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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:歴史小説】 血涙 ー新楊家将

【評価】★★★★★

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著者:北方謙三
出版:PHP文庫



【「三国志」を思い出しながら】

前作「楊家将」の続編。前作を読んでから、だいぶ時間が経ってから本作を手にしたわけですが、すぐに前作を思い出し、のめり込んで読んでしまいました。
中学生の頃、吉川英治氏の「三国志」を夢中で読んだ時のような気分で、読んだのでした。
「三国志」みたいに、もっと長かったら良かったのに、なんて思いながら、読み終わるのが残念な気持ちになった本は久々かも。



【楊家の悲劇】

「楊家将」は、宋に仕える軍閥・楊家の人々を描いた作品で、前作は、傑出した武将・楊業の活躍と楊業及びその息子たちの壮絶な戦死が描かれていますが、続編である今作は、前作で生き残った楊業の六男、楊六郎による楊家軍の再建と、運命のいたずらで、敵国・遼の武将となった楊業の四男・楊四郎こと、幻石果との戦いが描かれます。

楊家の人々の運命の悲劇が軸にありますが、本作の主役は、前作で楊業のライバルとして立ちはだかった、遼の名将・耶律休哥だったように思われました。
三国志で言えば、前作の楊業、耶律休哥は、曹操、劉備、諸葛孔明レベルで、楊六郎、幻石果は、諸葛孔明亡き後の世代の人々って感じでしょうか。



【楊一族の結末】

「三国志」と対比して書きましたが、やはり、本作は、「三国志」と同様、戦闘、軍略の場面が一番の見所です。

前作では、楊業が壮大な埋伏の計を行い(味方の裏切りにより失敗に終わりますが)、今作は、幻石果による空前絶後の空城の計が発動され、その策に、まんまとひっかかった宋軍や楊六郎の巻き返しがクライマックスとなります。

やはり軍記物だけに、壮大な作戦、戦いは大いに盛り上がります。この空城の計の発動により、敵味方に分かれた楊六郎と幻石果の決着が付けられ、楊一族の栄光と悲劇に結末が図られます。
戦乱の後に訪れた平和により、武門の家も必要なくなる結末は、時代に流されざる得ない人間の悲しさも感じるところです。



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【『血涙』より】
国は、なぜあるのでしょう。全部がひとつの国で、地域によって暮らし方が違う、というだけで充分なのに

(書き出し)
風で砂が逆巻くと、兵たちは眼に板を当てる。

(結び)
あと何年、草原を眺めるための外出をするのだろう、と蕭希姫はふと思った。
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【書籍:ファンタジー】 陰陽師 -螢火ノ巻

【評価】★★★☆☆

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著者:夢枕獏
出版:文藝春秋



【安部晴明の立場、あやうし?】

9編の短編集。
蘆屋道満が主役となる短編も多く、安部晴明の立場も危うしか?



【9編を紹介】

9編の短編を簡単に紹介したいと思います。

「双子針」
 天皇の病を治すため、都のあちこちにくぎを打ったところ、たちどころに治ったという話。天皇とと都は一体の関係にあるので、都自身にくぎ(針)を打つことで針治療をしたのと同じ効果が得られたということのようで。呪いの藁人形的な効果ですな。

「仰ぎ中納言」
星を気づかず飲み込んだら、予言ができるようになっちゃた人の話。いつの時代も、不吉な予言をする人は忌み嫌われるようで。

「山神の贄」
あまりの美声に、山神に命を取られた夫の妻が、夫の元にいくために山神に命を捧げる話。道満さんのお話ですが、道満さん、最近、性格丸くなってませんか?

「筏往生」
仏の迎えを待つ人の話。仏も人を救うという割には、「お前は殺生をしたから、極楽に行く筏には乗せられん」と冷たく一蹴する当たり、案外仏も冷たい。

「度南国往来」
葬式に行った晴明が、まだ生きてるっぽいねと、死者を蘇生させる話。
生者を死んだと思ってしまう話は陰陽師シリーズでは多いですが、生死の判定って、難しいんでしょうかね?

「むばら目中納言」
病の治療を流しの陰陽師に頼んだら、実は、病を引きこ起こしていたのもその陰陽師でした、という話。病気を治癒させた人が、じつは治療費目当てで病をでっちあげていたという、医療の不正診察的な話。陰陽師シリーズでも、定番の展開ですね。

「花の下に立つ女」
桜の精が源博雅の笛に聞き入る話。博雅の笛、もはや神の域を超えています。

「屏風道士」
屏風に入りこんだ道士の話。
絵に扉を書き込んで、その扉から絵に入り込んだりと、なんか、ドラえもんの道具にありそうです。

「産養の磐」
人狼率いる狼の群れに囲まれ、絶体絶命の娘さんを助け出す道満さんのお話。
道満さん、晴明並みに人助けするようになったなぁ・・・。
ダークヒーロー的な色彩が薄れつつあって、ちょっと寂しい。



【印象に残る作品は】

今回、印象に残ったのは、「仰ぎ中納言」。
登場する中納言の発する言葉が、現実のものになるので、それを利用して人を暗殺しようと目論む者が出てくるという展開。

「おい、〇〇が死ぬ」って言ってくれ。 「いやいや、言えませんよ」と、こんなやりとりになるわけですが、発した言葉が現実のものになるって、相当、発言に気を使わなければいけません。
失言ばかりの政治家には、持たせられない能力ですな。

しかし、結局、言った言葉が現実化したのではなく、予言能力だったというオチで、さすがに、そんな物騒なの能力は、小説の中でも簡単には存在しえないというわけなのでした。



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【『陰陽師 螢火ノ巻』中「双子針」より】
そこらの石であろうが、木であろうが、たれかが、それを神と見て、思うたり祈ったりすれば、それに本当に神が宿るということなのさ

(書き出し)
大地が激しく揺れたのである。

(結び)
若葉の匂いに、酒の香が溶けた。
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【書籍:歴史ファンタジー】 陰陽師 -蒼猴ノ巻

【評価】★★★☆☆

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著者:夢枕獏
出版:文藝春秋



【10編の短編】

今作は、10編の作品で構成。
蘆屋道満が主役で阿部晴明が登場しないという話は、結構あるのですが、今回は、源博雅だけが登場して、阿部晴明も蘆屋道満も登場しないなんていう変わった作品もあります。

定番の筋立てを踏襲しつつ、色々と試行錯誤して作品を書いているのかな、なんて、面白く感じました。



【各短編の紹介】

10編の作品をご紹介。

「鬼市」
あやかしの集う市で無銭飲食して、金払えと付きまとわれる話。食べた麺類が実はミミズだったりと、そりゃあ、金も払いたくなくなるかも(笑)。

「役君の橋」
木の丸太橋から声が聞こえると思ったら、中に仏が宿っているようだということで、丸太を掘って仏を彫り出す話。夏目漱石の夢十夜にも、木の中に仏像が入っているんだみたいな話、ありましたね。

「からくり道士」
今まで見たことのないからくり人形を作れと命じておいて、その人形を見て驚かされたので、捕らえて罰せよなど、無茶を言う人が懲らしめられる話。無理を押し通そうとすると、しっぺ返しを食います。

「蛇の道行」
生まれ変わって浮気な男を殺そうとする女の話。蛇に生まれ変わった女が、ネズミに生まれ変わった男を最後、食べてしまいますが、蛇とネズミの生まれ変わりが逆だったら、どうなったのでしょうか・・・?

「月の路」
恋路を邪魔する青いサルの話。ガマガエルに毒霧を吐かせて邪魔をさせるのですが、ガマガエルが一番気の毒なような。ちなみに、恋路は竹生島(琵琶湖にある島)にいる女神と弁財天の恋ですが、弁財天って、女性ではなかったかなぁ・・・?

「蝦蟇念仏」
「月の路」に出てきたガマガエルが、またも利用され、盗みの片棒を担がされる話。やっぱり、ガマガエルが一番気の毒なような。

「仙桃奇譚」
不老長寿の桃が天から地上に落ちてしまったという話。その桃を地上に落としたのは、孫悟空ですよね・・・?

「安達原」
安達ケ原の鬼婆伝説をモチーフにした話。鬼婆からの逃れてきた人は、実は死んでいて、最後は鬼婆と一緒に幸せに昇天する展開。愛しいほど食べたい、がキャッチコピーになる話ですね。

「首をかたむける女」
源博雅しかでてこない、めずらしい話。博雅の笛の音に合わせて生まれてきたものは・・・雪でしたという話。ほのぼのしてますね。

「舟」
西方に向かう神の神輿を引っ張るのに、川で水死して浮かばれない人々が駆り出される話。神さまと一緒に極楽浄土に行けるからラッキーといったところか。



【鬼市が一押しかな】

今回の短編の中で印象に残ったのは、一作目の「鬼市」でしょうか。
妖しい妖怪のような者たちが集う市で、登場人物(もちろん人間)が、市で売られている食べ物の匂いにつられ、我慢できずに色々と食べてしまうことから、騒動が起こる展開です。

いやぁ、「千と千尋の神隠し」のお父さん、お母さんみたいな人です(笑)。
人間、食欲にはどうしても勝てないものなのか。

分かっているけど、怪しげであっても食べてしまいたくなるのは人間の本能なのでしょうか。
この本能があるからこそ、今や、様々な珍味、食文化が発展してきたともいえるのかも。
そんなことを、ついつい考えてしまった作品でした。



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【『陰陽師 蒼猴ノ巻』中「仙桃奇譚」より】
不死などになったら、美味い酒は飲めぬ。笛の音を聴いても、それを心地よく聴けぬ。生命に限りあればこそ、酒が美味いのじゃ。

(書き出し)
月明かりの中を、その老人は、ゆるゆると歩いているのである。

(結び)
月光の中で、秋の虫が鳴きはじめていた。
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【書籍:歴史ファンタジー】 陰陽師 -酔月ノ巻

【評価】★★★☆☆

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著者:夢枕獏
出版:文藝春秋


【9編の短編集】

最近、「陰陽師」シリーズをまとめて手に入れたので、着々と読破中。
今回は、9編の短編で構成。
そんなに厚さはないのですが、それでも9編も短編が収まるものなのですね。



【各短編の紹介】

9編の短編を簡単にご紹介。

「銅酒を飲む女」…イタチを助けたら、逆に熱した赤銅の酒を飲まされそうになるという、恩を仇で返されるようなお話。せっかく親切をしてあげたのに・・・。

「桜闇、女の首」…桜の枝で首をつった女の怨念話。それ以降、その桜が「首の桜」と呼ばれるものの、その呼び名を忌むため、言葉を変え隠語で呼ばれるようになったというものですが、言葉の置き換えが複雑・・・。

「首大臣」…鬼と博打にまけて、首だけになってしまった大臣のお話。博打はダメね。

「道満、酒を馳走されて死人と添い寝する語」…添い寝して死人を生き返らせる話。道満主役の話。

「めなし」…恋の願掛けしたら、相手に呪いがかかっちゃったという、はた迷惑な話。

「新山月記」…山月記をモチーフにした話。

「牛怪」…彦星が浮気をして逃げる話。流星群に紛れて逃走。やるな彦星!

「望月の五位」…はにわが夜な夜な徘徊する話。顔が欠けたことを訴える話ですが、出土するはにわって、結構欠けているものが多いから、日本中、はにわが徘徊するようになるかもしれません。

「夜叉婆あ」…母親が死んで、子供を食べようとする話。世の中、子供がかわいくて食べちゃいたいということ、ままありますが、実際にやられるとひきますな(笑)。



【印象に残った作品】

今回、印象に残った作品は、「新山月記」でした。
「山月記」は高校の国語の教科書に載っていて、狷介な男の性格と孤独、悲しみみたいないところが、非常に強く印象にある話なのですが、そういった雰囲気が、「新山月記」にもあって、久しぶりに、山月記を読んだ時の気持ちが蘇りました。



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【『陰陽師 -酔月ノ巻』中「めなし」】
この季節になると、おれは、いつも、何だか妙な心もちになってしまうのだよ

(書き出し)
萩が、揺れているのである。

(結び)
めでたく、為次が通子姫のもとへ通うようになったという噂が、晴明と博雅の耳にも届いてきたのだが、それがいつまで続いたのかということまでは、定かでない。
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【書籍:歴史ファンタジー】 「陰陽師 -天鼓ノ巻

【評価】★★★☆☆

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著者:夢枕獏
出版:文藝春秋


【全8編で構成】

今回は、短編8編を収めた作品。
やはり、好みや波があるのか、今回は、さほどの面白さがなかったかなぁ。
ちょっと、話にひねりが入りすぎたものが多かったのかも。
短編なので、あまりひねり過ぎずに、ストレートな方が響くのかなという印象。



【各短編の紹介】

全8編を簡単にご紹介。

「瓶博士」…開けちゃいけませんという瓶を開けたら、やっぱり良くないことがという話。「鶴の恩返し」の時から、ダメと言われるとやっちゃうのが人の性でしょうか。

「器」…子供なくした人が、正気を失ってましたよ、という話。正気を失ったままの方が幸せなのか、なんなのか。

「紛い菩薩」…菩薩と思ったらカエルの化け物でした。しかも、菩薩の周りに飛び回っている金の粉は金ハエでした。うわ、きったねー。

「炎情観音」…浮気した、しないで、顔をかじられる女性の話。実際には、自分のへその緒を納めた観音をかじられたのですが、自分の顔にかじられた跡がついたよという恐ろしい話。

「霹靂神」…雷様が落ちてきて、笛と琴の音に併せ、太鼓を打つ童話的な話。

「坂髪の女」…盲目の琵琶法師、蝉丸にまつわる恋愛痴情話。世俗を超越したような蝉丸法師にもそんな時期もあったのねぇ・・・。

「ものまね博雅」…ものまねする化け物に取りつかれて迷惑千万となる博雅の話。自分の真似されるのってうざいですよね。

「鏡童子」…方向違えをしたつもりが、鏡を持っていたので、逆に縁起の悪い方角に歩いてしまったことになり、とんだことになる博雅の話。



【坂髪の女】

一番印象に残ったのは、「坂髪の女」。
陰陽師シリーズによく登場する、蝉丸法師の過去の女性問題にまつわる、意外やびっくりな話。
しかも、それが原因で失明したという話で、現在の姿(?)からは想像できない、熱い男女問題が存在したのでした。

人は分からないものですね。



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【『陰陽師 天鼓ノ巻』中「逆髪の女」より】
しかし、一度離れてしまった心は、もう、もとにはもどらぬのだよ。

(書き出し)
これやこの行くも帰るもわかれてはしるもしらぬも逢坂の関

(結び)
月光の中で、いよいよしげく花が散り、琵琶と舞いは、夜半まで続いた。
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プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
★★★☆☆:損はない
★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

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