)
その昭和史をいつまでも語らないのはなぜだろう、と、私は瀬島の柔和に見える顔を凝視しながら考えつづけていた。
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[ 2019/08/14 00:39 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 新三河物語(3巻)

【評価】★★★☆☆

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著者:宮城谷昌光
出版:新潮社


【大久保一族を描いた作品】

家康の譜代の家臣、大久保彦左衛門が記した、徳川家や三河武士の歴史を描いた「三河物語」をベースに書かれた作品。
「三河物語」というタイトルだから、徳川家康の話を書いているのかと思いますが、そういった面もあるものの、大久保一族の物語を描いた作品となっています。



【登場人物がたくさん】

一族を描いた作品であり、大久保一族は三河の地に広く根付いているだけに、数多くの人物が登場してきます。
登場人物が多い上に、少々、辞書的な人物紹介の記述が多く(どこそこの生まれで、祖父は誰で、父は誰で、母方はどこの一族から来た人で・・みたいな感じ)、この辺り、話の筋や人間関係や誰が主流人物なのかがさっぱりわからなくなり、少々(かなり?)分かりづらくなっている印象でした。

終盤、多くの人が戦死したり病死したりして、登場人物が少なくなってきて、ようやく、なんとなく分かりやすくなってきた感じです。
人が死んで分かりやすくなって良かったというのも、甚だ不謹慎な話ではありますが(笑)。



【彦左衛門と司馬遷】

大久保一族の歴史と捉えると、家康の祖父の代より、徳川家(松平家)を支えながら、一向一揆では一族が分かれて戦ったり、数々の激戦で一族の中の少なくない人たちが命を落としたりと、徳川家の興隆と一心同体な関係を感じます。

徳川家康が天下を取るのに非常に貢献したのが大久保一族とも言えるわけですが、家康が幕府を開くと、大久保家の多くの人々は改易されて追放されたり、領地を召し上げられたりと、不遇を囲うこととなります。

「狡兎死して走狗煮られる」という諺を思い出すような、大久保一族の末路ではあります。

大久保彦左衛門は、大久保一族の中で命脈を長らえ、「三河物語」を記し、この本が評価され、大久保一族の名誉も回復されますが、この辺りは、どことなく、史記を書いた司馬遷とオーバーラップする面があります。

権力を握る前の家康とは良好な関係が維持できたものの、権力を握ってしまった家康とは良好な関係を維持することが難しかったという、権力者との距離感の難しさを大久保一族の歴史から感ずるところでした。



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【『新三河物語』より】
元康は自分の未来に岡崎の家臣団の夢が積まれていることを自覚しているがゆえに耐えた。この忍耐は、戦陣を馳せて敵陣を突き崩すより非凡である。

(書き出し)
大高城は豪雨に消えた。

(結び)
忠名の明るい声をきいた彦左衛門は、ふたたび春がきたか、と目をあげて江戸の天をみた。
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[ 2019/07/26 00:11 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 新撰組顛末記

【評価】★★★☆☆

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著者:永倉新八
出版:新人物文庫



【晩年の永倉新八が語った本】

新撰組で活躍した永倉新八が、老年になってから、新撰組での経験を語り、記述した内容が本書。
なんでも、晩年は北海道に在住していたらしく、北海道小樽新聞に永倉新八の語った(記述した)話が連載で掲載されたそうです。
新撰組は、幕府方について滅びてしまい、賊軍扱いだったでしょうから、なかなか、新撰組の当の本人が語った内容は珍しいなぁと思いながら読みました。



【数ある新撰組書籍の種本】

内容的には、結構何かで読んだ話も多いなぁと思ったのですが、よく考えたら、あまたの新撰組について書かれた本は、当然、新撰組の第一級資料である本書を参考文献として活用しているでしょうから、本書の内容は、多くの本で引用されているということでしょう。

いわば、あまたの新撰組関連の書籍の種本とでも言うべきものでしょう。



【新撰組内の人間関係】

種本ですが、本人が直接、語ったり書いたりしているだけに、リアリティというか現実感を強く感じます。
中でも、新撰組内での人間関係の不協和音、近藤勇と他の隊士との関係や、尊王をめぐる考え方の違いなど、新撰組も、かなりの矛盾や爆弾を抱えていたようでした。

そもそも、永倉新八氏も、局長である近藤勇のやり方に腹据えかねて、会津藩主に意見を申し出たりもしていて、一枚岩とはいかない新撰組のあり方が、生々しく伝わってきます。

今では、思想-イデオロギーとでもいうのでしょうか、そのようなものの違いで激しく争うというのは日本ではあまり見られませんが、当時、尊王という思想を巡って、激しく対立していて、同じ尊王でも、佐幕派、討幕派に分かれていたり、攘夷思想と結びついていたりと、容易に相いれない関係があることも、強く感じられました。

しかし、敵だと分かっていながら、相手方の動向を探るために新撰組の中に迎え入れたり、新撰組を乗っ取るために潜入してきた相手と、親しく酒を酌み交わしたりするなど、その関係性も結構不思議で、そういった当時の新撰組内の人付き合いも見えてきて、面白い内容でした。



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【『新撰組顛末記』より】
新撰組はもと羽藩の志士清川八郎のもとに幕府をして尽忠報国を標榜して募らせたいわば烏合の勢、熱をあたえれば一団となって櫛風沐雨の苦楚を嘗むるを辞さないが、いちど冷むれば左右反目嫉視していがみあう。

(書き出し)
年のころなら七十四か五、胸までたれた白髯が際立って眼につき、広き額、やや下がった細い目尻に小皺をよせ、人の顔を仰ぐように見ては口のあたりに微笑をたたえてすこしせき込み口調に唇を開く。

(結び)
死生のあいだをくぐること百余回、おもえば生存するのがふしぎなくらいの身を、大正の聖代まで生きのびて往年の的も味方もおなじ仏壇に朝な夕なのとむらいの鐘の音をたたぬ。
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[ 2019/07/15 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 奴隷のしつけ方

【評価】★★★★☆

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著者:マルクス・シドニウス・ファルクス(ジェリー・トナー)
出版:太田出版



【ローマ帝国の貴族が記した本】

本書の著者は、「マルクス・シドニウス・ファルクス」となっていますが、この著者は、架空のローマ帝国の貴族という設定で、この貴族が書いたローマ帝国における奴隷のしつけ方という本を訳したという設定になっています。

実際は、本当の著者であるジェリー・トナー氏が、ローマ帝国の歴史や古書などの研究成果を元に、当時の奴隷制度やその扱いをまとめたものになっています。



【社会を支える奴隷労働】

ローマ帝国時代、スパルタクスの乱など、奴隷(剣闘士)叛乱が起こったという歴史は多少は知ってはいましたが、ローマ帝国自体が、奴隷制度に支えられていたというのは認識がなく、かなりの驚きでした。

もちろん、全ての市民が奴隷を所有していたわけでもないのですが、貴族など、大土地所有者は奴隷の労働力で農園を維持したり、邸宅の管理に奴隷を使っていたりと、奴隷の労働力が社会基盤を支える、もしくは富裕層を支える仕組みになっているようでした。

現代社会は、ローマ時代に奴隷労働が担っていた仕事を機械などで代用されるようになり、現代から見ると非人道的としか思えない制度がなくなっているのは、社会の進歩と言えそうです。




【自分の子供も奴隷】

本書は、貴族の目線での奴隷管理の方法が描かれていますが、奴隷を人間として扱うといった思想が書かれている部分もありますが、全般的には、同じ人間として扱わないという流れがあるようです。

その最たるものが、女性の奴隷に産ませた自分の子供は、奴隷として扱うというもの。
奴隷が生んだ子供は、誰が父親であれ奴隷であるという思想で、自分の子供であれ、奴隷としかみなさないというのも、凄まじいなぁと思うところでした。

自分の血を引いた奴隷は扱いやすいので、自分の子供(奴隷に産ませた子供ではなく、いわゆる嫡出子)の子守をさせるのにうってつけであるとか、市民と奴隷という線引きが非常に強烈で、現在からすると、なかなか理解しづらい考え方です。



【組織マネジメントには使わない方が】

奴隷を効率よく働かせるには、鞭だけに頼ってはうまくいかない、とか、奴隷の働きの功績に報いて報酬を与えるべしとか、会社や組織のマネジメントにも通じそうな話もありますが、奴隷管理を元にした組織マネジメントは、なんか嫌です(笑)。

この手の本は、組織マネジメントに生かそうなんて思って読むものではなく、あくまで、ローマ帝国の当時の事情を興味深く知るために読んだ方がよさそうです。



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【『奴隷のしつけ方』より】
初めて奴隷を買う人は鞭があれば足りると思いがちだが、代々奴隷を所有してきた家の者は鞭に頼れば奴隷が疲弊するだけだと知っている。

(書き出し)
数ヶ月前のこと、わたしの郊外の別荘である出来事があった。

(結び)
現代社会には、古代ローマのどの時代よりも多くの奴隷がいるのです。
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[ 2019/06/22 13:03 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 冬を待つ城

【評価】★★★☆☆

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著者:安部龍太郎
出版:新潮社


【作家変われば話も変わる】

豊臣秀吉の奥州征伐に抗した九戸政実の乱を題材にした作品。
九戸政実の乱を扱った作品としては、以前、高橋克彦氏の「天を衝く」を読んだことがありますが、高橋克彦氏の作品は、少数寡勢で大軍に立ち向かう華々しさがテーマにありましたが、本作は、中央が行う東北への収奪に対する抵抗ということがテーマにあり、作家が変われば視点が変わるという良い例かなという感じがします。



【東北の搾取の歴史】

テーマが、東北がこれまで長年(それこそ、太古のヤマトタケルの時代から・・・)、中央から搾取されてきた歴史があるということが背景にあるため、そのような東北の歴史も本書の中では紹介されています。

主人公(反乱を起こした政実ではなく、その弟の正則が主人公)が、神卸しを受け、神意を得た中で、東北の悠久の歴史が語られるという構図が出てきますが、この部分は、かなり説明調で、どことなく、2時間サスペンスドラマの、犯人が勝手に犯行理由や経緯を説明する場面を彷彿とさせ、もうちょっと工夫があると良かったなと思うところでした。



【震災文学】

本作では、九戸政実の乱は、秀吉が朝鮮出兵を見据えて、寒さに強い東北の人々を人狩りして動員を目論んだことに対する反抗として描かれています。

6万の大軍を3千の兵で迎え撃ち、東北の厳冬を味方に、和平交渉に持ち込み、政実自身の首と引き換えに、人狩りを中止させるという結末に至ります。

6万の大軍との戦いは数日で終わり、どちらかというと、秀吉軍を率いる蒲生氏郷との交渉にメインが置かれた書きぶりで、戦好き(?)な人にはちょっと物足りなさも感じますが、東北の抵抗の歴史という視点であれば、こういう描き方もありなのかもしれません。

東日本大震災の後に書かれた作品で、東北の苦難を描くのに九戸政実の乱を題材にしたとのことでした。
震災を直接描かずに、震災を念頭に置いた作品ということで、普通に読むとそれに気づくことは少ないですが、一種の震災文学と言えそうです。



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【「冬を待つ城」より】
戦をしても誰も幸せにはならない。それでも戦をせずにいられない人の性が、これほど疎ましく思えたことはなかった。

(書き出し)
文録二年(1593)の年が明けると、寒さはいっそう厳しくなった。

(結び)
だが政則は一度もふり返ることなく、高くそびえる八幡平の頂きだけを見すえて歩きつづけた。
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[ 2019/01/23 01:24 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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kappa1973

Author:kappa1973
 
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