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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史】 天翔ける女

【評価】★★★★☆

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著者:白石一郎
出版:文藝春秋



【まさかの実在人物-大浦慶】

幕末に長崎で、外国と茶葉貿易を初めて行った女性を主人公とした作品。
てっきり、創作かなと思ったら、実在の人物。大浦慶という女性。

何せ、没落した油販売の家業から、長崎に出入りする外国商人に日本茶を売ることを思い立ち、当時、茶葉をヨーロッパに輸出する本場である上海の状況を知るため、上海への密航まで行い、長崎で茶葉輸出と言えば大浦慶と言われるまでの大商人になるという、てっきりフィクションとしか思えない人生行路なのですから。

これが男性だったら、「実在の人物かぁ」と感心するくらいだったかもしれませんが、幕末という、女性が活躍するには非常に制限のあった時代で、これだけのことをした女性がいたというから、事実は小説より奇なり。小説以上に小説みたいな話です。



【茶葉を巡る国際貿易】

主人公の大浦慶、茶葉の輸出商人として大成功しますが、他方で、激動の幕末。尊皇攘夷の志士たちとも交流を深め、まだ海のものとも山のものともしれない志士たちを食客として養ったり支援することで、裏から、明治維新を支える役割も担っています。

交流のあった中には、坂本龍馬率いる亀山社中の面々もおり、商売っ気のある坂本龍馬と交流があったというのも面白いところです。

茶葉を通じて、当時の国際貿易の様子を知ることができるのも本書の面白いところであり、大浦慶は、日本茶を中国で生産するのと同じ釜入り製法で、おそらくウーロン茶に近いような茶葉を生産し、中国がアヘン戦争で敗れ、供給能力を失った間隙を突いて、商売を伸ばすことに成功します。
しかし、その後、インドで大量に安い茶葉の生産が行われるようになると、価格競争に勝てなくなり、商売は衰退してしまいます。

なんだか、近年、製造業が、日本から韓国・中国、ベトナムや東南アジアへ中心が移っていった歴史と近似する話で、商売の栄枯盛衰は今も昔も変わらないように思われます。



【成功体験から失敗へ】

晩年、大浦慶は、茶葉の商売が衰退し、さらには、志士たちとの交友で商売で稼いだ金を散財してしまった上に、詐欺にひっかかったりして、茶葉輸出の大商人という面目を失ったまま、亡くなってしまいます。

葬儀には、幕末に世話になり、明治政府では大出世し高官となった政府要人たちが多く駆けつけたそうで、人生、トータルすると、やはり人を支援したり、助けたりすることは、自分にとって大きな財産を残してくれるもののようです。

ただ、晩年の没落を見るにつけ、成功することよりも、それを維持することの難しさが感じられます。
特に、大成功すると、その成功体験にとらわれ、それが原因で失敗に至るというのは、ビジネスの世界では、ダイエーの中内功を思い起こさせますし、歴史的には、旧日本軍の歴史なども想起させます。



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【『天翔ける女』より】
これは賭けなのだ。賭けである以上、勝つとは限らない。

(書き出し)
場所がらに似合わぬ華やいだ挨拶の声をかけて、その女は長崎会所の払方の詰所に入ってきた。

(結び)
いまでは輸出茶から年々しめ出されてゆく九州の黒茶を、お慶はこんどは冥土で売り込むつもりだったのかもしれない。
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[ 2019/12/01 09:57 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 武王の門

【評価】★★★★★

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著者:北方謙三
出版:新潮社



【北方流歴史物】

最近、北方謙三氏の歴史物が面白いなぁと思って手に取ることが多いですが、本書もその流れで読了。
何が面白いかって、ストーリー展開もさることながら、あまり取り上げられることが少ない分野-日本史で言えば南北朝時代とか-が舞台となっていて、結末を知らない話、しかも実話を読むことができる新鮮さがあります。
子供の頃に、歴史物をわくわくしながら読んだ体験をもう一度味わえる感覚です。



【統一ものの面白さ】

本作は、南北朝時代に後醍醐天皇の息子として、九州に下り、南北朝側の指導者の一人として九州統一を目指した懐良親王(かねよししんのう)を主人公とした作品。
皇族ですから、貴族のようなものですが、本書では貴族ではなく一人の武将として描かれ、そこに九州の豪族・菊池家が懐良親王を強力に支えることで、非常に弱小な勢力だった懐良親王たちが、苦難の末、九州を統一するまでに至ります。

国家統一・天下統一ものの面白さは、日本だと戦国時代くらいしかないかなと思っていましたが、南北朝を題材にしても、こういう面白い作品が描けるのだなぁと驚きを禁じ得ませんでした。



【九州を越えるスケール】

三国志にはまったことのある人間としては、戦略・戦術の妙も非常に興味あるところですが、九州統一の強力なライバルであった少弐氏との激戦も、優勢を誇る少弐氏をどうやって策を持って打ち破るかという醍醐味が描かれ、非常に楽しむことができました。

スケールは、九州統一という、少しこじんまりしたものかもしれませんが、そこに、貿易、倭寇絡みで高麗や元も係わってきたり、九州を越えるスケールで描かれており、三国志とか戦国歴史物が好きな人には、本作も十分面白く感じられるのではないかと思います。



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【『武王の門』より】
夢のかたちは見えぬ。ただ、海をも越える夢を抱きたい、と思った

(書き出し)
海は、いつもなにかを孕んでいた。

(結び)
光。風。夢。海。
遠くなった。
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[ 2019/11/05 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 火怨 -北の燿星アテルイ(2巻)

【評価】★★★★★

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著者:高橋克彦
出版:講談社


【蝦夷征伐の蝦夷側のリーダー】

700年代後半から800年頃に、朝廷が行った蝦夷征伐を題材に、蝦夷側のリーダー、アテルイを主人公として描いた作品。
アテルイに関する記述は、朝廷側が記した「日本書紀」等にしかなく、実態がなかなか分からないようで、歴史は、記録を残した者が作るのだなぁとあらためて感じます。

実態が分からないだけに、小説としては創作で泳げる余地も大きく、その結果、本作もアテルイを非常に生き生きと描くことに成功しており、小説家が腕を振るうよい題材なのかもしれません。



【それぞれ異なる戦いの模様】

小説は、蝦夷を人間扱いせず、ただ制圧しようとして大軍を出兵する朝廷側を、奇策を用いて寡兵で撃退するアテルイ達が描かれます。
5万の大軍に数千の軍勢で立ち向かうという、織田信長の桶狭間の戦い以上に不利な戦況下で、朝廷軍の心理状況まで手に取り、策の上に策を重ねて撃退するという流れとなります。

4度の戦いが描かれ、それぞれの戦いが奇襲戦であったり、籠城戦であったり、平原での騎馬隊の激突であったりと、それぞれの戦いが全て違った様相で、かつ緻密に描かれ、飽きることがありません。



【負けるが勝ち?】

アテルイ側の目的は、尽きることのない兵力を有する朝廷側に対し、長期戦で疲弊させ、侵略をどうやってあきらめさせるかというもの。
ベトナム戦争ににおける、北ベトナムの戦略と重ね合うところがあります。

アテルイ達の戦略は、戦場だけにとどまらず、どうやって朝廷側の侵略を終わらせ、蝦夷の地に平和をもたらすかという、大きな視点にも広がっていき、最後の戦いは、自らがあえて敗れることで、蝦夷の平和を獲得するという予想外の戦略を成功させます。

言ってみれば、「負けるが勝ち」といったところでしょうか(表現が軽すぎて、全く伝わっていない気がしますが(笑))。

著者は、蝦夷を題材にした作品をいくつも書いており、あまり知ることのない空白の歴史をダイナミックに描いているようなので、また、機会を見て、他の本も読んで見たいところです。



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【『火怨』より】
いかにも人を動かすのは策であろうが、その策に命を捧げさせることができるかどうかは、動かす者の器量にかかって参る

(書き出し)
陸の奥に暮らす蝦夷と蔑まれ、それゆえに朝廷の興味から遠ざけられ、陸奥の民がのどかに過ごしていられた時代はいったいいつ頃までのことだろうか。

(結び)
田村麻呂もにっこりと微笑んだ。
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[ 2019/10/13 00:23 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 伍子胥

【評価】★★★☆☆

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著者:伴野朗
出版:徳間書店



【海音寺潮五郎氏の「孫子」の流用?】

中国・春秋時代に呉で活躍した謀臣・伍子胥の生涯を描いた作品。
兵法書「孫子」で有名な孫武も同時期に呉で活躍したこともあり、本書には孫武も登場したりして、魅力的な人物が数多く登場してくることになります。

司馬遷の「史記」がベースになる部分も多いので、どの書き手が書いても、似たような展開や筋書きになるのでしょうが、ちょっと気になったのは、海音寺潮五郎氏の「孫子」とかなり似通った筋書きやキャラクター設定が目に付いた点。

海音寺潮五郎氏の「孫子」は、読んでいても、海音寺氏の創作部分がかなりあるなぁというのは分かるのですが、その創作部分と思われる箇所やキャラクター付けが、そのまま本書でも使われており、この点は、いただけないなぁと思いました。



【剣術対決が見所?】

元ネタが「史記」であり、材料がそれほど豊富ではないので、著者の創作が活かされる余地もふんだんにあるのが、この手の中国古代史の話。

本書は、海音寺潮五郎氏の「孫子」をパクってしまっている部分があって、オリジナリティに欠ける部分も多々ありますが、他方で、著者のオリジナリティが出ているのが、剣術に関する話。

伍子胥がなんとかという流派の剣術使いであるという設定になっており、他方、伍子胥を狙う刺客も、かなり変わった流派の剣術奥義を極めていて、伍子胥と刺客の剣術対決が本書の見所になっています・・・なっているはず。
伍子胥の剣技は、常識的は範疇に収まるのですが、刺客たちの剣技が半端ない。
気を剣先から放って、相手を催眠状態にする奥義とか、相手の時間の流れをゆっくりにする技だとか、もはや、ジョジョの世界に入っている気がする(笑)。

中国の歴史講談って、仙術やら妖術とかが入り乱れた伝奇物に傾く傾向がありますが、本書も、ちょっとそんな匂いをかぎ取ったのでした。



【閑話休題】

本書のもう一つの特徴は、「閑話休題」でしょうか。
中盤から後半にかけて増えてくるのですが、ストーリーとはちょっと離れた話題が盛り込まれ、「閑話休題」(ちょっとアイスブレイクといったくらいの意味)となるという構成が目に付いてきます。

司馬遼太郎氏の小説も、閑話休題的な話をちょこちょこ盛り込んで、小説の奥行きを深める工夫につながっていますが、本書の場合、司馬遼太郎氏のような上手さはなかったかなぁ・・・。

だって、「会稽の恥」と言えば、昔は、飲み会の終わりの会計時にお金が足りないことを、「会計の恥」なんて言ったものだ・・・とか、明らかにどうでも良い著者の小話だしなぁ(笑)。
こういうダジャレ的話、嫌いじゃありません。だが、単に小説の話の腰を折っているだけという感じはします。
閑話休題、その使い方は難しいようです。

小説の本筋より、どうでもいいことばかりに気を取られてしまったようでした・・・。



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【『伍子胥』より】
権謀術数は、選択肢の多さで決まる。選択肢は、情報活動が収集してくれる。

(書き出し)
「三国志」の「呉書・趙逹伝」に、葛仙公という人物が登場する。

(結び)
伍子胥の生き方は、司馬遷のみならず、現代のわれわれにも夢とロマンを与えてくれる。それは、永遠のシンボルといってよかろうか。
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[ 2019/10/05 22:42 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:歴史】 雑賀六字の城

【評価】★★★☆☆

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著者:津本陽
出版:文藝春秋



【一兵士から見た戦争】

織田信長の雑賀攻めを題材とした歴史小説。
主人公は、雑賀の頭領の三男である若者。
信長と、雑賀が支援する本願寺との戦いから、雑賀自体が信長の大軍に攻められるまでを、主人公の初陣、戦士としての成長、悲惨な戦場の体験などを織り交ぜながら、描かれています。

主人公が、雑賀の頭領の息子ではありますが、戦いを指導する立場ではなく、一兵士として戦いに加わる立場のため、視点は一兵士から見た戦争の過酷さといったことがテーマになっています。



【雑賀とイスラム国】

雑賀の人々は、浄土真宗(もしかしたら、別の宗派だったかも・・)に帰依していて、その心のよりどころは信仰心にあります。
豊富な物量と優れた装備に真っ向から対抗できるのも、信仰心の強さにあり、どことなく、アメリカとイスラム国の戦いを惹起させました。

死後の世界を信じて、死をも恐れぬ無謀とも言える戦いに身を投じる気持ちというのは、信仰心や宗教に通じていない身としては、なかなか理解できないところはありますが、他方で、人が信じているものを一方的に踏みにじる行為は、結局、争いを生み出すことになるというのも、大いに感じるところでした。

信長の自分に抵抗する者は皆殺しにするという残虐さや独善的な考えは、アメリカのイスラム世界に対する考え方にも通ずるものがあり、寛容さや理解というキーワードが世界には必要に思えます。



【雑賀とベトナム戦争】

雑賀は、鉄砲隊の威力で信長軍を悩ませたという話は、戦国時代の歴史を少しかじると、よく知られる話ですが、雑賀が最後どうなったかは、すっかり覚えておらず、意外な結末だったことに驚きました。

信長の大軍に攻め込まれ、大奮戦し窮地に陥りますが、10万の大軍を長期間に渡り釘付けにした結果、背後の毛利や上杉の動きを憂慮した信長軍は、雑賀の地を落とすことができずに撤退という結末。

要は、ベトナム戦争の北ベトナムみたいなもので、自身も大きな犠牲を払いながらも、相手にも多大な出血を強い、更には、周辺の外交情勢の変化も味方になって、相手の撤退にまでこぎ着けることができたという感じでしょうか。

太平洋戦争の際の日本軍は、アメリカに多大な犠牲は払わせたと思いますが、外交面では完全な孤立で、外からの救援軍が全くない籠城戦を演じたようなもので、本書を読むと、直接の戦闘だけでなく、外交戦略も非常に重要なのだと言うことを思うとともに、過去の日本と照らし合わせてしまうところもありました。



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【『雑賀六字の城』より】
生物はみな、いつか死ぬ。死んで十万億土を旅して、お浄土へゆく

(書き出し)
天正四年(1567)旧暦四月はじめの陽が、中天でしろく燃えていた。

(結び)
七郎丸は胸のうちで、正信偈をとなえつづける。そうしているあいだ、彼はお浄土にいる太郎右衛門と牛楠に、話しかけることができるのであった。
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[ 2019/09/29 00:26 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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kappa1973

Author:kappa1973
 
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