読書と映画

読んだ本、見た映画について感想を書いています。
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【アニメ:カフカ作品】 カフカ 田舎医者

【評価】★★☆☆☆

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2007年/日本
監督:山村浩二

久々にTSUTAYAに行ったら(最近はGEOばっかり・・・)、ふと目について気になった作品。
賞味20分程度の作品を、お金を出してレンタルするのもどうかなと思いましたが、お金を払うのは、作品の時間の長さではなく、中身に対してであるなどと生意気なことを思い返し、レンタル。

【ストーリー】
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田舎医者は、遠くに患者が待っているのに、吹雪で患者の家まで行くことができず困っていた。
そこに、馬車を出してくれるという者が現れ、馬車に乗ると瞬時にして患者の家に行くことができる。
患者の少年は病気のようでもあり、元気なようでもあり・・・。
患者の家族は、医者の衣服をはぎ取り治療をするよう要求し、医者は、少年に治療を施すと、服を集めて、馬車に乗り込んで家路を急ぐのであった(完)。
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【カフカの作品を映像化】

カフカの短編小説「田舎医者」を映像化した作品。
短編小説なので、本作も潔く、20分という短さ。

「田舎医者」を読んだことがないので、はっきりしたことは言えませんが、原作を読むのと本映画を見るのとで費やす時間、どちらも同じくらいなのかもしれません。
とすれば、本作は、原作「田舎医者」の要約でも意訳でもなく、純粋に映像化と言えるのかも。



【不条理で陰鬱】

カフカは、学生時代、何冊か本を読んだ記憶がありますが、不条理で陰鬱という印象が色濃く残っていますが、本作も、カフカの不条理で陰鬱、さらには歪んだ感じという雰囲気を出ている気がします。

不条理なので、ストーリーを真面目に詰めようとすると、訳が分からなくなるわけです。
その意味で、この作品もストーリーに突っ込んだり、考え過ぎると、破綻してしまうでしょう。



【原作を知らずに見ると・・・】

とは言いつつ、カフカ作品の映像化ということを外して、純粋に作品だけで見てしまうと、疑問符だらけの、観る人を困惑させる内容になってしまいます。

あくまで「カフカ原作を映像化」という肩書があって、初めて成り立つ作品でしょう。
カフカ作品の不条理さなどを、映像でこんな風に表すんだ、ということを味わうもので、前提の知識がないと、分かりづらい作品ではあります。

その点で、私も「田舎医者」は未読であったため、本映画をいきなり見た後の感想は、「わからねぇ・・・」というものでした(苦笑)。

前提の知識がないと、理解ができない映画というのも、カフカに興味・関心のある人には良くても、それ以外の人には、ちょいと難しいのかな、そんな印象の不可思議な作品でした。



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【書籍:歴史】 闘将伝 -小説 立見尚文

【評価】★★★☆☆

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著者:中村彰彦
出版:文藝春秋



【賊軍側に立って戦った人物】

明治維新では、賊軍となった桑名藩の藩士として、官軍と最後まで戦い抜き、その後、政府に登用され、軍人として、西南戦争、日清・日露戦争で軍功を立て、陸軍大将まで上り詰めた、立見尚文の生涯を描いた作品。

明治維新の時には、数多くの人が活躍したので、その全部を知る由もありませんが、薩長側から見ることが多いせいか、本書に描かれた立見尚文は、賊軍側ということもあってか、初めて見知った人物でした。
自分が知らないだけで、その時代に活躍した人は数多くいるのですね。



【官軍を悩ました勇戦ぶり】

立見尚文は、明治前後の軍人ですが、その経歴は、桑名藩士として、官軍と戦った経歴、官軍の指揮官として、西南戦争や日清・日露戦争を戦った経歴と、大きく分けると、賊軍と官軍両方の経歴を持ち合わせています。

本書では、桑名藩士として賊軍の立場で戦った時の話が3分の2ほど占めており、多勢に無勢の状況ながら、よく戦い、官軍を悩ませて勇戦した様子が際立っています。
幕末物の本は、結構、読んでいたつもりですが、桑名藩がここまで、勇戦していたというのは、初めて知ったことでした。

賊軍として扱われると、文献や記録も散逸してしまい、どうしても、その活躍が日の目をみないということで、歴史というのは、どうしても一方の視点から見る状況にならざる得ないわけです。



【西郷隆盛を討ち取る戦功】

幕府が滅び、薩長に対抗していた列藩が降伏した後、立見尚文は、下級官吏として登用されることになりますが、西南戦争が勃発すると、幕末時の戦歴を買われ、軍人として西南戦争で一部隊を指揮することになり、西郷隆盛らが敗走し、最後に立てこもった城山を攻略するという戦功を立てることになります。

当時の明治政府は、文人として役人だった人物が、突如、武人として活躍することになったりと、文人、武人の境目がはっきりしていなかったり、明治政府の立役者であった西郷隆盛が、明治維新時、賊軍とされていた諸藩出身の集まりの軍によって滅ぼされたりと、立場が目まぐるしく変わるのは、政府がまだまだ揺籃期にあったということなのでしょうが、とても面白い状況に感じます。



【立志伝中の人物】

西南戦争の戦功により、一目も二目も置かれる軍人となり、その後、賊軍出身にも関わらず、陸軍内で出世を重ね、日清戦争、日露戦争にも指揮官として参加、戦功を立て、陸軍の中で立志伝中の人物とでも言うべき存在となっていきます。

元々は、賊軍である桑名藩の出身で、最後まで官軍に抵抗しながらも、その後は、紆余曲折を経ながらも、政府の軍人として軍功を重ね出世したという人生は、才能と運を持ち合わせていたのは確かでしょうが、むしろ、「万事塞翁が馬」ということわざがぴったりの人生です。





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【『闘将伝』より】
うむ、汝には申すまでもあるまいが、いくさには潮目がある。その潮目に逆らって無理攻めはすまいぞ

(書き出し)
「鳥羽街道」とは淀から桂川東岸に沿って北へ延び、往古の羅城門跡のある四塚で洛南八条に達する西国街道をいう。

(結び)
古代のまつろわぬ者たちの子孫が曳き出す色あざやかなねぷたの動き、太鼓の音に、かれは若き日の自分を重ね見ていたのかも知れない。
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[ 2018/08/02 00:00 ] 歴史 | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:自伝】 人買い伊平治伝(世界ノンフィクション全集38)

【評価】★★★☆☆

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著者:村岡伊平治
出版:筑摩書房



【全く違う世界】

明治時代、東南アジアに渡り、日本から女性を誘拐して、娼婦として働かせ、財を成した村岡伊平治の半生を描いた作品。

明治時代の裏の歴史と言った感じで、人身売買を何とも思わない発想は、現代から見ると、野蛮というかなんというか、全く違う世界という感じです。
人権意識や思想が高度に発達している日本や欧米などの諸国と、北朝鮮との違いよりも更に差が大きい印象です。


【貧しさと搾取の時代】

村岡伊平治という人物、元々は、富裕な家に生まれたものの、父親が早世するなどの不運に見舞われ、家が没落、財をなすため、東南アジアに行くことを決断します。
しかし、東南アジアに行ったものの、期待したような成果は得られず、困窮の度合いを極め、東南アジアで日本人が経営する女郎屋で世話になったことがきっかけで、人身売買や女郎屋稼業に足を踏み入れるようになるわけです。

しかし、驚きなのが、東南アジアで知人も何もいないような状況なのに、各地の女郎屋で郷里で幼馴染だった女性などと、複数出会うという展開。

東南アジアの女郎屋に行ったら、郷里の知り合いの女性が何名も売られているというのも、今の日本では考えられず、明治時代の貧しさや搾取されている様子が伺えます。


【国家に役立つ事業とは】

松岡伊平治は、東南アジアで女郎屋稼業の世界に浸り、様々な人物と交流するうちに、国家のために役に立つことをしようと思い立ちます。
こういった世界なので、様々な犯罪を犯した人間が逃げ込んでくるわけですが、彼らに事業をさせ、成功をさせることで真人間に立ち戻らせ、国家の役に立つ人間に変えようと試みるわけです。

非常に立派な心掛けだ、と思うのですが、その方策に唖然。

金を稼ぐには女郎屋を行うのが手っ取り早いと考え、東南アジアに逃げ込んできた犯罪者を、日本国内に潜入させ、若い女性を誘拐させ、その女性を東南アジアで売ったり、自身で女郎屋をさせることで、財をなさせようというもの。

突っ込みどころ満載。これが国家の役に立つと考えるところが頭がおかしい。


【伊藤博文から絶賛!?】

そして、本当か嘘か、松岡伊平治は、この取り組みを伊藤博文にも話をし、伊藤博文からは大絶賛されたとか。
本当か。
明治時代の闇を感じます。
こういう話を読むと、女性が搾取され続けていた苦難の歴史に思い至ります。

男女平等とかいう前に、基本的に、人を人として尊重する、それが普通に実現している社会が大事だと考えさせられます。


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【『人買い伊平治伝』より】
たとえ泥棒でも金があれば真人間になるし、仕事につけば悪いことをしない。

(書き出し)
拙者は慶応三年十月十日、長崎県南高来郡島原城内で出生した。

(結び)
これがいわば開業資金であるが、女はたちはいずれも国元の親兄弟に多額の送金をしておるので、一人当たり一年二百円としても、年額六十万円の送金があるのであって、国家経済の上からもけっして少額の金ではないのである。
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[ 2018/08/01 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)

【書籍:伝記】 夜の大統領カポネ(世界ノンフィクション全集38)

【評価】★★★★☆

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著者:フレッド・パズレー
出版:筑摩書房



【アル・カポネの半生】

アル・カポネの半生を描いた作品。
映画「アンタッチャブル」が好きなので、これは読まねば、ということで早速手に取ったのでした。



【エリオット・ネス、登場せず】

半生記とは書きましたが、実際は、アル・カポネの絶頂期に書かれた作品なので、シカゴを牛耳って、絶頂期を謳歌しているカポネまでしか描かれていません。
「アンタッチャブル」で有名な、エリオット・ネスなどは一切登場せず。

作品が書かれた時期が時期なので、それも仕方ないですが、カポネの生涯を知っている身としては、片手落ちの感じもあります。
ただ、それを除いたとしても、カポネが暗黒街でのし上がっていく様子や、当時のギャングの実態が手に取るように分かるので、面白い作品には違いありません。



【腐敗する社会】

しかし、当時のシカゴの暗黒街、かなり無法状態。
今のメキシコ並みのギャング天国(地獄?)な状況。

警官は軒並み買収されているし、警官どころが、市長や警察署幹部など、上層部からして、ギャングと癒着しているのだから、ギャングを駆逐することができないのも分かる気がします。

巧みな組織力と暴力を駆使し、ライバルのギャングを倒し、警察やシカゴ政界を買収し、夜の大統領と呼ばれるようになるカポネは、裏社会の革新的な人物であったのかもしれません。

一方で、禁酒法という、世間からは白い目で見られ、禁酒法を破ることに誰も罪悪感を感じない状況が、少なくとも世間の一部が、闇酒を流通させるカポネを支持する状況を作ったのも事実。
禁酒法がカポネを出現させた、もしくは、巨大な力を持つに至らしめたというのはあるのだなぁと感じました。



【悪法による弊害】

結局、法律など人を規制するものは、人々が納得するものでなければ、形骸化し、むしろ有害化するのだなぁということを思い知らされたのでした。
悪法は、法律が期待する利益よりも害悪を生じさせることが多い・・・気を付けないといけないですね。



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【『夜の大統領カポネ』より】
カポネは、犯罪が割りに合わないことを、説教的ではない方法で、みずから読者諸君に語るような男である。ではなぜ彼がギャングの世界より引退しないのであるかと、諸君が尋ねたら、彼は「一度この世界に足を踏み入れたら、出口はまったくないよ」と答えるであろう。

(書き出し)
二十一個のひげ剃り用の取手つきせと焼きカップを備えている理髪店の中で、主人のアマート・ガスペリは、ジョン・スカリーゼとアルバート・アンセルミという金文字の名前の反対側に、黒いインキで×印をつけていた。

(結び)
私服の二人の男が両手を上げてぞろぞろ出て来た後から、警官の制服の男たちは武器を手にさげて護送するように悠々と現われ、待っていた偽の警察自動車に乗り込んで去った
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【書籍:事件ルポ】 モンテージ事件(世界ノンフィクション全集38)

【評価】★★☆☆☆

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著者:ウェイランド・ヤング
出版:筑摩書房



【大山鳴動ネズミ一匹】

いやはや、すごい変な事件についての顛末記。
若い女性が水死体で発見されるのですが、当初、事故とされたものの、実は上流階級の人間がその女性の死に関与しているという風聞が立ち、政財界、上流階級を巻き込んだ、一大スキャンダルに発展。

数年間、イタリアの世間を騒がしたものの、結局、水死事故だったことが判明し、大山鳴動ネズミ一匹という結果になるという話。



【偽証罪を問われる人多数】

そもそも殺人事件でも陰謀でもなかった事故死だっただけに、本書で記される裁判でのやり取りや顛末も、どうにも分かりづらく、証言、情報もあっちにブレ、こっちにブレ、訳が分からないという状況。

1950年代のイタリアでの話ですが、驚きは、多くの人が裁判に関わり、更に、裁判に立ったかなり多くの人が偽証罪で懲役刑を喰らう結果になったという事実。

なんなんでしょう、嘘の証言をする心理ってのは・・・。

世間が注目する事件なので、重要な証言者となることで、自分が注目されているような気分を味わいたい・・・そんな心理なのかもしれません。


【世間はスキャンダル好き】

事件自体が全然事件じゃなかったせいなのか、分かりづらい話で、あまり興味をそそられることのない内容でした。

確かに、風聞、風評が事件として長年、取りざたされるという展開は、非常に奇妙でおかしな感じがしますが、事件じゃないので、結局、あまり魅力を感じることができないということだったのかもしれません。

日本もイタリアも、真面目な社会問題よりも、スキャンダル的な話に世間の関心が行くというのは同じなのかもしれません。
本書では、その風潮を嘆く記述がありますが、いつの時代でも、「今の若い者は・・・」という愚痴があるのと一緒で、別に今に始まったことでもなく、まぁ、深刻に怒ったり、嘆くほどのことでもないのかもしれないな、と思う話でした。



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【『モンテージ事件』より】
いまや新聞はモンテージ事件しか報道しなかった。ヨーロッパ防衛共同体にイタリアも参加すべきかどうかという重大な論議が、ちかく議会で争われるはずだったのに、新聞はそれにさえあまり関心を持とうとしなかった。

(書き出し)
一九五三年四月九日の午後、ローマ市内に住む大工の妻マリア・モンテージは、二十幾つかになる長女ワンダをつれて映画を見に出かけた。

(結び)
しかし、そのX氏と後継者たちは、神経性の頭痛が後日、真の病気が起こった場合の免疫性にはならないことを肝に命じておかなければなるまい。
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[ 2018/07/30 00:00 ] その他ルポ | TrackBack(0) | Comment(0)
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★★★★☆:良い作品!
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