読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【書籍:ルポ】 最後の秘境 東京藝大 ー天才たちのカオスな日々

【評価】★★★★★

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著者:二宮敦人
出版:新潮社


【異世界を覗く面白さ】

面白い。
東京藝大って、よく知らず、本の半ばまで、なんとなく、「東京学芸大」と勘違いして読んでおりましたが、芸術家を養成する大学があるんですね。
いかに自分が芸術に疎いかを実感(笑)。

天才と言うよりは、異なる思考、異質な発想の人達の集まり、という感じで、そこが異世界を覗くような面白さがありました。



【藝大の人の進路って?】

凡人からすると、東京藝大を卒業した人の進路って何なんだろうという点。
全ての人が芸術の道で生きられるわけではなく、むしろ芸術とは違う道で生きる人の方が多く、イラストレーターになったり、広告代理店に入ったり、才能の一端を活かす面はあっても、芸術の世界からは遠くなってしまうのは、これは芸術に限った話ではなく、普通の世界と同じかなと感じます。

実際、大学において進路指導が行われることはなく、普通の大学とは違って、それぞれが自らの道を自由に切り開いていかなければいけないのは、清々しさすら感じさせました。



【多くの作品は一過性で・・・】

また、芸術とひとくくりに云っても、音楽と彫刻などの制作では、全然、雰囲気も環境も違うそうで、この点は、それぞれの分野の学生の違いにも表れ、芸術とひとくくりに出来るものではないと実感。

芸術と言うと、後世まで作品を残すということが思いとして強くあるのかと思いきや、音楽演奏は基本的に一過性の芸術であり、その場限りの残らない芸術ですし、東京藝大の学生が作る作品も、作品の展示が終わったら壊されゴミに捨てられてしまうことが、ほとんどとのこと。

芸術って、後世にまで残るものは、ごく一部なんだなぁと知るとともに、後世に残る作品を作ることの難しさも感じるのでした。



【一つのことに打ち込める才能】

東京藝大の人達の話を聞くと、芸術を続けていくことの難しさもあり、真剣に考えると将来に不安を感じる面もありそうですが、本書に登場する人の多くが、その瞬間に情熱を傾け生きている姿は、強い感銘を受けました。

好きであれば一心不乱に打ち込める・・・というのは言葉では簡単に言えますが、実際には、様々な雑念などが邪魔してそう簡単にはいかないはず。
本書に登場する学生の多くも、そういった思いは抱えているのかもしれませんが、そういったことを感じさせず、芸術にまい進する姿勢は、やはり、本書のタイトルにあるように、ある種の天才なのかもしれません。

しかし、一方で、カオスな存在であることも確かで、天才となんとやらは紙一重なんてのも、ちょっと当てはまりそうな素敵な人たちでした。




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【『最後の秘境 東京藝大』より】
夜になって学生がみな帰れば、音は消え、空っぽの部屋だけが残される。

(書き出し)
僕の妻は藝大生である。

(結び)
美術と音楽は、こんなところでも協演している。
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[ 2018/04/19 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:体験記】 異国トーキョー漂流記

【評価】★★★★☆

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著者:高野秀行
出版:集英社文庫


【語学を学ぶ半端ない熱意】

高野秀行さんの、国内における様々な外国人との交流を描いた作品。
高野さんの他の作品も読んでいるので、分かっている事ではありますが、バイタリティと語学の能力がとてつもなく高いなぁと、本書を読んでつくづく感じるところでした。

何せ、UMA(未確認生物)を海外に探索にいくため、まずは、その国の言葉を覚えようと、日本で、先生になってくれる外国人を、様々なつてをたどって探し出す、これだけで、大変な苦労。
そこまでの情熱で語学を習得しようとする、エネルギーに敬服です。



【達人かただの勘違いか】

ただ、裏ルート的なつてで語学の先生役を探すため、どうも見つかるのは、なかなか変わった外国人が多いようです。
様々な国を旅し、ついには、なぜか日本で、前衛舞踏を学ぶため、うらぶれたおんぼろ家屋に住んでいる外国人など、普通にはお目にかかれそうにない経歴の持ち主とも知り合いになるわけです。

常人とは異なるエネルギッシュさは、ある種、高野さんとも共通する何かがある気がします。
そして、ベクトルが普通の人からは理解されえないため、変な目で見られるか、遠巻きの敬意を持って切歯られてしまう感じも似ているのかも。

高野さんもある種、同種の匂いがあったためか、こういった外国人のエネルギッシュさや人とは違う何かに感銘を受け、人生の達人と思ってしまった、なんていうくだりがあります。
しかし、よくよく付き合っていくと、ただの勘違いの外人でしかないのでは・・・と疑問に思ったり、見る視点によって評価というものは大きく変わってしまうのかもしれません。

高野さんが求めるものが変わることによって、そういった外人の見え方が違ったのかも。



【語学が苦手なのは日本人だけでなく・・・】

本書を読んで驚いたのが、外国語の習得の話。
日本人は、どうも英語や外国語を習得するのが苦手だと思っていましたが、日本だけでなく、ヨーロッパの国々も、外国語の習得は日本人以上に苦手だったという点。

これは、かなり衝撃でした。
日本人以上に、英語などがなかなか身に付かないという話は、語学の習得の難しさは、万国共通なんだなぁと、妙なところで一安心しました。

そう考えると、著者の高野さんの語学習得の能力は、ずば抜けていて、改めて驚愕させられるのでした。



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【『異国トーキョー漂流記』より】
「なにしろ、彼は全然わかってないのにイエス、イエスって答えるのが頭に来るのよ」

(書き出し)
私がいちばん初めに外国人とまとまった時間を過ごしたのは、たしか高校生のときだったと思う。

(結び)
空にはトーキョーの星々が淡く瞬いていた。
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[ 2018/04/18 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:企業小説】 第三の買収

【評価】★★☆☆☆

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著者:牛島信
出版:幻冬舎文庫


【弁護士さんが書いた本】

会社買収を巡る騒動を描いた小説。
著者は弁護士だそうで、実務がベースにあっての作品のようです。

そのため、テーマは、なかなか面白いのですが、企業小説として読むと、かなり冗長だったり、関係ないような話や展開、著者の自己満足的なトリビア的知識がちりばめられていたりと、小説としては、パッとしませんでした。

小説ではなく、ビジネス書と割り切って読むのであれば、ストーリーの稚拙さや表現力の不味さには目をつぶれるかと思うので、そのように考えて読むべき本のようです。


【会社の買収額つり上げ合戦】

ストーリーは、サラリーマン社長が、自分の会社を買収しようと思い立つところから始まります。
経営者自らが自社を買収することをMBOというそうで、MBOの流れや、それを行うことでの課題が、小説仕立てで描かれます。

会社社長が、自社株の公開買い付けを開始したところ、外資系ファンドが対抗買収に名乗りを上げ、買収額のつり上げ合戦に発展していくという内容です。


【MBOとは?】

MBOの仕組みを本書で読んだ限りの理解だと、会社社長が個人会社を立ち上げ、資金を調達(金融機関などから借り入れ)し、個人会社が会社を買収するという流れになります。
買収が成功したところで、個人会社と買収した会社を合併し、社長はそのまま合併会社の社長となり、個人会社の借金は、合併会社に移されることになります。
これにより、合併会社の株は、社長が独占しつつ、株の買収で背負った借金は合併会社に移管されるので、買収を行った経営者には、借金を個人で背負うといったリスクがなくなる反面、株を独占することで合併会社の支配権を握れるという、なかなかおいしい話のようでした。


【タイトルの意味は】

本書では、買収額のつり上げ合戦に負けMBOは成立せず、という結末になりますが、外資系ファンドによる買収を嫌った従業員が、別のファンドを味方につけ、外資系ファンドに買収合戦を挑み、見事勝利するという、最終的なオチが付きます。

これが、本書のタイトル「第三の買収」の意味だったわけです。

ちなみに、従業員が中心になって買収することをEBO(Eは、従業員=EMPLOYEEの頭文字)というそうで、買収の主体がだれか、経営者(Manager)なのか従業員(Employee)なのかで、MBOと呼ぶのかEBOと呼ぶのかに違いがでるようです。

呼び名はどうであれ、金を出すファンドが一番強いんじゃないかと言う気がすると、表に立つのは経営者であれ従業員であれ、あまり変わりはないんじゃないかなぁ・・・と呼んでいて思うところでした。


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【『第三の買収』より】
今の時代、結論だけが正しくても、それだけでは受け入れられない。手順、プロセスが問われます。

(書き出し)
「決めたぞ」
キッパリとした男の声が、だだっ広い部屋に響き渡った。

(結び)
日夏と岩木は、お互いがすぐ隣にいるのを改めて確認し合うと、遠く仲通りの果ての工事中のビルのさらに向こう側を目指して、ゆっくりと歩いていった。
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【書籍:歴史】 新選組遺聞

【評価】★★★☆☆

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著者:子母澤寛
出版:中央公論社


【玄人向け作品】

子母澤寛氏の新選組三部作の二作目。
2作目ということで、1作目の「新選組始末記」で述べたことは省略するというスタイルとなっているため、新選組に少し詳しくないと、読みづらいかなと言う印象。

そして、本書が書かれたのは昭和4年ということもあってか、現代文(?)からすると、これまた読みづらい点もあり、例えば、普通に漢文が載っていたりして、現代人の素養じゃ、読みづらいぜ・・・などと思うところでもあります。

ということで、漢文や古語のようなところは、だいぶ読み飛ばさざる得ず、ちょっと、読み切った感が得られませんでしたが、それも仕方がないことか。



【沖田総司】

読みづらさはあるものの、新選組のお馴染みの人物のエピソードなども多くあり、なかなか面白く読めました。
沖田総司などは、イメージからすると飄々とした、とらえどころのない人物という感じもしますが、非常に気短で、弟子達が恐れていたなんていうのは、意外な話。

剣術の稽古も「敵を刀で斬るな、からだで斬れ斬れ」なんて教えていたなんていうのは、さすが剣豪で鳴る人物というところでしょうか。
そして、沖田総司を評して、「沖田の一太刀は、一か八か、のるかそるか、常に命がけのものであったようである」というのも、さすがは新選組といったところでしょうか。



【近藤勇と芹沢鴨】

近藤勇については、偉い人物だという評は多いようです。
「近藤さんは酒を飲まないかと思ったらやはり飲むそうだけれども、酔った風をみせないのは偉いものだ」とも言われていたそうですが、飲み過ぎて終電を寝過ごす自分とは大違いです(笑)。

近藤勇に暗殺された芹沢鴨はと言うと、粗暴で少し抜けているところがあったようです。

「芹沢は太っ腹だが投げやりでいけない。近藤は役者が一枚上なようだ」とも評されていたようですが、それが暗殺するものとされるものの差になったのかもしれません。
ただ、芹沢鴨、なかなか面白いエピソードが多く、町に虎が見世物でやってきた時には、「人間が虎の皮をかぶっているに違いない。俺が一つ、正体を暴いてやる」と言って虎の檻の前に行ったものの、虎に吠えられ、「これァ本物だよ」と苦笑いして立ち去ったなんていうのは、他愛もないですが、少々、抜けた感じが出ていて、面白いエピソードです。


【殺しのエピソード】

新選組と言えば、当時の治安部隊的な役割もありますが、どことなく凶暴な殺人集団というイメージもあり、そんなイメージにまつわるエピソードも色々と載っています。

芹沢鴨の暗殺では、暗殺した後、土方歳三が、何食わぬ顔で「見分に来た。怪しい者は来なかったか」などと、芹沢鴨の家の者に聞いて回るというエピソードがあり、大家などは、土方歳三が暗殺したのを見て知っていただけに、「どうも怖いながらおかしくて仕方がなかった。自分がたった今殺しておいて、もうちゃんと着物を着替えて、済ましてやってきているのだから」と思ったそう。

時代が時代なのでしょうが、どことなくおおらかな感じがしなくもありません。

また、切腹の介錯をした後、何事もなく、ニコニコしながら、平気で餅つきを手伝う隊員のエピソードや、それを見て、「ちゃんと手を洗って手伝ってるのか」などと冷やかす話など、生死のやり取りもどことなく、あっけらかんとしている感じです。


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【『新選組異聞』より】
近藤という者は、智勇兼ね備わり、何事の掛合に及び候ても、滞り無く返答致し候者の由。

(書き出し)
新選組が壬生の屯所を引払って、西本願寺の、俗に太鼓番屋といった集会所へ越して間もなく、江戸の勝安房守から、局長近藤勇への添書をもって、三浦啓之助という十六七の若い侍がやって来た。

(結び)
勇の法名は「心勝院大勇儀賢居士」と申します。この外、会津にも墓というのがあると聞きましたし、板橋の刑死跡には永倉新八の建てた碑があり、南多摩郡七生村の高幡金剛寺境内には「両雄殉節之碑」があります。
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[ 2018/04/07 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【邦画:ホラー】 零 ーゼロー

【評価】★★☆☆☆

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2014年/日本
監督:安里麻里
主演:中条あやみ、森川葵

地元のGEOのホラーコーナーも枯渇しつつあり、これでいいかという投げやりな気持ちで借りて来た作品がこれ。
そんな気持ちで、良い作品が選べると思うな(カツ!)

【ストーリー】
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寮制の女子高が舞台。
夜12時に好きな女の子の写真にキスをすると両思いになれるという恋占いが蔓延するが、一方で、その恋占いをすると呪いがかかってしまうとの噂も。
そんなある日、女子高内のマドンナ的存在の女子生徒が部屋に引きこもったまま出てこなくなってしまう。
それを機に、女子高生が次々に失踪するという事態が発生、同時に引きこもったマドンナの霊が出現して誘惑し、失踪へ導いているという噂も立ち上る。
部屋に引きこもっていたマドンナは、その噂を聞き、事件の真相を探る決意をする。
事件を探ると、自分とそっくりの姿の幽霊が学校や街に現れているという事実を掴む。
そして、幽霊の居場所を探ると、実は、その幽霊はマドンナが子供の頃に死んだ、双子の姉であった。
双子の姉は、生贄として女子高の校長先生に殺害され、彷徨い続ける魂が生き残っていた妹に助けを求めていたのだった。
死んだ姉の魂を救い出すことで、学園にかかった呪いも解け、平和が訪れるのだった(完)。
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【監督の目的は・・・】

いまいち、ストーリーがあやふやな作品です。
ただし、監督の意図したいことは分かった。
女子高生同士のキスシーンが撮りたかったんですな。

それならそうと、こんなまどろっこしい上に、破綻気味のストーリーなんかにせず、単純な女子高生同士のラブストーリーでも撮ったらよかったのにと思いますが、それでは、一般受けしないのか・・・。



【呪いの主は・・・】

ストーリーは、女子高に蔓延した「女の子が女の子にかける呪い」を解くというもの。
黒髪美少女-そうですねぇ、佐伯日菜子っぽい女性(ちょっと例えが古いか)と、少しボーイッシュな、うーん、そうだなぁ・・・剛力彩芽をもうちょいなんとかした感じの女性の2人が、呪いの謎を解くという展開。

呪いの主は、佐伯日菜子の双子の姉で、子供の頃、校長先生(おばさん)が、若かりし頃に死んだ悲恋の恋人(女性)の魂を慰めるため、生贄として殺されてしまった気の毒な子供という設定。
殺された直後は、呪いを発動せず、10年後、双子の妹が高校を卒業するかもという頃に、突如、呪いを発動。

なんで、このタイミング?と思うと同時に、殺された双子の姉は、あの世でも成長し、生きている妹とうり二つの姿の幽霊になっていたのでした。

幽霊も成長するのか・・・? 映画「鉄道員(ぽっぽや)」も、幽霊(広末涼子)が成長するという設定でびっくりしたことがあるので、前例がないわけではありませんが、幽霊が成長するって、やっぱ、どうかなぁと思います。



【だいぶ拗らせた感が・・・

呪いの主が、主人公の双子の姉で、学園で失踪した生徒の死には、学園のシスター(ミッション系の学園なので、シスターがいるんですな)が絡んでいて、さらに、双子の姉を殺したのは学園長で・・・・と設定が盛りだくさんですが、結構、設定が中途半端で、フラグ未回収なところが、ちょっと如何なものかと。

学園のシスターは、失踪した生徒を殺していましたが、当初、その理由は、主人公の双子の姉の殺人を隠すため・・・みたいな理由付けだったのに、最後の最後に、学園長が、「双子の姉は私が殺したの。シスターは、殺してはいないわ」みたいな告白があり、おいおい、じゃあ、シスターは、なんで失踪した生徒をバカスカ殺してたわけよ・・・と大いに突っ込みをいれたくなるわけで。

そして、一番は、殺人を告白した学園長、おとがめなし。
「殺した双子の姉が成仏して、呪いが解けた。良かった・・・」 ・・・って、全然よくないですから!

とまぁ、女の子同士のキスを撮りたいだけだったのに、やけに拗らせてしまった作品なのでした。


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プロフィール

kappa1973

Author:kappa1973
 
読んだ本と映画について、感想を書いていきたいと思います。
 
評価は5段階で・・・
★☆☆☆☆:焚書坑儒!
★★☆☆☆:時間の無駄
★★★☆☆:損はない
★★★★☆:良い作品!
★★★★★:殿堂入り!?

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