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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:将棋】 適応力

【評価】★★☆☆☆

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著者:羽生善治
出版:扶桑社文庫



【きれいな上澄みの世界】

将棋の棋士、羽生さんの書いた本と言うことで手にしてみましたが、他の棋士が書いた本に比べると、非常にあっさりした内容。
著者名を伏せると、誰が書いたか分からないんじゃないかなぁ・・・。

他の棋士が書いた本だと、アクが強くて、金、酒、博打でむちゃくちゃな人生を歩んだ経験と将棋との関わりだったり、将棋の勝負の世界で、敗者と勝者の明暗がはっきりするエピソードが出てきたりと、人間のどろどろした世界も含めた内容が多い気がしますが、本書は、そういう話は一切なし。

本書は、すごくきれいな世界から、その上澄みを語られた本といった内容でした。



【将棋の流行り、廃り】

棋士が書いた本にしては、あまり将棋のエピソードが出てこないのが意外でしたが、その中でいくつか出てくるエピソードとして面白いと思ったのが、将棋の戦術の流行、廃りに関するもの。
江戸時代の戦術から現在の流れまで言及していたりして、将棋に関する思想-美しい棋譜をつくる、なんていうことが、戦術に影響していたり、一昔前は王道と思われていた戦術が、現在はむしろ逆手にとられて不利になるなど、常識が常識でなくなる不安定さ、不思議さがあります。

また、将棋の定跡に似たものがチェスにもあったり、その定跡をひっくり返す戦術が、同じようにチェスの世界でも起こったりと、将棋とチェス、違うゲームであっても、同じような事象が起こるというのも、興味深いところがありました。

こういう戦術の興廃についていけるかは、本書のタイトル「適応力」の必要性があると言うことかもしれません。

全体的にきれいすぎる内容で、やはり、破天荒な棋士が書いた方が、おもしろくなるのかなぁ、などと思いながら読了しました。



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【『適応力』より】
将棋の世界でもチャンスに強い人は若い人たちで、ピンチに強いのはベテランの人たちという傾向があります。

(書き出し)
たくさんの時間と労力を費やして築き上げた経験を、今後にどのように活かしたらよいでしょうか。

(結び)
そんなしっかりとした核を持てたらと思っています。
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【書籍:自伝】 勝負と芸 ーわが囲碁の道

【評価】★★★☆☆

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著者:藤沢秀行
出版:岩波新書



【何世代か前のトップ棋士】

囲碁棋士の藤沢秀行氏の自叙伝。

戦前生まれの方なので、何世代か前の一流棋士の一人のようで、囲碁ファンではない私は、全く知らない人ではあるのですが、囲碁や将棋の棋士は酒と博打で身持ちを崩すとか、破天荒な人も多いようで、そういった破天荒な棋士の代表格(?)のお一人らしいということを知って、本書を手に取った次第でした。



【酒と博打と借金】

本書は、破天荒な経歴について語ることを目的にしたものではないので、期待した(?)ような話は、さほど出てきませんでしたが、ところどころに、酒、博打、借金の話が出てきて、破天荒ぶりは伺えるのでした。

特に、借金については、本業(囲碁)以外にも色々と手を出してみて(それこそ、不動産業とか全く関係ない分野)、莫大な借金を負うということも多かったようで、囲碁業界でも、藤沢氏の金儲け下手は喧伝されていたようです。

本業のタイトル戦前夜も、借金取りが詰めかけてきたりして、なかなか、面白いエピソードも多い方のようですが、そんなことに負けず(?)、一流棋士として名を残すのですから、そのタフネスさは尋常ではないようです。

とは言いつつ、本書にも、「明日が巌流島というとき、借金取りに追いまくられたら、宮本武蔵だって佐々木小次郎に勝てたかどうか」なんて書いているあたり、どんな人でも借金取りは苦手なようです。



【コンピューター囲碁に対する予測】

本書で興味深かったのは、コンピューターに関する見解も記載されていた点。
囲碁において、コンピューターが人間のトップ棋士に勝てるかというテーマは、ここ数年で、結果が出てしまいましたが、本書では、「コンピューターが、囲碁の世界で人間を上回る実力を得ることはできない」という見解が述べられています。

その中で、「コンピューターが、自己学習して知識や技術を向上させるということでもない限り、人間を追い越すことは無理だろう」と理由を述べています。
しかし、今や、コンピューターの仕組みが、自分の中だけで対局・演算を繰り返し、その結果を打つ手に反映させて、バージョンアップしていくというもので、それによって、何百万回という対局・演算を短期間に繰り返すことで、人間を上回る実力を身に付けてしまっています。

その意味では、藤沢さんの主張は外れていますが、実は、半分当たっていたと言えそうです。

一昔前の方の本なので、ちょっと古風ではありますが、現在に通ずる話も出てきて、現在の状況を思い描きながら、昔話を読むような感覚もあり、その点での面白さがある本でした。



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【『勝負と芸 わが囲碁の道』より】
明日が巌流島というとき、借金取りに追いまくられたら、宮本武蔵だって佐々木小次郎に勝てたかどうか。

(書き出し)
清水の次郎長をよく知っており、柔術の起倒流の四天王の随一というと、どんな人物を想像されるだろうか。

(結び)
それまでは死んでも死にきれん。
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【書籍:将棋】 棋士という人生 -傑作将棋アンソロジー-

【評価】★★★☆☆

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編者:大崎善生
出版:新潮社


【沢木耕太郎に村上春樹に・・・】

23名の棋士や作家による、将棋をテーマにした小品が集められた作品。
さすがに、これだけの人の作品を集めただけに、結構、優劣の差が出た感じがあります。
まさに、それは、将棋の世界でしょうか。

本書の編者は、「聖の青春」で有名な大崎善生氏。
大崎氏の作品は3編入っていましたが、正直、出来があまりよろしくなかったような・・・。
編者だからと言って、作品の出来が良くなるわけではないのが、なかなか難しいところ。

その他、沢木耕太郎や村上春樹の作品も入っていて、非常に豪華な仕上がりです。

沢木氏の作品は、さすが面白いと思いましたが、ある作品が、「なんだかつまらないなぁ」と思って、後で確認したら村上春樹作品だった。
作品は好みなどもあるので、一概には言えませんが、将棋と言うテーマに合う・合わないが、作家によってあるかもしれません。



【そうではあるけれど、上を向いて】

いくつか印象に残った小品を紹介してみたいと思います。
まずは、中平邦彦氏「そうではあるけれど、上を向いて」
将棋界に入った二人の郷土の俊秀にまつわるストーリー。
嘱望されて将棋界に入ったものの、この世界は天才少年の集まりであり、郷土の俊秀も目が出ず、下位を低迷したまま、将棋界にとどまり続ける姿に、痛みを覚えます。
-そうではあるけれど、上を向いて。 いつか、心晴れやかになる日が来るのでしょうか・・・



【神童 天才 凡人】

沢木耕太郎氏による、名人中原誠を描いた作品-「神童 天才 凡人」
天才である中原誠を、凡人であるが故の強さという、一風変わった切り口で描いているのは、視点や観察力に数ぐれる沢木作品ならではの面白さでした。

また、中原誠の将棋人生について、「彼は環境にめぐまれていた、と誰もがいう。だが、換言すれば、それは周囲の人びとから多くの夢を託されたということであり、将棋以外のものから遠ざけられた、というにすぎない」という評は、天才や恵まれた立場にたっているように見えても、その立場で苦悩はあることを指摘していて、心に響きました。



【詰パラとの出会い】

詰将棋作家・若島正氏の自叙伝的作品-「詰パラとの出会い」
作品自体が面白いというよりは、詰将棋作家なるジャンルがあることの驚きと、詰将棋づくりにはまっていく姿が、こういう幸せもあるんだなぁという、目からウロコ的な印象を受け、興味深く感じた作品でした。



【羽生名人の師匠】

その他、棋士が書いた作品が多く載っていて、棋士本人が書いた作品は面白いものが多かった印象です。
その中で、羽生名人の師匠・二上達也氏の作品は、ストーリー構成が必ずしも良くはありませんが、羽生名人とのエピソード、師弟関係が興味をそそる内容となっていました。

二上氏は、弟子と将棋を指すのは3回だけと決めていて、弟子入りの入門時、初段に昇格したとき、そして、破門する時。
しかし、弟子の羽生さんとは、羽生さんがあっという間に実力をつけ、師匠に追いつき、追い越していってしまったため、羽生さんとは、本番の棋戦で戦わざるえなくなり、結局、本番で三回戦い、三連敗してしまったという、ちょっと自嘲気味の話が載っています。

師匠の立場として、弟子との将棋は三回までと決めていたのが、羽生さんとの関係では、羽生さんの実力によって、そんな取り決めはぶち壊される羽目になり、それどころか、将棋の実力で完敗し、逆に自身の引退をも考えさせられるという、実力重視の世界ならではの話となっています。

実力のみの世界と言うのは非常に厳しいのでしょうけど、形式や権威なども吹き飛ばしてしまうことも多々あり、こういう世界で生きられる人にうらやましさを感じるのでした・・・二上さんは、ちょっと気の毒ではありますが。


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【『棋士という人生』より】
(「そうではあるけれど、上を向いて」中平邦彦 より)
木村十四世名人の言に「私はしょっ中勝っているから負けの痛みが大きい。多分、しょっ中負けている人は狩った喜びがおおきいだろうね」というのがある。

(書き出し)
会社で仕事をするなら地味なスーツがいい。

(結び)
常盤さんのエッセーを借りよう。そうではあるけれど、上を向いて。
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【書籍:将棋】 大山康晴の晩節

【評価】★★★☆☆

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著者:河口俊彦
出版:新潮文庫


戦後の将棋界に圧倒的強さで君臨した大山康晴名人の、特に晩年の頃の活躍を描いた作品。

将棋と言うと、羽生さんくらいしか名前が思い浮かばず、大山名人と言ってもあまりピンとこないのですが、大山名人は、名人位を通算18期保持するという不滅の大記録を打ち立てたほか、死去する69歳まで、将棋の順位戦のトップリーグA級の地位を保ち続けたという前代未聞の強さを誇った棋士です。

弱冠26歳で、7冠制覇という偉業を達成している羽生さんですら、名人位は現在のところでは、9期保持ということで、大山名人はその倍の期間を保持していたということからも、その強さはうかがい知ることができます。

本書は、名人位を保持していた、全盛期の大山名人ではなく、名人位から陥落した後の軌跡が描かれています。
著者によると、棋士は40歳を過ぎると急速に力が衰えるのだそうで、60歳を過ぎたのちも、リーグ戦の最上位ランクA級を保ち続けるというのは、尋常ではないとのこと。
こういう話を聞くと、ぜひ、羽生さんも、年をとってからも、大山名人以上の活躍を期待したいところです。

さて、大山名人の面白いところは、将棋の強さが、将棋の盤面上だけの話ではないという点(これは著者の解釈でありますが)。
将棋に勝つには、周囲からも「あいつは強い」と一目置かれ、試合に対峙する前から畏怖や脅威を覚えさせておかなければならない、そんな考えが大山名人にはあったようで、伸び盛りの若手や自分の後を追ってくる2番手に対しては、日常でも下手に扱ったり、わがままを言って振り回し、自分の意のままになるように扱ったりすることで、相手が自分のことを格上と無意識に思うように仕向けさせていたとか。

さすがは、勝負師、日常の心構えからして違うと言いたいところですが、勝負の外でもそんな振る舞いをされたら、あんまりお近づきになりたくないなとは思います。
勝負師というのは、勝負に勝つため、普段から勝つための行動をする人のことを言うのかもしれません。それによって、勝負に勝てるのでしょうが、反面、普通の人にとっては煙たく、狷介な印象を与えそうです。
私なんかは、到底真似できないところだなぁと感じます。

名人位陥落後は、そういった勝負師の面が影をひそめ、将棋連盟の会長となり、将棋界のために、私利私欲なく、奉仕をしたといったエピソードも描かれています。
ただ、これによって、将棋が弱くなったかというと、そんなことはなく、名人位の奪還こそできなかったものの、リーグ戦のトップクラスA級位を死ぬまで保持し続けることになります。

著者は、将棋連盟の会長としての活動も、大山名人の強さの源泉になったのではないかと述べていますが、勝負に強い人は、日常の行動がどう変化しようと、勝負強さに変わりがない、というのが本当のところかもしれません。

とは言っても、普通の人からすれば、我儘や我意は強かったような印象で、試合場所の環境や、試合日時の指定など、自分の意にそうように、あれやこれや我儘を言う姿も描かれています。
この姿は、以前、映画「ボビー・フィッシャー 世界と戦った男」で描かれた、チェスの世界チャンピオン、ボビー・フィッシャーの我儘ぶりを彷彿とさせます。
そう考えると、勝負師と言うのは、我儘が言えるくらいでないと、勝負に勝てないのかもしれません。

その後も、癌による入院、復帰など、様々な苦労・難所を乗り越えながら、「70歳を過ぎてのA級位の保持」という目標を目指して、将棋を指し続けることになります。
しかし、その目標は果たせません。
なぜなら、69歳で、癌により帰らぬ人となったからです。

「70歳を過ぎてのA級位の保持」という目標に、あと一歩のところで届かなかった大山名人。
残念さよりは、どちらかというとドラマを感じさせます。
おそらく、この目標は、現在の天才棋士・羽生さんが達成するのではないかと(25年も先の話ですが・・・)、密かに期待するところです。


【『大山康晴の晩節』より】
 
勝負は周囲を信用させることが第一だ。信用されなくなったら勝てない。あの人は強い、とか、指し手の中に間違いがない、あるいは、あの人が優勢になったら頑張っても、もう勝てない、と思われるのが信用で、いろんな信用をつくると、相手の戦う意欲が半減し、こちらの勝ちにつながる
 
(書き出し)
四年くらい前のことだが、谷川浩司と二人きりで話をする機会があった。用件はすぐ済み、かねて気がかりだった、大山康晴との最後の対局のときの話を聞くことにした。谷川とこういった類の話をするのは初めてである。
 
(結び)
墓は、倉敷市西阿知の、大山家代々の墓所にある。大山の郷里を愛する気持ちは特別のものがあったらしく、晩年になるまで郷里の住民税を納めていたそうである。
 



【書籍:ギャンブル】 札師

【評価】★★★☆☆

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著者:青山光二
出版:光風社書店


ギャンブルを題材にした小説は、阿佐田哲也氏の「麻雀放浪記」など名作も多く、私自身は、勝負に弱いのでギャンブルはやらないものの、本で読むのは好きです。
今回、ブックオフでたまたま目に付いたので、早速、購入して読書。

ストーリーは、博徒である主人公「ばく松」の博打遍歴(手本引という札を使った賭博)を軸に、博徒同士の抗争なども織り交ぜるというものになっています。
しかし、話は途中でぶつ切れで終わってしまっており、続編でもあるのかと思いきや、そうではなさそうなので、おそらく、連載か何かの都合で、話が打ち切られたのでしょうか・・・。
そのため、読後の中途半端感が強く残る作品でした。

本書で取り上げられている賭博は、手本引という札を使ったものですが、胴師が1~6の中から選んだ札が何かを当てるという、ごく単純なもの。
札を選ぶ胴師1名に対し、札を当てる博徒は何名もいるため、1vs複数名という構図となります。

胴師は、どの客を叩けば儲けが一番多くなるかなんてことも考えながら、客の思考を外すように札を選ぶのに対し、賭ける客側は、胴師のこれまで選んできた札の癖なんかを読みながら札を当てるわけで、心理戦の要素も強く、なかなか面白い賭博でした。

本書でも、主人公ばく松が、賭ける客側だったり、世話になっている組の賭場で胴師をやったりしながら、勝負の駆け引きが描かれており、時には、大金を賭けて相手の胴師を憤死させるなんていう展開もあり、どことなく、漫画「カイジ」を彷彿とさせる面もありました。
ただ、賭博の駆け引きシーンがあっさりとしている面もあり、もう少し、踏み込んで書いていると更に面白かったようにも感じます。

また、賭博だけでなく、博徒の組同士の抗争も描かれ、ばく松は、自分の組の賭場を荒らした相手の組長を報復のため匕首で刺したことで懲役刑をくらいますが、その間、組同士が手打ちをし、相手の組長がばく松の度胸や博徒としての才能にほれ込み、手打ちの条件として、ばく松は相手の組に籍を移すことになります。

そして、懲役を終え娑婆に出てくると、再度、抗争が勃発。
今度は、元の組にカチコミをかけることとなり、ばく松が元の組に乗り込んだところで、話は終わってしまいます。

・・・やたら中途半端な幕切れで、かなり物足りなさが残りましたが、手本引きという賭博のルールや、心理戦のような展開が描かれていたのは、良かったところでした。


【『札師』より】
 
勘ぐり合いの勝負で日をくらす博徒という人種は、なにかにつけて、異常に疑いぶかい性を身につけている。
 



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プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
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★★★★☆:良い作品!
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