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読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【洋画:歴史】 ダイダロス-希望の大地-

【評価】★★★★☆

daidaros.jpg
2012年/カザフスタン
監督:エイケン・サタイヴ
主演:クラレイ・アナルベコヴァ


18世紀のカザフスタンを題材にした歴史映画。
同じ時代のカザフスタンを描いた作品に、「レッド・ウォリアー」がありますが、カザフスタンにとって、この時代は、日本にとっての戦国時代や幕末みたいに馴染み深い時代なのでしょうか・・・。

【ストーリー】
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18世紀のカザフスタン。
当時のカザフスタンは、隣国のジュンガル国に蹂躙されていた。
カザフスタン人の主人公サルタイは、幼い頃、両親をジュンガル軍に殺され、孤児として育った。
成長したサルタイは、同じく孤児の親友タイマスや一緒に育った孤児達とともに、ジュンガル国を倒すべく、ゲリラ行動を開始する。
多くのジュンガル兵を襲い、国境の砦まで陥落させたことから、サルタイの名前はジュンガルに知られるようになる。
一方、カザフスタンの族長達は、団結してジュンガルに戦いを挑むことを決意し、アブール・ハイル・ハンを頭領に、兵を挙げる。
1726年、アブール・ハイル・ハン率いるカザフスタン軍と、ジュンガル軍はカラ・シユルの地で激突するが、2倍近い兵力を持つジュンガル軍優勢で戦いは進む。
主人公サルタイは、100名の仲間を引き連れ、この戦いに参戦、ジュンガル軍の側面を突く形で、ジュンガル軍本陣に肉薄し、指揮官を倒すことに成功する。
これにより、ジュンガル軍は総崩れし、カザフスタンは勝利を収めるが、主人公サルタイは、戦いの最中、深手を負い、死んでしまうのだった(完)

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同じようにカザフスタンを舞台にした作品「レッド・ウォリアー」は、この映画の30年くらい後の話で、「レッド・ウォリアー」がカザフ・ハン国を率いた指導者を描いたのに対して、本作は、名も無きといって良いくらいの一人の戦士が主人公となっています。


戦闘シーンやアクションなどは、「レッド・ウォリアー」の方が派手ですが、ストーリーや演出面など、総合すると、私にとっては、こちらの作品の方が面白く感じました。

映画の始まりは、ジュンガル兵に村を襲われ、村人や両親が虐殺される中、命からがら村から逃げ出す幼い主人公サルタイを描くシーンから始まります。

山の中の隠された村に保護され、成長するサルタイ。
長じるに従って、ジュンガル国への復讐心は募るばかり、青年となったサルタイは、ついには、村で一緒に育った孤児たちとともに、密かにジュンガル兵達を襲撃する集団を作り上げます。

少数でジュンガル兵達を襲撃する場面は、巧みな馬術や精密無比の射術でジュンガル兵たちを倒していきますが、さすがは、騎馬民族と感心してしまいます。
ジュンガル兵達を倒すことに熱中するサルタイ達ですが、徐々にその存在がジュンガル国側にも知られるようになり、ジュンガル国側もサルタイを捕らえる、もしくは殺そうとやっきになります。

そんな中、サルタイは、国境付近にあるジュンガル国の砦を襲撃することにします。
しかし、サルタイ達は少人数なので正面から当たっては勝ち目が無いことから、砦の中にスパイを忍び込ませ、内部から火を放たせ、その混乱に乗じて砦に攻め込む作戦を立てます。

実際、作戦の現実性はおいて置くとして、この映画、戦闘場面や、作戦などを結構まじめに作り上げているので、観ていてリアリティを感じさせます。
砦襲撃に成功したサルタイ、ますます、サルタイの名声は高まります。

そんなサルタイに嫉妬するようになるのが、一緒に行動していた親友のタイマス。
ついには、タイマスはサルタイを謀殺しようと目論見ます。

最初は平等のつもりで始めた集団が、いつしか大きくなり、名声その他に格差が出始めると分裂の危機が生じるというのは、ある種、自然の流れなのかもしれません。
この危機を乗り越えられるかどうかで、集団が強くなるか、滅びてしまうかの分かれ道と言えるでしょう。

主人公サルタイは、タイマスに襲われ瀕死の重傷を負い、他の仲間からは、サルタイはジュンガル兵に襲われ死んでしまったと思われてしまいます。
しかし、九死に一生を得て、生きて仲間の下に戻ったサルタイ。
これによって、真相を知った仲間達は、タイマスを裏切り者として捕らえ、殺そうとしますが、サルタイは、タイマスの綱を解き、許しの言葉を与えて逃がすのでした。

映画では、サルタイがタイマスを許すことで、サルタイ率いる集団に何か影響が与えたといった展開は一切ありませんでしたが、時には、叛旗を翻した者ですら許すことができる懐の広さというのは、リーダーに取って大事なことかもしれないなぁと、考えさせられる場面でした。
そして、現在の日本のリーダーには、こういった懐の広さを持った人とかいないよなぁ・・・と、現実と比較すると、少々さびしい思いがするのでした。

一方、サルタイの活動とは別に、カザフスタンの中で、団結の機運が高まり、各部族が、アブール・ハイル・ハンという族長の下に結集し、ジュンガル国に戦いを挑むこととなります。

そして、2倍以上の兵力を動員してきたジュンガル国と、アブール・ハイル・ハン率いるカザフスタン軍の激突が、本映画のクライマックスとなります。

この戦いに参戦すべく、100名の人数を率いて駆けつける主人公サルタイ。
敵の手薄なところを攻撃し、ついには敵本陣まで辿り着くという展開は、「桶狭間の戦い」か!と多少突っ込みたくなりますが、戦闘シーンは、CGは一切なしで、肉体がぶつかり合う激しい、迫力満点の内容。
主人公サルタイが敵本陣に辿り着いたことで、ジュンガル軍は崩壊、潰走してしまい、カザフスタン側の勝利に終わります。

ただ、死力を尽くした主人公サルタイは、満身創痍の状態で、最後は戦死してしまうという、ちょっぴり悲しい終わり方・・・。

本作品、最後の戦い以外にも多くの戦闘場面が登場しますが、派手な立ち回りはなくとも、ヨロイその他が本格的で、リアリティを感じさせてくれ見応えがあります。
戦争映画の基本-戦闘シーンを丁寧に描く、というのがしっかりと感じ取ることができる作品です。

なお、クライマックスの戦いが終わった後、最後のナレーションが流れますが、その内容が「この戦いにカザフが勝ったものの、カザフが独立国家となったのは、この300年後のことである」というもの。
えー、この戦いでの勝利は、カザフの独立には何の寄与もしなかったということなのか・・・これだと、主人公の死が、それこそ犬死みたいに感じられて、ちょっと残念な気が。
そして、「独立は、ナザルバエフ大統領(現職の大統領)によって成し遂げられた」なんていう、国策か政治アピールまがいのナレーションも出てきてしまい、正直、この辺りは蛇足だよなと少々がっかりした気分にはなりました。


【その他のレビューブログ】
手堅いけど、ちょっと堅苦しいなんて評価もあるようですが、私的には、なかなか硬派な内容で、飽きずに最後まで楽しめました。

ブログ草原系
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どんくらの映画わくわくどき
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[ 2013/07/20 01:41 ] 西洋史 | TrackBack(0) | Comment(0)
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