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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【洋画:伝記】 スティーブ・ジョブズ(2015年版)

【評価】★★★★☆

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2015年/アメリカ
監督:ダニー・ボイル
主演: マイケル・ファスベンダー

以前、「スティーブ・ジョブス」という映画を見た覚えがありますが、はたまた同じタイトル・同じ題材で映画が作られていたので、見比べる意味でレンタル。

【ストーリー】
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アップル社を率いるジョブスは、新製品マッキントッシュの発表会直前で、製品の不具合や、思い通りに行かないことが山積し、苛立ちは頂点に達していた。
会社の部下や仲間を呼びつけ、怒鳴り散らし、脅しをかけ発表会を成功させようとする中、子供の認知を求める女性と子供が訪ねてきたりして、トラブルは頂点に。
発表会は何とか成功するものの、ジョブスの自信とは裏腹に、マッキントッシュの売れ行きは低迷、ジョブスは、アップル社を去ることになる。
その後、ネクスト社を立ち上げ、新製品を開発するが失敗。しかし、アップル社も酷い低迷状況にあり、アップル社はジョブスを再度、経営者として迎え入れる。
ジョブスは、そこで、新製品i-Macを開発、見事な成功を収める。
また、なかなか関係修復が進んでいなかった認知した娘との間も、i-Macの発表会の直前での交流を通じ、少しだけ修復が進むのだった(完)。
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【発表会直前の舞台裏】

以前観た映画「スティーブ・ジョブス」は、まさにジョブスの半生記を描いた作品で、ガレージで会社を立ち上げ、ビル・ゲイツとの交流と競争、成功、挫折、失敗、成功・・・といったストーリーが描かれ、まさに、立志伝中の人物を描いた作品でした。

本作はというと、既に名声を得た状況のジョブスが挫折と再生するという展開で、その中に、家族との関係、ストーリーが織り交ざった、いわば、既によく知られているジョブスが描かれています。

舞台も、たいていは、新製品発表会の直前の場面での様々な関係者とのやり取りを通じて描くという、凝った演出の作品です。



【一言で言うと・・・暴君】

新製品発表会の直前で、いつもこんなにゴタゴタしていたら、本当に嫌だろうなぁと思いますが(ここは、映画での設定ということだと思いますが)、発表会の舞台裏のやり取りだけで、ジョブスの人間性が浮き彫りにされるというのは面白い設定でした。

言わば、ゲスでクズな人間性のジョブスが描かれているわけで・・・。

一言で表すと「暴君」でしょうか。
しかし、功を成し遂げた創業者って、暴君タイプが非常に多いなぁと思います。本でも、色々な創業者の話を読みましたが、大抵、暴君タイプで、こんな人と一緒には働きたくないなぁと思うわけで。

反面、そういった暴君と関係のあった人の話では、暴君である面にうんざりさせられる一方、強烈なエネルギーに惹きつけられ評価するといったこともあり、暴君だけでは、上手く行かないのだろうと思います。
その点、ジョブスも暴君ではありますが、何か人を惹きつけるところがあったからこそ、ジョブスのアイディアを実現するのに協力する人が多く集ったのでしょう。



【現実歪曲能力】

映画で興味深かったのは、家族の関係。
以前、ジョブスが死ぬ直前だったと思いますが、プライベートジェットで来日したことがあり、家族を一緒に連れてきていたと記憶していますが、その記憶が正しいとすると、この映画で出てきた女性や子供と関係が修復したのかなぁと思いながら見ていました。

子供の母親も、まぁまぁのダメ人間っぷりでしたが、ジョブスは、それに輪をかけてというか、別次元でもはやダメ人間だろうという感じで、どうやっても折り合いも上手く行く点も見出せそうにありませんでしたが、現実では、家族として和解がされたのであれば、良かったなぁと思ったところでした。

しかし、本作を見ると、ジョブスがどうして成功できたのか不思議な気がしますが、映画でしきりに出てきた「現実歪曲能力」-自分の都合の良いように、好きなように現実を歪曲させる力があるからこそ、成功できたのでしょうか。



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【洋画:ドキュメント】 甘くない砂糖の話

【評価】★★★★☆

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2014年/オーストラリア
監督:デイモン・ガモー
主演:デイモン・ガモー

DVDの予告で、妻が見たいといっていた作品。借りてきたら、「えっ?そんなの観たいっていったっけ?」・・・・おいおい、梯子をはずされてしまいました(苦笑)。

【ストーリー】
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オーストラリアに住む主人公。健康的な食生活を送っているが、一般のオーストラリア人は、平均、毎日、スプーン40杯分の砂糖を摂取していると知って、実際、それだけの糖分を毎日摂取したらどうなるか、2か月間、実験を試みることにする。
実験開始後、急激に、様々な数値の悪化、体重の増加、感情面で躁鬱的な起伏の波、倦怠など、様々な症状が起こり始める。
また、砂糖を巡る企業や食品流通の状況なども調べるうちに、日常で、砂糖を過剰摂取せずに過ごすことの難しさ、政府や企業の認識や姿勢に対する疑惑なども浮かび上がってくる。
病気の原因の全てが糖分の過剰摂取とは言わないものの、糖分の過剰摂取を止めることが、健康の入り口にあるのだと結論付ける(完)。
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【スプーン40杯分の糖分】

オーストラリア人の毎日の砂糖の平均摂取量が、スプーン40杯(砂糖を直接ではなく、食品・飲み物に含まれるものを入れてですが)にも及ぶと知って、そのような食生活を続けたらどうなるかを、自らの体を使って実験を試みたノンフィクション作品。

オーストラリア人は、平均してそれだけの糖分を摂取しているということなので、実験せずとも、オーストラリア人の健康状態など見れば一目瞭然かもしれませんが、本作を撮った監督(?)は、いつもは健康を気にした食生活を行っており、スプーン40杯分の糖分とは無縁だったそうなので、健康生活を打ち切り、不健康生活(?)を実験してみた結果が如実に表れる状況となりました。



【ひどい食事】

さて、毎日スプーン40杯分の食事ってどんなもんなのかなぁと思いましたが、結構、ひどい食事です。
欧米人って(実際はオーストラリア人ですが)、こんな食事してるなら、まぁ、不健康にもなるよなぁという感じです。日本の和食を主体とした食事からすると、そりゃあ、糖分接種も過剰になるのではという感じがします。



【過剰摂取は何事も良くない】

本作は、スプーン40杯分の食事による身体面や精神面への影響だけでなく、糖分の種類に関する話(ブドウ糖、ショ糖・・・)や、砂糖を巡る過去から現在を巡る議論、食品業界における砂糖に対するスタンスなど、話題が幅広く、飽きずに、興味深く見ることができました。

「そんなの観たいって言ったっけ?」とのたもうた妻も、熱心に見ていて、「食事に気を付けないと・・・」なんて漏らしたりしていたので、かなり啓発効果の高い映画でした。

私の結論は、何事も過剰摂取は害になるなぁというもので、多分、私の場合は、糖分は過剰摂取していないはずなので(清涼飲料水とかは飲まないし、お菓子もほとんど食べないし・・・)、まだ、大丈夫かななんて安心材料になりました。

この手の映画を見ても、自分だけは大丈夫なんていう人が、一番やばいかもしれませんね。




【洋画:ビジネスドラマ】 ドリフト

【評価】★★★★☆

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2012年/オーストラリア
監督:モーガン・オニール、ベン・ノット
主演:マイルズ・ポラード、ゼイヴィア・サミュエル


今、マイブームになっているサーフィン映画をレンタル。
冬にサーフィン映画もどうかと思いますが、夏を思い出して視聴です。

【ストーリー】
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1970年代のオーストラリア。
サーフィン好きの兄弟、アンディ(兄)とジミー(弟)は子供の頃からサーフィンに熱中していたが、アンディはサーフィン中に足を怪我してサーフィンはあまり出来なくなってしまっていた。
一方、弟・ジミーは、天才的な才能で、地元のアマチュア大会に優勝するほどの腕前に成長していた。
そんな中、アンディとジミーは、サーフショップを始める。
兄・アンディの才覚でサーフショップは流行り出すが、一方で、運転資金を地元の銀行が貸してくれなかったり、ギャングと麻薬絡みのトラブルが発生したりと、様々な困難も待ち受けていた。
そんな困難の中で、兄弟の間も亀裂が入り、弟ジミーは店を離れていってしまう。
更にトラブルによって、資金がどうしても必要な状況が生じるが、折りしも、地元で高額賞金がかかったサーフィン大会が開かれることになる。
兄・アンディは、足の古傷を負いながらも、どうしてもお金を手に入れたいがため、大会に出場する。
予選はなんとか突破するものの、古傷のある体では優勝して賞金を手に入れるのは絶望的。
兄の大会出場とその理由を知った弟ジミーが駆けつけ、兄の代理で決勝戦に参加することとなる。
決勝大会では、弟ジミーは見事な跳躍をする大技を見せるものの、着地に失敗し、優勝を逃してしまう。
しかし、ジミーの跳躍シーンが新聞の一面を飾り、それによって、サーフショップは大繁盛、資金問題もいっきに解決する。
更に、ジミーは、プロ大会への出場にも声がかかり、プロを目指して大会に参加するのだった(完)。

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オーストラリアでサーフショップを立ち上げ、一流ブランドに育て上げた兄弟を描いた作品。
実話をもとにした作品となっていますが、実際には、複数のサーフブランド(クイックシルバー社、リップカール社、ビラボン社など)のエピソードを取り入れてストーリーが作られた作品とのこと。
ですので、特定の誰かがモデルにはなっておらず、1970年代、オーストラリアで次々と立ち上がったサーフブランドをイメージした作品といったところでしょうか。
ただし、エピソード自体は、実話をもとにしているので、当時のサーフブランドの立ち上げはこんな雰囲気だったんだなぁと味わうことができる作品だと思います。

物語は、足を怪我してサーフィンの世界から足を洗った兄アンディと、天才的な技量を持つ弟ジミーの兄弟を主人公とし、二人がサーフショップを立ち上げていくという展開。

兄のアンディがいいよねーと思います。
ビジネスマンとしても有能で、意志が強く、目標をしっかりと持っていて、困難や問題を自分自身で解決しようという強さがあります。

私は、あんまり目標とかなく、その日その日を流れるまま生きているようなところがあるのですが(笑)、敢えて目標、目指すところというとすれば、困難や問題を自分自身の力で解決できる能力・強さを身に付けたというものなので、本作の兄アンディの強さは心に響くものがあります。

まぁ、あまりに強すぎるが故に、恋人から、「何でも自分一人で問題を解決できる男の欠点は、他の人と問題を共有できないことよ」なんて言われてもしまいますが。
そう言われるくらいの強さが欲しいものです。

兄弟二人は、ガレージからサーフショップを立ち上げますが、特に兄アンディの力もあって、順調に店は大きくなっていきます。
しかし、一緒に店を立ち上げた仲間のドラッグ問題によるマフィアとのトラブルや、銀行が融資をしてくれないといった問題など、ベンチャー企業ならではの課題なども立ちはだってきます(ギャングとのトラブルは、ベンチャー企業ならではの問題ではありませんが)。

特に、地元銀行とのやり取りが非常に興味深いところです。

ガレージでサーフビジネスを立ち上げ、事業拡大のための融資を地元銀行にお願いに行くと、銀行からは、「これで商売になるとでも思っているのかね?こんな遊びみたいなことに金なんか出せるわけないだろう」とケンモホロロに断られます。

その後、知人からの資金協力などで、ガレージから、もう少し大きな規模のビジネスができるようになり、街の中に店を構えようと言うことで、しっかりとしたビジネスプランの書類を作り、再度、地元銀行に融資をお願いに行きます。
今度は、「多少、サーフボードが売れたからって、将来性はあるのかね?だいたい、サーフィン市場なんて存在するのかね?一体、誰がサーフボードを買うっていうんだ?」とまたも、頭ごなしに融資を拒絶。

兄アンディは、「市場?オーストラリアのことを知らないのか?国中全ての人が、海岸線沿いに住んでいるんだぞ。これから、人々が生活を豊かに、そして、充実した生活を送るのに、サーフィンが役に立つんだ。」と言い返しますが、地元銀行は全く理解しません。
弟ジミーは、地元銀行の態度に、「そんな石頭じゃ、我々のビジネスを理解なんかできないだろうな。結局、銀行は農業と林業にしか金を貸すつもりはないのさ」とあきれます。

新しいことにチャレンジしようとする人と、それに対する守旧派の無理解。
いつの時代でも同じことはあるわけです。
少しばかり実績を上げても、守旧派としては、「単なるラッキーだっただけだろう」くらいにしか思わず、きちんと評価をしようとはしないわけです。
そして、大きく成長して、誰の目からも成功が確認できて初めて、ようやく後追いでしぶしぶ認めるわけです。

新しいことを始める難しさ、何より周りに理解してもらうことの難しさも、この作品では描かれています。

ラストは、お店の資金獲得のため、兄弟がサーフィン大会に出場するシーンがクライマックスとなります。
本作は、サーフショップ経営というビジネスを描くと同時に、サーフィン自体をも描いています。
ラストの大会でのサーフシーンは圧巻。
サーフィンをやらない人でも(まさに私がそうですが)、サーフィンの魅力をたっぷりと堪能することができます。

決勝大会で、弟ジミーが、大波に乗って、華麗にジャンプをするというアクロバットな技を披露。
残念ながら、着地時にバランスを崩し落下してしまい、優勝を逃し、目当てとしていた優勝賞金を手に入れることは叶いませんでした。

しかし、まさに、そのアクロバットなシーンが、ベストショットで写真に取られ、新聞の一面を飾ったことから、サーフショップは大ブレイク。
一気に、ブランドへと駆け上がっていくことになります。

色々な要因、幸運があるにしても、何より、兄弟がサーフィンのこよなく愛し、自らもサーフィンに熱心に打ち込んでいるという土台があったからこそ、愛するサーフィンに関わるビジネスが成功したのでしょう。
熱意だけでは成功できないかもしれませんが、熱意がなければ成功はしないわけです。

アンディ・ジミー兄弟の夢を追うという情熱、サーフィンをこよなく愛していると言う熱意、これこそが、見ていて大きな感動を呼ぶものでした。
やはり、サーフィンを愛している人にこそ、サーフビジネスで成功して欲しいですよね。


【洋画:社会派映画】 マネーショート -華麗なる大逆転

【評価】★★★☆☆

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2015年/アメリカ
監督:アダム・マッケイ
主演:クリスチャン・ベール


映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」みたいな話なのかなぁと思い、面白そうな雰囲気だったのでレンタル。

【ストーリー】
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リーマンショックが起きる数年前のアメリカ。
経済は、住宅市場の高騰と、それに支えられる住宅ローン(サブプライムローン)を債券として市場で取引するという手法で、金融業界も大活況を呈していた。
しかし、ジャレッド・ベネットやマイケル・バーリなど、一部のファンド経営者や投資家は、住宅ローン債券が破たんするではと予測していた。
そこで彼らは、活況を呈し空前の好景気となっている住宅ローン市場が崩壊する方に賭け、投資することを決断。
銀行に話を持ち込み、住宅ローン債券が破たんした際の保険を作らせ、その保険に加入をしたのだった。
銀行が、住宅ローン債券が破たんするなどとは全く考えておらず、むしろ、保険手数料で稼げることから、彼らの言うがままに保険を作り、その保険を彼らに販売するのだった。
ベネットらの予測に反し、なかなか住宅ローン市場の破たんは訪れないが、ついに高額な住宅ローンを払えなくなる人々が続出する。
これにより、住宅ローン債券の大規模な破たんが生じ始め、住宅ローン債券を大量に抱えていたり、または保険を大量に販売していた銀行は、次々に破綻し始める。
ベネットやバーリの予測は当たったが、この保険も当の銀行が破たんしてしまえば、銀行は保険金を支払うことができず、無価値になってしまう。
そこで、この保険を高額で売り抜け、ベネットやバーリは、大金を手にすることに成功する。
一方、破たんした銀行は、公的資金の投入により破たんを免れ、また、住宅ローン債券という無責任な手法で金儲けに走った責任は誰も取ることはなかった(完)。

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軽妙なシナリオにはなっていますが、基本、まじめな、「リーマンショック」とは何かを説明した経済映画。

リーマンショックの原因を簡単に述べると、住宅ローンを債券として市場で販売したものの、住宅市場バブルの崩壊で住宅ローンを払えなくなる人が続出、それにより住宅ローン債券の価値が下落し、経済恐慌を引き起こしたというもの。

通常、社債や国債といったものがありますが、これは、企業の債権や国の債権(要は借金)を債券にしたもので、簡単に言えば、社債や国債を買うと言うことは、間接的に、その企業や国にお金を貸しているということになります。

当然、お金を貸しているので、返済期限には一定の金利が付いてお金が戻ってくるわけですが、反対に、企業や国が破たんし、借金が払えなくなってしまえば、金利どころか、元本(社債や国債を買うのに払ったお金)さえ戻ってこなくなるリスクがあります。

リーマンショックの引き金になった住宅ローン債券は、企業や国の借金の部分が、個人の住宅ローンに置き換わっているというわけです。

住宅ローン債券というのは、たくさんの個人の住宅ローンを集めてひとまとめにして債券にしたものですが、当初は、支払い能力が確実な個人の住宅ローンのみを対象にして債券化していたため、破たんのリスクは少なかったのですが、住宅ローン債権を増やそうとすると、そういった優良顧客のローンでは数量に限りがあるため、支払い能力に疑問のあるような人の住宅ローンまでも債券に組み込んだことから、破たんのカウントダウンが始まってしまったというわけです。

「そもそも、支払い能力のないような人にまで住宅ローンを認めないだろう」という突っ込みが入りそうですが、当時のアメリカは住宅市場バブル。
住宅を購入しても、数か月後には住宅の値段が上がり、買った住宅を購入費以上の価格で売ることができたため、収入がなくとも、転売という方法でお金を稼ぎローンを支払うことすらできてしまっていたわけです。

うーん、まさに、日本の平成土地バブルのような状況。

金融業界は、住宅ローンは安泰という盲信から、住宅ローンを原資とした住宅ローン債券を生みだし、売りまくりお金を稼いでいたわけです。

本映画で描かれているファンド経営者のジャレッド・ベネットや投資家マイケル・バーリは、それぞれ、アプローチの仕方こそ違えど、住宅ローン債権の不安定さに築き、住宅ローン債券市場の崩壊を予測します。

ジャレッド・ベネットは、売上上位の住宅ローン債券に組み込まれている住宅ローンの種類・性質を丹念に調べて、非常に高い割合で支払い不能になってもおかしくない住宅ローンが組み込まれていることを突き止めます。

また、マイケル・バーリは、住宅ローンを支払っているのが、日銭を稼ぐストリッパーで、しかも5軒もの家・マンションのローンを払っているという話や、ローンの販売員が無節操に誰彼となくローン契約を結んでいるという事実を掴み、住宅市場が空前のバブル状態であり、当然、バブルが近い将来弾けるだろうと考えます。

ウォール街の人々は、金になるからと言って、とんでもない住宅ローン債権を大量に生み出す一方、一般の市民も、住宅が金になると思い投資や転売ありきで狂騒的に住宅を購入していた、その両方がかみ合って、住宅バブルが形成されたということのようです。

人びとの「金を稼ぎたい」という熱狂が集まると、その熱でバブルが膨らむのだと言うことが良く分かります。

当然、日本の平成バブルを例にとるまでもなく、土地や住宅が無限の価格上昇することはなく、きっかけは何であるにせよ、いつか価格上昇は止まるわけですから、価格上昇が前提で動いた物事は当然破たんするわけです。
ただ、いつ破たんするのか・・・この時期を見極めることが難しい。

本作のジャレッド・ベネットもマイケル・バーリも破綻は予測したものの、その時期を推測することは難しく、破綻すると予測してから、実際破綻が起きるまで2年以上の期間があり、その間、破綻を前提にした保険の保険料支払いが莫大となり、破綻が来る前に資金ショートするかもという状況に陥ります。
なんとか、自身が破綻する前に、住宅ローン市場が破綻し、結果的に大金を手に入れることになる彼らですが、一種の博打と言えば博打かなという感じがしないでもありません。

皆が思っていることの逆張りをして大儲けをしたわけですが、この逆張りは、要すれば、経済恐慌が起きると言う不吉な予言に対して賭けたということであり、世界規模の不幸をネタにした金儲けではあるので、なんだか後味の悪さを感じます。

なんだか、人間の欲望と言うのは強烈なエネルギーがあるものです。
欲望が集中すると異常な興奮状態が生じ、それが冷めた瞬間、致命的な破滅が訪れるということなのでしょう。

冷静になり、人間の欲望の渦に巻き込まれて自身が狂乱することがないようにしないとと、肝に銘じる作品です。

【洋画:社会派】 噂の真相-ワグ・ザ・ドッグ

【評価】★★★★☆

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1997年/アメリカ
監督:バリー・レビンソン
主演:ロバート・デニーロ、ダスティ・ホフマン


DVDの予告を見て借りてみた一本。
少し前の作品かと思ったら、1997年制作でした。古き良き作品となるか?

【ストーリー】
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アメリカ大統領選挙の投票日まであと11日ほどの時に、突如、現役大統領に持ち上がった、少女への性的いたずら疑惑。
このままでは、大統領の支持率は落ち、大統領選に勝てないと考えた大統領の側近たちは、ある奇策に打って出る。
それは、ありもしない戦争をでっち上げ演出し、マスコミや国民の目を逸らすというもの。
この奇策にまんまとはまり、戦争報道一色になるマスコミ。
さらに、現職大統領の果断な決断力なども演出され、これにより、大統領の支持率も急上昇し、見事、大統領は再選を果たすのだった。
戦争のでっち上げ、演出に協力した映画プロデューサーは、この演出が自身の仕事の最高傑作であり、この裏幕を暴露し、自身の能力と名声を高めようとするが、大統領の側近により暗殺され、事実は全て闇に葬られるのだった(完)。

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本作のタイトル「ワグ・ザ・ドッグ(Wag the dog)」という言葉は、本末転倒を意味する英語の慣用句です。
Wagは振るの意味で、普通は、「The dog wags his tail.」=犬が尾を振る、と使うわけですが、慣用句は「Wag the dog」=(尾が)犬を振る、となるので、主(犬)が従(尾)を従えるのではなく、従(尾)が主(犬)を従えることになるので、つまりは、日本語で言うところの「本末転倒」となるわけです。

映画を観れば、なるほどと思えるタイトルです。

さて、映画の内容はと言うと、大統領の支持率を上げるため、戦争をでっちあげるという話。
でっちあげるというのは、軍を動かして戦争を引き起こすということではなく、偽の情報や作った映像などで、あたかも、アメリカと他国が戦争をしているとマスコミに思い込ませるというもので、実際には、戦争どころか蟻一匹、敵国とされたアルメニアには侵攻してはいません。

話は、さすがに荒唐無稽に過ぎはしますが、初動のマスコミへの戦争情報のリークも、非正規の方法で情報がマスコミに漏れ伝わるようにした上で、アメリカ軍がアルメニアに侵攻しているのではないかとというマスコミの追及を徹底的に否定することで、逆に裏があるに違いないと勘繰るマスコミを炎上させるなんていうのは、リアリティがあり、面白いところ。

その後、マスコミが十分過熱したところで、大統領が正式にアルメニアのテロ組織を攻撃するため、アメリカ軍が侵攻したことを発表、なんていう展開になります。
戦争が起これば、マスコミも現地に飛ぶでしょうから、この映画のようにマスコミを騙しとおせるとは思えませんが、大統領側近が作った戦争の偽映像をマスコミに提供することで、マスコミは戦争が本当に起こっていると全く疑わなくなります。

マスコミの多くが、自らの取材で得た情報ではなく、政府から提供される情報のみに基づいて報道をしている-そんな現実に対する皮肉を表現しているのでしょう。

一方、映画の中では、戦争をでっちあげているということがばれてしまいそうになる危機にも直面します。
それは、マスコミからの危機ではなく、政府内部、諜報機関CIAが戦争なんて起きていないことに即刻気づいてしまいます。
そりゃそうだ、そんなことにも気づかないようでは、諜報機関としては失格でしょう。

CIAは、戦争をでっちあげた大統領側近の逮捕などに動こうとするものの、大統領府側の説得と恫喝に屈し、戦争でっち上げを見逃すことに。
CIAも、国や正義のためではなく、権力のために働いているというわけです。
この映画、アメリカ政府批判の色彩がかなり強いようです。

ただし、CIAも、このままではまずいと判断し、勝手に、「アルメニアとの戦争は終結し、問題は解決した」と公表し、事態を勝手に収束。
戦争をでっち上げたはいいが、幕引きはどうするのかと思って見ていましたが、幕引きまでもでっち上げというわけか(笑)。
小さな嘘はすぐにばれるが、大きな嘘はばれない、ヒトラーがこんな類のことを言っていたような記憶がありますが、政府がつく大きな嘘に、みんな騙されるわけです、おそろしい・・・。

なお、戦争のでっち上げは、大統領選の投票日まで伸ばすつもりでいた大統領側近たちは、その前に勝手に戦争終結をでっち上げたCIAの行動に大慌て、大統領の支持率アップのための第二幕を用意。

それが、いまだ戦地に取り残されテロ組織グループの捕虜となっている一人の兵士を救出するというストーリーのでっち上げ。
確かに、アメリカ人って、敵の捕虜になった勇敢な兵士を救出するというストーリーを好むよなぁ。
現実でも、そういった話はあるし、アメリカで作られた戦争映画でも、そんなテーマはごまんとあるわけで、本作でのこの展開も、そんなアメリカ人気質をおちょくっている印象です。

このアメリカ兵士救出のでっちあげも、トラブルが発生し、いろいろなドタバタ劇が演じられるものの、最終的には見事成功、大統領の支持率はさらに急上昇。

ラストは、さすがに戦争のでっち上げなどはばれてしまうというオチかと思ったら、その予想に反し、最後まででっち上げの事実は公になることはなく、大統領が見事再選を果たすという、なんとも苦いオチ。

ちなみに、戦争でっち上げに協力していた映画プロデューサーは、最後の最後で、正義感とかではなく、単に自分の名声を上げるためにでっち上げの事実を暴露しようとしますが、あえなく、大統領側近の指示で暗殺されてしまうというオマケも付いています。

アメリカ政府は、不都合な情報を漏らそうとする奴は暗殺も辞さないという、とても恐ろしい組織なのです!

なお、この映画がつくられたのは1997年。

政府の機密情報の暴露については、数年前、政府の機密情報を公開するサイト、ウィキリークスの存在と活動が大いに話題となり、ウィキリークスの活動を通じて、元CIAのスノーデン氏によるアメリカの機密情報の暴露、スノーデン氏のロシア亡命などが世界の注目を集めたのは、まだ記憶に新しいところ。

スノーデン氏については、逮捕とか暗殺、亡命といった不穏なキーワードも飛び交いましたし、色々な噂もあったことを思うと、機密情報に対するアメリカ政府の姿勢というのは、あながち、この映画で描かれているのと変わらない部分もあるかなとも思います。

コメディタッチに描かれているものの、結構、辛辣なアメリカ政府批判の作品で、思わぬ拾い物の作品でした。

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プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
★★★☆☆:損はない
★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

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