FC2ブログ

読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
2019 06123456789101112131415161718192021222324252627282930312019 08

【書籍:歴史】 新撰組顛末記

【評価】★★★☆☆

shinsengumi_tenmatsuki.jpg
著者:永倉新八
出版:新人物文庫



【晩年の永倉新八が語った本】

新撰組で活躍した永倉新八が、老年になってから、新撰組での経験を語り、記述した内容が本書。
なんでも、晩年は北海道に在住していたらしく、北海道小樽新聞に永倉新八の語った(記述した)話が連載で掲載されたそうです。
新撰組は、幕府方について滅びてしまい、賊軍扱いだったでしょうから、なかなか、新撰組の当の本人が語った内容は珍しいなぁと思いながら読みました。



【数ある新撰組書籍の種本】

内容的には、結構何かで読んだ話も多いなぁと思ったのですが、よく考えたら、あまたの新撰組について書かれた本は、当然、新撰組の第一級資料である本書を参考文献として活用しているでしょうから、本書の内容は、多くの本で引用されているということでしょう。

いわば、あまたの新撰組関連の書籍の種本とでも言うべきものでしょう。



【新撰組内の人間関係】

種本ですが、本人が直接、語ったり書いたりしているだけに、リアリティというか現実感を強く感じます。
中でも、新撰組内での人間関係の不協和音、近藤勇と他の隊士との関係や、尊王をめぐる考え方の違いなど、新撰組も、かなりの矛盾や爆弾を抱えていたようでした。

そもそも、永倉新八氏も、局長である近藤勇のやり方に腹据えかねて、会津藩主に意見を申し出たりもしていて、一枚岩とはいかない新撰組のあり方が、生々しく伝わってきます。

今では、思想-イデオロギーとでもいうのでしょうか、そのようなものの違いで激しく争うというのは日本ではあまり見られませんが、当時、尊王という思想を巡って、激しく対立していて、同じ尊王でも、佐幕派、討幕派に分かれていたり、攘夷思想と結びついていたりと、容易に相いれない関係があることも、強く感じられました。

しかし、敵だと分かっていながら、相手方の動向を探るために新撰組の中に迎え入れたり、新撰組を乗っ取るために潜入してきた相手と、親しく酒を酌み交わしたりするなど、その関係性も結構不思議で、そういった当時の新撰組内の人付き合いも見えてきて、面白い内容でした。



=============================
【『新撰組顛末記』より】
新撰組はもと羽藩の志士清川八郎のもとに幕府をして尽忠報国を標榜して募らせたいわば烏合の勢、熱をあたえれば一団となって櫛風沐雨の苦楚を嘗むるを辞さないが、いちど冷むれば左右反目嫉視していがみあう。

(書き出し)
年のころなら七十四か五、胸までたれた白髯が際立って眼につき、広き額、やや下がった細い目尻に小皺をよせ、人の顔を仰ぐように見ては口のあたりに微笑をたたえてすこしせき込み口調に唇を開く。

(結び)
死生のあいだをくぐること百余回、おもえば生存するのがふしぎなくらいの身を、大正の聖代まで生きのびて往年の的も味方もおなじ仏壇に朝な夕なのとむらいの鐘の音をたたぬ。
=============================


関連記事
スポンサーサイト
[ 2019/07/15 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:経済小説】 不毛地帯(全5巻)

【評価】★★★★★

fumouchitai.jpg
著者:山崎豊子
出版:新潮文庫



【伊藤忠商事・瀬島龍三氏】

戦時中、日本陸軍のエリート参謀として太平洋戦争の作戦の中軸に参画し、終戦後、満州でソ連軍に捉えられ11年間のシベリア抑留生活、帰国後は、商社に入り、防衛庁の戦闘機調達や石油資源開発などに関わり、その中で、日本の政財界の裏側にもどっぷりつかっていく、そんな人物を描いた作品。

小説なので、思い切った設定かと思いきや、実はモデルになった実在の人物がおり、その人物が、伊藤忠商事の会長・瀬島龍三氏。
もちろん、事実は、小説のような内容そのままではないですが、瀬島氏の経歴が、シベリア抑留から、政財界の裏側に関与し、政界のフィクサーと呼ばれたことは事実なので、事実を思いはせながら、興味深く小説を読むことができます。

ちなみに、瀬島龍三氏については、先日、「沈黙のファイル -「瀬島龍三」とは何だったのか」という本を読み、瀬島氏が「不毛地帯」のモデルになったことが書かれていたので、今回、本書を読んでみた次第。



【戦闘機調達を巡る闇】

山崎豊子氏の作品は、長編作品が多いですが、ボリュームを感じさせない面白さで、どんどんと読み進めることができました。

小説の最初はシベリア抑留の話で、その過酷さは想像を超えるものがあり、よく生きて帰れたものだと思います。シベリア抑留の章も、非常に興味深く読むことができる部分ですが、圧倒的に面白いのは、帰国後、主人公が商社入りし、商社マンとして活躍する部分。

最初は、防衛庁の戦闘機調達を巡る商社間の駆け引きが描かれ、調達機決定に当たっては、戦闘機の性能は当然考慮に入れられるものの、裏では、政治家の利権が絡み合い、この利権を上手く利用して、主人公の商社が推す戦闘機が調達機に選定される結果になります。

実際、田中角栄さんが絡んだロッキード事件なんかは、まさに、この小説に書かれているような話でしたし、色々な取材に基づいて書かれているのでしょう、リアル感のある内容が、山崎豊子さんの小説の魅力ですね。



【ドラスティックなサラリーマン生活?】

その後、日本の自動車会社とアメリカの自動車会社ビッグ3の一つとの合併を巡る話、イランでの石油開発を巡る話と、骨太でビッグビジネスをテーマにした話が続き、これまた読みごたえがあります。

自動車合併会社を巡るストーリーでは、ライバル会社に敗北、ライバル会社の腕利き商社マンとして登場する鮫島氏が、キャラ立ちしていて、鮫島氏の存在が小説を面白くしています。
更に、ビッグビジネスを巡る商社間の駆け引きの合間(?)に、主人公の会社での権力闘争なんかも描かれ、サラリーマンの社会が、ここまでドラスティックなのかは、はなはだ疑問ですが(少なくとも、私はこんなドラスティックなサラリーマン生活は送っていない(笑))、この本読むと、就職ランキングで、商社人気も分かる気がします。

主人公が、少々、綺麗に描かれ過ぎな感じもありますが、商社を巡る、政財界の裏表など、ドロドロとした世界でありながら、魅力的な世界が描かれており、非常に面白いビジネス小説でした。



=====================
【『不毛地帯』より】
それでいい、島国のわれわれは、日の丸民族意識に凝り固まり過ぎて、戦に敗れたのだ、その教訓を生かして国際的な視野にたって日本の将来を考える、それがわれわれが血を流して購った尊い教訓だ

(書き出し)
社長室の窓の外に大阪城が見え、眼下に帯のような堂島川が見える。

(結び)
シベリアの無上の空を、七色の光が不気味なほど美しく彩り、“生きて歴史の証人たれ”と、いかなる過酷な運命の下でも生き抜けと諫めた故谷川大佐の声が、オーロラの中から、壹岐の耳にはっきり聞えて来た。
=====================



関連記事

【書籍:ルポ】 鈴木亜久里の挫折 -F1チームの破綻の真実

【評価】★★★☆☆

suzuki_aguri_f1.jpg
著者:赤井邦彦
出版:文藝春秋



【F1チームの立ち上げから解散まで】

鈴木亜久里さんと言うと、日本人F1ドライバーとして、中島悟の次の世代として活躍した人だったかなぁくらいのことしか、印象、知識がないのですが、本作は、その鈴木亜久里さんが、F1チームを立ち上げ、2年半で潰えてしまった、その経緯を描いたノンフィクションです。



【零細企業の挑戦】

F1の話は、海老沢泰久さんの書いた本を何冊か読んで、F1の世界や雰囲気は何となく知っている点はありましたが、海老沢さんの話は、ホンダを中心とした、ある種、大企業が関わった話であるのに対し、本作の鈴木亜久里さんの話は、いわば、零細企業がF1に挑戦するような話です。

そのため、一番の苦労は資金調達で、鈴木亜久里さんがF1チームを立ち上げた時は、レースに参加するのに、供託金を70億円預けなければならず、もし、シーズン途中で、レースに参加できなくなれば、供託金は没収されてしまうという仕組みでした。

・・・無茶苦茶、お金かかるなぁとびっくり。



【金は出すけど口は出さない】

鈴木亜久里さんのF1チーム経営は、資金調達の苦労というのが一番だったため、レースにまつわる話よりも、資金調達の苦労話が非常に興味深いところでした。

1年目は、電通がスポンサー探しを引き受け、スポンサーが見つからない時は、電通が活動資金(年間最低30億円はかかるそう)を出すという契約で、結局、1年目はスポンサーが見つからず、電通の支援でなんとかF1チームを活動することができました。

70億円の供託金(供託金は、年間通じて、レースに参加できれば戻ってくるお金)を出してくれる先を探すのも一苦労で、一時は、ソフトバンクの孫正義氏が協力してくれる話も出ますが、お金を出すんだから、チームのことも自分の思う通りにさせろといった話になり、御破談。

金は出すけど、口は出さないなんていう人は、なかなかいないのかもしれません。そういった協力者を得られるかは貴重ですね。

そういえば、百田尚樹氏の「海賊とよばれた男」では、出光興産の創業者が会社を立ち上げる時に、私財を投げうってお金を出してくれ、仕事には一切口を挟まない篤志家が出てきますが、こういう人物って、そうはいないんだろうなぁとつくづく思うわけです。



【やった意義はあった】

それでも、供託金を出してくれる先が見つかり、1年目は、電通の運営資金でF1チームを運営しましたが、2年目は、F1チームの運営を続けるためには、なんとしてもスポンサーを見つけねばならない状況となります。
スポンサーとなって、お金を出してくれるという会社が見つかり、実際、運営資金を出してくれるのですが、結局、その話は詐欺まがいの話で、鈴木亜久里さんは、お金の返還を求められて、訴訟に巻き込まれることにもなります。

ビッグマネーが動くところには、有象無象の怪しげな人も多く蠢いている感じがあります。
結局、そういった怪しげな人に付け入られてしまった結果ですが、F1の世界は、巨額な金が動くだけに、純粋にモータースポーツを目指したいという情熱だけでは如何ともしがたい世界のようです。

結局、スポンサー探しが上手く行かず、チームは2年半で解散となり、鈴木亜久里さんも膨大な負債が残りましたが、「それにしても、やった意義はあったと思っている。少なくとも俺の人生の中ではね。」なんて、さらっと言えてしまうところに、強さとかっこよさを感じますね。




==========================
【『鈴木亜久里の挫折』より】
しかし、現実的にはF1で投資家に儲けさせようというのは無理な注文だった。

(書き出し)
鈴木亜久里の夢は叶い、そして潰えた。

(結び)
それにしても、やった意義はあったと思っている。少なくとも俺の人生の中ではね
==========================

関連記事
[ 2019/07/13 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:書評】 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

【評価】★★★☆☆

frontear_book.jpg
著者:高野秀行、清水克行
出版:集英社



【異業種交流】

辺境ノンフィクション作家の高野秀行氏と、中世日本史学者の清水克行氏による書評対談。
それぞれ違った分野で活躍されているので、その異業種交流ぶりを楽しむ対談とも言えましょうか。

ただし、異業種交流と言っても、高野氏も多くの辺境を訪れる中で、人類学的な知識や知見を身に付けているので、人類史的な共通項でくくられる内容の本が多かった印象です。



【文明を捨てた人々】

最初にテーマとなった、「ゾミア」という本は、東南アジア一帯に住む未文化圏(?)の人々は、現代文明から取り残された人々ではなく、かつて、権力や支配から逃れるため、敢えて文化を捨てた人たちである、といった学説が書かれた本ということで、権力の支配から逃れる知恵について語る二人の話はとても興味深いところでした。

例え話で、小学校の学級委員を決めるのに、子供たちがその役割を押し付け合うのは、本能的に学校や教員といった権力、支配を嫌っての行為であるなんていうのは、面白い説(?)でしたし、「結局、学級委員がいて一番便利なのは子供たちではなく、学校の先生なんですよね」というのは、その通りだし、思わず笑ってしまう説明でした。



【スケールの違い】

この後、イスラム世界を30年かけて旅行した記録である「大旅行記」を取り上げた後、平将門について記した「将門記」が取り上げられるのですが、高野さんが、「『大旅行記』を読んだ後、日本の『将門記』を読むと、あまりのスケールの小ささに焦点を当てるのに苦労しましたよ。映画「ミクロの大決死圏」の世界に入り込んだ気分でした」なんてコメントしていて、世界の辺境をまたにかけている高野さんらしいなぁ、なんて思いました。

どうも、日本人は島国だから、せせこましいのかもしれません。

「ゾミア」に絡んで、文明から逃れるために辺境の地に逃避するといった話においても、日本の場合、山岳は多くても、奥行きがないため、権力から逃れて避難するような場所はほとんどない、なんていう話もでてきて、日本は国土が狭いということなんだと、実感をする話でした。

本書で紹介された本の大半は、まじめで学術的なので、なかなかとっつきにくい感じもありますが、何かの機会で読んでみようかなぁ(本当に読むのか!?)




===============================
【『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』より】
強大な権力の支配から逃れるために、あえて「窓口」をつくらない、というのは支配される側の一種の知恵ですね。

(書き出し)
なんだか、ゼミの発表会に来たみたいですよ。

(結び)
僕も何か見つけたら報告します。
===============================

関連記事

【邦画:ヒューマン系】 海賊とよばれた男(映画)

【評価】★★★☆☆

pileat_call_movie.jpg
2016 年/日本
監督:山崎貴
主演:岡田准一

本で読んだ「海賊と呼ばれた男」が面白かったので、映画の方も見てみようとレンタル。

【ストーリー】
=============================
戦前より、石油を扱っていた国岡商店は、敗戦により石油の輸入が止まり、存亡の危機に立たされていた。
会社の存続のため、ラジオの修理業なども手掛けるが、戦後の復興とともに、アメリカの政策にも変化が起こり、石油を取り扱えるようになる。
しかし、業界の異端児であった国岡商店は、石油業界から有形無形の嫌がらせも受けながらも、それを跳ねのけ、発展する。
そして、イギリスとの争いで国際的に孤立したイランから、イギリスの海峡封鎖を潜り抜け、イランにタンカーを送り、イランの石油を輸入するなどの世間を驚かせることも行うのだった。
戦前から、日本に石油の安定供給を行おうと獅子奮迅の努力をしてきた国岡商店は、いつしか、日本の石油業界でも影響力のある会社へとなったのだった(完)。
=============================



【いきなり駄作宣言されましたが】

「海賊と呼ばれた男」、先日、本で読んだので映画もみてみようと思い、レンタルしました。
観る矢先、妻が、「それねー。なんか、CG感がすごくて、なんか白けて面白くないらしいよ」といきなり、ネガティブ情報を吹き込んできます。

こらこら、これから観ようという矢先に、何てことを。

しかし、毎回、駄作のゾンビ映画とか見て、駄作覚悟で映画観るのにはなれているので、その程度のネガティブ情報で映画を観ようという意欲は失せないのでした(自慢にならん・・・)



【原作のダイジェスト版】

実際、観た感想は、「別にCG感すごいとかなかったけど?むしろ、CGを感じさせない出来だったなぁ」というもの。
人に噂というのは当てになりません。

作品の流れも、本を前もって読んでいるので、「あぁ、この話ね」とか、「本で書いてあったなぁ」とか思いながら観たわけですが、原作にかなり忠実に作った作品という印象でした。
しかし、それは言葉を変えると、原作のダイジェスト版っぽい印象も受けました。

原作自体が、話のボリュームが多い上に、時系列が戦前・戦中の昔に話が行ったかと思ったら、戦後の復興期に戻ってきたりと、分かりづらい構成になっているので、映画も、その流れを忠実に(?)再現していたので、原作を読んでいないと、わかりづらそうでした。

映画化する際には、映像化しやすいよう、脚本やシナリオを原作とは違った形で上手に再編する必要があるのだろうなぁと思いつつ、過去、様々な作品の映像化で、そういったことをやったが故に、原作者やファンから、「原作の改変だ!」みたいな批判を浴びる歴史があるので、なかなか難しいのかもしれません。



【船を出せ~!】

原作の様々なエピソードを盛り込んでしまったので、話が取っ散らかってしまった感もあり、もう少し、主人公に焦点を当てたシナリオだったら面白かったかもと思いました。

一例あげると、綾瀬はるかさんには申し訳ないですが、奥さんのエピソードや存在意義があんまりなかったかな・・・。

だけど、主人公の「船を出せ~!」の台詞は格好良かったです!
さすがは、海賊!? ・・・と呼ばれた男。

関連記事
ページ最上部へ

プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
★★★☆☆:損はない
★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

アクセス数
アクセスランキング
[ジャンル]: 映画
201位
[サブジャンル]: レビュー
95位
カレンダー