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読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:ルポ】 極夜行

【評価】★★★★☆

kyokuyakou.jpg
著者:角幡唯介
出版:文藝春秋



【極夜の探検】

冒険家兼作家の著者による南極探検行を描いた作品。
南極の実体験ノンフィクションは、それこそ、南極越冬隊のルポから、古今東西、南極の極点を目指した人の探検記など、かなりの数の本がありますが、本書は、南極の極夜―日が一日中登らない闇夜の期間-を探検した記録。

北極や南極は、白夜などがあるという話は聞きますが、南極は、一年間の半分が白夜(日が沈まない日)で、残り半分が極夜であるというのは驚きでした。そして、行動が非常に困難な極夜の期間に焦点を絞っての探検というのは、非常に面白い切り口の探検です。



【予想外の展開】

犬を一匹連れ、橇での極夜の南極を踏破するというスケジュール。
しかし、南極探検は、大変です。
単純に、橇に食料を積んで進めば良いわけではなく、事前に、いくつかのポイントに食料を貯蔵しておき、それらの食料も使いながら、探検を進めていく必要があります。

ある種、計画性が求められるわけですが、食料を事前に貯蔵しておいた場所にたどり着いてみたら、シロクマにすべて食い荒らされて、予想もしない苦境に立たされるなど、ノンフィクションならではの筋書きのないドラマの数々。

・・・予定していた食料がないという状況は、死に直結する深刻な事態なので、「筋書きのないドラマ」なんて気楽なことを言っていられるものではありませんが、一応、著者が生きて帰ってきたことは分かっているので、その気安さもあって、逆に、そういった苦境の連続が本書を非常に面白いものにしているのでした。



【実体験ならではの生々しさ】

極夜で思い通りにいかない狩りの様子や、思わぬブリザードに襲われ、身動きが取れなくなる事態になるなど、ピンチの連続で、ついには連れている犬を食料とするために、殺すかどうか・・・なんていうところまで追い込まれ、ノンフィクションならではの面白さに満ちています。

著者の本は、色々と読んでいますが、年を取るにつれ、ちょっと理屈っぽくなっているところが難と言えば難で、極夜行を出産に例えるストーリー立ては、どことなくひねり過ぎで、作品を作りこんでしまい、ノンフィクションの生々しさを損なってしまっている印象がありますが、そういった欠点を差し引いても、実体験に基づく生々しさが、著者の作品の売りだなぁと思いながら読みました。

なにせ、連れている犬に、自分の人糞を食べさせるなんていう話、他の南極探検の本でも書いているのは目にしたことがないぞ(笑)。
しかし、犬が人糞が大好物というのは、非常にびっくりしました。もしかしたら、本書で一番びっくりしたかも(笑)。




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【『極夜行』より】
さすがに外部からの来訪者である私にも、闇の力が徐々に影響力をつよめ、その支配領域をひろげていく様子が肌で感じられた。

(書き出し)
「うぎゃあ! 痛い! もう、いやだっ!」

(結び)
極夜は完全に明けた。村はこれからみるみる明るくなっていく。そしてわずか二ヵ月後には、太陽が沈まない白夜の季節が始まる。
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[ 2019/08/22 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:企業小説】 頭取の首

【評価】★★☆☆☆

todori_kubi.jpg
著者:山田智彦
出版:文藝春秋



【40年に及ぶ銀行内の権力闘争】

主人公・前原を軸とした40年に及ぶ銀行内部の権力闘争を描いた大河長編作品。
大河長編と書くと聞こえがいいのですが、40年の歳月が、無駄に長いだけの気がする(笑)。
40年の歳月というのは、主人公・前原が支店長になってから、役員、頭取と出世の階段を駆け上がり、代表権を持った会長に君臨して、最後は銀行の不祥事の責任を負って辞任するという、大変長々とした時間が描かれています。



【気長な復讐劇】

冒頭に、前原のパワハラにより自殺に追い込まれる部下の話が出てきて、その子供が終盤、前原への復讐劇を果たすというストーリーがあるわけですが、40年後に復讐を果たすって、だいぶ気が長いです。
戦後、身分を隠して生きながらえているナチス党員を狩る、ナチスハンターばりに気が長いように思えます。

前原が栄耀栄華を極めた末に復讐を果たしても、十分、人生を楽しんじゃった後の話だから、復讐の効果が薄いんじゃないかなぁと思ったりもして・・・。



【意外と無駄なエピソードが多い?】

本作、40年にわたる時間軸で描かれているので、やたら長い伏線がある一方(前述の復讐劇なんかがそれ)、伏線がある重要な話なのかと思いきや、全くストーリーとは絡まない、よく分からないエピソードや人物も大量にあって、このあたり、整理するか生かされると、もうちょっと読み応えあるかな、などと思いました。

前原と、その上役にあたる海老原という人物が権力闘争を行うわけですが、海老原が、「前原も目が曇ったな。あの銀行合併話は、わしが持ちかけたのじゃ。見た目はうまそうな話だが、内情は非常に難しく、失敗すれば前原の経歴に傷が付き、引きずり下ろすことができる、うしし・・・」みたいなことを言いつつ、話の流れで、銀行合併のエピソードが出てくるのですが、あっさり、合併話に成功して、前原の経歴には何の影響も与えず・・・なんて感じで、そこは、もうちょっと絡ませようよと思ったりもするわけで。

その他、銀座のママさんが重要な役割を担うのかと思いきや、結局、全く存在意義がないキャラクターだったり、余計な人物が多い気がします。「三国志」的な、いろんなキャラクターが出てくる小説だと割り切れば、良いのかもしれません。

そして、もう一つ思ったのが、客の情事をテープに録音する趣味の料亭の女将とか、女性を睡眠薬で眠らせて、その間に内ももに入れ墨を入れる男とか、どことなく、変態チックな人物が多いのも、びっくりでした(笑)。



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【『頭取の首』より】
継続は人をマンネリ化し、変化は人の気持を鼓舞する。

(書き出し)
東京の数ある盛り場、例えば新宿、渋谷、池袋、上野、浅草、それに赤坂、青山、六本木、そして原宿等々にも、時代の流れと共にかなりあからさまな流行り廃りが見られる。

(結び)
近くの妙本寺の境内まで足を伸ばし、清浄な空気を胸いっぱい吸い込んでから、今夕の散歩を終えることにした。
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【邦画:コメディ】 裁判長!ここは懲役4年でどうですか(映画)

【評価】★★★★☆

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2010年/日本
監督:豊島圭介
主演:設楽統

北尾トロ氏の裁判傍聴エッセイの映画化。この本も以前読んだことがあるので、読了本映画化作品の観賞シリーズということでレンタル。

【ストーリー】
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裁判物の脚本を書くことになった主人公は、ネタ集めに裁判所通いを行う。そこで、裁判傍聴マニアの人々と知り合いになり、無罪を訴える青年の裁判について教えてもらう。
興味を持った主人公は、傍聴マニアの人々と共に、無罪を訴える青年や支援団を陰ながらこっそりと支援を行う。
主人公たちの支援によって裁判が注目されるようになり、無罪を勝ち取る可能性に自身を持つ主人公だが、裁判が開かれると青年は無罪の主張を翻し、あっさり罪を認め、裁判は終わってしまうのだった。
がっかりする主人公だったが、傍聴マニアの人々は、単に、逆転無罪裁判を見たいが故に、この裁判を手助けしていたことをしって、さらに愕然とするのだった(完)。
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【意外にもよくできた作品】

エッセイ的な作品も、映画化されているものが多いものの、この作品は難しいのではと思ったのですが、観てみたら意外にも(と言っては失礼か)面白く、できの良い作品でした。

無罪を主張する青年の裁判を軸に、傍聴マニアの面々と、裁判傍聴のあれやこれやを織り込んだコメディーテイストの作品。

原作の裁判傍聴の面白さがうまく表現されつつ、無罪裁判という軸があって話が拡散せずうまくまとまった印象でした。



【裁判傍聴のリアル】

裁判官や検事も人間なので個性が色々あり、その個性を突いて裁判の展開を有利に運ぼうとしたり、個性によって裁判の雰囲気も大きく変わるといった点も、コメディチックながら妙にリアルな感じでした。

後半は、無罪判決を勝ち取るため、主人公たちが、傍聴マニアならではの手助けを行うという展開になり、人それぞれ、立場でやれることも違うし、自分の立場で行うことが大事だなぁと思いながら観ていました。

ラスト、期待の裁判が開かれたところ、支援していた青年があっさり罪を認めてしまい、みんな拍子抜けするという、コメディならではの終わり方でしたが、変に重い話にならなくて、本作品ならではのエンディングという感じもします。

傍聴マニアの人たちが、「所詮、他人の人生ですから。だから、面白いんですよ」といった台詞も、さもありなんというところか。
その気軽さがあるからこそ、手助けもできるし、興味を持って観ることもできるのかもしれません。

原作の軽い感じでありながら、人それぞれの悲喜こもごもを描くといったあたりを、映像化により、上手に表現されていたかなぁと感じました。


【書籍:将棋】 適応力

【評価】★★☆☆☆

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著者:羽生善治
出版:扶桑社文庫



【きれいな上澄みの世界】

将棋の棋士、羽生さんの書いた本と言うことで手にしてみましたが、他の棋士が書いた本に比べると、非常にあっさりした内容。
著者名を伏せると、誰が書いたか分からないんじゃないかなぁ・・・。

他の棋士が書いた本だと、アクが強くて、金、酒、博打でむちゃくちゃな人生を歩んだ経験と将棋との関わりだったり、将棋の勝負の世界で、敗者と勝者の明暗がはっきりするエピソードが出てきたりと、人間のどろどろした世界も含めた内容が多い気がしますが、本書は、そういう話は一切なし。

本書は、すごくきれいな世界から、その上澄みを語られた本といった内容でした。



【将棋の流行り、廃り】

棋士が書いた本にしては、あまり将棋のエピソードが出てこないのが意外でしたが、その中でいくつか出てくるエピソードとして面白いと思ったのが、将棋の戦術の流行、廃りに関するもの。
江戸時代の戦術から現在の流れまで言及していたりして、将棋に関する思想-美しい棋譜をつくる、なんていうことが、戦術に影響していたり、一昔前は王道と思われていた戦術が、現在はむしろ逆手にとられて不利になるなど、常識が常識でなくなる不安定さ、不思議さがあります。

また、将棋の定跡に似たものがチェスにもあったり、その定跡をひっくり返す戦術が、同じようにチェスの世界でも起こったりと、将棋とチェス、違うゲームであっても、同じような事象が起こるというのも、興味深いところがありました。

こういう戦術の興廃についていけるかは、本書のタイトル「適応力」の必要性があると言うことかもしれません。

全体的にきれいすぎる内容で、やはり、破天荒な棋士が書いた方が、おもしろくなるのかなぁ、などと思いながら読了しました。



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【『適応力』より】
将棋の世界でもチャンスに強い人は若い人たちで、ピンチに強いのはベテランの人たちという傾向があります。

(書き出し)
たくさんの時間と労力を費やして築き上げた経験を、今後にどのように活かしたらよいでしょうか。

(結び)
そんなしっかりとした核を持てたらと思っています。
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【書籍:歴史】 瀬島龍三 -参謀の昭和史

【評価】★★★★☆

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著者:保阪正康
出版:文藝春秋


【小説「不毛地帯」のモデル】

山崎豊子氏の小説「不毛地帯」の読後、いくつか(と言ってもこれが2冊目ですが)、「不毛地帯」の主人公のモデルとなったと言われる瀬島龍三氏について書いた本を読みましたが、本書が一番(2冊しか読んでなくて一番って、どうかと思いますが)面白かったです。

太平洋戦争時、陸軍の参謀を務め、数々の作戦に関与し、その後、11年間のシベリア抑留生活を経て日本に帰国、伊藤忠商事に入り、あっという間に会長にまで上り詰め、その後、中曽根内閣の元で、政府の行財政改革に裏表で大きな役割を果たしたという人物。

本書は、瀬島龍三氏に対して批判的なスタンスで書かれた本ですが、小説「不毛地帯」とも照らし合わせながら読むと、小説の軌跡とも合致する点も多く、小説の裏話的作品(そういう意味合いの本ではないのですが)としても楽しめます。



【戦後の昭和史】

本書は、戦後、公的な立場で大きな役割を果たした瀬島龍三氏が、自身に戦中・戦後の体験を明らかにせず、歴史を振り返り反省するという姿勢を全く見せないという点に対し、強い批判を行っています。

「歴史は勝者が作るのではなく、記録を多く残した者が作る」というのが真相ではないかなぁと私は思っているのですが、その点から言うと、瀬島龍三氏が、自身の体験を明らかにせず、不確かなことを述べてしまう(というのは本書の主張するところなので、本当にそうなのかは知りませんが)という点については、例え、自身に不都合な情報であろうと、歴史を作るとか関与する折角の機会を放棄してしまうことになり、もったいないとも思います。

そういう状況下で、本書は、瀬島龍三氏への取材はもちろん、周辺の関係者への取材も通じながら、瀬島龍三氏の半生を明らかにすることで、瀬島龍三氏を通じた戦後の昭和史が明らかにされています。

戦後、政治も行政も民主主義というシステムが未熟で、それこそ、戦闘機調達においては、裏側で激しくダーティーな工作が応酬されたり(このあたり、小説「不毛地帯」を読むのが一番わかりやすい気がします)、防衛庁の機密情報が簡単に外部に流出したりと、現在の状況と比べると、政治・行政のシステムが非常に脆弱で成長(?)の過渡期だったんだなぁということがよくわかります。



【台湾沖航空戦】

本書で、個人的に面白かったのは、敗戦濃色の時期に起きた「台湾沖航空戦」を巡る話。
「大本営発表」という言葉は、誇大な成果を発表することで、真実とは全く逆のことを宣伝することの例えとしてよく使われますが、「台湾沖航空戦」においても、「大本営発表」がなされます。

てっきり、国民の戦意喪失を避けるため、「台湾沖航空戦」においても、誇大な戦果が発表されたのかと思ったのですが、そうではなく、現場の戦果確認の不正確さにより、大本営事態が、台湾沖航空戦は、真珠湾攻撃以上の大戦果を得たと誤信してしまったとのこと。

この誤った戦果に基づいて、作戦が変更されたため、日本軍は思わぬ深手を負うことになるという、なかなか笑えない話につながっていきます。

「台湾沖航空戦」の戦果について疑念を抱いた人物もおり、現地から、戦果は誇大報告の可能性大といった電報が打たれますが、瀬島龍三氏が電報を握りつぶしてしまったといった話に触れられています。

電報握りつぶし事件について、本書では強く批判がされていますが、大戦果に沸き返っている大本営の中で、「戦果は誤報」なる電報が一本投げ込まれたところで、何ら変わらなかったのではないかという気もします。
むしろ、電報握りつぶしは、一方に傾くと軌道修正が効かない組織の実態こそを表しているようにも思われました。

台湾沖航空戦のエピソードは、これまで色々と太平洋戦争にまつわる本を読んできた中で初めて聞いた話で(もしかしたら、読んだ本の中にはそういったことが書かれていたのかもしれませんが、記憶には残っていなかった)、むしろ、瀬島龍三氏のエピソードを通じて、「信じたいことを信じてしまう」組織の弱さというのが、むしろ印象的で、非常に貴重な話でした。



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【『瀬島龍三』より】
太平洋戦争は佐官クラスによって引き起こされ、彼らによって負けた、といわれるのはこうした専権的態度をあらわしている。

(書き出し)
昭和史を巨視的に眺めた場合、昭和56年の春から58年春にかけての二年間は、あるひとつの政治機関が威をふるったきわめて特異な時代ということができるのではなかろうか。

(結び)
その昭和史をいつまでも語らないのはなぜだろう、と、私は瀬島の柔和に見える顔を凝視しながら考えつづけていた。
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[ 2019/08/14 00:39 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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kappa1973

Author:kappa1973
 
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