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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:企業小説】 頭取の首

【評価】★★☆☆☆

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著者:山田智彦
出版:文藝春秋



【40年に及ぶ銀行内の権力闘争】

主人公・前原を軸とした40年に及ぶ銀行内部の権力闘争を描いた大河長編作品。
大河長編と書くと聞こえがいいのですが、40年の歳月が、無駄に長いだけの気がする(笑)。
40年の歳月というのは、主人公・前原が支店長になってから、役員、頭取と出世の階段を駆け上がり、代表権を持った会長に君臨して、最後は銀行の不祥事の責任を負って辞任するという、大変長々とした時間が描かれています。



【気長な復讐劇】

冒頭に、前原のパワハラにより自殺に追い込まれる部下の話が出てきて、その子供が終盤、前原への復讐劇を果たすというストーリーがあるわけですが、40年後に復讐を果たすって、だいぶ気が長いです。
戦後、身分を隠して生きながらえているナチス党員を狩る、ナチスハンターばりに気が長いように思えます。

前原が栄耀栄華を極めた末に復讐を果たしても、十分、人生を楽しんじゃった後の話だから、復讐の効果が薄いんじゃないかなぁと思ったりもして・・・。



【意外と無駄なエピソードが多い?】

本作、40年にわたる時間軸で描かれているので、やたら長い伏線がある一方(前述の復讐劇なんかがそれ)、伏線がある重要な話なのかと思いきや、全くストーリーとは絡まない、よく分からないエピソードや人物も大量にあって、このあたり、整理するか生かされると、もうちょっと読み応えあるかな、などと思いました。

前原と、その上役にあたる海老原という人物が権力闘争を行うわけですが、海老原が、「前原も目が曇ったな。あの銀行合併話は、わしが持ちかけたのじゃ。見た目はうまそうな話だが、内情は非常に難しく、失敗すれば前原の経歴に傷が付き、引きずり下ろすことができる、うしし・・・」みたいなことを言いつつ、話の流れで、銀行合併のエピソードが出てくるのですが、あっさり、合併話に成功して、前原の経歴には何の影響も与えず・・・なんて感じで、そこは、もうちょっと絡ませようよと思ったりもするわけで。

その他、銀座のママさんが重要な役割を担うのかと思いきや、結局、全く存在意義がないキャラクターだったり、余計な人物が多い気がします。「三国志」的な、いろんなキャラクターが出てくる小説だと割り切れば、良いのかもしれません。

そして、もう一つ思ったのが、客の情事をテープに録音する趣味の料亭の女将とか、女性を睡眠薬で眠らせて、その間に内ももに入れ墨を入れる男とか、どことなく、変態チックな人物が多いのも、びっくりでした(笑)。



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【『頭取の首』より】
継続は人をマンネリ化し、変化は人の気持を鼓舞する。

(書き出し)
東京の数ある盛り場、例えば新宿、渋谷、池袋、上野、浅草、それに赤坂、青山、六本木、そして原宿等々にも、時代の流れと共にかなりあからさまな流行り廃りが見られる。

(結び)
近くの妙本寺の境内まで足を伸ばし、清浄な空気を胸いっぱい吸い込んでから、今夕の散歩を終えることにした。
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【書籍:経済小説】 不毛地帯(全5巻)

【評価】★★★★★

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著者:山崎豊子
出版:新潮文庫



【伊藤忠商事・瀬島龍三氏】

戦時中、日本陸軍のエリート参謀として太平洋戦争の作戦の中軸に参画し、終戦後、満州でソ連軍に捉えられ11年間のシベリア抑留生活、帰国後は、商社に入り、防衛庁の戦闘機調達や石油資源開発などに関わり、その中で、日本の政財界の裏側にもどっぷりつかっていく、そんな人物を描いた作品。

小説なので、思い切った設定かと思いきや、実はモデルになった実在の人物がおり、その人物が、伊藤忠商事の会長・瀬島龍三氏。
もちろん、事実は、小説のような内容そのままではないですが、瀬島氏の経歴が、シベリア抑留から、政財界の裏側に関与し、政界のフィクサーと呼ばれたことは事実なので、事実を思いはせながら、興味深く小説を読むことができます。

ちなみに、瀬島龍三氏については、先日、「沈黙のファイル -「瀬島龍三」とは何だったのか」という本を読み、瀬島氏が「不毛地帯」のモデルになったことが書かれていたので、今回、本書を読んでみた次第。



【戦闘機調達を巡る闇】

山崎豊子氏の作品は、長編作品が多いですが、ボリュームを感じさせない面白さで、どんどんと読み進めることができました。

小説の最初はシベリア抑留の話で、その過酷さは想像を超えるものがあり、よく生きて帰れたものだと思います。シベリア抑留の章も、非常に興味深く読むことができる部分ですが、圧倒的に面白いのは、帰国後、主人公が商社入りし、商社マンとして活躍する部分。

最初は、防衛庁の戦闘機調達を巡る商社間の駆け引きが描かれ、調達機決定に当たっては、戦闘機の性能は当然考慮に入れられるものの、裏では、政治家の利権が絡み合い、この利権を上手く利用して、主人公の商社が推す戦闘機が調達機に選定される結果になります。

実際、田中角栄さんが絡んだロッキード事件なんかは、まさに、この小説に書かれているような話でしたし、色々な取材に基づいて書かれているのでしょう、リアル感のある内容が、山崎豊子さんの小説の魅力ですね。



【ドラスティックなサラリーマン生活?】

その後、日本の自動車会社とアメリカの自動車会社ビッグ3の一つとの合併を巡る話、イランでの石油開発を巡る話と、骨太でビッグビジネスをテーマにした話が続き、これまた読みごたえがあります。

自動車合併会社を巡るストーリーでは、ライバル会社に敗北、ライバル会社の腕利き商社マンとして登場する鮫島氏が、キャラ立ちしていて、鮫島氏の存在が小説を面白くしています。
更に、ビッグビジネスを巡る商社間の駆け引きの合間(?)に、主人公の会社での権力闘争なんかも描かれ、サラリーマンの社会が、ここまでドラスティックなのかは、はなはだ疑問ですが(少なくとも、私はこんなドラスティックなサラリーマン生活は送っていない(笑))、この本読むと、就職ランキングで、商社人気も分かる気がします。

主人公が、少々、綺麗に描かれ過ぎな感じもありますが、商社を巡る、政財界の裏表など、ドロドロとした世界でありながら、魅力的な世界が描かれており、非常に面白いビジネス小説でした。



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【『不毛地帯』より】
それでいい、島国のわれわれは、日の丸民族意識に凝り固まり過ぎて、戦に敗れたのだ、その教訓を生かして国際的な視野にたって日本の将来を考える、それがわれわれが血を流して購った尊い教訓だ

(書き出し)
社長室の窓の外に大阪城が見え、眼下に帯のような堂島川が見える。

(結び)
シベリアの無上の空を、七色の光が不気味なほど美しく彩り、“生きて歴史の証人たれ”と、いかなる過酷な運命の下でも生き抜けと諫めた故谷川大佐の声が、オーロラの中から、壹岐の耳にはっきり聞えて来た。
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【書籍:経済小説】 海賊とよばれた男

【評価】★★★★★

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著者:百田尚樹
出版:講談社



【出光興産の創業者がモデル】

戦前から戦後にかけて、石油業界で活躍した、国岡商店の創業者の生涯を描いた作品。
で、国岡商店って、今で言うと、どこの会社なのかという疑問がわくわけですが、本書の中には言及がなく、ネットで調べてみると、出光興産をモデルにした実話とフィクションが織り交ざった作品とのことのようです。

てっきり、ノンフィクションなのかと思って読みましたが、そうかぁ・・・実話をベースにしたフィクションだったのか・・・。
主人公の豪胆というか、気骨のある姿には強い感銘を受けましたが、実話ベースのフィクションと聞いて、どの辺りが実話でどの辺りが作られた話なのか、知りたくなったなぁ・・・。



【人間本位の姿勢】

全体的には、それぞれきちんとしたエピソードが基にあって書かれている印象があり、ノンフィクション系の作品というのが読後の印象でした。
最後の方の、主人公が白内障にかかって、失明に近い状況だったところ、良い医者に掛かって回復したとかいうエピソードは、小説だったらあまり意味をなさない話でしたし、ノンフィクションだったら事実だから書いておくみたいな話だろうな、などと思いました。

さて、実話、フィクションの別は置いておくとして、自身の信念に基づいて、初志貫徹の精神で物事に取り組みながら、こういうタイプにありがちな、自分本位で他人を顧みないというところがなく、人間本位の姿勢を貫くという人間性に強く惹かれるものがありました。

戦前、敗戦後の国難の時代に、会社に利益のためではなく、国のためになるのであればということで、どの会社もあまりに困難で手を引いていた仕事を利益度外視で引き受けるといった、国士的な部分も、なかなかいないぞと、思ったのでした。



【軍国主義に批判的な姿勢】

それから、本書を読んでいてちょっと意外だったのは、著者の百田尚樹氏、昨今の言動から、結構、右翼的な信条思想の人で、戦前の日本についても、肯定的に捉えている人だと思っていたのですが、本書の主人公が、アメリカとの戦争に明確に反対の姿勢を示していたり、中国大陸への侵略行為にも批判的な姿勢だったりで、モデルになった出光興産の創業者が、そういう信条だからなのかもしれませんが、百田尚樹氏の書いた本としては、ちょっと意外な印象を受けました。

本書を読むと、戦前、戦後とも、硬直的な官僚主義がはびこっているなぁという印象で、軍国主義云々の前に、自由にビジネスをするとかいう雰囲気が、日本では育ちにくい社会なのかとも思いながら読みました。

その意味で、そういう閉塞した空気を打破できる人というのは、日本では非常に貴重ですね。



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【『海賊とよばれた男』より】
石油のために戦争を始めて、石油がなくて戦いに敗れ、今度は石油によって支配されるわけか

(書き出し)
青い空がどこまでも続いていた。

(結び)
臨終の床の間には、仙厓の「双鶴画賛」が掛かっていた。
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【書籍:伝記】 粗にして野だが卑ではない -石田禮助の生涯

【評価】★★☆☆☆

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著者:城山三郎
出版:文藝春秋



【第五代国鉄総裁ですが・・・】

第五代国鉄総裁を務めた石田禮助氏の半生を描いた作品。
立派な人物なのでしょうけど、事績に「すごいっ!」とか「大変なんだなぁ」というところがあまりなく、普通の人の普通のお話的で、正直、ぱっとしなかったなぁという印象。

色々と、プライベートな人となりといったエピソードも出てきますが、大元に「すごい人」というのがないと、プライベートな人間的エピソードも映えず、単に、「ケチくさい爺さんだな」とか、「孫が生まれたら変わるよね」という、なんか、「そういうのあるある」的な感想にしかなりませんでした(笑)。


【相場師としての姿】

元々、三井物産に入社し、ほとんどを海外で過ごして、物資の買い付けを通じて、相場で大儲けしたり、逆に大損したこともあったりと、仕事人としては相場師的な面もあったようですが、この辺りは、表面的にさらっと書かれており、もっと深堀りされていると激動の人生みたいな感じがあって面白かったのではと思います。

相場師の人の大儲けしたり、時に破滅的に大損をしたりという話は、非常にスリリングなので、石田禮助氏のそういった面も描かれていると良かったのではないかと。



【国会答弁での率直な言動】

三井物産を退職してから、10年以上たって、国鉄の総裁へと起用されます。
当時の国鉄は、国営による非効率、親方日の丸の組織と、強力な労働組合の存在など、様々な課題を抱えていて、誰が総裁になっても変えることはできないだろうと言われていた状況。

そのような組織に単身飛び込んで、総裁として大きな責任を引き受けるわけですから、相当の覚悟がいるのでしょう。

石田禮助氏は、思ったことをズケズケと言ってのけるタイプで、国鉄総裁は国会対応や政治回りの仕事が非常に多かったそうですが、国会の答弁でも非常にズバリとした物言いをし、周囲をハラハラさせると共に、率直な言動を非常に愛される面もあったようです。

本書では、そういったエピソードも紹介されており、興味深いところでしたが、やはり、本書のボリュームが薄いので、ごく限られたエピソードだけで、やはり物足りなさが残った印象でした。

分量が非常に少ないので、全般的に物足りなさがありましたが、やはり、大きな事績があるわけでないだけに、小説としてまとめるには、少々素材不足の感があったのかもしれません。



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【『粗にして野だが卑ではない』より】
気持はヤング・ソルジャーだ

(書き出し)
第五代国鉄総裁石田禮助の葬儀は、故人の遺志通りのきわめて簡素なものであった。

(結び)
絵になる人生を歩んだ人が、いま連絡船という絵になって、海を走っていた。
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【書籍:企業小説】 沈まぬ太陽

【評価】★★★★★

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著者:山崎豊子
出版:新潮社



【JALの腐敗を題材とした作品】

国営化時代のJALを題材にした小説。
御巣鷹山の事故も取り上げられ、小説では会社名は変えてありますが、この事故当時、生まれていた人なら、JALのことだな、と分かるはずです。

内容は、社内の労働運動に端を発した、職員に対する徹底的弾圧策から、権力闘争と腐敗にまみれて、ガバナンスを失っているJALの姿が描かれています。
さすがに、こんなひどい会社はないだろう、小説なので、色々な航空会社の不祥事やを題材にとって脚色してまとめた内容なんだろうとおもったら、後書きを読むと、JALで実際に起こっていたことを題材にして小説化した作品のよう。
JALのひどさに唖然としたのでした。



【人事での報復】

小説では、ストを指導した労働組合委員長が主人公。
社内の労働組合は、1年ごとに委員長が後退し、委員長だった職員は元の職場に戻るわけですが、委員長を退任した主人公に対して報復人事を敢行します。

10年に及ぶ、海外僻地へたらい回す赴任命令。
JALが就航していないアフリカや中東の国に、一人事務所を設立してそこに赴任させるという強烈な嫌がらせ。
社内の内規でも、過酷な海外赴任は2年を任期とし国内に戻すとなっているにもかかわらず、内規を無視して、海外の僻地に飛ばしたままにするというひどい話が、前半部分の内容。
こんな会社では、事故も頻発するよなぁという怖さを感じます。



【御巣鷹山事故】

中盤は、国内でも史上最悪の事故となった御巣鷹山事故が描かれます。
遺族の痛切な姿や、悲しみの様子は、実際の遺族を取材したり、当時の資料を当たって書いたであろうことが容易に推察され、涙なしでは読めない内容です。

また、遺族とJALの認識、スタンスの差というか、大きな溝があることも、企業の経営の論理だけでものごとを考えるJALの酷さに憤りを感じさせます。
なんだか、東日本大震災で原発事故を起こした東京電力の対応を彷彿とさせ、事故を起こした大企業って、みんなこんな感じになってしまうのかなぁと、あきれる思いですらあります。



【救いのない結末】

後半は、民営化が取りざたされるJALの企業体質を改善すべく、外部から会長職に経営者が送り込まれてきて、改革が進められる様子が描かれます。
しかし、その改革も、職員内の労働組合同士の対立や、腐敗する幹部クラスの抵抗、事なかれ主義で既得権益を守ることしか頭にない社長や副社長など、様々な壁に立ちふさがれ、思うように進まず、改革に協力する主人公も、社内外から会長と共に批判にさらされる結果に。

さらには、三顧の礼で会長職の就任を依頼し、JALに送り込んだ総理官邸からも裏切られ、送り込まれた会長は途中で辞任、主人公も会長がJALを去ると同時に、またも、JALの報復人事で、アフリカの僻地の一人事務所に飛ばされてしまうという終わりとなります。

・・・救いがなさすぎの結末。
山崎豊子さんの作品って、結構、シニカルというか、救いが無かったり、悪党がのさばる結末が多い気がしますが、これまで読んだ作品の中では、本作は群を抜いて、救いがなさすぎ。

もうちょっと救いのある結末にならんもんかねぇ、と思ったのですが、後書きを読んで、小説のモチーフになった人物がJALに実際にいたということで、おそらく、事実に即した結末なんだろうということが理解できました。

だとしたら、救いのある結末に改変すること自体、小説の真意を損ねることになるのでしょう。JALのマークである日の丸を思うと、「沈まぬ太陽」というタイトルが、痛烈な皮肉にも感じる作品でした。





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【沈まぬ太陽】
人間にとって、やり甲斐のある仕事を与えられないことほど、辛いものはない。

(書き出し)
濃厚なブルーの空に、雪山のような雲が動き、果てしない草原に、灼けつく太陽の陽炎が波打っている。

(結び)
それは不毛の日々に在った人間の心を慈しみ、明日を約束する、沈まぬ太陽であった。
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プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
★★★☆☆:損はない
★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

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